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【イベントレポート】第14回NEDOピッチ~「IoT」分野の有望ベンチャー5社が登壇~

民間事業者の「オープンイノベーション」の取組を推進し、我が国産業のイノベーションの創出及び競争力の強化に寄与することを目的に設立されたJOIC(オープンイノベーション協議会。3月1日よりオープンイノベーション・ベンチャー創造協議会へ改組)。2月28日(火)、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)と共催で、オープンイノベーションによるイノベーション・具体的な事業提携事例の創出を目指すイベント「第14回NEDOピッチ」を開催した。今回テーマとして設定された領域は『IoT(Internet of Things)』。会場となったNEDO川崎本部には、画期的な技術を誇るベンチャー企業5社が集まり、熱のこもったピッチを行った。


■IoT分野で独自技術を誇るベンチャー企業がその特徴を紹介

当日は、多彩な業種・業界の大手企業やベンチャーキャピタルの事業担当者をはじめ、多数の参加者が来場し、会場内はイベント開始前から静かな熱気に包まれた。イベントの冒頭には、NEDOの理事を務める福田敦史氏があいさつ。NEDOピッチを主催するJOICの取組を紹介。さらに過去13回の「NEDOピッチ」開催を通して、登壇したベンチャー企業と大手企業などとの面談設定が166社を数え、ピッチをきっかけに事業提携が決定した例など、具体的な実績も公開された。それに続く登壇企業5社のプレゼンテーションと質疑応答では、各社が研究開発の成果に加え、独自技術の可能性や目指すビジョン、事業提携ニーズを語った。


■ユカイ工学株式会社 http://www.ux-xu.com/

▲CEO 代表 青木 俊介氏

同社のテーマは、「ロボティクスで世の中をユカイにする」こと。ピッチでは代表的なプロダクトである離れた場所にいる家族を繋ぐコミュニケーションロボット「BOCCO」(http://www.ux-xu.com/product/bocco)が紹介された。BOCCOの開発のきっかけは、同社の青木氏自身が日々の生活の中で感じた、“SNS全盛のいま、大切な人との距離は遠くなっている”という現代的な課題。その解決に向けて、BOCCOにはスマホを持たない子どもや一人暮らしのお年寄りへの伝言機能に加え、GPS・振動センサー・鍵の開閉確認用センサーなどとの連携による見守り機能を搭載。さらにWeb情報を活用したリアルタイムの天気情報の発信など、WebAPIの提供を通して、リアルとネットを結ぶ新たなコミュニケーションプラットフォームとしての発展を目指している点も強調した。


■NetLED 株式会社 http://netled.co.jp/

▲代表取締役社長 徳永 隆也 氏

同社が着目したのは、「照明」。屋内外を問わず、人が生活するところに必ず存在し、規則正しく設置され、かつ電力も常に供給されている。同社の徳永氏は“これこそ真のプラットフォーム”と考え、必要な明るさを必要な場所に必要なだけ供給を行う省エネ・エネルギー管理を実現する「IoT無線照明制御システム」を独自に開発・提供。既存の照明ユニットはもちろん、ネットワーク・ビーコン・カメラデバイスとの連携も可能にしており、省エネ効果だけでなく導入コストを抑えられる点もアピールした。また、照明だけでなく、空調などのクラウド制御システムも開発。大手企業中心に導入が進められてきた省エネシステムを、中小企業や個人店舗、さらにはスマートハウスなど個人宅にも展開できるのではないかと、今後の展望を語った。


■株式会社フォトシンス http://photosynth.co.jp/

▲代表取締役社長 河瀬 航大 氏

設立以来、IoTベンチャーとしてスマートフォンやsuicaで鍵の開閉が可能な後付型スマートロック「Akerun」(https://akerun.com/)を開発する同社。セキュリティの重要性に加え、マイナンバー管理やコンプライアンスの観点からもスマートロックに対する需要は年々高まっている。しかし、従来の電気錠は導入コストはもちろん、テナントビルの規約に応じてオフィス移転時などに原状回復費用が掛かるケースも多く、導入を躊躇するケースも少なくないという。そこで同社のAkerunは、工事不要の後付け型を採用。さらにネット連携により、時間限定での施錠権限の付与やリアルな入退室データの管理を可能にした。そのため、セキュリティ面での向上だけでなく、働き方改革を目指す企業やスマートホーム開発を進める不動産企業、ホテルや賃宿ビジネスなど、幅広い事業提携ニーズに応えられるとアピールした。


■株式会社フェニックスソリューション http://www.phoenix-sol.co.jp/

▲取締役副社長 和田 康志 氏

物流・販売業界などで広く導入されているRFID。無線通信によって複数IDの一括同時読み込みが可能など、商品やパレットのトレーサビリティ、在庫管理などで非常に有用である一方、電波の浸透が難しい金属製品への対応が弱点とされてきた。この課題を、同社は独創的な技術開発で解決。その結果、金属パレットなどへの対応はもちろん、これまで目視で在庫管理などが行われてきた金属部品や冷蔵庫内の食品、自動車・飛行機といった大型製品への導入も可能にしている。さらに超小型2mmほどのタグを開発するなど、さまざまなニーズに対応するプロダクト開発を進めており、同社の和田氏は「サプライチェーンの川上・川中・川下すべてを向上できる。汎用性、即効性、生産性向上の直結など、産業界に相当なインパクトを与えられるはず」と胸を張った。


■株式会社Liquid http://liquidinc.asia/

▲代表取締役 保科 秀之 氏

同社が実現を目指すのは、ユーザーがモノを持たず、スマホやPCなどを使わなくてもITの利便性を享受して生活ができる世界。そこでフォーカスしたのが、指紋や光彩による生体認証。従来、指紋認証のネックのひとつに、画像データとして保存されることでデータ容量が重く保存・読み込みに時間を要する点があった。この課題を、同社は指紋の特徴点をベースとしたインデックス化を行うという独自のアプローチで大幅に解消。指紋全体のデータを保管するわけではないため、情報流出のリスクも格段に軽減できるとアピールした。また、海の家やテーマパークで行った実証実験での具体的な成果も紹介。今後は銀行などとの提携やインバウンド消費への対応を進めるほか、アジア地域の有力企業と合弁会社を設立し、日本・アジアでのシステム面での標準化と拡販を推し進めていく方針だという。


■取材後記

今回のピッチには、プロダクト・システム両面で完成度の高い技術を有するIoT企業が集まった。そのため、質疑応答でも、大手企業から自社事業への導入をイメージした質問や課題が投げかけられるなど、具体的な内容が非常に多かった印象だ。しかし、販路の拡大や製造コストの削減、マテリアルの調達などベンチャー企業やスタートアップ単体では解決の難しい面があることも事実。大手とベンチャーがビジョンを共有し、いかに補完しあうのか。人々の暮らしや産業界を革新するために、オープンイノベーションがもたらす可能性は非常に大きい。

(構成:眞田幸剛、取材・文:太田将吾)