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共創パートナーと価値創出の旅に出発する「DNP INNOVATION PORT」が“開港”――その先に描く未来とは?

共創パートナーと価値創出の旅に出発する「DNP INNOVATION PORT」が“開港”――その先に描く未来とは?

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大日本印刷株式会社(以下、DNP)は、資本金約1144億円、売上高約1兆4000億円(連結)、従業員数約3万8000人(連結)の規模を誇り、国内だけではなく世界的に見ても印刷業界のトップ2強を凸版印刷と分け合う大企業だ。

デジタルメディアの普及により、国内の印刷業界の市場規模は1997年以降20年以上も縮小傾向が続いている。その中にあっても、同社が巨額の売上や利益を維持しているのは、印刷技術をコアとしながら、さまざまな成長部門への先行投資をおこない、事業の多角化に成功してきたからと言えるだろう。――「未来のあたりまえをつくる」という同社のブランドステートメントにも象徴されているイノベーションへの取り組みをさらに加速させるために、この8月から新たにスタートしたのが、『DNP INNOVATION PORT』という取り組みだ。既成概念にとらわれないオープンイノベーションによって新規事業を生み出し、社会へ新しい価値を提供すると共にDNPの「第三の創業」にも貢献していくという。

今回は、この取り組みを中心で担っている同社情報イノベーション事業部ビジネスデザイン本部第1部マーケティンググループの3名に、DNP INNOVATION PORTの詳細と目指す未来について伺った。

▲大日本印刷株式会社 情報イノベーション事業部 ビジネスデザイン本部 第1部マーケティンググループ リーダー 松嶋亮平氏

2004年にDNPに新卒入社し、ICカードシステムなどデバイス関係の営業企画を担当。2016年から事業企画本部に所属し、中期経営計画策定やM&Aに携わる。2018年10月に、ビジネスデザイン本部が発足したタイミングでジョインし、主に新規事業開発を手がける。

▲大日本印刷株式会社 情報イノベーション事業部 ビジネスデザイン本部 第1部マーケティンググループ 金井剛史氏

2008年にDNP新卒入社後、主に鉄道会社をクライアントにマーケティングやSP業務の支援を担当。2012年頃からは研究所と共に先端技術を活用したナビゲーション、インフォメーションにかかわるサービス、アプリ開発などに従事。2018年10月にビジネスデザイン本部にジョインする。


▲大日本印刷株式会社 情報イノベーション事業部 ビジネスデザイン本部 第1部マーケティンググループ 和泉真紀氏

2009年にDNP新卒入社後、商業印刷の事業部でプロモーション周りの商材の営業を担当。各種メーカー、インフラ企業、広告代理店など幅広いクライアントの支援を手がける。2018年10月にビジネスデザイン本部にジョインする。

■共創によって新たな価値の創出を目指す

――昨年10月にビジネスデザイン本部が発足され、この8月にはDNP INNOVATION PORTがオープンされたわけですが、その成り立ちの背景について教えてください。

松嶋氏 : 大きな背景でいうと、ご存知のように、デジタル・ディスラプションともいわれる流れ、つまりグローバルなプラットフォーマーやAIなどの様々なテクノロジーによる現業・既存ビジネスの破壊ともいうべき事態が進行しています。DNPの中核事業である印刷事業も、その影響を強く受けています。

私たちは印刷会社ですが、印刷技術をベースとしてさまざまな分野への事業展開を進めてきました。情報コミュニケーション部門においては出版事業やマーケティング関連事業、情報セキュリティ事業、生活・産業部門においては包装材や床材・壁紙などの生活空間資材、リチウムイオン電池用の部材などの産業資材、エレクトロニクス部門においてはディスプレイ関連製品や電子デバイスなどの製造を手掛けています。

印刷市場の縮小傾向が続いている中で、様々な事業展開は確かに私たちの強みとはなっているのですが、昨今の事業環境の変化のスピードに対して、自社だけで対応していくのは困難になりつつあります。そこで、以前から一部オープンイノベーションを取り入れてはいたのですが、既成概念に捉われず更にその取り組みを加速させて、より社会・生活者のニーズ視点で新しい価値の創造につなげるべく、ビジネスデザイン本部が生まれました。

――ビジネスデザイン本部は、市ヶ谷の本社だけではなく、WeWork Iceberg(神宮前)にも拠点を構えていますね。これにはどのような狙いがあるのでしょうか?

松嶋氏 : 当たり前ですが、ビジネスデザイン本部という組織ができたからといって、弊社の既存技術や既存事業にとらわれない新しい発想が生まれてくるわけではありません。これまであまりお付き合いがなかったスタートアップやグローバルベンチャーの方々とディスカッションしたり、交流したりしながら学んでいく必要があります。そのためには、そういう方々が集まっている場所に拠点を置くべきだろうと考えたためです。

金井氏 : いま松嶋がお話しした点に加えて、私たち自身のマインドセットを変えるためという狙いもありました。本社にいると、どうしても、既存事業からの発想になってしまいがちですし、社内のビジネス慣習にとらわれてしまいがちです。そういう私たち自身を変えるためにも、本社オフィスを出る必要がありました。

和泉氏 : DNPの事業の多くが受託ビジネスなので、いままでやってきた仕事の多くは外部や他社に情報が漏れないように秘匿するということが前提でした。またその取り引きの際にも、社内のビジネス慣習がときに壁となっていました。ここに来てからは、そういったものが必ずしも世の中の常識ではないし、それらがオープンイノベーションとは正反対のベクトルになる可能性があるということも、実感できました。

――ビジネスデザイン本部という新組織が2018年10月にできて、こちら(WeWork Iceberg)には同年12月に入居されたわけですが、そこからは具体的にどんなことを活動してきたのでしょうか。

松嶋氏 : 最初は、私たちがすべきことや方向性を定めるために徹底的に議論しました。そして12月にこちらに入居して、年明けてから4月くらいまでは、海外を含めてとにかく色々なところに出向き、何百社、何百人という人たちに会っていただき、様々なディスカッションや情報集め、ネットワーキングなどをしました。

その後は、それを収束させていくために、WeWorkでのイベント実施や具体的なビジネスミーティングを進め、現在は実際に複数の共創プロジェクトを走らせています。個々のプロジェクトの内容は、まだ公開できないものが多くて申し訳ないのですが、8月からはプレスリリースもどんどん出していく予定です。

■Webサイトをローンチし、“黒子”から“表舞台”へ

――8月にDNP INNOVATION PORTのWebサイトがローンチされました。そのコンテンツは、設定されたテーマに基づいて共創パートナーを募集しているCO-CREATION(CO-CREAION)と、御社のアセットを提供するASSET SUPPORT(ASSET SUPPORT)とに大別されています。よくあるアクセラレータープログラムとは違ったユニークな形ですが、これはどういう意図から生まれたのでしょうか。

松嶋氏 : 基本的に、DNPは得意先の事業を支援する、いわば黒子だったので、イノベーティブな会社というイメージは世間からあまり持たれていないというのが現実だと思っています。ですので、私たちのオープンイノベーションへの取り組み姿勢や考え方を積極的に発信することから始めなければなりません。WeWorkではオフラインの活動としてスタートアップの方々や大企業の新規事業開発の方々との共創は拡がりましたが、それをオンラインでも拡げていく必要がありました。

ほとんどのスタートアップの起業家は、「この製品で世の中をこう変えたい」とか「このサービスでこの社会課題を解決したい」という具合に、やりたいことが明確ですよね。私たちにはその部分が欠けていると感じました。そこで、私たち自身が「これをしたい」という“旗”を立てて、その旗のもとに集まっていただく企業を募るようにしました。その“旗”が、CO-CREATIONで設定しているテーマです。“旗”が明確になれば、求めているアイデアや技術なども明確になります。

和泉氏 : DNP INNOVATION PORTを運営していくうえで、私たちは“生活者や社会ニーズの目線に立つ”ということを最も大事にしています。これまでの様々な事業拡大の中で、ありとあらゆる業界のクライアントとビジネスを展開してきたDNPですが、直面してきた社会課題や生活者視点でのニーズに対して、パートナー企業との共創を通じて本気で解決していくことを目的としています。

生活者の課題は時代に合わせて常に変わっていくので、私たちが対象とするCO-CREATIONのテーマや各プロジェクトの進捗をWebサイト上で随時公開しながら、一緒に解決していただける共創パートナーを募集していきます。

金井氏 : CO-CREATIONが、技術を持った企業からの注目を集めインバウンド方向での共創を目指しているとすれば、DNPが提供できるものをサイト上で明らかにして、「さあ使ってください」というアウトバウンド方向での共創を目指しているのがASSET SUPPORTです。

この機能が生まれたのは、数百社の人たちと話してきた中で、「理想の姿」みたいな部分では私たちと合意できても、そのずっと手前でいま足元のやることが多すぎて、とてもそこにたどりつけない、と思っていらっしゃる企業がかなり多いと感じたためです。

足元でやらなければならないこと。たとえばマーケティングだったり、営業だったり、問い合わせ対応だったり、いわゆる非コア業務ということです。それは、私たちがまさに得意としている部分なので、じゃあ、そのアセットをDNPが提供してお手伝いができれば、お互いにメリットがあるのではないかと考えました。

CO-CREATION機能だけではなく、ASSET SUPPORT機能も持たせていることがDNP INNOVATION PORTの特徴になっていると自負しています。

――CO-CREATIONのテーマには、「アイスの価値観を変えるイノベーション創出」などユニークなものもありますが、どういう経緯でこのテーマが設定されたのでしょうか。

松嶋氏 : シンプルに「アイスっておいしいよね」というところからです(笑)。基本的に、プロジェクトのオーナーは個人であり、私たちの事業部のメンバーが感じている課題とか関心領域から生まれています。そのため、粒度はバラバラですよね。それは先にも述べたように、DNPの既存技術から発想するのではなく、それをいったん無視して、あくまで生活者や社会ニーズの目線で課題や取り組みたいテーマを発掘してきて、そこから私たちの会社でもなにができるかを考えよう、という流れでテーマを組んでいるためです。

本件はスタートアップピッチイベントで、金沢のバイオセラピー研究開発センターの「溶けない!?アイス」を知ったことがきっかけになりました。溶けない!?アイスと、DNPの多様なマーケティング製品・サービス、コンテンツ制作等との掛け合わせにより、誰もが楽しめる新しい体験価値を創出したいと考えています。

和泉氏 : フードロス削減のプロジェクトもありますが、これは今年、私たちがインドネシア出張の際に、環境問題・ゴミ問題・雇用問題など様々な社会課題を強く実感したため、プロジェクト化されたものです。食品パッケージやトレーサビリティの製品を展開するDNPとしては、食べ物のサプライチェーンの中で、小売りや消費の段階で発生しているフードロスを、共創によって削減し、様々な社会課題を解決したいと考えています。

▲DNP INNOVATION PORTのサイト上で、CO-CREATIONのプロジェクトやASSET SUPPORTのリソースは随時更新されていく。

■「BPO」など需要が高いアセットを用意

――ASSET SUPPORTについても、少し詳しい内容を教えていただけますか。

金井氏 : 基本的な考え方としては、スタートアップが事業拡大をしていく上で、経営資源は製品・サービスの開発や改良などのメイン業務に集中したいはずです。そこで、それ以外の部分を私たちのアセットで代行しましょう、ということです。

サイトオープン当初は具体的なメニューとして、プロモーション企画やSPツール、イベント準備などを含む「マーケティングコミュニケーション」、リスクアセスメントや情報セキュリティ対策などを含む「トータルセキュリティ」、バックオフィスや営業代行、テストマーケティングなどを含む「BPO」の3分野を用意しています。

その中でも、営業代行やテストマーケティング、コールセンター業務などは、どこのスタートアップでも必ず必要になるので、需要が高いのではないかと考えています。

和泉氏 : 実際の共創事例を増やしていくことで、私たちも考えていなかったような思わぬアセットの使い方が出てくるかもしれませんし、それを含めたシーン訴求みたいな面も増やしていきたいですね。

その上で、もし、アセットのメニューに追加・削除が必要になればそれは柔軟に対応していきます。あくまでスタート当初のメニューだということであり、DNPがそれだけしか提供できないということではありません。さらに、将来的には共創をしている他社のアセットをDNP INNOVATION PORTで提供することも視野に入れています。

――では最後に、今後どんなパートナーとの共創を進めていきたいとお考えでしょうか。

松嶋氏 : 共創パートナーをスタートアップやベンチャーと言っていますが別に、大企業はダメ、というわけでは全くありません。新しい価値を一緒に創っていきたい、という熱意や強い思いがあるかどうか、がポイントです。その気持ちをお持ちの企業であれば、規模や歴史は関係ないですし、実際、今進んでいるプロジェクトのパートナーには、まだ法人設立前という起業家の方もいれば、大企業の新規事業開発部の方もいます。

金井氏 : CO-CREATIONにしても、ASSET SUPPORTにしても、共創する企業のどちらが上とか下ということはありません。私たちがプロジェクトオーナーだとしても、プロジェクトにおかしいと思うところがあれば、どんどん意見や指摘していただきたい。それでこそ、良いものを一緒に創っていけると信じています。

和泉氏 : 私は、オープンイノベーションや共創自体が目的だとは思っていません。それらはあくまでも手段であって、そこからどんな価値を生むことができるのかが重要ではないでしょうか。そういう想いに共感していただける企業の方々をお待ちしています。

■取材後記

DNPは社名に「印刷」と入っていることもあり、レガシーなイメージで捉えられるかもしれないが、印刷技術を活用して電子デバイス部品などを製造するメーカーの側面や、マーケティング支援に長けたBPO企業の側面も持つ、多角化企業としての歴史も長い。その企業文化があってこそ、DNP INNOVATION PORTは生まれたのであろう。サイトはオープンしたばかりだが、すでに進行中のプロジェクトも多いということで、今後続々に発表されるはずの共創展開が楽しみだ。

(編集:眞田幸剛、取材・文:椎原よしき、撮影:古林洋平)

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  • 田上 知美

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