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データ・ドリブン経営へのシフトで1000兆円の経済効果ーVUCA時代を勝ち抜くデータ活用と組織変革とは?

データ・ドリブン経営へのシフトで1000兆円の経済効果ーVUCA時代を勝ち抜くデータ活用と組織変革とは?

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急速に発展するテクノロジー、目まぐるしく変わる経済環境、多様化する顧客ニーズ――いま、想像をゆうに超えるビジネスや産業の変化が起こる「予測不能」な時代に突入している。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとって「VUCA」とも表現される将来予測がしにくい時代の中、企業はどのように事業・組織変革をすべきか。必要な視点は何か。勝ち抜く企業は、どこが違うのだろうか。

9月25日、「『INNOVATION SHIFT』予測不能な時代を勝ち抜く事業の創り方をテーマにしたイベントが開催された。主催企業は、ストックマーク株式会社。自然言語処理に特化したAl技術を活用したサービスを展開し、大手企業の変革を支援するAIスタートアップだ。そしてセブン銀行、Sansan、xenodata lab.、ユーザベースといった注目企業が登壇。会場となった東京・大手町の「SPACES」は、超満員となった。

まずは、ストックマーク代表取締役CEO林氏が、「価値創造をシフトし、勝ち抜く事業と組織の創り方」と題した基調講演を行った。続いて、セブン銀行 専務執行役員 松橋 正明氏が登壇し、次々とユニークなサービスを生み出す同社の事業や組織風土の創り方について話した。

続いて、名刺管理のSansan株式会社、企業分析・業界分析の『SPEEDA』を展開する株式会社ユーザベース、ニュースを解析して株価予測などを行う株式会社xenodata lab.、そしてストックマークの4社が、「勝ち残る企業」についてセッションを行った。

「価値創造をシフトし、勝ち抜く事業と組織の創り方」とは?――ストックマーク・林氏

まず登壇したのは、ストックマーク代表取締役CEO 林氏。データをいかにビジネスに活かしていくかは、企業にとって喫緊の課題だ。マッキンゼーが発表したレポートによれば、データドリブン経営によって、グローバルで1000兆円以上の経済効果がある」という。また、フロントランナーは3倍の利益成長ができるが、遅れを取るとキャッシュフローが20%減少するという試算が出ている。

林氏はこうした調査結果を紹介しながら、「データを使ってビジネスをやっていくことには、総論賛成。ただし、それを何のために使うのかは、しっかり考える必要がある」と話した。

▲ストックマーク株式会社 代表取締役CEO 林 達 氏

●「株主第一主義」から、「顧客第一主義」へ

課題となるのは、「データを使ったビジネスを行う時、その価値を誰に提供するのか?」ということだ。現在の企業の意思決定は、「株主第一主義」。株主には売上やサービスの利用率が評価されるため、意思決定者もそうした構造化された定量データを見ている。

しかし、企業がデータを使って勝ち残るには、「株主第一主義」から脱却し「顧客第一主義」へのシフトが必要だと、林氏は強調する。それを実践したのがAmazonだ。さらに2019年8月、アメリカの経済団体「ビジネス・ラウンドテーブル」は、株主第一主義を見直すことを宣言した。世界が、脱・株主第一主義に向かっている。林氏は、「売上などの定量データではなく、お客様の声や行動データなど、非構造の定性データに目を向け、そこから得られる情報に向き合う。それが、これからの日本企業に求められる」と述べた。

●「ヒエラルキー組織」から、「アジャイル組織」へ

「顧客第一主義」にシフトしていくには、組織も変えていかねばならない。「今までの『ヒエラルキー組織』ではスピードが遅い。これからは顧客とプロダクトに向き合う小規模のチーム主体で動く『アジャイル組織』への転換が必要」だと、林氏は続けて提言する。

今の組織では、顧客データも分断されていることも課題だ。研究開発、セールス、マーケティングといった組織がそれぞれ顧客接点ごとにデータを持っているが、組織がサイロ化されているため横串で使えない。それを、「顧客を中心としてデータを統合し、社内全体で使えるようにしていく」ことが、必要だという。

一方で、「データを使うだけでは不十分」だと林氏は語る。AIが行うデータ解析は、まだ人間の暗黙知も含めた意思決定にはかなわないからだ。そのため、「社内にデータが出てきた時に、人間がインサイトを加える」ことが重要だ。そのデータが自分たちの組織やビジネスに対してどんなインパクトがあるのか、それを解釈して、正しく伝えていくことの必要性を、林氏は訴えた。

●アジャイル経営時代を生き抜くための三種の神器

続いて林氏は、「自律化」「組織変革」「新価値創造」が、企業進化におけるキーワードだとし、それを実現するストックマークの情報共有サービス「Anews(エーニュース)」、営業戦略支援サービス「Asales(エーセールス)」、戦略的意思決定を強力にサポートする「Astrategy(エーストラテジー)」について、具体的な顧客事例を交えながら紹介した。

しかしながら、全社でイノベーションを生み出すのには時間が掛かる。「本気でやると、3~5年はかかる。リスク許容度や感度の高い部門や人を巻き込み、仲間を増やしていくことがおすすめ。早く始めるに越したことはない」と、林氏は提案した。そして、「ストックマークは自然言語処理を得意としている。みなさんがまだ活用できていない、組織に死蔵されているテキストデータを活用して、進化をサポートしていきたい」と決意を述べた。

「セブン銀行の事例から紐解く、時代のニーズを捉える価値創造」――セブン銀行・松橋氏

続いてセブン銀行専務執行役員 松橋氏が、金融業界でイノベーションを続ける同社の事業の創り方、組織カルチャーについて講演を行った。

従来の銀行とは異なり、ATMサービス事業を中心としている同社。海外送金サービスやバリアフリー対応など、社会課題にアプローチすることでユニークなサービスを生み出している。松橋氏は、「我々はTechベンチャーだと考えている。大企業にはなりたくない。お客様の立場で課題を見出し、その解決のために必要なテクノロジーを探し、新たなサービスを生み出す。これを止まることなく、スピード感を持ってやっていく」と、同社のスタンスについて語った。

▲株式会社セブン銀行 専務執行役員 松橋 正明 氏 

●セブン銀行の事業の創り方

では、具体的にセブン銀行ではどのように事業を創っているのか。大きな特徴が、スタートアップとの共創である。「あらゆる産業は、再構成される。新規事業の創り方は今まで通りにいかない」という考えのもと、同社は2016年にアクセラレータプログラムを開始。現在はプログラムという形式はとらず、恒常的な共創を進めているという。

代表的なものは、ドレミング社との共創だ。セブン銀行の「リアルタイム振込機能」を活用して、ドレミングが「即払い給与サービス」を提供する。この共創は、従来の月末締め・翌月払いの常識を壊す新しいサービスとして話題となった。

現在この「リアルタイム振込機能」は、様々なスタートアップの前払い・後払いサービスと提携しているという。さらに直近では、オンラインの外国人ビザ申請支援サービスone visaと提携し、特定技能枠で来日する外国人向けに、来日直後の銀行口座開設ができるサービスを提供している。

▲セブン銀行はスタートアップ各社とのオープンイノベーションを積極的に推進し、サービス実装している。

こうしたスピーディーかつユニークなサービス展開ができる要因は、「まずは有志で突っ走る」ことだと松橋氏は言う。「他社さんは、まずイノベーション組織を創ってから活動をはじめますが、我々はまず有志でスタートして、うまくいったら組織にする。ホラクラシーな組織体制で運営しています」。

▲上記のように、異なるスキルと価値観を持った複数のメンバーが、境界・形を定めずに働いている。

●セブン銀行の組織カルチャー

続けて松橋氏は、「オープンイノベーションにおいて必要なのは、人材やカルチャーを変化させること。従来のやり方では、新しいことは早く決断できない」と、ユニークな事業を次々と生み出すセブン銀行の組織風土について紹介した。

社員の意識を変えるために、社員向けのセミナーも開催しているという。「ニュースを通して世の中の動きを知ることも大切だが、実際に新たなビジネスを手掛けている人たちの話を直接聞くことから刺激を受けることも重要だと考えている」と、松橋氏は話す。また、組織の変化を促進するためにも、自分自身の変革にも取り組んでいるという。内にこもらず外に出て、知のネットワークを拡張させている。

そして、世の中の変化を効率よく知り、浸透させていくために、ストックマークのサービス「Anews」を活用しているという。「我々だけで議論をしても、同じ価値観でまとまってしまう。そこで、社長も巻き込み、さらには社外のスタートアップやVCにも入ってもらって、知見を高めている」と、松橋氏は啓蒙と巻き込みの重要性を語った。

そして最後に松橋氏は、「これからデータビジネス、外国人ビジネス、AI活用をどんどん進めていく。まだまだ発展途上だが、もがきながら当社らしいサービスを生み出していきたい」と締めくくった。

「勝ち残る企業の力」とは?――注目スタートアップ4社によるトークセッション

続いて、Sansan、xenodata lab.、ユーザベースと主催者であるストックマークを含めたスタートアップ4社によるトークセッションが行われた。

Sansanは、法人向け名刺管理サービス『Sansan』と、個人向け名刺アプリ『Eight』を提供している。xenodata lab.は、世界の経済動向をAIで可視化する『xeno BRAIN』を6月にリリースしたばかりだ。

そしてユーザベースは、企業・業界情報プラットフォームサービス『SPEEDA』や、ソーシャル経済メディア『NewsPicks』を運営している。

●セッションテーマ1:予測不能な現代のビジネス環境に適応し、勝ち残る企業の共通点は?

上記のテーマに基づき、スタートアップ各社の具体的なエピソードはもちろん、様々な企業にサービスを提供する中で感じていることを、それぞれ聞いた。

Sansan加藤氏は、「あまり遠くを見すぎることなく、近距離の課題を見据えること」だと語った。「法人向けの『Sansan』がスタートした2007 年以降、スマホが急速に普及してビジネス環境は変化した。だからこそ、過去の成功体験を捨て、ゼロベースで『今の時代に合う名刺管理のソリューションは何か』を社内で議論した」という。その結果生まれたのが個人向けの『Eight』だ。

▲Sansan株式会社 執行役員 Sansan事業部 営業部長 加藤 容輔 氏

続いてxenodata lab.関氏は、「最新技術で『将来を予測する』ことにワクワクして、そのために実績を積んで、挑戦権を得ることができた。ワクワクすることに向けて突き進んでいくことが大事」だと語った。

▲株式会社xenodata lab. 代表取締役社長 関 洋二郎 氏

2008年に創業し、マザーズ上場も果たしたユーザベースは、まさに予測不能なビジネス環境に適応している。山本氏はその勝因について、「徹底した理念経営」だと分析する。「ビジネスモデルやサービスは他からベストプラクティスを取り入れることができるが、理念が浸透しきった組織風土は容易に真似できず、ずっと差別化要因として残る」という。

▲株式会社ユーザベース SPEEDAセールスチーム ゼネラルマネージャー 山本 傑 氏

ストックマーク林氏は、様々な企業を支援する中で、勝ち残っている企業には3つの共通点があることに気付いたという。

1つ目は、「無理に予測しない」こと。人知を超える進化が起こる中で予測することにとらわれず、「アジリティを持って変化に対応していくこと」を重視する。2つ目は、「便利なものを作らない」こと。既存の「便利」という価値観の延長上で新しいことをしようとすると、結局は既製品のアップグレードに終わってしまう。「たとえば200年前、世の中の人のニーズは、『もっと早い馬車が欲しい』だった。しかしヘンリー・フォードはその時、クルマを作った」と、林氏は事例を挙げながら、「本当のイノベーションは、既存の価値観を超えるところにある」と話した。

そして3つ目は、「自分でやらない」こと。大企業が自社だけでイノベーションを起こすことは難しい。外部リソースやスタートアップなどを巻き込んで変革を起こすことの重要性を語った。

●セッションテーマ2:「データ」を実際のビジネスの現場で活用する際のポイントと事例

この日、登壇した4社は、切り口はそれぞれ異なるが、「データ」を核としたサービスを提供しているという共通点がある。そこで、「データを実際のビジネスの現場で活用する際のポイントと事例」についても聞いた。

xenodata lab.関氏は、「データを使った『予測』サービスをいち早く導入し、使い倒すスタンスを持って欲しい」と述べた。予測サービスというと、多くの人が100%に近い精度を求めがちだ。しかし100%の精度が出せるのなら、誰でも使うはずで、そうなってしまうと逆に「予測」としての価値がなくなってしまう。「ビジネスで先手を打って他に勝っていくのであれば、6割強くらいの精度なら価値がある。ぜひ勇気を持って踏み出していただきたい」と、関氏は呼びかけた。

Sansan加藤氏は、「先ほど林さんがフォードの話をしたが、馬に乗っている人には、クルマに乗ることの良さは分からない。だから、イノベーティブなサービスを生み出そうというときに、旧来のモノのユーザーの声を集めたデータにはあまり意味がないケースもある。 当社も、名刺管理をアナログな手法で実践している人の声ではなく、自社が提供するデジタルでの管理を実践してくれる顧客の声を最も重視した」と、データの使いどころについての考えを語った。

 

セッションテーマ3:今注目している「データ」に関するテクノロジーやサービスはありますか?

3つ目のテーマは、注目の「データ」テクノロジーやサービスについて。

「テクノロジーによって将来予測をする『Forecast Tech』は、これから誰もが話題にする領域となるはず」と熱を込めて語るのは、xenodata lab.関氏だ。「財務、犯罪、大気汚染、需要、排泄など、あらゆる領域に予測技術が活用されている。個人的には『Dataminr』という、株価や経済に大きな影響を与える事象を予測するアメリカのスタートアップに注目している」と話した。

Sansan加藤氏は、自社新サービスである『顧客データHub 』を挙げた。「これは名刺をデータ化していく中で生まれた“名寄せ”のスーパーエンジン。社内に散在する顧客情報 を統合することができる」と、アピールした。

最後に、ストックマーク林氏は、「構造化、予測、そして生成」の3領域に注目していると語った。「特に『生成』は、今最も熱い。ニュースを自動的につくる、いそうでいないアイドルをつくるなど、今まで人間しかできなかったクリエイションができるようになってきた。これはビジネスでも可能性があると思う」と述べた。

●質疑応答

最後に、会場からの質疑応答も行われた。その一例を紹介したい。イベント参加者より発せられた――「既存ビジネスがある程度安定している大企業だが、業界変革が始まり、生き残りをかけてチャレンジしていく必要がある。そのための風土をどう醸成すべきか」という質問。

これに対して、Sansan加藤氏は「世界の年齢中央値は、だいたい28歳。しかし、日本企業の取締役は60歳前後。もし本気で変革に挑むのなら、シンプルなことだが、若手をトップに置くことがブレークスルーにつながるのでは」と回答した。

また、ユーザベース山本氏は、「大企業は人数を抱えていることがメリットなので、新しい領域に自社が参入して事業をやっていくというよりは、起業家を多くその領域に輩出して、投資して市場を形成していく、いわば“マフィア形成”が有効だろう」と語った。

取材後記

今まさに、不確実な世の中を生き抜いている企業だからこそのリアリティがそこにあった。変革を渇望しながらも、その糸口が掴めないでいる企業にとって、示唆を得られるイベントだったのではないだろうか。

当たり前のことだが、単に新規事業を連発するだけでは企業は勝ち残れない。そして、データを取り入れるだけでは変革は成し遂げられない。株主から顧客へ、ヒエラルキーからアジャイルへ、組織の根っことなるところから変えていくことが必要だ。そして、旧来組織が本気で変化を成し遂げるには、数年の時間が掛かることを覚悟せねばならない。変革に近道無し。だからこそ、早く始めるべきだ。

(編集:眞田幸剛、取材・文:佐藤瑞恵、撮影:加藤武俊)

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