新しいことにチャレンジするのは辛い

しっかりとした大きな既存事業がある大会社で、「新規事業開発担当」や「オープンイノベーション担当」など、新しいことにチャレンジしている人には、既存事業とは違うタイプのストレスが毎日のように襲ってきます。

新しいことは思ったようにはいきません。

部門が新設されてしばらくは「やるぞ!」という気合で溢れていても、半年くらい経つと「殆ど何も進んでいないなあ」という重い空気が流れだします。そして、既存事業の人たちから「あいつら金ばかり使って、何もアウトプットを出していないじゃないか」との陰口が聞こえてくるようになり、ますます気ばかりが焦ります。その上、何かやろうと思って既存事業の方の協力を仰いでもおいそれとは力を貸してくれないばかりか、山ほどのダメ出しや文句を食らって気落ちする毎日です。

家に帰って今日一日を思い返すと、「あーあ、今日も色んな人と話したり交渉しただけで丸一日がつぶれたなあ。全然前に進んでいないなあ」と落ち込むばかりで明日を迎えてしまいます。

通常の業務であれば、目的や計画が明確で、それに向かって今日はX%できた、という進んでいる感じが得られやすいのですが、「新しい事業」や「新しい企て(企画)」は、1歩進んで2歩下がり、そして時には方向も変わってしまう、の感じで「やったね!」の感覚がとても乏しいのが当たり前です。


目に見える成果がでることをやる

私もよくその感覚に陥りました。「今日も沢山しゃべったなあ……でもそれだけ」。

その時は、仕事以外の時間で「やったことが明確にわかる」ことに時間をよく使っていました。例えば、アメリカに駐在している時は、そこそこ広い庭があったので、その庭の芝生をよく刈っていました。芝刈りはとても精神的によかったです。「この30分で庭の半分の芝を刈ったぞ」と見た目でわかる成果が得られるからです。人間って、単純なもので、そういう「進んでいる」感じのものをやることで精神的に癒されます。ジグゾーパズルなんかもそうでしょう。


幽体離脱しネタ化する

新規事業開発の担当などやっていると、単に「進んでいない」というモヤモヤ感だけでなく、むちゃくちゃ腹が立つことに毎日遭遇します。コンサバで自己保身しか考えていないようなヤツラと交渉したりすると、本当にブチ切れそうになることも多々あります。

そういう毎日にものすごい効果があるストレス解消方法が、マンガに書いた「ネタ化」です。

「ネタ化」は文字通り、その日にあったイヤなことをネタに昇華・消化することです。

私の場合は、一時は毎日ブログで4コママンガを描いていました。(「勢川びきのX記」)。

「ネタ化」の基本は「幽体離脱」と「抽象化」です。

「幽体離脱」は日々大変なことが起きて辛い毎日を送っている自分から離脱して、悲惨な自分自身を外から見て楽しむように「ネタ化」するのです。ネタ化して、笑いへ昇華させます。辛いことをそのまま4コマに書いては読む人も面白くないし、書いている自分自身がますます落ち込む原因になってしまいますので、「笑い」に変えるのがポイントです。

また、「抽象化」も忘れないようにしていました。登場人物も現実の人をそのまま(名前とかも)書いてしまうと、当人に何かでバレてしまい、余計に状況が悪化します。同様に人物だけでなく、あったイヤなこともそのままは書かずに抽象化したり、別の話に見えるように気を遣っていました。

ただ、非常に身近な仲間には結構バレていて、「瀬川さん、昨日の4コマって、昨日のあの会議でのあの人のことでしょ」とか言われてしまったこともありましたが。

それなりの立場でイヤなことや辛いことの連続だったサラリーマン生活の毎日を笑いながら乗り越えていけたのもこの4コママンガで「ネタ化」したおかげだったと本当に思います。

是非、4コママンガを描いてみてください。こちらに4コマ用の枠のpdfを貼りましたので、ダウンロードして印刷してください。枠からいちいち書くのは大変ですが、印刷しておくと、気軽に4コマを書くことができます。私も毎日のように4コマが書けた大きな理由がこの枠の印刷でした。


日記小説でネタ化する

「いやいや、4コママンガなんて私は書けないよ」と言う方は、「日記小説」を書きましょう。昔から、日記は自分を冷静に見つめる事ができるなどで、精神的にもとてもいいと言われてきました。その日記のように、日記そのものでなく小説を書くのです。その日にあったことを書くというのは日記そのものですが、自分自身も含めて登場人物を架空の人物にして、あったこともそのままではなく、抽象化したり、別のことに変更します。そして、何よりも大事なのが、実際に起きたことでない「面白いこと」を創作して付け加えるのです。

これは絶対に効きますよ。

もうお気づきかと思いますが、「ネタ化」できるのは「ネタ」が満載の日々を送っているからです。安定した繰り返しのような日々からはネタは生まれてきません。辛いことも含めて、あれこれ思わぬことが起こる新規事業開発の日々はネタの宝庫です。

4コマや日記小説を書くのがとても楽しくなりすぎて寝不足にはならないように。

「ネタ化」が「寝たか?」になっちゃうので。


■漫画・コラム/瀬川 秀樹

32年半リコーで勤めた後、新規事業のコンサルティングや若手育成などを行うCreable(クリエイブル)を設立。新エネルギーや技術開発を推進する国立研究開発法人「NEDO」などでメンターやゲストスピーカーを務めるなど、オープンイノベーションの先駆的存在として知られる。

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