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【連載/4コマ漫画コラム(56)】 世界に出る「第一歩」の踏み出し方

【連載/4コマ漫画コラム(56)】 世界に出る「第一歩」の踏み出し方

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ペルソナ作りが第一歩

既に日本国内で一定の市場を獲得している製品の場合、更に売上を伸ばすために海外進出を検討するのは当然です。しかし、まだ海外での販売網などを持ってない会社の場合、やらなければならないことは沢山あり大変です。そのための「第一歩」の話……ではなくて、今回は私が普段関わっている「新規事業創出」における海外に関係する「第一歩」の話をしましょう。

私がメンターをしている沢山の新規事業の検討では、「どういうサービスや製品を作り提供するか」ということ以上に、「誰のどんな課題(PAIN)を解決したいのか」を重要視しています。(PAINではなくてもっとワクワクするGAINで捉えるものもあります)

その「誰(ユーザー)」の設定が、殆どの場合「ぼんやり」しています。それをできるだけ具体的にあたかも実在しているかのような「ペルソナ」を作ることが大事です。

最適なペルソナは本当に日本にいるのか?

自社の強みや技術を活かして「新規事業」を作る場合でも、新規製品や新規サービスを作り上げることだけに盲進してはいけません。それを求めるユーザーのペルソナを作って、「ペルソナが実在するか」「ペルソナがこのサービスや製品を必要とするか」を最初の段階から検証し、軌道修正していくことが重要です。

ところが、ペルソナを作ろうと思うと、どうしても「日本国内にいる人」になってしまいがちです。例えば、「今は元気だけど健康のことが気になっているお年寄り」というようなペルソナを作ろうと思ったら、「墨田区に住んでいる田中源三郎さん。83歳。元々は小学校の理科の教員。今も草花の写真を撮り続けている。妻は3年前に他界。娘は二人いるが一人は結婚して家族でアメリカにいて……」というような感じで容易く「具体的な人物像や生活」を日本人であれば想像することができます。そして、そのペルソナが「どうしてこの新規事業のサービスを必要としているのか」の設定も「仮説」として比較的容易に作ることができ、そのペルソナに近い人を探し出してインタビューをしたり新製品の感想を聞いたりする「検証」もやりやすいのが通常です。

しかし、例えば「アジアの新興国の都市部に住む今は元気だけど健康のことが気になっているお年寄り」のペルソナを簡単に作れる人は殆どいません。

そのため、どうしても新規事業の検討段階では「とりあえず日本で事業を立ち上げて、その後海外展開」というシナリオになりがちです。

「どこの国・地域から始めるか」に大事な2つのポイント

しかし、「事業をどこから始めるか」は事業を成功させるためには本当に大きなファクターです。

ポイントは2つ。

① 大きなPAINを抱えているユーザーから始めること

② 早く事業立ち上げができること

もちろん、「大きな市場があること」のポテンシャルマーケットサイズも重要ですが、ユーザーを絞り込めていない段階では、実はあまり意味がありません。(単に「高齢者の数が多い」などは市場規模にはなりません)。

日本国内で「想定ユーザー(ペルソナ)」を作ると、「実はあまりPAINが大きくない。なぜならば、それなりに満ち足りていて、そのPAINも他の方法でなんとかできて、それで一応いいから」となっていたり(つまり①ではない)、「規制があってやりにくい、あれこれ動きが遅い」(つまり②ではない)というようなことが多々あります。

海外ペルソナを作るために

では、海外にいるかもしれない最適なペルソナをどうやって作ればいいのか。

まずは(仕方ないので)「この製品・サービスを必要としているペルソナはこんな感じかなあ」とぼんやりしたものでいいので「ペルソナ バージョン0.1」を作りましょう。そして、そういう人がいそうな国や地域をこれも「ぼんやり」でいいので、いくつか挙げてみましょう。外れることは覚悟の上です。

そして、その国や地域に行きましょう。できれば、現地の知り合いの会社や団体とコンタクトして、「こういう生活や状況にいる人に会いたいのだけど」と言って、軽いリコメンドをもらいましょう。もし現地に知り合いがいないのであれば、その国の大使館に連絡したり、その国の経済関係の活動をしている公的機関や財団法人(例えばイギリスだとUKTI(UK Trade & Investment)など)に聞いてみると想像以上に丁寧に教えてくれます。(はずれもありますが気にせずに)

そうやってとにかく行って会って自分の目で見てみるのが「第一歩」です。全く知らなかったぼんやりしたペルソナに劇的に命が吹き込まれます。

私が関わったインド農村部でのプロジェクトでも、行く前ははっきり言って全くペルソナらしいものが作れなかったのですが、1か月農村に滞在したメンバーの会話は、「その事業だったら、あの池を右に曲がった3軒目の18歳の女の子は喜んでやるんじゃない?」「そうだよね、あの娘は今も家のお手伝いで小さな小売りをやっているしね」という感じで、超リアルな人物像を想像できるようになりました。

もちろん、新規事業を大きく立ち上げるには市場の様々な統計的データも必要です。しかし、たった一人のペルソナを作れないようでは、血の通わない統計データは全く生きてきません。

海外に行けばいい、というけれど

「でもなあ、そんなぼんやりした海外出張なんて承認される訳ないよ」とか思うのも当然です。しかし、新規事業を本気で立ち上げるためには、真のターゲットユーザーを設定することは最大の課題です。それをキラキラさせた目で訴えて海外出張許可を勝ち取りましょう。

会社も新規事業の立ち上げを本気で考えているのであれば通るはずです。出張ごときでごちゃごちゃ言うようであれば本気度が薄い証拠です。出張費なんてその後の事業開発費に比べれば屁みたいなものです。ここでケチると後で本当に後悔します。変に大きな活動になってからの軌道修正には大きなコストがかかります。

もちろん、他の出張目的を「塗して(まぶして)」出張許可を得るというような新規事業推進に必須である「手練手管であれこれ言ってなんとか説得する」ことも大事です。

とにかく行っちゃいましょう!話はそれから。


■漫画・コラム/瀬川 秀樹

32年半リコーで勤めた後、新規事業のコンサルティングや若手育成などを行うCreable(クリエイブル)を設立。新エネルギーや技術開発を推進する国立研究開発法人「NEDO」などでメンターやゲストスピーカーを務めるなど、オープンイノベーションの先駆的存在として知られる。

▼これまでの4コマ漫画コラムがアーカイブされている特設ページも公開中!過去のコラムはこちらをご覧ください。

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