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「スマートバス停」を活用して未来の街づくりを――西鉄Co+Lab「BUS STOP 3.0」の全貌とは?

「スマートバス停」を活用して未来の街づくりを――西鉄Co+Lab「BUS STOP 3.0」の全貌とは?

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バス停は私たちの暮らしに密着した存在だ。都市部では数百メートルに1つずつという近接さで設置され、ダイヤと路線図等を記したバス停は、駅よりも、港よりも、飛行場よりも、ずっと私たちの生活の身近にある。

西日本鉄道株式会社の「スマートバス停」は、しかしこうした従来のバス停とは一線を画している。液晶パネルや電子ペーパーを使って、時刻表、系統図、運賃表をはじめ、バス近接情報や災害時の緊急案内までリアルタイムに発信する。現在、北九州市で8基を試験運用中だ。

今回、オープンイノベーションプログラムの西鉄Co+Labでは「BUS STOP 3.0」と題し、この「スマートバス停」を活用した新たなビジネスのための共創パートナーの募集をスタートさせた(9/20応募締切)。本プログラムでは、以下のような3つのテーマが設定されている。

①バス停を起点にして沿線の暮らしをアップデート

②主要道路約300メートル毎に設置されているバス停から広がる、未来の街づくり

③スマートバス停の機能や取得可能なデータを活用したサービス

1908年に創業した西日本鉄道は福岡に地盤を置き、地域に根差した事業を展開している。西日本鉄道のオープンイノベーションは地方都市の社会課題を解決するべく始められたものだ。福岡の課題は、日本のほかの地域の課題とも共通するところが多い。その解決の過程で得たノウハウをほかの地域に展開すれば、ビッグビジネスとなる可能性がある。

――プログラム実施にあたり、担当役員である藤田氏と清水氏に地方都市・福岡の現在と今後、「BUS STOP 3.0」に着手した背景や方向性、その想いについて伺った。

【写真左】 西日本鉄道株式会社 上席執行役員 事業創造本部長 藤田浩展氏

1984年より銀行に勤め、2013年に西日本鉄道入社。経営企画、新規事業、観光・レジャー事業等の部長、担当役員を経て現職。観光、ICカード、新規事業など新領域の各事業を管掌している。趣味は、ゴルフ。

【写真右】 西日本鉄道株式会社 取締役 常務執行役員 自動車事業本部長 清水信彦氏

1982年入社。入社後はバス部門に10年従事した後、東京事務所で総務、広報などを経験後、再びバス部門に配属。その後、都市開発部門で商業施設やオフィスビルの運営や再開発を手掛ける。2018年より現職となり、バス事業を管掌。趣味は、出張を利用した街歩き。

新しい価値を生み出す「スマートバス停」

――基本理念に「地域とともに歩み、ともに発展します。」という一文があるように、西日本鉄道は福岡を拠点に地域に根差した活動を続けてきました。今回実施するプログラムにおいても「未来の街づくり」が一つの大きなテーマになっています。プログラム詳細をお聞きする前段として、西日本鉄道の役員である藤田さんに、2020年以降の福岡の暮らしがどう変化していくかについてお聞きしたいと思います。

藤田氏 : 福岡市は地方都市の中で元気のある都市と言われており、人口統計予想でも福岡都市圏は2035年まで人口が増加するとされています。また、2020年以降も大規模なスポーツ大会や学会が予定されているほか、私たちが関わる旧大名小跡地活用事業をはじめ天神地区や博多地区などで大型再開発プロジェクトが進められており、ますます活気が出てくるでしょう。また、Sクラスホテルの開業や、福岡空港の滑走路増設、地下鉄の延伸など観光機能も強化されるため、観光客やインバウンドの皆さまにも多くお越しいただけるものと期待しています。

ビジネス面でも、福岡市や北九州市は国家戦略特区であり、スタートアップ企業の支援や先端技術の社会実装に積極的に取り組まれています。福岡の企業が世界に、世界の企業が福岡に進出するという状況が実現するとともに、より便利で暮らしやすい都市になっていくと考えています。

――なるほど。

藤田氏 : 一方、福岡県全体で見ると、人口が減少するエリアも出てきますが、ビジネスの力で活性化していくと見ています。例えば、福岡県東部の筑豊地区は自動車産業の立地が進み、幹線道路も整備され、ベンチャー企業や研究機関の集積が図られています。

「スマートバス停」を導入した北九州市は、元々工業都市であり、技術があります。かつての工業都市から環境都市へと変化を遂げており、ハイテク技術や水道システムをアジアに輸出しています。県内各地がそれぞれ特徴を生かし、刺激しあうことで、福岡全体として活気あるエリアになるのではと考えています。

――そのような福岡の未来像の中で、今回のプログラムでは「BUS STOP 3.0」を大きく打ち出されています。その核となる「スマートバス停」について教えてください。

清水氏 : 「スマートバス停」は、従来のバス停のイメージからはかけ離れた存在であり、IoTなど新しい技術ができたからこそ可能になりました。特徴は2つあって、1つはお客さまの利便性向上です。

停留所には、路線図などが細かい字でたくさん書かれていますが、それを液晶パネルや電子ペーパーにすると、見たいところだけ大きく表示できるし、バス停の面を回転させて、色々な情報を提供できます。将来は、お客さまが自由に拡大することもできるようになるかもしれません。

もう1つは働き方改革の可能性です。バス停は、ダイヤ改正があると時刻表を張り替えなければなりません。実はその作業、社員が夜中に残業してやっているんです。私も入社した頃、夜中に駆り出されてやっていたので、本当に大変だということは身に染みてわかっています。しかし「スマートバス停」があれば、遠隔地からボタンを押すだけで一斉に時刻表を変えることができます。「スマートバス停」の普及が進めば、当社の働き方改革実現に結びつきます。

――確かにそうですね。

清水氏 : ただ「スマートバス停」は設置や維持のコスト高いことが普及にむけた課題です。「スマートバス停」を活用し、周辺事業で収益が出れば、もっとたくさん設置でき、その相乗効果でビジネスも拡大していくでしょう。色々な可能性を秘めています。バス停は、北九州地区で約2,000、西鉄グループで約12,000と数が非常に多いので、成功すればビッグビジネスになるはずです。

――ただ、自社で考えようとすると固定観念ができあがっているので、なかなかいいアイデアが出てきません。例えば、スタートアップの起業家なら、私たちにはないまったく違う発想で、アイデアを出してくれるのではないかと大変期待しています。

蓄積したデータと地場ネットワークによる生活に密着した事業を

――西日本鉄道さんがオープンイノベーションプログラムに取り組むのは今回で3回目。過去にはプログラムを通じて9社との共創プロジェクトに着手していたり、大企業と連携して新規事業に挑戦されていたりと、“他社との連携”に長けているイメージがあります。

清水氏 : そうですね。当社グループにない技術やリソースを持っている方々との業務提携は積極的に進めています。例えば福岡市東区アイランドシティ地区では、三菱商事様とカナダのスタートアップ企業スペアラボ様と連携し、AI活用型オンデマンドバスの試験運行を開始しました。トヨタ自動車様とは福岡市で「my route」というマルチモーダルモビリティサービスを行いました。いわゆるMaaSのサービスです。 

一方で、ソフトバンクグループのSBドライブ様とはAIを活用したバス内の事故防止サービスを開始しました。これは監視カメラの画像データを活用し、乗車中のお客さまの危険を回避するなどのサービスです。さらに日立製作所様とは、交通データを活用した次世代バス事業を行っています。統計データを使って最適ダイヤを作成し、深刻な運転手不足という社会課題を解決するためのものです。

当社は100年以上の歴史があり、路線のネットワークやインフラを持っています。提携企業にとっては、自分たちの持っている技術を実験したり、実際にビジネスを行うためのフィールドにできると感じていただいているのだと思います。

――「BUS STOP 3.0」は、オープンイノベーションを考えるベンチャーに対し、どのようなメリットを提供できるのでしょうか?

清水氏 : 「スマートバス停」自体はもちろんのこと、そこに蓄積されたデータや取得可能なデータと、西鉄グループが持つネットワークを活用できます。その他、行政との連携や、安川電機様の関連会社であるYE DIGITAL様からの技術支援もあります。お客様の生活に非常に密着したものを、目に見える形で表現できる事業になるので、やりがいのある事業となるのではないでしょうか。

西日本鉄道は福岡が拠点ですが、バス事業会社として全国展開しており、南は九州から北海道までお付き合いがあり、これらのネットワークを通じてサービスを営業することで、いろいろな広がりが見込めます。実際に、「スマートバス停」の実証実験は北九州市以外に盛岡市と金沢市で行っています。昨年福岡で開催されたアジア太平洋ITSフォーラムで、この「スマートバス停」を出展したことをきっかけに、お声がけいただき始まりました。

――「スマートバス停」は福岡だけではなく、いろいろな地域にも広がっていきそうですね。

清水氏 : はい。北九州を皮切りに、まず福岡県全域に広げていきたいですね。既に他県の同業他社を始め、異業種の方からも関心の声を多数いただいているので、期待しています。

▲「スマートバス停」は西鉄グループの西鉄エム・テックと安川電機の関連会社であるYE DIGITAL社が共同開発し、西鉄バス北九州管内で2018年から試験運用している。

※現在の機能…電源供給、LTE通信、動画表示、静止画表示、温度センシング

※拡張可能な機能(一例)…Beacon、IoTセンサー、カメラ、ICカードリーダー など

北九州から日本中の社会インフラを変えるビジネスを考える

――今回、共創パートナーと一緒にプロジェクトを進めていく上で、注力していることはありますか。

清水氏 : バス部門、新規事業部門が本プログラムにコミットし、共創パートナーを強く求めています。このコミットメントをもってスピード感を出して取り組むよう心がけています。素晴らしいご提案については事業化に向けて突き進んでいくつもりです。

藤田氏 : 今回の募集テーマである「スマートバス停を活用した新たなビジネス」を求め、実際に「スマートバス停」を運営している西鉄バス北九州や西鉄エム・テック、YE DIGITALの担当者も、プログラム運営や選考に主体的に関わります。事業化にあたっては実際にオペレーションしている担当者と地に足のついた議論をしながらサービスを創っていただけると考えています。

――共創パートナーには、どのような技術を求めていますか。

藤田氏 : どちらかというと、求めているのは技術というより発想ですね。高度な技術でなくても、「バス停をこんな風にしたら面白い」というビジネスプランであれば大歓迎です。私たちの想像力を超えた発想を求めています。

――社内でも「スマートバス停」について、何かビジネスプランは出てきましたか。

清水氏 : 都市部ではバス停を300メートル圏内で設置しているので、狭い範囲で起こるゲリラ豪雨の情報提供に使えるのではないかという案は出ました。ただ、関係機関に話を持って行くと、ハードルは高いと……。さらに、町内会の掲示板にするという案も出ましたね(笑)。――やはり、色々と考えてみるものの、斬新で実用的なアイデアはなかなか出てきません。私たちの固定概念を崩すようなビジネスプランに期待しています。

――それでは最後に、今回のプログラム参加希望者にメッセージをお願いします。

藤田氏 : 「スマートバス停」は北九州市で試験運用中ですが、バス停は全国に約52万ある社会インフラで、皆さまと共創するビジネスは日本中に広げていける可能性があります。私たちの持っていない発想をもって、社会インフラを変え、地域の暮らしを豊かにしたいという志のある方々と一緒に新たなビジネスを始めたいです。

清水氏 : 当社グループはさまざまなインフラを保有しており、「スマートバス停」以外にも、バス車両やバスの通信機能、交通系ICカード「nimoca」など、連携が考えられる良いフィールドがあるので、斬新な発想で自由に使っていただき、一緒にサービスを開発してくださることを期待しています。ぜひ本プログラムにご参加ください。

▲藤田氏・清水氏という役員2名と共に、テーマオーナー3社(西鉄バス北九州、西鉄エム・テック、YE DIGITAL)や新規事業推進部のメンバーがプログラムを主導。共創パートナーとの円滑な連携を進めていく。

取材後記

「私たちが思いもつかないビジネスを考え出してほしい」という言葉が担当役員の藤田氏、清水氏の口から交互に出てきたのが印象的だった。福岡の生活者の移動や暮らしを長年支えてきた西日本鉄道だが、その事業のあり様を自前で変えていくことの難しさを感じるとともに、変革への強い意志が伝わってきた。バス停を「バスが停まる場所」とみるか、「全国に52万ある移動や暮らしの拠点」とみるか――今回のプログラムでは、固定観念に縛られない発想が求められている。

また、西日本鉄道はトヨタ自動車やSBドライブなどと、ICTの最先端技術を使った先進的な試みを次々行っている。しかもその多くが、先方からの提案で始まったという。それは西日本鉄道の持つインフラが魅力的であることに加え、積極的にオープンイノベーションを進める同社の姿勢があるからこそだろう。「スマートバス停」というユニークなアセットを活用しながら、新しい価値を実証するフィールドを求めている企業やチームにとっては、またとないチャンスとなるに違いない。

【オープンイノベーションプログラム 西鉄Co+Lab】 

「BUS STOP 3.0~夢を描く未来のバス停を創ろう~」

●募集テーマ : スマートバス停を活用した新たなビジネス

●応募締切 : 9月20日(金)

●応募方法 : 特設サイトの応募フォームに必要事項をご記入ください。

(編集・取材:眞田幸剛、文:菅葉奈、撮影:加藤武俊)

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