内閣府は、「内閣府オープンイノベーションチャレンジ2019」(スタートアップ・中小企業による公共調達の活用推進プログラム)を開催すると発表した。これは、国の機関や地方自治体が有する具体的ニーズに対して、スタートアップや中小企業がチャレンジするという取り組み。2017年に次いで、2回目の開催となる。


開催の背景

近年、多様化・複雑化する社会課題を迅速に解決するため、国の省庁及び地方自治体において、行政サービスの向上や業務効率化に資する新技術や新サービスの導入に係るニーズが高まっている。そのため、新技術・新サービスの創出の一翼を担う研究開発型スタートアップ・中小企業の斬新なアイデアに期待が寄せられており、スタートアップ・中小企業と行政との連携の必要性が生じている一方、こうした連携の機会はまだ少ない状況だ。

他方、スタートアップ・中小企業においては、新技術・新サービスを通じた社会課題解決のアイデアを有しているものの、人材・資金等の経営資源や信用力の不足から、そのアイデアの実証や導入を省庁・地方自治体に提案する機会をなかなか獲得できていないという現状がある。

こうした状況を踏まえ、内閣府では、社会課題解決や行政サービスを向上するための省庁・地方自治体の具体的ニーズに対応する新技術・新サービスを持つスタートアップ・中小企業を積極的に発掘。省庁・地方自治体とスタートアップ・中小企業との連携機会を創出することを目的としてスタートアップ・中小企業やスタートアップ・中小企業と大企業、大学及び研究機関等の連携チームを対象とした公募事業を実施する。


事業の実証や試験導入を支援

「内閣府オープンイノベーションチャレンジ2019」では、国の省庁及び地方自治体が持つ「課題」を基に募集テーマを設定し、以下を実施していく予定だという。

●募集テーマに対するアイデアを基にした新技術・新サービスと当該新技術・新サービスを幅広く展開するためのビジネスモデル等の提案を募集し、内閣府が設置する技術審査委員会において審査、認定を行う。

●メンターなどによる事業の磨き上げ、大企業・メインコントラクター企業などとのマッチング、課題提供機関との面談の機会等を提供し、提案内容のレベルアップを図る。

●成果提案イベント(Demo Day)の実施などにより、課題提供機関と連携した事業の実証や課題提供機関における事業の試験的な導入へとつながる端緒の創出を支援する。


4つの募集テーマの具体的な中身とは?

今回の取組は、国の機関及び地方自治体が有する現場の具体的ニーズを基に、【防災・減災】、【インフラメンテナンス】、【暮らしの環境】、【行政業務効率化】という4つの募集テーマを設定。以下にその詳細内容を紹介していく。


【防災・減災】

大規模自然災害に対しての政府や地方自治体の適切かつ効果的な対応策が強く求められる中、現状においては、以下のような課題があります。

・ほとんどの災害は正確にその発生と被害を予測することが難しい。

・災害発生時に迅速に全体の状況を把握し、リアルタイムで関係者への周知や対策を行うことが難しい。

・災害発生後の復旧作業について人力作業に頼ることが多く、早期の復旧が難しい。

そこで、自然災害等の予兆や発生後の状況をいち早く、高精度に把握するとともに、自然災害等の予測・被害予測を迅速かつ正確に行い、自然災害等の防止や災害による被害を最小限に抑える技術・サービスが求められています。また、被災地等における過酷な環境下でも、人命救助やライフラインの供給を可能とし、迅速な復旧を実現する技術・サービスが求められています。

■浜松市「地域における浸水状況の正確な予測と迅速な把握」

■加賀市「降雪・積雪・除雪状況をリアルタイムに地域・自治体・観光客等に情報提供する手法」

■海上保安庁「海上に流出した有害物質を遠隔操作によって検知する手法の確立」

■京都府「空撮技術等を活用した進入困難箇所の被災状況の効率的な調査・評価」

■大阪市「火災調査業務(実況見分)支援端末」

■国土交通省「災害に対応した排水ポンプ技術(低水位排水)」

■国土交通省「災害に対応した油膜回収技術」

■国土交通省「歩道清掃ロボット(浸水被害後における効率的・省力的な歩道等路面清掃)」

■海上保安庁「投石から窓ガラスを保護する後付施工可能な手法の確立(飛来物からの窓ガラスの確実な保護)」


インフラメンテナンス】

1960~70年代の高度成長期に集中的に整備されてきた多くの道路や橋、上下水道、建築物(公共施設)などが今後急速に老朽化することが懸念されていますが、現状においては以下のような課題があります。

・施設の数が多く、点検・修理、維持・管理にコストがかかる。

・人員の不足、ベテラン職員の退職等で適切な点検・修理、維持・管理が困難になっている。

そこで、公共インフラの健全性を監視・確認し、効率的に維持・整備することで長寿命化に資する技術やサービスが求められています。

■消防庁「危険物施設におけるタンク及び配管等の腐食等劣化に対する評価・診断手法」

■福岡市「下水道工事における地下埋設物破損の防止対策」

■福岡市「水路蓋の劣化状況の把握」

■福岡市「橋梁の劣化状況の確認(橋梁劣化状況の効率的な点検の実現)」

■国土交通省「トンネルのジェットファンに代わるメンテナンスフリーの換気設備」


【暮らしの環境】

健康的で文化的な暮らしの質の維持・向上や、住民の地域への愛着の獲得、地域の個性の創出のために、地域の景観・美観をはじめとした暮らしの環境を保全することも行政の大事な仕事です。しかし、こうした暮らしの環境の保全に係る実務(清掃や草木の管理、空き家対策等)はマンパワーに頼るところが大きく、昨今の財源縮小の傾向や、今後若年人口の減少の見込みも踏まえると、早急な効率化が求められています。

そこで、地域の暮らしの環境の保全や向上に関する業務を効率化するような技術・サービスが求められています。

■国土交通省「歩道清掃ロボット(落葉等の除去等)」

■浜松市「中心市街地におけるムクドリ被害対策」

■つくば市「良好な生活環境の保全と地域活性化を図るため、空き家を把握し活用する手法」


【行政業務効率化】

近年は行政サービスに対するニーズの複雑化・多様化が進んでいます。その反面、政府や地方自治体は厳しい財政状況のもと職員数の増加が見込めない状況です。業務のスピード感を高めつつ、行政サービスの品質の維持・向上を図り、持続可能な形で良質な行政サービスを提供する業務効率化が必要となっています。

そこで、こうした課題を解決するような、行政業務効率化の技術・新サービスが求められています。

■福岡市「衛生監視における施設立入調査の効率化(巡回ルートの効率化)」

■名古屋市「住民等から寄せられた声を効率的に分析して改善提案をする手法」

■つくば市「高齢者が緊急時SOSを出せる手法」

■経済産業省「VRオンライン会議の導入について」


スタートアップや中小企業の機動力に注目

今回の取り組み実施について、内閣府 政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付 イノベーション創出環境担当 企画官 石井芳明氏は以下のようにコメントを述べている。

「社会課題の多様化・複雑化、行政サイドのマンパワー制約から、公的サービスの効果向上にオープンイノベーションを取り入れる時代となっています。特にスタートアップや中小企業の機動力に注目。課題によって大企業の経営資源や大学の技術シーズとの組み合わせで素晴らしい解決策が提案されることも期待しています。 

試行的に実施するプログラムのため、応募期間や実施期間は短いのですが、今後の日本版SBIR制度(新技術の開発と社会実装を支援する制度)の見直しなど大きな枠組み作りにも繋げてゆきたいと考えています。

また、今回、先進的な取り組みをしている自治体との連携を始めましたが、国・地方自治が一体的にイノベーション活用に動く仕組みを構築することも目指しています。ぜひご応募いただけますと幸いです」。


なお、「内閣府オープンイノベーションチャレンジ2019」の提出書類は、特設サイトから取得可能。提出期限は、【2019年12月13日(金)12:00】となる。その後、審査委員会が開催され、約4ヶ月間の実施機関を経て、2020年5月頃にピッチイベントが開催される予定だ。

省庁・地方自治体に対してアイデアの実証や導入を提案したいというスタートアップや中小企業はぜひこのチャンスを活かしてほしい。

(eiicon編集部)