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DNP×アルファドライブ | 共創による新サービスをローンチ ――両社の強みが最大化した、その誕生の裏側に迫る

DNP×アルファドライブ | 共創による新サービスをローンチ ――両社の強みが最大化した、その誕生の裏側に迫る

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既成概念にとらわれないオープンイノベーションによって新規事業を生み出すという新しい取り組み『DNP INNOVATION PORT』を2019年8月にスタートさせた大日本印刷株式会社(以下、DNP)。このスタートに合わせて発表されたのが、「URERUCA」(ウレルカ)というサービスだ。

新規事業開発に特化した支援を手がける株式会社アルファドライブ(以下、アルファドライブ)とのオープンイノベーションによって誕生したURERUCAは、企業内での新規事業立ち上げや新規プロダクト開発に際しての販売やマーケティングを支援するサービス。

同サービスは、アルファドライブがおこなってきた新規事業開発支援のノウハウと、全国に販売網を保有し多種多様な製品・サービスを提供してきた大企業・DNPが長年培ってきた訪問・電話・DMといったアナログからSEM・アフィリエイトといったデジタルまで総合的な営業・販売力を掛け合わせたもので、ターゲットとなる企業内の新規事業開発部門にとっては、待ちに待ったサービスともいえる内容だ。ありそうでなかった画期的なマーケティング&セールス支援サービスであるURERUCAには、すでに大小さまざまな企業から多くのニーズが寄せられているという。

今回は、まさにオープンイノベーションによって誕生したURERUCAの企画・開発に携わりDNP INNOVATION PORTを担当している松嶋氏・金井氏と、アルファドライブの麻生氏・白杉氏が一堂に会し、URERUCAが生まれた背景、開発意図、共創のプロセスなどについておうかがいした。

<写真左→右>

■株式会社アルファドライブ 白杉大 氏

■株式会社アルファドライブ 代表取締役社長 兼 CEO ファウンダー 麻生要一 氏

■大日本印刷株式会社 情報イノベーション事業部 ビジネスデザイン本部 第1部マーケティンググループ リーダー 松嶋亮平 氏

■大日本印刷株式会社 情報イノベーション事業部 ビジネスデザイン本部 第1部マーケティンググループ 金井剛史 氏

プロダクト初期段階の「いったん広く売る」を実現

――DNPさんとアルファドライブさんの共創により生まれた新サービス「URERUCA」が、この8月にローンチされました。まずURERUCAがどんなサービスなのかを教えてください。

DNP・金井氏 : URERUCAは、アルファドライブさんの新規事業開発支援のノウハウと、DNPの全国販売網をベースとしたマーケティング・セールス支援機能を掛け合わせて提供するマーケティング&セールス支援サービスです。主に企業内の新規事業開発部門や新規事業プロジェクトを対象としており、新規事業の立ち上げ時、拡大初期段階に特化しています。

――そのようなサービスを創ろうという発案は、どこから生まれたのですか。

アルファドライブ・麻生氏 : 私たちアルファドライブでは、企業内の新規事業開発の支援をずっとやらせてもらってきましたが、支援先の企業が初期のプロダクトをリリースする段階の、営業で苦戦するという話をよく聞いていました。

事業化を決定する前の実証実験の段階では、一人ひとり、一社一社の顧客に深く入っているので、インサイトはできているし、深く売りにいくこともできています。そこで、次のリリースするタイミングでは「いったん広く売ってみたい」となります。そして、どれくらい売れたとか、思ったより売れなかったといったデータを、プロダクトにフィードバックすることで、より短期間で事業開発ができるはずです。しかし、その「いったん広く売る」という手段が意外となくて、手詰まりになることがよくあります。

――なるほど。

アルファドライブ・麻生氏 : 大企業であっても、経営の意志決定として、売れるかどうかわからないものに、営業のリソースを大きく割くことは難しい。しかし、プロダクトが本当に大きく売れる可能性があるのか、あるいはどういうチャネルや売り方で売ればいいのかは、本気で売ってみないとわからないという面があります。――そこで、ニワトリが先かタマゴが先かみたいな話になってしまうわけです。

アルファドライブで小規模なテストマーケティングのお手伝いをすることもありますが、私たちだけで全国で一斉発売をして売ってみるといったことは無理でした。そこで、DNPさんのセールス力を掛け合わせることで、その段階のマーケティングや販売を効率よく実施し、結果として短期間での事業開発を可能にするサービスを共創しました。URERUCAというサービス名は、どうしたら「売れるか?」を検証し、「売れる化」を実現するというサービス内容を表しています。

DNP・松嶋氏 : 私たち(DNP INNOVATION PART)が主にターゲットとしているスタートアップやベンチャーでも似たような話はあって、本来は事業を動かしたり開発をしなければならない人が、リソースが足りないために営業や電話対応などをしていたりする。「注力しなければならないところは、そこではないのに…」と感じることがよくあります。結果として長期間を要して遠回りしてしまう。どんな企業にもこのような課題が多くあると感じています。

アルファドライブ・白杉氏 : プロダクトが、たとえばスマホアプリなど、ネット広告を打ってダウンロードをさせれば済むものであれば、こういうサービスの必要性は低いかもしれません。しかし実際のところ、多くのプロダクトでは“地上戦”が必要になります。そのときに、DNPさんのような地上戦の豊富な経験とノウハウを持つ営業・販売の部隊が使えて、全国展開にも対応してくれるサービスというのは、これまでありませんでした。そうした点をふまえると、URERUCAは非常に画期的なサービスになっていると思います。

出会いからおよそ2ヶ月で、サービスを世の中に

――ローンチして間もないですが、URERUCAに対してクライアントさんの反応はいかがでしょうか?

アルファドライブ・麻生氏 : URERUCAの話をしたときにクライアントの興味を引かないことは、まずありません。「そういうの、まさに待っていたよ」という好意的な反応を、業種や業界を問わず広く得ています。

DNP・金井氏 : 7月ごろ、サービスの最終的な詰めをしている段階で、麻生さんから「あちこちにもう声を掛けていますが、けっこう盛り上がっているんですよ」と聞かされて、嬉しい驚きがありました。最初に麻生さんにお会いしたのが今年(2019年)5月で、そこまで2か月強でしたから、そのスピード感にも驚きましたね(笑)。

――まさにオープンイノベーションならではのスピード感ですが、そもそも両社はどういう経緯で共創をすることになったのでしょうか?

アルファドライブ・麻生氏 : 私たちの新規事業の開発支援において、1社だけでできることは当然ながら限られているので、一緒になって、新規事業開発のサービスや取り組みに協力してくださる連携パートナーを常に探しています。――その流れの中で、たまたまDNPさんを紹介してくださる方がいらして、共創のきっかけを作ってくださいました。

DNP・金井氏 : 正直に言えば、私は、アルファドライブさんがそのような事業を手がけている企業だということを、そのときは知りませんでした。しかし、お会いしてお話をうかがってみたところ、「なにそれ!超面白そう!」とピンときて、その日のうちに「なにか一緒にやりましょう」と話が進みました。

▲アルファドライブが担当したURERUCAのサービスロゴ。サービス名やロゴなどのクリエイティブも1日で決定するなど、アルファドライブの意思決定の迅速さに圧倒されたという。

――アルファドライブさんのほうでは、DNPさんにお会いする前に持たれていたイメージは、どんな感じだったのですか。

アルファドライブ・麻生氏 : 最初はやっぱり、“印刷会社”ですよね。もちろん、印刷に関連するSPツールだとかマーケティング関連の事業もなさっているとは思っていましたが、あくまで「印刷が中心で、その関連事業もしている会社」というイメージでした。――手広くさまざまな商材を扱っているとは知らなかったので、聞けば聞くほど「この会社は、なんでも、どこにでも売れるんだ」と思って、びっくりしましたね。

一番印象的だったのが、色鉛筆を売っているという話で。百何十色の色鉛筆のセットを分冊百科みたいな形で売っていると聞いて、ホントになんでも売っているんだなと(笑)。

DNP・金井氏 : 私たちのマーケティング・セールス支援の販売部隊は、基本的にどんな商材でもお断りすることはありません。もちろん、中にはあまり売れない商材もあるのですが、その場合でも、「こういうチャネルでこういう売り方をしたけれども、売れなかった」という事実が、データとしてお客様の役に立ちます。

URERUCAを担当する営業チームも当然レポーティングをしますが、そのレポーティングデータを分析する中から、逆にこちら側からの新しい提案、たとえば、より事業の上流での打ち手の提案なども、将来的にはできる可能性があると感じています。

アルファドライブ・白杉氏 : DNPさんの販売レポートを拝見させてもらったのですが、チャネルごとの売れ行きだけじゃなくて、「たとえばこのチャネルにはこういうキャンペーンが有効だ」とか、「こういうオファーをするよりも、こういうトークのほうが成約率が高い」など、PDCAを回しての手法の検証結果も標準で報告されてきます。単なる販売やチャネル開拓ではないところが、新鮮な驚きでした。

アルファドライブ・麻生氏 : URERUCAの受注単価は、最低500万円から上限で2000万円くらいまでと考えています。「小さくテストマーケティングをしたい」というクライアントには、ちょっと高く思われるかも知れません。でも、仮に業務委託で、専従1人を張り付かせて1年間動いてもらったら、すぐ1000万円くらいかかりますよね。あるいは社内でまかなうにしても、正社員を1人動かしてくれば相当なコストです。それを思えば、むしろ安いのではないかと考えています。

多様な業界でデータを蓄積し、サービスを強化させていく

――DNPという大企業の中で、このようなベンチャーとの共創によるサービス開発は、社内的にどう受け止められているのでしょうか。

DNP・松嶋氏 : マーケティング・セールス支援サービスは、外部に提供できる価値の高いアセットとして社内でも認識されており、DNP INNOVATION PORTでのアセット提供メニューにも挙げています。それを、アルファドライブさんとともに新規開発事業部門向けに展開することは、シナジーの点からも非常に面白いと思われています。また、その私たちの強みを瞬時に見抜いていただけたことが本当に嬉しいですね。上司や経営層も「アルファドライブさんの理解力・見抜く力がすごい!」と驚嘆しています。

DNP・金井氏 : 経営層の反応でいうと、「URERUCA」というネーミングを含めたブランド作りが非常にロジカルでセンスもあり、感心していましたね。

また、私たちの事業部で感じているメリットや効果もあります。私たちの事業部は共創事業の創出を目的として、昨年10月に発足し、以後、大企業の新規事業部、スタートアップ企業含めて、多くの方々にお会いしてきました。しかし、そう簡単に共創プロジェクトは進みません。その大きな理由は、たぶん私たちの中で、新規事業で大切な“ツボ”みたいなものを、よく理解できていなかったからだと思います。アルファドライブさんに噛んでもらうことで、いきなりツボを突くことができるようになったのは本当にありがたいことです。

アルファドライブ・麻生氏 : URERUCAは、単純化してしまえば営業代行なのですが、対象にしたいフェーズが、単に売るフェーズではなくて、売ることを通して事業開発をしなければならないフェーズなので、全体を通して難易度が高いのです。

全体設計とか、上がってきたヒアリング結果をどうやって事業開発、プロダクト開発にフィードバックするかも考えなければなりません。単純にセールス力がある営業マンに売ってきてもらって、「売れてよかったですね」で、おしまいではないのです。そのあたりをきちんと取り組むことが、今回のサービスのポイントであり、弊社とDNPさんとのシナジー効果があるからこそできる部分なのかと感じています。私たちにとっても、DNPさんと組めたメリットは大きいですね。

――最後に、URERUCAの目標や今後の展開のご予定がありましたら教えてください。

アルファドライブ・麻生氏 : まずは1社でも多くの会社に導入してもらうことです。そして、さまざまな業種業態、新商材での販売実績データを貯めていきたいですね。すると、こういう商材ならこういう売り方が有効だというナレッジが蓄積されていきます。そこから、さらにサービスが強くなります。

そうなれば、先ほど金井さんからも少しお話が出ていましたが、マーケティングや販売だけではなく、より上流のプロダクト開発や事業開発段階への提案も可能になるでしょう。そして、最終的にはクライアント企業と、アルファドライブ、DNPさんを交えた共同事業の立ち上げというところまでいければと思います。

DNP・金井氏 : DNPでも、大企業の新規事業部門との共創は、これまでも取り組んできましたが、連携する企業の規模が大きくなるとどうしても自前主義になりがちだったりするので、なかなかうまくいかないことも多かったです。そこにアルファドライブさんが入り、URERUCAをいわばハブにすることで、新規事業と新規事業、企業と企業の共創の掛け算が進むのではないかと期待しています。

取材後記

 この8月に立ち上げた『DNP INNOVATION PORT』で、スタートアップへのマーケティング・セールス支援サービスをメニューに掲げるDNPと、大企業の新規事業開発の支援に強みを持つアルファドライブ。DNPの総合力とアルファドライブの革新性とのシナジーから生まれたURERUCAは、単なる販売支援サービスにとどまらず、共同事業開発のドライブとなる可能性までを見据えている。今後、導入企業が増え、データが蓄積されるにつれて、サービスもさらに強化されていくだろう。両者のオープンイノベーションによって誕生した新サービスがどのようにスケールしていくのか。今後の展開に目が離せない。

(編集:眞田幸剛、取材・文:椎原よしき、撮影:古林洋平)

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