eiicon

【特集インタビュー】画像という圧倒的な強みをIoTで活かす。機器メーカーが新たなテクノロジー分野に進出した理由とは。

コニカミノルタと言えば、主力の複合機でグローバルトップクラスのメーカーだ。しかし、現在はいわゆる「機器メーカー」からの脱却を図っているという。圧倒的な強みを持つ画像をさらに価値の高いものにするため、オープンイノベーションは絶対に必要とのことだ。同社では2016年度を最終年とする中期経営計画「TRANSFORM2016」の3年間で土台が整い、回収の時期にも来ている。オープンイノベーションにより、どのような価値を提供しようとしているのだろうか。コニカミノルタの事業開発本部でオープンイノベーションを手がける三浦氏に話を伺った。

▲コニカミノルタ株式会社 事業開発本部 事業推進部長 三浦雅範氏


■社会課題の解決するソリューションビジネスへの転換を目指す。

――コニカミノルタさんはオープンイノベーションに積極的に取り組んでいます。特にどのような分野に力を入れていますか。

三浦:今、時代の流れはIoTと言われています。当社はこれまで複合機や印刷システムなどが主力でしたが、機器で価値提供するだけでは、これからの時代の要請に対応できません。機器とシステムをつなげること、すなわちIoTによって価値提供をするという、まさに時流に乗った活動が求められます。当社では「社会課題を解決する」というミッションを掲げ、IoTを活かした新規事業に乗り出しました。注力しているのが、ケアサポート、セキュリティ、製造・物流、ガス検知、精密農業といった分野です。いずれも、世の中の時流を見定めながらビジネスモデルを開発し、国内はもとより、海外に輸出するという方策を取っています。

――具体的にはどのような取り組みをしていますか。

三浦:例えば、介護サービス事業において、システムを使って介護施設における生産性を3割向上させることを目指しています。これは、高齢化と労働人口の減少という大きな社会課題の解決につながっています。

——詳しく教えてください。

三浦:どのように生産性を向上させるかと言えば、「状態監視」を行います。すなわち、人の行動を分析し、ソリューションを提供するのです。当社はもともと画像処理に強みを持ち、画像を取り込むことについては尖ったデバイスを持っています。ビッグデータ事業を展開する企業の場合は大量のデータを用いてソリューションを提供しますが、当社は「見えないものを見せ」、アナログな情報をデジタルに変換し、プロセシングをして価値を提供します。このロジックは、介護サービス事業だけにとどまらず、すべての分野において共通する、基本的な考え方です。他には、例えば匠の技や、ガス、医師の行動などを可視化する試みも行っています。

——なるほど。

三浦:当社が手がけたいのは、社会課題を解決するソリューションビジネスです。単なる機器売りではなく、システム全体を使って生産性の向上、品質アップ、スループットアップ、収益性アップを目指すのです。ここまで大きいソリューションビジネスはすべて自前というわけにはいきません。足りないところはすべてオープンイノベーションで補います。多くのメーカー、スタートアップと共創していくのです。

――画像を読み込んだ、その先の技術について、オープンイノベーションを起こしたい、ということですね。

三浦:そうです。また、ここでいう画像とは、動画を含みます。リアルタイム性を持ちたいので、すべて動画であっても高速な処理を前提としています。動画とAIなどを組み合わせ、人間では導き出せなかったようなことを導き出せればと思っています。


■オープンイノベーションがアウトソース先を探すことであってはならない。

――オープンイノベーションに取り組み始めたのは、いつごろになりますか。その際、会社側の反応はいかがだったでしょうか。

三浦:始めたのはおよそ3年前です。最初は、あまり理解されていませんでしたね。失敗も多くありました。特に当社のような大手がスタートアップと組む場合、発注元と発注先の関係になりがちです。協業に当たり、技術もその他の条件もすべてそろっていなければならないと考えていたところがありました。しかし、それはオープンイノベーションではなく、単なるアウトソースです。共に新たなものを創っていくことが、本当のオープンイノベーションです。現在はそのような考えに刷新しています。

スタートアップは、資金にしろ人にしろ、限られた中で事業を展開しています。協業する場合は、当社のような大手のほうが歩み寄るのが当然という場合もあるはずです。これを、例えば、投資するからすべてこちらに合わせろ、あるいは、技術をすべてよこせ、という姿勢では信頼を得ることもできません。ついついこちら側に有利な条件で契約を結ばせようとしますが、それではオープンイノベーションを成し遂げることはできないでしょう。

――かつての考えが変わり、今は順調に進んでいる、ということですね。

三浦:いえ、まだまだ発展途上です。というのも、当社は、先ほどから申しあげている通り、機器のメーカーです。「なぜ機器ではダメなのか」という考えが現場に根強く残っているのも事実だと思います。しかし、良い機器を作ったところで、ネットワークにつながらなかったりデータを取り出せなかったりでは、時流には乗れません。最初からシステムにつながることを前提にしていれば、作り方そのものが変わるはずです。このことを理解してもらうのに、非常にエネルギーを使っています。


■時代が変わっていることを、理解できるかどうか。

――現場のエンジニアとの意思疎通も欠かせないのですね。これまで、上司や経営層との意思疎通、意志の統一が難しいという話は多くお聞きしましたが、現場からの反発はあまり聞きませんでした。

三浦:当社がモノづくり企業だからこそ、出てくる話だと思います。「これまで良い機器を作ってきた。それが、なぜシステムのことまで考えなければならないのか」という思いがあるのです。しかし、これからは機器だけを追いかけても、時代に取り残されます。

テクノロジーは着実に進化しており、ある時、一気に時代を変えるほどのインパクトを与えます。カメラにしても、デジタルカメラ黎明期に銀塩を追いかけていたら、どうなっていたでしょうか。今となっては笑い話みたいなものですが、当時はデジタルで銀塩の質には追い付けないという主張があったのです。これと同じようなことが、IoTを取り巻く環境に起こっていると私は感じています。ベンチャーが何かやっていると、冷ややかに見ている向きもあるでしょう。しかし、間違いなくビジネスモデルは変わっています。日々、怖さすらあります。だからこそ、パートナーを探したいのです。

――とても熱い思いが伝わってきます。

三浦:これは本当に個人的な話ですが、これまで私のまわりには多くの成功事例がありました。しかし、諸先輩方が作ってくれたものに乗っかってきただけに過ぎません。それだけに、自分で新規ビジネスを創りたいという思いを強く持っているのです。

そして、かつて私は、テクノロジーの進化を読み間違え、新規事業で大きな失敗をしています。このままで終わることはできません。確かな成功を手にしたい、しかも、当社の持つ技術を最大限に活かして、時代に合ったビジネスモデルを作り上げたい。今はもう必死にやっていますよ。


■取材を通して得られた、オープンイノベーションの2つのノウハウ

(1)大手がスタートアップに歩み寄る

オープンイノベーションはアウトソース先を探すことではない。共に新たな価値を創り上げていくことである。三浦氏が話していたように、資金的にも人的にも余裕のある大手が、スタートアップに歩み寄ることは必要だろう。少なくとも、パートナーに対し、自社に有利な条件を引き出そうしてはならない。確かな信頼関係を築くことが、まずは重要だ。

(2)時代の流れを現場の技術者に知ってもらう

特に成功したメーカーであればあるほど、かつての成功事例から離れられないということがあるだろう。しかし、テクノロジーは進化しており、目に見える進化があった時に新たなことを始めても、もう遅い。時流を正確に読み取り、かつ、現場の技術者の理解を得るのが、オープンイノベーションを起こすメーカーにとって欠かせない工程となる。

(構成:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)