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NTT東日本アクセラレータープログラム『LIGHTnIC』 、いよいよ始動―採択16社が決定!

NTT東日本アクセラレータープログラム『LIGHTnIC』 、いよいよ始動―採択16社が決定!

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東日本電信電話株式会社(以下、NTT東日本)が仕掛けるアクセラレータープログラム『LIGHTnIC(ライトニック)』。地域の課題に焦点をあてながら、「スマートホーム」「スマートカンパニー」「スマートビルディング」「スマートシティ」「スマートソサエティ」「ディスラプト」の6つのテーマを設け、協業パートナーとの共創を進めている。

3期目となる同プログラムは、初めて「公募制」を導入。2019年5月より参加企業を公募し、協業パートナーの選考を進めてきた。去る9月19日には、採択企業16社が公表され、それに伴いキックオフイベントも開催。イベントには、各採択企業代表者のほか、200名にも及ぶNTT東日本やグループ会社の社員が一堂に集結した。『LIGHTnIC』の趣旨説明や採択企業によるピッチが展開され、参画メンバーの意思疎通が図られた。そして、NTT東日本グループと採択企業による共創チームは、12月に開催されるデモデイに向けてプロジェクトを前進させている。

eiiconでは、キックオフイベントを取材。本記事では、『LIGHTnIC』の目指す方向性や、採択企業が保有するプロダクトの特徴・描くビジョンなど、イベントで共有された中身についてレポートする。

都市ではなく地方にこそ、デジタルトランスフォーメーションが必要

最初に、NTT東日本 代表取締役副社長/ビジネス開発本部長の澁谷直樹氏より、NTT東日本がアクセラレータープログラムを通して、「何に取り組みたいのか」「どんな社会を実現したいのか」についての説明があった。以下でスピーチの内容について紹介する。

▲NTT東日本 代表取締役副社長 澁谷 直樹氏

「失われた20年、30年と言われますが、日本は世界の成長から取り残されている状態が続いています。GDPの世界に占める日本の割合は6.1%。15%の中国に約2.5倍の差をつけられました。また、『世界幸福度ランキング 2019』では、先進7カ国で最下位の58位という結果も出ています。

このような現状の中で、私たちNTT東日本が本プログラムを通して取り組みたいことは、都心に加えて地方や一次産業、中小企業の分野での課題解決です。国内全企業のうち99.7%が中小企業、そのうち60%の社長さんが70歳以上、128万社が後継者不足だと言われています。事業を続けたいのに続けられないと悩む方も多くいらっしゃる。そういった方たちにも、デジタルの恩恵を受けられるような仕組みを構築していきたい。

実際に当社の社員が全国各地に足を運び、地域の方たちから数多くのアイデアをいただきました。これらの地域課題に対し、廉価で使いやすくなったAI・IoT・クラウド・RPAなどのデジタル技術を活用し、リアルなエコノミーを改善する仕組みを創出したいと考えます。人はよりクリエイティブな、未来を想定して語り合いながらつくっていくような仕事にシフトしていく――そんな社会を目指しています。

そのために、NTT東日本は持てるアセットを解放しながら、皆さんに実験の場を提供します。

2020年には日本だけでも400億個ものセンサーが実装されていくと言われています。こういった部分の技術を支えながら、デジタル技術をリアル社会のよりよい未来のために役立てていきたい。また、日本ではアイデアがあっても引っ張る人、アクセラレートできる人材が少ないことも大きな課題です。ビジネスとテクノロジーをつなぐ役割を、NTT東日本が果たしていきたいと考えています。

ぜひ皆さんも、都市ばかりではなく、地方にも目を向けてください。農業・漁業・林業などにはデジタル技術がたくさん活用できます。私たちはベンチャーの方たちの知恵と勇気、行動力をお借りします。ベンチャーの方たちには私たちの持つアセットと信頼性を活用していただき、ともに社会を豊かにする取り組みを広げていきましょう」 

『ふるさと納税』から『電動マイクロモビリティ』まで、各社が描く地域課題との向き合い方

続いて、NTT東日本 アクセラレーション担当の遠藤正幸氏より、『LIGHTnIC』のこれまでの経緯や今回の強化ポイント、および本キックオフピッチの趣旨説明が行われた。説明の中で、第三期となる今回、初めて公募制にすることで100社の企業からの応募があったことが明らかになった。

また、地域課題の解決を大きなテーマのひとつに据えていることから、アクセラレーション担当が各事業部・支店にヒアリングを行い、全国から500もの課題を収集。課題を起点とするマーケットイン型の取り組みも強化していくことが説明された。加えて、NTT東日本単体ではなく、NTTグループ各社とも連携し、提供できるアセットを拡大し積極的に挑戦していくことが、熱意を込めて語られた。

遠藤氏の説明に続き、各採択企業代表者が壇上にあがり、それぞれのピッチを行った。本レポートでは採択16社のうち、特に地方や一次産業などの課題解決に直結した共創プロジェクトを推進する「株式会社Luup」「グローキーアップ株式会社」「KNEX.inc」の3社について詳しく紹介していく。

株式会社Luup

~電動マイクロモビリティの普及で、交通インフラに革新を~

1社目は、電動キックボードをはじめとした電動マイクロモビリティのシェアリング事業を展開する株式会社Luupだ。同社は、“電動のマイクロモビリティ×シェア”という形でビジネスを展開するベンチャー。電動キックボードに限らず、電動・小型・無人・安価なものであれば、2輪・4輪といった形状は問わないという。

ビジネスモデルとしては、シェアリング事業を想定。電動キックボードのような小型で電動の乗り物を街中に配置することで、ユーザーが借りたいと思ったタイミングで、簡単に借りられるサービスの展開を目指す。2018年の夏に創業したばかりだが、すでに複数の自治体と提携し実証実験を進めている。また、マイクロモビリティ技術の社会実装を促進していくために、『マイクロモビリティ推進協議会』も設立。各関係省庁とも連携し、安全面も考慮しながら普及を進めていくという。

解決したい課題は、今後、超高齢化が進む日本が直面するであろう3つの問題だ。1つ目は、インバウンドが増える一方で、人口は減り続けるため、地方交通の採算があわなくなること。そのため、インバウンドを駅から街へと続く血管が必要だと指摘。2つ目は買い物弱者が増えていることを挙げる。また3つ目として大都市への人口集中に言及。電車が大都市を起点に発達してきたがゆえに、街の回遊性が悪くなっているという。同社はマイクロモビリティの普及により、これらの課題解決を目指す。日本の現状をふまえ、若者向けのキックボードだけではなく、高齢者向け4輪の提供も考えているという。

本プログラムでは、NTT東日本が保有するWi-Fiやカメラといった技術面での連携のほか、場所を活用した実証実験も想定している。

最後に、「僕らはインフラを作っていきたい。自分たちですべてできるとは思っていない。皆さまの協力のもと事業を進めていきたい」とのメッセージが発せられ、プレゼンは終了した。

グローキーアップ株式会社

~ふるさと納税のあり方を見直し、地域の活性化へ~

2社目は、現状のふるさと納税のあり方に異議を唱えるグローキーアップ株式会社だ。同社は、ふるさと納税にまつわる課題と解決策について、自社で開発したシステムの中身も説明しながら、プレゼンテーションを行った。

ふるさと納税は地域への貢献を目的に総務省が提言したものだが、現状は返礼品目的のネット通販化していると指摘。一方で、市場は制度の開始以降、右肩上がりに成長を続けている。しかし、ふるさと納税の利用経験者は全体の約10%にとどまり、残りの90%は手続きの煩雑さや分かりづらさから利用経験はない。10%の利用者に対して、ふるさと納税関連ECサイトがひしめきあっているのが現状だと説明する。

これに対し、同社はリアル市場におけるふるさと納税の展開を提案する。たとえば、草津温泉を訪れた観光客が、現地でふるさと納税をすると、返礼品が自宅に届くという仕組みだ。そこで同社は『IoTふるさと納税自販機』を開発。簡単な操作でふるさと納税ができるという。自販機を空港や旅館、観光地に設置することで、インターネット納税から地産地納税へのシフトを目指す。また、ネットワーク基盤システムであるUNIOSSと連動することで、事務や配送といったバックヤード業務が自動で行える点も大きな特徴だという。

本プログラムでは、NTT東日本が所有するIoTデバイスと連携し、拡販や開発の側面で協業を検討。プレゼンの最後は、「ふるさと納税の可能性を広げ、地域を活性させていく。ふるさと納税本来の共感応援型納税に回帰し、地域や観光地が主体となって納税を推進していくような動きに変えていきたい」と、力強く語り締めくくった。

KNEX.inc 

~畜産テックの活用で、一次産業の省人化を目指す~

2社目は、アメリカを拠点に世界で事業を展開するKNEX.incだ。ピッチは、マレーシアから駆け付けたCEOがプロダクトの特徴や解決したい課題について説明した。

同社は、『Birdoo』という畜産農家のデジタルトランスフォーメーションを推進するサービスを展開している。畜産農家の人材不足は深刻で、とりわけ養鶏場については、1人が世話をする鶏の数が増え続け、目が行き届いていないことを指摘。今後、さらに人材不足が深刻化する中で、どう対処していくかが課題だと説明した。その上で、同社が開発するシステムは、従来よりも格段に少ない人数で鶏の管理ができると話す。

同社の保有する技術は、コンピュータービジョン、AIやIoTを組み合わせた包括的な養鶏管理システムだ。国際特許を出願中のBirdoo システムでは、リアルタイムでの体重計測ができるほか、AIとの組合せで成長率の予測、統一性のチェックなどが可能だ。また、高度な精度で死鶏を検知したり、鶏の体温測定ができるコンピュータービジョンを使って、健康管理に役立てることができる。また、温度やアンモニアのセンシングにより、飼育環境のコントロールもできるという。収益観点では、えさの量の最適化により収益向上も目指せる。

同社はこれまで、アメリカの大手飼料会社や東南アジア最大規模の養鶏場のほか、インドやブラジルでも数多くの実証実験を行ってきた。今回は初の日本進出ということで、本プログラムを通して日本市場での調査や技術の検証、実証実験、さらに出口戦略を一緒に考えていきたいと語った。なお、鶏以外の畜産、あるいは漁業への応用も可能な技術だという。

NTT東日本とともに地域課題に挑む、採択16社の顔ぶれ

上記3社以外にも、多種多様なプロダクトを持つ企業が採択された。以下でその特徴について簡単に紹介する。(五十音順)

●RFルーカス株式会社

主な事業・プロダクト/RFIDタグを一括で検知するソリューション

●inaho株式会社

主な事業・プロダクト/自動野菜収穫ロボット

●インフィック株式会社

主な事業・プロダクト/IoTを活用した高齢者生活支援事業(みまもりセンサー)

Wovn Technologies株式会社

主な事業・プロダクト/ウェブサイト、アプリを簡易に多言語化できるプラットフォーム

●株式会社On Focus

主な事業・プロダクト/可動式重量鉄骨造の構造物(コンテナ)

●株式会社ジェネックス

主な事業・プロダクト/アプリダウンロード・会員登録不要なセルフオーダーサービス

●株式会社空

主な事業・プロダクト/ホテルなどの適切な料金設定を支援するダイナミックプライシング

●知能技術株式会社

主な事業・プロダクト/ベッド転落の前兆行動を認識し、看護師へ事前通知、行動の可視化

●株式会社DG TAKANOグループ

主な事業・プロダクト/最大95%の節水と高い洗浄力を両立させた、世界唯一の洗浄ノズル

●株式会社ナノルクス

主な事業・プロダクト/暗闇でもカラー撮影可能な赤外線カラー暗視撮影技術

●株式会社VAAK

主な事業・プロダクト/店舗決済をスマート化する映像解析技術

●ピクスー株式会社

主な事業・プロダクト/クラウド直結のセンサー技術

●株式会社ルートレック・ネットワークス

主な事業・プロダクト/施設栽培向けAI潅水・施肥ロボット

今回の第3期プログラムで採択された全16社は、NTT東日本グループのメンバーと共創プロジェクトを立ち上げ、PoCやテストマーケティングに着手している。――そこで得た成果から導き出したビジネスプランは、12月上旬に開催されるDEMODAYで発表される予定だ。

取材後記

澁谷副社長がスピーチした「都市圏のデジタルエコノミーばかりではなく、地方にも目を向けていく」というメッセージが印象的だった。ここまで明確に地域課題に焦点を当てたアクセラレータープログラムは珍しいのではないだろうか。これは、都市だけではなく地方にも根ざして、広く事業を展開するNTT東日本だからこその特徴だと言える。都市の中にとどまらない、日本全体を舞台としたスマートネーション化。その実現に向けて巨艦NTTが動き出す。NTT東日本と協業パートナーの強みがクロスすることで、どんな地域を照らすプランが生まれるのか。eiiconでは引き続き、プログラムの進捗を追っていきたい。

(編集:眞田 幸剛、取材・文:林和歌子、撮影:加藤武俊)

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