共創事例インタビュー


2018年1月、サントリーグループは新規ビジネス創出を目的に、ベンチャー企業との共創プロジェクトをスタートさせた。サントリーの既存事業である酒類や飲料、健康食品などに留まらない新たな消費者へのアプローチをベンチャー企業と模索していくことを狙いとし、専門部署である「ベンチャーコネクティングチーム」を立ち上げている。

そして2018年秋、ベンチャーコネクティングチームと出会ったベンチャーが株式会社Hacksii(ハックシー)だ。同社は、アクティブラーニング×食事づくりの新しい教育概念“キッチン学“を自宅で学べる家庭教育サービス「ハクシノレシピ」を提供。キッチン学のプロである「エプロン先生」を自宅に派遣し、メニュー決めから調理、盛り付けまでを子ども主体で行うことで、“自分で考えて主体的に行動できる子”を育てる食育事業を展開している。

eiiconのプラットフォームを通じて出会い、コミュニケーションを取り始めた両社はスピーディーに情報交換。ベンチャーコネクティングチームが、「サントリー本気野菜」(※)というブランドで野菜青果の生産・販売も手がけるサントリーフラワーズとHacksiiを引き合わせることにより、共創プロジェクトが本格的にスタートした。

※「サントリー本気野菜」……野菜本来の“味の濃さ”を追求し、家庭菜園向け野菜苗と青果商品でシリーズ展開する野菜ブランド。

実証実験に備え、「エプロン先生」向けの勉強会を開催

まず両社が取り組もうとしているのが、実証実験だ。「ハクシノレシピ」にて、サントリー本気野菜とのコラボした「本気野菜プラン」を2019年1月から始動させる。これは、「サントリー本気野菜」の特徴ある味わいや食感を活かし、食事づくりを子ども自身がレシピを考え調理することで、野菜の種類や性質、味わいなどさまざまなことを学べるサービスとなっている。――この実証実験を通して、「サントリー本気野菜」・「ハクシノレシピ」双方のサービス認知やユーザー層拡大、ブランディング向上を目指していきたい考えだ。 実証実験に備え、本気野菜の勉強会が12月に都内で開催された。サントリーフラワーズ ベジタブル事業部・阿部氏が講師となり、「サントリー本気野菜」の魅力についてエプロン先生に説明した。

今回の勉強会において阿部氏は、出汁のような濃厚なうまみが特徴のトマト「ボンリッシュ」、果実のように甘いミニトマト「純あま」、味の濃いナス「とろとろ炒めナス」の3品目の本気野菜を持参。開発の歴史から食味の特徴などを交えながら、品種の多様性について説明を行い、「正解にとらわれずに、みなさんの自由なイメージでメニューを作ってほしい」と話した。

▲とろとろ炒めナス

その後、エプロン先生たちがどんなメニューを作るのか作戦会議を行い、わずか2時間程度で10品目以上のメニューを即席で作り上げた。エプロン先生たちがこの勉強会を通して得た知識を、「本気野菜プラン」に役立てていく予定だ。

▲阿部氏の話を聞き、手元の素材でどのような料理ができるかを相談するエプロン先生たち。

▲わずか2時間ほどの間に、手際よく調理を進めていく。

▲勉強会では本気野菜を使い、10品目以上のメニューが完成した。

出会いからわずか2ヶ月で実証実験を開始できる理由とは?

サントリーフラワーズとHacksiiによる共創プロジェクトは、サントリーのベンチャーコネクティングチームがサポート役となり、推進してきた。最初の出会いが2018年11月で、わずか2ヶ月という短期間で実証実験をスタートできたのはなぜか?共創する上で重要となることとは?――ベンチャーコネクティングチームの鈴木氏、サントリーフラワーズの阿部氏、Hacksiiの代表・髙橋氏の3名に話を聞いた。

サントリーホールディングス株式会社 経営企画・財経本部 事業開発部
ベンチャーコネクティングチーム 課長 鈴木雄一氏

設備エンジニアとしてビール工場での設備導入等のプロジェクトを担当した後、生産部門の企画部署を経て、研究所で研究戦略の立案・推進を担う。その後、サントリーホールディングス(株)にて、事業開発部と研究企画部を兼務し、新事業開発の戦略立案・推進と研究開発プロジェクトのリーダーを担う。

サントリーフラワーズ株式会社 ベジタブル事業部 部長 阿部寛氏

2002年に設立され、花苗・花鉢、野菜苗・野菜青果の開発・生産・販売を手がけるサントリーフラワーズのベジタブル事業部のブランドマネジャーとして事業を牽引。野菜の美味しさ、家庭菜園の魅力を伝えるため、全国各所で勉強会やワークショップなどを開催し、講師役もつとめている。

株式会社Hacksii 代表取締役CEO 髙橋未来氏

右脳発達型の幼児教室で講師として勤務をした経験から、子どもの脳の発達と心の成長に着目。保護者の方から多くの食に関する相談を受ける中で、自身も食に興味を持ち、食育インストラクターの資格を取得。幼児教育と食という二つの切り口で子どもの成長に寄り添いたいと考えるようになる。自身が料理教室通ったことをきっかけに料理のプロセスには教育要素がとても多いと気づき、料理を通じた新しい教育を提供することを目指して、株式会社Hacksiiを設立する。

eiicon内でのコミュニケーションが、出会いのキッカケに

ーーサントリーさんのベンチャーコネクティングチームとHacksiiさんとの出会いはeiiconがキッカケになったと伺いました。

Hacksii・髙橋氏 : そうなんです。eiiconを見ていたら”食”領域の特集があったので、私たちの事業とマッチできると思い、チェックしたんです。すると、サントリーさんの企業名を見つけて、私たちが実現したいことと非常に近く、すぐにメッセージを送ってアプローチしました。

サントリー・鈴木氏 : 最初は”食”の中でも当社の強みである「酒類・飲料」の周辺領域を想定していたので、Hacksiiさんから連絡をいただいたものの、当初は共創できるイメージが持てていませんでした。

Hacksii・髙橋氏 : ただ、サントリーさんとは一緒に何かできるはずと思い、何度か鈴木さんとeiiconでメッセージのやり取りをしたんです。

サントリー・鈴木氏 : Hacksiiさんから連絡をいただくうちに、「うちにはサントリーフラワーズの本気野菜という”食”のブランドがある」ということに気づきました。これは何かできるかもしれないと思い、サントリーフラワーズに話を持っていきました。

サントリーフラワーズ・阿部氏 : 当社は家庭園芸向けのビジネスがメインですが、およそ2年前から生鮮食品のビジネスに進出しました。それというのも、「食材の多様性をお届けしたい」と考えたからです。例えば、ドイツではジャガイモ一つとってみても、「煮る用」、「焼く用」、「蒸す用」などさまざまな種類があります。まさに多様性があるのです。その点で、「ハクシノレシピ」を通して食材の多様性を伝えるHacksiiさんとは思想やビジョンがピッタリだと感じ、今回の共創プロジェクトが走り出しました。

Hacksii・髙橋氏 : 実は、11月の最初の打ち合わせからわずか1ヶ月で今回の勉強会〜実証実験が決まったんです。

――とても迅速な意思決定ですね。

サントリー・鈴木氏 : 私たちとしても、スピード感はとても意識しているところです。じっくり考え時間をかけることは否定しませんが、新しいことに挑戦するにあたっては、スピーディーに意思決定をし、まずやってみることを繰り返す方がうまくいくと考えています。

Hacksii・髙橋氏 : これだけはやい意思決定ができたのは、同じ未来を目指すことができるというビジョンの共感にあったと感じています。先ほど阿部さんも仰っていましたが、野菜には多様性があります。そして、私たちの「ハクシノレシピ」も、”個性を尊重する”・“正解を定義しない”という教育方針を取っており、それはまさに多様性を認めるということです。

今回の勉強会でご用意いただいた「とろとろ炒めナス」は、普通のナスと違って、とても丸い形をしています。この個性がある野菜を「ハクシノレシピ」を通じて子どもたちに伝えていく。このようなストーリーを、サントリーフラワーズさんと一緒に追いかけていくことができる強く感じたんです。――それが、プロジェクトを加速させることができた要因になっています。

サントリーフラワーズ・阿部氏 : 私自身、これまでに外部の企業さんと一緒にさまざまなプロジェクトを進めたことがありますが、普通は、スケジュールを引いて、ゴールやKPIを決めて、と打ち合わせするにも準備も時間もかかります。しかし、今回のHacksiiさんとのプロジェクトは圧倒的にスピードがとてもはやいです。それはやはり髙橋さんがお話ししてくれた通り、私たちもHacksiiさんも見ている未来が同じだからだと思っています。

――2019年1月から、ハクシノレシピと本気野菜がコラボレーションした実証実験がスタートします。これからの展望についてお聞かせください。

サントリーフラワーズ・阿部氏 : 実証実験に備えて開催した勉強会では、甘さのあるミニトマト「純あま」を使った”トマト飴”というメニューをエプロン先生たちが作ってくれました。他にも予想もできなかったようなメニューを作ってくれましたが、「食材の多様性をもっと広めたい」という私たちの想いをさらに高めてくれるような新しい価値が生まれてくる感触があります。これからもHacksiiさんとの共創を、どんどん進めていきたいですね。

――今回、サントリーさんとHacksiiさんはeiiconを介して出会い、共創を進めてきました。最後に、eiiconを使う効果・メリットなどをお話いただけると嬉しいです。

Hacksii・髙橋氏 : 自分たちの実現したいことを加速するために、大企業さんとコラボレーションしたいと考えることはありますが、部門や担当者も多くどのようにアポイントを取るのがベストか、実はこれまで分からずにアプローチできていないこともありました。eiiconは各社の考えている内容が明確に分かり、担当者の顔も見えます。また今回の“食”特集のように、いろいろな特集コンテンツがあるので、声をかける一押しをしてくれるなと感じています。

サントリー・鈴木氏 : いろいろなマッチング支援企業を利用させていただいていますが、eiiconは他と比べてもしっかり考えてコンタクトをとってくれる企業が多いと感じています。そのため、共創に至る確度が非常に高いです。eiicon上で、ビジョンやリソースをオープンにしているからこそ、目的をもった企業が多く集まってくれるのだなと思います。

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