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「スポーツ産業はこれから3倍成長」!?ー業界のスタートアップ3社から見た市場の将来性とは

「スポーツ産業はこれから3倍成長」!?ー業界のスタートアップ3社から見た市場の将来性とは

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2019年のラグビーワールドカップ、2020年の東京オリンピック、2021年のワールドマスターズ。これからの数年間は、毎年のように日本で世界的なスポーツの大会が開催される。その流れに乗って注目を集めているのがスポーツビジネスだ。

playground株式会社が主催するミートアップ「play meetup」の第2回目は、「スポーツビジネス参入のリアル」をテーマに開催された。登壇したのはookamiの尾形太陽氏、ventusの梅澤優太氏、playgroundの伊藤圭史氏、そしてファシリテーターはAMPの木村和貴氏。いずれもスポーツビジネスを展開し注目を集めているスタートアップだ。

会場にはスポーツ業界に興味のあるビジネスパーソンが集まり、4名のトークセッションから多くのものを持ち帰ったようだ。今回はスポーツビジネスについてリアルに語られたイベントの内容をレポートしていく。

スポーツ業界注目のスタートアップ3社

イベントの冒頭には登壇した3社の自己紹介が行われた。最初に自己紹介を行ったのは株式会社ookamiの尾形氏だ。スポーツ・エンターテインメントアプリ「Player」を開発運用している会社で、新しいスポーツ観戦のスタイルを作り上げている。

これまでのスポーツ観戦はスタジアムに行くか、TVやモバイルの前で長時間観戦する2つ方法しかなかった。しかし、多くの人が本質的にスポーツ観戦に求めているのは「点が入った瞬間」や「勝った瞬間」といった瞬間である。この「瞬間」を届けるのが得意なのがモバイルだ。

「Player」は既存サービスのように1試合分の映像を全て配信するのではなく、試合の見逃せない瞬間に絞って配信している。モバイルには重要な情報が通知されるため、学校や仕事の合間など短い時間でもスポーツ観戦が楽しめる。試合の情報にコメントすることもでき、サービスの中でみんなと試合を共有することができるため、みんなで試合を盛り上げることができるのだ。

尾形氏「私達のサービスの最大の特徴は、あらゆる試合の情報を配信していることです。ニッチなスポーツや高校や社会人の試合など、一部の人しか見ない試合に関しても情報を配信しています。

見る人が少なくてテレビでは配信できないようなコンテンツを扱っているのです。ニッチな試合も含めて年間16,000試合の情報をかき集めて配信しています。

実は学生の試合などは、平日の日中にも行われているため、仕事で応援できない親たちは試合の情報を探しているのです。そのようなニーズにも焦点を当てて、どんな試合の情報でも配信できるサービスにしていきたいと思っています。」

▲株式会社ookami 代表取締役 尾形氏

続いて自己紹介を行ったのは株式会社ventusの梅澤氏。スポーツやエンターテイメント業界の中でもファンビジネスに特化したスタートアップだ。多くの人々は何かしら好きなチームや選手、アイドルのファンであり、これからの時代はそのような「何が好きか」がアイデンティティになり重要になってくると梅澤氏は話す。

梅澤氏「具体的に私たちが提供しているのはwhooop!という電子トレーディングカードのサービスです。サービス上で好きなチームや選手のトレーディングカードをコレクションすることができ、購入するほどチームのお金になるのでチームの強化にも繋がります。

ただトレカを集めるだけでなく、10枚集めたらサイン入りグッズが貰えたり、特定の試合やコンサートに行かないともらえないアイテムが貰えたりする仕組みを作っています。ファンが楽しんで好きなチームを応援できるサービス作りをしているのです。トレカのコレクションを見れば自分がいつから、どれくらいチームを応援してきたのか可視化して楽しむこともできます。」

▲株式会社ventus 取締役COO 梅澤氏

最後に自己紹介を行ったのは、playground株式会社の伊藤氏だ。伊藤氏は今の会社を立ち上げる前にも、小売業のデジタル化をサポートするサービスを作って売却に成功している。今提供しているサービスは、前の会社で行っていた「実店舗×デジタル」の図式を「スタジアム×デジタル」に当てはめたサービスだ。

これまでのスタジアムは、試合に訪れた観客を属性情報程度しか把握できていなかった。例えば中年男性が4人分のチケットを買った場合、家族分のチケットを買ったとしても「中年男性×4」として扱われていたのだ。それでは適切なマーケティングが行えるはずがない。伊藤氏はスタジアムが適切なマーケティングを行うためのサービスを展開している。

伊藤氏「私達が提供しているモアラはスポーツ向けのチケットサービスです。チケットを買うとLINE上でチケットが届き、友達の分のチケットもLINEで友達に送れます。これまでチケットを4枚買っても、スタジアムは同伴者の3名のお客様とは繋がれませんでした。モアラではチケットを持っている人全員と繋がれるため、適切なマーケティングが行えます。

スタジアムに着いたらスマホでチェックインするので、いつスタジアムに訪れたのか分かります。スタジアムに着いた方にメッセージを送るなど、リアルタイムなコミュニケーションも可能です。入場した人限定のくじ引きなどの企画が行えるため、チケットを持ったことを起点に様々なプロモーションを行えるのです。今後はスポーツだけでなく、エンターテイメントにも市場を拡大していく予定です。」

▲playground株式会社 代表取締役 伊藤氏

スポーツビジネスを始めたきっかけとは

トークセッションが始まり、ファシリテーターである木村氏が最初に投げかけた質問は「今のビジネスを始めたきっかけ」についてだった。

尾形氏「私はスポーツ業界でビジネスを立ち上げることを10代の頃から考えていました。実際に大学の時もスポーツ業界で一度起業しましたが、スケールはしませんでしたね。もう一度起業してから今のサービスに辿りくまでも1~2年は試行錯誤を繰り返しました。最初のころはニュース配信をしていたのですが、経済のように専門的にコメントできる人がほとんどいなくて、スケールするのが難しかったのです。

サッカーの日本代表戦などの試合情報も配信していたのですが、GoogleやYahooなどでも同じことをしていて勝ち筋が見つけられない。しかし、ある時高校生の試合の情報を配信したときに、多くのアクセスが集まったのです。それでニーズと供給が合っていないことに気づきました。

それからマイナーな試合を集めたらマスになって、日本中にある感動を掘り起こせるのではないかと思ったのです。ただし、ニッチな試合に投資するのはとても勇気が必要でしたね。多くの試合情報を集めなければならないため、長期間続けるための資金などの懸念もありました。」

梅澤氏「私ももともとスポーツ領域に興味がありました。起業する前は尾形さんのookamiにいたのですが、自分でもビジネスをやりたくなって同級生を集めて起業したのです。

ビジネスアイディアに関しては、トレカはさほど重要ではありませんでした。2年前にちょうど投げ銭や仮想通貨のICOが流行っていて、『民間でもこうやって資金調達できるんだ』と思ったことがきっかけです。今まで価値がなかったものが、応援されることで価値が生まれるっていうことを、スポーツでもやりたいと思ったのが始まりです。

最初の頃はコインで応援するサービスを考えていたのですが、説明してもなかなか伝わらなく、多くの人がイメージしやすいトレカに行き着いたのです。最初は支援できるサービスと言っていたのですが、ファンには『寄付したい』というニーズはないんですよね。それでファンも楽しめるトレカであれば、楽しんで応援できて気づいたら支援できると思ったのです。」

伊藤氏「私は前の会社を売却したときが28歳だったのですが、残りのIT起業家人生はそう長くないと思って、自分が憧れる仕事がしたいと思ったことがきっかけです。もともとスポーツ・エンターテインメントが好きだったので、漠然とスポーツビジネスをやってみたいとは思っていました。

そんなときに以前売却したサービスの技術を見て、スポーツ業界の会社からも『うちでその技術使ってくれないか』と声をかけてもらったのです。好きなことができると思ったので、正直、市場規模などは特に考えていませんでしたね。

スポーツビジネスを始めたら、家族の私を見る目が変わりました。以前やっていたサービスは専門的すぎて、親に説明してもよく分かってもらえなかったのです。しかし、今のサービスはいとこの子供にも理解してもらって、かつ喜んでもらえるので充実感があります。」

スポーツビジネスの壁と可能性

テーマは移り、「スポーツビジネス業界の壁と可能性」について語ってもらった。3名は実際に参入してみて、どれほどの可能性を業界に感じているのだろうか。

伊藤氏「スポーツ業界は、ビジネスより理念が優先されるケースが多いです。他の業界に比べて特異なところですね。例えば100億円儲けるより話よりも、サッカーの日本代表がベスト8に行くことの方が優先される世界。

高校スポーツを見ていても、日本では『高校生は稼いではいけない』という風潮が強いですね。海外では高校生でもとても稼いでいるのを見て大きな差を感じます。」

尾形氏「スポーツ業界は業界構造がとてもユニークですね。権利についても『なんちゃって権利』みたいなのが多いので、ちゃんと自分で調べなければなりません。

例えば放映権という言葉を聞いたことがある方も多いと思いますが、実は法律には放映権は定められていません。著作権と肖像権は法律ですが、放映権は慣習なのです。そのような法律と慣習のあいだを突くと面白い市場があると思います。

スポーツ市場自体も成長産業だと思っていて、アメリカと比べると分かりやすいと思います。今アメリカのスポーツ市場が50兆円で、日本は5兆円なので10倍の差があります。しかし、GDPの差は3.3倍しかない。つまり日本のスポーツマーケットにはまだまだ余白がありますし、市場規模を算出されていない市場も多いのです。」

壁ではないがスポーツビジネスに参入したい人に対してアドバイスをしたのが梅澤氏だ。

梅澤氏「私はスポーツビジネスという言葉を使ったことがありません。私達がやっているファンビジネスとtoBのビジネスは違いますし、アリーナビジネスも全然違うからです。よく『スポーツビジネスに関わりたいです』と相談されることがあるのですが、Jリーグの運営に関わるのとファンビジネスに関わるのでは全く違います。

チームが求めていることと自治体が求めていることも全然違うので、スポーツ業界で何がしたいのか明確にすれば、やるべきことが見えてくるんじゃないかと思います。

私がファンビジネスを選んだのはわかりやすかったからです。創業した20歳当時の私では知識もなくてスポンサー側のビジネスはできませんでした。これからスポーツ系で起業するのであれば、自分の接点のあるところから始めてみるといいかもしれませんね。」

伊藤氏「梅澤さんの話を聞いて共感したのですが、若い人の方がtoCビジネスって向いていると思います。なぜなら上の世代の人が解決すべき課題は既に誰かが解決しているので、おっさんがやろうとしているtoCビジネスは既に誰かがやっていたり、解決しているからです。

だからこそ20代前半までにtoCビジネスをしている人のほうが、イケてるサービスを作れている印象がありますね。Facebookだってザッカーバーグが若いからこそできたサービスです。

逆におっさんだからこそ手がけられるサービスもあります。例えば私はCRMや顧客データなど、流通の裏側をすべて知った上でビジネスを始めました。そのような社会の仕組みなどは、ある程度年齢を重ねないと見えてこないので、おっさんに向いているビジネスだと思いますね。」

伊藤氏は続けてスポーツビジネスの将来性についても語った。

伊藤氏「私は、スポーツビジネスはすごい可能性を秘めていると思っています。今私がサポートしているチームの観客動員数が約200万人なのですが、それを海外で話すととても驚かれます。なぜならマンチェスター・ユナイテッドですら動員数は140万人ほどだからです。ちなみに私の好きなカープの動員数は300万人です。

つまり日本のスポーツ業界はしっかりビジネスができていないだけで、動員数やファンの数は海外にも負けていませんし、熱狂具合も変わりません。唯一の違いは体育の理念というか、メンタリティの壁があることです。それさえ取っ払えば、いくらでもスポーツビジネスでできることはあると思います。」

スポーツビジネスの可能性は海外にも通じている。グローバル展開についても3名は答えてくれた。

尾形氏「私はいつかグローバル展開したいと考えています。もともと私はナイキが好きで、いつかナイキと戦える企業を作りたいと思って起業したので、グローバル展開は当然のように考えていました。

進出したいと思っているのはアジア圏です。スポーツ市場は発展途上国であればあるほど成長率が高いんです。経済が発展して可処分時間が増えるのに比例して、スポーツ観戦にお金を使うためです。

一方でアメリカやヨーロッパは成熟していますし、スポーツメディアもいっぱいあります。インドや東南アジアの国のようにカテゴリーはいっぱいあるのに、情報を発信しきれていない国が狙い目だと思っています。」

梅澤氏「グローバル展開は考えているものの、私達のサービスの軸にあるファンという思想は日本人的であることを懸念しています。アメリカやヨーロッパにも、もちろんファンはいるのですが日本とは少し若干違う印象がありますね。

例えば海外ではクラウドファウンディングが流行していますが、クラウドファウンディングは投資であり、リターンありきで考えますよね。私たちのサービスはもっと精神性に寄与しているサービスだと自覚しているので、海外で通用するかどうか懸念はあります。」

伊藤氏「私は個人の人生プランでもイスラエルに住む計画があるので、もちろんグローバル展開を考えています。様々な国を巡ってチャンスを探した結果、最初に狙っているのはヨーロッパサッカーですね。

ヨーロッパサッカーのチケットシステムは未だに古いサービスを使っているところもあり、スタジアムの中にサーバールームがあるような状況だったからです。これなら絶対にリプレイスできると思ったので、ヨーロッパから展開しようと思っています。」

スポーツ業界にもっと可能性を感じて欲しい

イベントの最後には、登壇者に会場に集った人へのメッセージをもらった。

尾形氏「多くの人は仕事の選択肢を考えるときに、スポーツ業界が選択肢に入っていないと思います。ぜひ今日を機会に選択肢の中にいれて欲しいと思います。それは起業を考えている人でもいいですし、新規事業を考えている人でもいいです。

もちろん転職を考えている人は、スポーツ業界のスタートアップにも目を向けてみてください。スポーツ業界はリーダーはいても、まだ優秀な人が集まる産業になっていません。本日集まった方のような感度の高い人に入ってもらって、もっと業界全体が盛り上がればいいと思います。」

梅澤氏「尾形さんが話したことはまさにそうですね。スポーツ業界は他の業界に比べてまだスタートアップも少ないですし、成功している起業もありません。それは他の業界のように多産多死が起きていないからだと思います。

そもそもスポーツ業界ではビジネスが生まれていない状況なので、可能性が眠っていることが知られていません。今は競争するどころか業界全体で協力し合っている状況なので、本日スポーツ業界に可能性を感じた人は起業なり転職を考えてくれれば嬉しいですね。」

伊藤氏「実は10年ほど前にスポーツ業界にも多産多死した時期があったんですよ。私が1回目の起業したころなので、2011年ぐらいですね。なぜ当時のスタートアップが成功しなかったというと、既存のプレーヤーとコンフリクトを起こしたからです。

歴史的にも新規参入する企業とコンフリクトを起こしやすい業界なので、これから起業する方は業界への入り方は気をつけた方がいいと思います。理想やエゴだけで業界に参入して死んだケースは数多く見てきました。

ですから私達やサポートしてくれるメンバーとよくディスカッションして、いかに業界を発展していくか考えてみてください。今はシンプルに業界をディスラプトしていく時代ではなく、既存プレーヤーも含めて業界を発展させていく時代です。スポーツ業界は少なくとも3倍は成長する産業だと思っているので、みんなで成功しようと考えている人が業界に参入してくれればいいなと思っています。」

取材後記

最近、スタートアップ界隈の様々な場面でスポーツ業界の可能性についての話を耳にする。これまで業界にいなかったビジネス人材が流入し始めて、徐々に文化が変わりつつあることが要因だ。

今回のイベントを通して業界が持つ可能性を明確に感じたと同時に、旧態依然とした文化との摩擦があることも感じた。しかし、それを差し引いても魅力的な市場であることに変わりはない。記事の冒頭で書いた通り、日本は2019年から世界的なスポーツの大会が目白押しであり、日本のスポーツ業界は今が大きなチャンスだと言えるだろう。

起業を考えている方、新規事業を探している方、転職を検討している方、いずれの人にもスポーツ業界の可能性を感じてもらえれば幸いだ。

(編集:眞田幸剛、取材・文:鈴木光平、撮影:加藤武俊)

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