eiicon

【特集インタビュー】4期目を迎える富士通アクセラレータプログラム。IoT、クラウド、AI部門の各担当者が、スタートアップに期待することとは?

今年第4期を迎える富士通アクセラレータプログラム。過去3期で25社と協業検討を行い、来年にはスタートアップの技術を組み込んだ商品が、いよいよ市場に登場することになる。プログラムの魅力は何といっても、スタートアップが富士通グループのアセットを、最大限に活用できること。国内トップのITサービス市場シェア、世界最大級の顧客基盤(約17万社)、最先端のデジタルプラットフォーム、そして大規模事業展開に必要な販売チャネル、生産能力、保守サポート体制、コールセンターなどがそろい、思い切りチャレンジができる。以下ではプログラムの概要とあわせて、今年プログラムに参加する、IoT、クラウド、AI部門の担当者に、各部門でいま注目すべき事業内容と、スタートアップへの期待を聞く。


■4期目を迎える富士通アクセラレータプログラム

近藤秋乃
マーケティング戦略室・ビジネス開発部


──富士通アクセラレータプログラムの概要について教えてください。

近藤:当社のアクセラレータプログラムは、スタートアップの革新的な技術や製品と、富士通グループの製品、ソリューション、サービスを組み合わせ、社会に新たな価値を提供することを目的としており、豊富な顧客基盤を持つ富士通事業部門とのマッチングによる新たな事業機会の創出を目指しています。

プログラム4期目となる今回は、AI、セキュリティ、IoT、クラウドのカテゴリーを中心に各事業部門が、それぞれにテーマや条件を設定して参加しています。一方、募集対象となる企業は、アーリーからミドルステージのスタートアップです。募集は2月から始まり、書類選考を経て、4月上旬には20社ほどがピッチコンテストに臨むことになります。その後10社程度と3ヶ月間の協業検討に入り、9月上旬のDemo Dayで、成果発表を行い、最終的に協業契約を目指します。協業契約が成立した場合は、投資を検討させていただく可能性もあります。

近年のデジタルビジネス業界では、商品のタイム・トゥ・マーケットが重要になっていますので、スピード感のあるスタートアップとのパートナーシップにより、市場が求める商品をより迅速に投入していければと思います。富士通アクセラレータプログラムは、今後も拡大していく予定です。スタートアップの皆様と当社とでお互いの強みを活かした協業を通じて新しいビジネスを創っていきたいと思っています。


■IoT部門:新しいIoTビジネスへの挑戦

小林午郎
イノベーティブIoT事業本部 本部長代理


――はじめに、小林さんが担当されているIoT領域について聞かせてください。

小林:IoTに関するニュースを見ない日がないように、現在この領域のビジネスは名実ともに本格化しつつあります。また、世界のIoTデバイスは2020年には500億個以上にまで増加すると言われており、当社としてもハードからソフトまで様々な商品・サービスを取り揃え、お客様と共にビジネスを拡大しています。しかしながら、IoT領域のタイム・トゥ・マーケットは非常に早く、多岐に渡るため、新しいビジネスモデルを社内の力だけで開拓していくのは難しい状況でもあり、オープンイノベーションで手を取り合い、新領域に共にチャレンジできるパートナーを見つけたいと思っています。

――今回のテーマになっている、IoTデバイスについて聞かせてください。

小林:今回の富士通アクセラレータプログラムでは、富士通研究所で開発された新しいIoTデバイスを使ったビジネスをテーマに考えています。これは、富士通研究所が2015年に開発したバッテリーレス・ビーコン技術をベースに、Sigfox社のLPWA (Low Power, Wide Area) 技術を組み合わせ、温度や湿度などのセンサー情報を遠隔地に通信することができるものです。

太陽光パネルが内蔵されており、蛍光灯などの少しの光を使って動作ができるため、電池交換など頻繁なメンテナンスが不要なうえ、小型でいろいろなところに設置できるのが特長です。さらに一般的なデバイスは、BLE (Bluetooth Low Energy) による通信であるため通信可能距離が数mから十数mと短く、広い場所で利用するにはデバイスを多数設置しなければならないなど課題があるのですが、このIoTデバイスはSigfox社のLPWA技術が組み込まれているので、数kmから十数kmという広域に通信ができるようになっています。

IoTデバイス普及のネックとなっていたひとつのハードルがクリアされた、利便性と実用性を兼ね備えたデバイスと言えるのではないでしょうか。

――アクセラレータプログラムのテーマも、このデバイスを活用した新たな事業展開ということですね。

小林:そうです。この技術を使った新規事業の検討は、まさにこれから始まるところです。当社顧客への展開が可能な他社にないIoTサービス、あるいは、デジタル革新につながるような、ニューカテゴリにおけるIoTサービス。これらを実現するための技術や製品、ビジネスモデルを広く募集しています。

本デバイスを最大で1年間無償提供、開発・実行環境であるFUJITSU Cloud K5 IoT Platform の無償利用、実証実験の実施と当社顧客とのマッチングの機会提供と、サポート体制を整えてお待ちしています。当社のプラットフォームを使って、IoTの世界に創造の翼をダイナミックに広げていただければ嬉しく思います。


■クラウド部門:急成長するシェアリング・ビジネスをサポート

松本安英
デジタルビジネスプラットフォーム事業本部
ビジネスプラットフォームサービス統括部 シニアディレクター

――松本さんの部署で取り組む、クラウドを使ったシェアリング・ビジネス基盤サービスとは何ですか?

松本:個人同士でモノやサービスを貸し借りしたり、企業から借りたりする、インターネットを介したシェアリング・ビジネスが、さまざまな分野で急成長しています。これに対応し、当社でもクラウドサービス「K5」による、シェアリングビジネス基盤サービスの提供に力を入れています。基盤の開発だけでなく、お客様のシェアリング・ビジネスに適したアプリケーションの構築支援、アプリケーションに必要な各種管理機能の提供も、富士通が行います。サービスを利用するお客様が登録する情報は、ニーズに応じて自由にカテゴリーを拡張して設定できますから、あらゆる種類のシェアリング・ビジネスに対応が可能です。シェアリング・ビジネスはもともと、「欲しい人」と「提供する人」のマッチングが基本ですが、取引を続けるにつれクラウド上に蓄積される情報も、お客様の貴重な財産です。これを解析して人工知能系のサービスとつなぎ、ビジネスを最適化していくなど、当社の他の部門も巻き込んで、さまざまな可能性が広がる分野です。

――新しいビジネス分野ですが、スタートアップとの連携はどのように?

松本:シェアリング・ビジネスは、スタートアップを中心に拡大しています。そのパートナーとして、顧客基盤を持つ大手企業が参画すれば、スタートアップのビジネスに、さらなる拡大が望めるでしょう。私たちもまた、スタートアップの独創的な技術、サービスを活用することで、当社が提供するシェアリングビジネス基盤サービス強化されることを期待し、よき出会いを求めて今期のアクセラレータプログラムに参加しました。シェアリングビジネス基盤サービスの提供を通じ、よい連携ができればと思っています。


■AI部門:目的別APIの一大ラインナップを作りたい


山影 譲
AIサービス事業部・AIコンサルティングサービス部 部長

――AIは、デジタル革新におけるカッティングエッジ。富士通としては、どのようなスタンスで取り組んでいますか?

山影:私たちはICTベンダーとして、AIに対する現実的な理解を促進し、お客様の業務上の課題や新しい事業展開で、どのようにAIを生かせるのか、具体的で地に足の着いた提案をしていきたいと考えています。デジタルビジネス革新が進むと、お客様の業務は複雑化していきますから、効率化や新しい価値の創出に関連して、AIへの期待が高まります。そこで基本APIの提供にとどまらず、具体的な業種業務に合わせてカスタマイズした、多種多様な目的別APIをできるだけ多く提供していきたいと考えます。当社のデジタルビジネスプラットフォームMetaArc(メタアーク)における、Zinrai(ジンライ)プラットフォームサービス上で、ニーズも実用性も高いAI機能をAPIとして提供します。このプラットフォームに含まれる、世界最速クラスの学習処理能力を実現したディープラーニング基盤サービス、「Zinraiディープラーニング」にも、ぜひ注目してください。

――協業を目指すパートナー企業とは、どのような関係を築きたいですか?

山影:大きな統合プラットフォームである当社のMetaArcは、一種の「場」です。このMetaArcの上で、パートナー企業とウィン-ウィンのビジネス関係を築きたい。私たちの希望は、できるだけ幅広い業種に向けて、できるだけ多くの目的別APIを用意することです。これは私たちAI部門のアクセラレータプログラムのテーマであり、スタートアップ企業の力を得て、一緒に目的別APIのラインナップを大きく広げたいと思っています。また、私たちは巨大な顧客データを保有しており、そのSoR(※1)のデータから、顧客企業のために新しいビジネスの価値を最大限に引き出し、新しいサービスすなわちSoE(※2)を創出できるという強みがあります。私たちはSoRからSoEを創出する。この点においても、私たちは協業会社にとって、稀有なパートナーになりうると思います。最後に一人のエンジニアとして、スタートアップ企業のみなさんの発想やエネルギーから、たくさんの刺激を受けたいと、コラボレーションを楽しみにしています。

※1 SoR:Systems of Record (業務処理や記録をするシステム)
※2 SoE :Systems of Engagement (人、モノなどに関与するシステム)