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最低限知らなければならない、事業創りの作法を探る。第一線で戦うイノベーターが集結。Business Development Week#1

最低限知らなければならない、事業創りの作法を探る。第一線で戦うイノベーターが集結。Business Development Week#1

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オープンイノベーションは黎明期から成長期へ突入しようとしているのではないだろうか。「オープンイノベーション」という言葉は頻繁にビジネスの現場でも語られるようになり、有効なイノベーション手法として確立しつつある。新規事業創出が企業成長戦略の上で必至となる中、他社との差別化や成功確度をあげるためのノウハウ・リソース確保が非常に重要であり、より個としての活躍、役割が注目されようとしている。

事業を活性化するメディア eiiconlabでは、最前線で活躍するビジネスパーソンによるブログコンテンツ『PRO bcon(プロ ビーコン)』を2019年7月23日に開設。企業という枠を持ちながら、個として日本の事業創出を牽引するビジネスパーソンが「生の声」として発信している。

去る10月7日、日本が生き残るために必要なTipsを探る場として、日本を代表するイノベーターであるPROBCONによる新たな事業を生み出すために考える週間「Business Development Week」を初開催。日本全土の事業活性化をより加速させる企画として、隔週で実施するSESSIONでは各テーマにあわせ、実際に第一線で戦うPROBCONが登場した。

第1回目となるweek1のテーマは「新規事業・事業開発」事業を創る為に最低限知らなければならない方法と題し、4名のPROBCONとともに事業活性化のTipsをシェアした。

MCはお笑いコンビ“しずる”とeiicon代表の中村亜由子氏が務め、事業創りに関わる者も気付けない、純粋な疑問をぶつけていき事業創りに必要なエッセンスを紐解いていく。会場となった東京・大手町の「SPACES」には、そんなPROBCONの生の声を求め、多くの新規事業担当者が集まり、耳を傾けた。

【写真左】 守屋実事務所 守屋 実氏、eiicon company代表/founder 中村 亜由子氏

【写真中央】 お笑いコンビ しずる(池田一真氏・村上純氏)、 SUNDRED株式会社 代表取締役 / パートナー 留目 真伸氏  

【写真右】 株式会社ユニコーンファーム CEO 田所 雅之氏

ラクスル、ケアプロなど50の起業経験を持つ、起業プロフェッショナル守屋氏から新規事業創出のコツを学ぶ。

▲守屋実事務所 守屋 実氏

1992年ミスミ入社、新規事業開発に従事。 2002年新規事業の専門会社エムアウトをミスミ創業者の田口氏と創業、複数事業の立上げおよび売却を実施。 2010年守屋実事務所を設立。新規事業創出の専門家として活動。ラクスル、ケアプロの立上げに参画、副社長を歴任後、博報堂、サウンドファン、ブティックス、SEEDATA、AuB、みらい創造機構、ミーミル、トラス、JCC、テックフィード、キャディ、フリーランス協会、JAXA、セルム、FVC、日本農業、JR東日本スタートアップなどの取締役など、内閣府有識者委員、山东省人工智能高档顾问を歴任。 2018年にブティックス、ラクスルを2か月連続で上場に導く。 著者に「新しい一歩を踏み出そう! 」(ダイヤモンド社)がある。

50=17+19+14 という数式。「これが自己紹介の全て」と数式の紹介から始まった、現在50歳である守屋氏。「17」はミスミ、エムアウトなどでの企業内起業の数。「19」はラクスル、ケアプロなどの独立起業の数。「14」は診療所、小学校、飲食店などの、週末起業の数。新規事業を専門職とし、19歳の時に最初の起業を経験してから30年余り新規事業の専門職として、第一線を走っている。

フルリスクは抱えない。変化を恐れず、小さな失敗から高速回転で変えていく。

・これまでにいくつもの新規事業を手がけてきた守屋氏に「失敗を回避するコツ」を問う。

一旦始めると引くに引けないのが新規事業。本気にならないとうまくいかない一方で、新規事業は本気で取り組んだとしてもそう簡単には軌道に乗らない。守屋氏は、恐ろしい失敗の前に小さな失敗を小まめするという事が大事だと話す。さらに、目をつぶって突っ走ってしまうと取り返しのつかない事になるため、「ここまでいったら一旦ピボット」、「このラインに来たら仮説を見直す」というようにセクションを設け、なかなか上手くいかないからこそ回避するコツはあると言う。

また、「事業を成功させそうな人は?」という問いに対しては、「新しいことに挑戦するときは経験がものを言わないときがある。市場のニーズ、ユーザーの声を吸い上げて、高速回転で変えていける人」と回答した。

最後に、事業を創る為に最低限知らなければならない作法として「動く癖をつけよう」とメッセージを伝えた。日頃から小さな一歩を踏み続ける事。やっていく中で好機に巡り会える。まずは動くことを強くお勧めしますと締めくくった。

※守屋氏のPROBCONブログはコチラから。


博報堂発社内ベンチャー × トライブリサーチ事業を手がける宮井氏から消費者視点の事業創りのメソッド

▲株式会社SEEDATA 代表取締役CEO 宮井 弘之氏

2002年、博報堂に新卒入社。情報システム部門に配属後、博報堂ブランドイノベーションデザイン局へ。新商品・新サービス・新事業の開発支援に携わり、2015年に社内ベンチャーであるSEEDATAを創業。【株式会社SEEDATAについて】 2015年に博報堂DYグループ内に設立され、300を超えるプロジェクトでオリジナルの知見とネットワークを企業に展開。 “先進的な生活者群(=トライブ)の行動や発言に、隠された心理や価値観を発見することで、5年先の生活者ニーズを明らかにすること”を、ミッションに掲げる。主に「インテリジェンス事業」と「インキュベーション事業」の2つのアプローチで、クライアント企業のイノベーション支援を手がけている。

自己紹介では高校時代から消費者調査が趣味であったと告白した宮井氏。これからの消費者・市場はどうなるのかという事に長年興味を持ち、現在では海外を含めた5年先の市場の動向を調査するデータベースを保有し、そのデータベースから企業の事業創造支援を専門に行う株式会社SEEDATAを立ち上げた。

宮井氏は、「自分が創りたいと思うモノと、その人に創って欲しいと思う消費者にはギャップがある。新規事業はある意味そのギャップを埋めていく(一致させていく)事とだと思っていて、私は、消費者にどうやってヒットさせるかにフォーカスした事業を運営しています。SEEDATAのリソースを活用すれば、エンターテイナーである”しずる”さんは今以上に売れますよ。(笑)」と話し、会場を沸かせた。

一歩踏み出す前に考える事業撤退のKPIとは?見えてきたのは2つの観点。

MCの3名から宮井氏がプロビーコンブログで発信している事業撤退のKPIについて深掘った。

※KPI…key performance indicator の略で、企業目標の達成度を評価するための主要業績評価指標のこと。

▲新規事業初心者である”しずる”に、まずはKPIについて説明。「山を登るとします。ゴールって決まっていますよね。つまり、頂上に登る事。ビジネスでいうと売り上げか利益です。でもその求め方は人によって違います。このルートを必ず通って登りたいとか。頂上に到達するための登り方のパフォーマンスを“KPI”と言います。」

・事業開始ではない事業撤退のKPIとは?

 MC陣から、始めるときにやめる基準は決めないのでは?という疑問を宮井氏に投げかけた。

「私はこれまで2回以上企業に成功している方々にインタビューを実施してきました。守屋実さんにも取材しましたね。するといくつか特徴が出てきました。ひとつものの考え方として“踏み出す前にいくらまで損できるかを考えている”というところです。新規事業は不確実なので基本的に失敗します。なのでいくら売り上げるのかではなく、いくらまで損できるか。ということをまず考えて一歩踏み出しています。起業家は一見度胸あるように見えて、ものすごい慎重です。」と宮井氏はいう。

続けて宮井氏は、事業撤退のKPIを考える際に重要なのは、ビジネスモデルの観点と顧客価値の観点の2つであると、具体的な考え方について言及した。もっとも大切にすることは、自分が届けたい価値にしっかりこだわること。新規事業におけるピボットとは、ビジネスモデルを変えることである。一方で、提供価値を変えてしまえばそれはもう別の事業なのでピボットではなく、撤退すべきであるという。

▲品川に漫画喫茶が少ないことから漫画喫茶を立ち上げたいという“しずる”に対して、ビジネスモデルと顧客価値の2つの観点から撤退KPIを考えていく。

最後に宮井氏から、やり方さえ間違えなければ、新しい事業はうまくいく時代にはなっている。組織の営みとして一歩踏み出すことが難しいところもあるが、無理しない程度に突破していくことが大切ではないかとアドバイスした。

※宮井氏のPROBCONブログはコチラから。


『起業の科学 スタートアップサイエンス』ベストセラー著者が告げる、事業創りにおける最重要ファクターとは。

3人目のPROBCONは、ベストセラー『起業の科学 スタートアップサイエンス』の著者である、田所氏。

▲株式会社ユニコーンファーム  CEO 田所 雅之氏

日本とシリコンバレーで複数起業をしてきた起業家。以前はシリコンバレーのベンチャーキャピタルのベンチャーパートナー/グローバルスタートアップイベントの責任者を務め、2000社以上のスタートアップを評価してきた。その知見をベースに『起業の科学』(日経BP)執筆(2017年発売以降96週連続でAmazon経営関連書書売上1位)

冒頭、田所氏は『起業の科学』の出版経緯を話してくれた。「起業に失敗した人がたくさんいる中で、私は投資家として活動していました。ひとつの意思決定のせいで数千万、数億円飛ばしてしまう人がいる中で、これはよろしくないなと。3000枚くらいのスライドにまとめたら世界で7万シェアされその後出版に至りました。想いとしては自分自身もいくつかの起業で失敗しているのですが、この業界には素晴らしい人たくさんいるんですよ。熱くてスパイシーな経営している人。ただひとつゲームの仕方を知らないだけで失敗する人が非常に多い。自分も損をしたこともあっての共感覚から生まれた本です。」

現在、田所氏は、スタートアップ支援や新規事業支援に邁進している。


事業創りにおける最重要ファクターとは「自分事」

田所氏は、新規事業はジェットコースターのようで、アップダウンがたくさんある中で、諦めないこと、やめないことが非常に大事だと話した。また、ヒト・モノ・カネがない中で、自らが、人に伝えて資産を集めていく、ストーリーテラーになることが大切であると話した

伝えきれるかは、自分事にしているかどうか。強い想いで問題解決・課題解決をしているかどうか。田所氏が起業家に対して聞くことは、「あなたがやる必然性はどこにあるのか?」だという。それがあってもなかなかうまくいかない中で、逆にそこが言えないとヒト・モノ・カネは集まらない。

さらに事業創りのヒントとして、日々生活していく中で感じる不条理な出来事「ここをもう少しこうなったらいいのに」という感情をメモとして書き出していくのがいいとアドバイスした。書き出していくとその事象に対しての代替案が見えてくる。意外とそういうところにキッカケが潜んでいるという。

最後に事業を創る為に最低限知らなければならない作法として、田所氏は『起業の科学』にも書いていない貴重なメッセージを伝えた。「一番大切なのは、チーム組成。ボケとツッコミがいるチームです。ボケは、ビジョナリーであり、ソフトバンクの孫さんみたいな人。ただボケだけだと損するだけ。大事なのは冷静でリアリストであるツッコミも必要です。目指す世界は同じであるが役割が違う。そんなチームを最初に創っていく事が非常に重要です。

これには“しずる”の2人も深く共感。良いチームを見つけるコツは自分と真逆のメンバーを見つける事。短いプロジェクトでも短期間一緒に仕事をしてみることで、感覚も含め、ピンときた相手と組んでいく事がいいと話した。

※田所氏のPROBCONブログはコチラから。


元レノボ・ジャパン代表 ×「新産業共創スタジオ」始動した留目氏による新産業創出のヒントとは?

本日最後のPROBCONは、SUNDRED株式会社 代表取締役 留目氏。大企業キャリアのから現在の事業立ちあげに至った経歴から、新規事業創出のヒントを探る。

▲SUNDRED株式会社 代表取締役 / パートナー 留目 真伸氏

早稲田大学政治経済学部卒業。総合商社、戦略コンサルティング、外資系 IT、日系製造業等において要職を歴任。元レノボ・ジャパン株式会社、NEC パーソナルコンピュータ株式会社代表取締役社長。大企業のマネジメント経験、数々の新規事業の立ち上げ、スタートアップの経営を通じ、個社を超えて全体像を構想し自在に社会に対して価値を創出できる「社会に雇われる経営者(経営者 3.0)」が求められていると実感。HIZZLE(ヒズル)にて「経営者の育成」「未来型企業へのトランスフォーメーション支援」に取り組む。株式会社資生堂 CSO を経て 2019 年 7 月より SUNDRED の代表に就任し、「新産業共創スタジオ」を始動。2019年8月VAIO株式会社Chief Innovation Officer(CINO)に就任。

「日本の環境だと、新事業をスタートしてもスケールさせる事が非常に難しい」と日本にはびこる課題を指摘した留目氏。アメリカなどの流動性が高い国であれば、良いスタートアップにお金だけではなく、大企業からの人材リソースが流れてくることで一大産業となる。しかし、日本ではまだそこまでの流動性がなく、いいアイデアを持っているスタートアップでも人がついてこない。その代わりに多くの会社がバラバラにプチトライアルを実践していて産業化につながっていない。

留目氏は、新たな産業を創るため2019年7月からSUNDREDの代表に就任。「新産業共創スタジオ」を開始している。新産業共創スタジオでは、新産業の共創プロジェクトを実際に進めながら、アカデミア等の研究による最新の理論と実践での知見を組み合わせ、新産業共創のためのフレームワークと各種ツールの開発を行っている。


新産業共創における成功の糸口は「クエスト型」

一社だけで独立して、産業を創ることは難しく、オープンイノベーションの実践により複数の企業と手を組むことで、大きな産業を創っていく必要がある。

その一方、産業化しない理由を留目氏は、「これまでとは違う新しい目的に対して、それを実現するために新しいパートナーと新しい関係性づくりを行っていくことに各企業が失敗している。」と述べた。この関係性構築さえ上手くいけば、再び新産業は創られていく。新しい関係性づくりをするための「クエスト」を始めていくことが解決の糸口であるとアドバイスした。

「新産業の共創は、まさに『新しい目的』を定義し、それを追い求めるチームづくりからスタートする。」と留目氏は言う。このクエスト型産業共創の中で最も重要なのは「勇者」が最初に立ち上がらなければならない。剣を引き抜き、「クエスト宣言」を行う。状況を最初に動かそうとする人が「勇者」である。次に必要な知恵を授ける存在として「賢者」を集める。「勇者」と「賢者」が揃ってクエストの道筋が見えてきたところで、特殊な技能を持った「魔法使い」やテクノロジーとして「武器」を集ることで、新産業共創のクエストのチームを充実させていく事が大切であると述べた。

・日本が攻めるべき市場とは?

最後に日本が攻めるべき市場はどこなのか留目氏に伺った。「まずは、インターネットのその先にある、IoTやAIを活かした“Industry 4.0(第4次産業革命)”。またもう1つのキーワードは“人間中心”。個の時代に突入してきた事で、多様性・自分らしい生き方が主張できる時代になってきた。だからこそマスプロダクションされた既製品よりかはカスタマイズされた方が求められる。多くの産業がこの2つにつくり変えられていく。あらゆる産業でこのつくり変えが必要になってきている点では、ものすごいチャンスが眠っている」と伝えた。

※留目氏のPROBCONブログはコチラから。


取材後記

第1回目となるweek1のテーマは「新規事業・事業開発」。4名のイノベーターたちから発信される生の声は、事業創りのリアルが垣間見れた。事業を創る者は選ばれし勇者であり、誰もが実践できるわけではないと感じているビジネスマンも少なくないだろう。

今回のイベントでは、小さな失敗から軌道修正をしていく。始める前に撤退ラインを決める。チーム組成は自分とは真逆の仲間を集める。といったように、慎重に計算しながら一歩ずつ前進しながら新しく事業を創っていくことが正攻法の一つだという感覚を受けた。そしてPROBCONたちの実体験を元にした声にはやはり重みがある。今後のPROBCONたちの発信に目が離せない。

◎PROBCONによる新たな事業を生み出すために考える週間「Business Deveropment Week」の詳細は以下URLをご覧ください。

https://eiicon.net/about/lab/bdw/

◎各トークセッションの様子は以下より動画でご覧いただけます。

(編集:眞田幸剛、取材・文・撮影:保美和子)

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