eiicon

Sansan×eiiconが語る、「オープン」によって、日本ビジネスはどう変わるのか?

Sansanが展開する、名刺アプリ「Eight」。単に名刺を管理するだけではなく、100万人以上が使うビジネスネットワークサービスへと進化している。そのEightが運営するメディア『BNL(Business Network Lab)』の編集長・丸山裕貴氏から、eiicon founderである中村亜由子に取材の依頼があった。(https://bnl.media/2017/03/eiicon-nakamura.html

名刺を切り口にオープンなビジネスネットワークを構築するEightと、オープンイノベーションのプラットフォームeiiconは “オープン”という共通のキーワードがある。世界最先端の起業家や研究者を取材してきた丸山氏は、日本のビジネスの現状をどう捉えているのか。そして、“オープン”の先に、どんな世界が待っているのだろうか。eiicon Labでは丸山氏と中村の対談を行った。

▲Sansan株式会社 Eight事業部 コンテンツストラテジスト Business Network Lab編集長 丸山裕貴氏

1986年生まれ。早稲田大学国際教養学部卒業後、株式会社インフォバーンに入社。メディアリサーチャーとして、代表・小林弘人氏のアシスタントを務める。その後『ギズモード・ジャパン』編集部にて、編集者としてのキャリアをスタート。2012年にコンデナスト・ジャパン『WIRED』編集部に転職。ブルーボトルコーヒー創業者のジェームズ・フリーマン、Evernote創業者のフィル・リービンなど、世界最先端の研究者や起業家を取材し記事制作を手掛ける。2016年3月、Eightの可能性に惹かれてSansanに転職。8月にはEightの新メディア『BNL(Business Network Lab)』を立ち上げ、編集長として今注目の人物を取材している。


■日本企業は、もっと「個人」を前に出した方がいい

中村丸山さんが、今回eiiconに興味を持っていただいたきっかけは何だったんですか?

丸山もともと、企業と企業、人と人のコラボレーションに興味があったんです。 Eightは名刺の“出会い”をベースにしたビジネスネットワークなのですが、「ビジネスネットワークを効果的に活用する方法論の一つに「オープンイノベーション」があるのではないかと思ったのです。それで色々調べていたら、中村さんのお名前が出てきました。

中村実はメディアに出るのはあまり好きじゃないんですが、名前を出して情報発信していてよかった(笑)

丸山日本って、「この人がこのプロジェクトをやりました」というのが対外的に出ているケースがあまりないんですよね。アメリカほどにはいかないかもしれませんが、「自分は、こういう想いで立ち上げました」と、それこそ名刺に載せるくらいの気持ちでアピールできる人が増えてきて欲しいと思っています。

中村その事業やサービスを捉えるには、人がセットになっているべきだと、私も考えています。インテリジェンスという人材会社で働いているからかもしれませんが、何をするにも「人」はひとつの基準になる、というのが持論です。全てではないですが、どんな人がどんな想いで何を成し遂げようとしているかは本当に大切ですよね。実際に「中村亜由子 eiicon」で検索されることもあります。それでご連絡をいただいて、協業パートナーが増えてきている現状もあり、オープンイノベーションを実践する上で、顔を出して声を上げることの大切さ・効果を実感していますね。

丸山僕の場合、大学を出た後の就職先も「会社の名前」より「人」を重視して選びました。面白い人がいたら、きっとそこは面白い会社なんだろうと思ったんです。そういえば、Twitterでいつも面白い発言をしている経営者がいるな、と思い浮かんで。それが、インフォバーン代表の小林弘人さんでした。

中村面白い就職活動ですね!

丸山それで応募したら、採用されて。入社後は小林さんのアシスタントとしてメディアリサーチをしていたんです。実はそこでも「オープンイノベーション」がリサーチテーマに課されていました。小林さんが『シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略』という書籍を監修していたこともあって、色々調べていたのです。

中村 『シェア』、知ってます。読みました!

丸山: 当時は「オープンイノベーションは海外で流行しているもの」というイメージでした。でも、また最近よく聞くようになって。そうなったら実際に手掛けている人の話を聞きたいなと思って取材をお願いしたのです。

 

■思想やビジョンが、オープンイノベーションの起点となる

中村 丸山さんは、これまで様々な業界のビジネスパーソンや研究者に取材をしてこられていますよね。活躍している人の共通項を感じることはありましたか?

丸山ありますね。自分の枠にとらわれず、広く考えられる人。その業界の中だけに閉じこもっているのではなく、色んな業界の人と意見交換をしている人は、「自分が今やっていることを他の仕事や業界に置き換えると、どうなんだっけ」と、違う業界の人にとっても何かヒントとなるような共通項を語れるので、やはり話が面白いですね。

中村:それは、まさに「オープン」な人ですね。

丸山:思想があることも共通項としてあると思います。僕が取材してきた海外の起業家の方たちは、何かしらの思想を持っていました。例えばEvernoteのフィル・リービンだったら「100年続くスタートアップ」ですし、ブルーボトルコーヒーのジェームズ・フリーマンも、コーヒーとカフェというフィジカルで地域限定的なものを扱っていながら、グローバルIT企業の人たちの共感を集めるような思想を持っていました。

中村:分かります。私も、もともとテレアポが趣味で(笑)、新人の頃から会いたい人に電話して会いに行っていますが、ビジョンがある方は、お話ししていて面白いし魅力的です。企業間の共創においてもまさに思想・ビジョンがとても大切で、これが合致していないとうまくいかないと思っています。

丸山:思想があると色んな人がついてこれるし、オープンイノベーションも、そこが起点になると思うんです。例えば「世界平和」は課題が大きすぎて、とても1社の力だけで実現できることではありません。でも、同じ考えを持っている人は世界中にいっぱいいます。だったらその人たちと一緒に何かできることがあるはずですよね。

中村:その通りだと思います。思いを発信することで共創パートナーが見つかり、何倍も課題解決に近づけますよね。

丸山:例えば、いま話題の人工知能にしても、そのテクノロジーに興味がある人ばかりが集まったコミュニティでは、ネットワークの広がりは生まれにくいはずです。それよりは、人工知能を取り入れた社会がどうあるべきなのか、それで人は本当に幸せになれるのか。「幸せ」の概念は変わるのか。そんな思想を共有できる場があれば、オープンイノベーションはうまく行くのではないかと思います。

中村:はい、単なる市場の伸びしろや、技術の素晴らしさだけを見ていては、協業はあまりうまくいかない。テクノロジーはあくまで手段であって、そこに思想やビジョンがないと、頓挫すると思います。

丸山:それで今、思想とビジネスの関係性に興味があって、先日、妙心寺春光院副住職の川上全龍さんを取材させていただいたんです。川上さんは、普段英語で座禅会を開いていて、そこに世界中のビジネスエリートが日々集まってきているそうです。そうした人たちを惹きつける思想とは何なのか、とても気になりまして。

中村:取材に行って、その解は見つかったんですか?

丸山:それはぜひ、記事をご覧ください(笑)

※川上全龍さんの取材記事は、こちら(https://bnl.media/2017/03/kawakami.html)からお読みいただけます。


■「オープン」の、その先に広がる世界とは

中村私は、日本のビジネスはオープンイノベーションによって再び、圧倒的に加速すると考えています。日本の技術力はやはり世界水準でみても高いと言われています。そして、もともと日本人は協業も得意。世界的にみて、出遅れている部分や足りない点は「オープン」だけだと思っています。ただそこは圧倒的に遅れている。まだ外とつながることへの恐怖心や、つながった後の評判が気になったりする。「責任」を気にする。だからeiiconで、つながり方や事例を見せることで「オープン」にすることの障壁を低くしたいと考えています。

丸山そうなれば、もっと面白いことが生まれてきそうですね。さきほどお話しした『シェア』という本は、日本では三部作として出版されているのです。まず『フリー <無料>からお金を生みだす新戦略』、そして『シェア <共有>からビジネスを生みだす新戦略』、最後に『パブリック 開かれたネットの価値を最大化せよ』。この三部作を手がけた編集者の方を取材させていただいたことがあるのですが、パブリックな思想を個々人が持たなければ、社会にシェアは根付かないという思いがあったのだそうです。

オープンに、パブリックにすることにネガティブな印象を持つ人も多いですが、自分の思想や興味・関心を公にすることで、「私もそれに関心がある」という人が集まってきたり「じゃあ連絡取って会いましょう」ということになったりする。今回中村さんを取材させていただいて気づいたことなのですが、eiiconがやろうとしていることって、そんな風に、色んな企業をどんどん「パブリック」にしていくことなのかなと思って、共感しています。

中村ありがとうございます!日本の社会がもっと「オープン」に「パブリック」になっていくその先に、eiiconとしては「MADE IN JAPAN」を改めて強くしていきたいですね。日本国内だけではなくアジアのクオリティを「MADE IN JAPAN」にしていくことで、世界を牽引するスタートアップを輩出できたらいいなと思っています。eiiconやEightのようなサービス・ツールを利用してもっともっと日本がオープンに寄っていってほしいんです。

丸山オープンになって、人と人が出会うべくして出会う世界を実現したいですね。今って名刺のデータはあるけれど、その中からどの人に連絡してもう一度会うといいかまで機械は教えてくれない世界なんです。それがきっといつか、「明日はこの人に会うといいよ」とレコメンドされたり、オープンにされている情報をもとに「この人と興味があるテーマが似ているよ」と教えてくれたり。それでワンタッチで気軽に会いに行けるような世界になれば、世の中もっと楽しくなるだろうと思っています。


■取材後記

「思想を共有することで、オープンイノベーションはうまくいく」と丸山氏は言う。そして、「個人の業績や事業にかける想いを、もっとアピールすべきだ」とも話す。オープンイノベーションにはテクノロジーや製品など重要な要素はたくさんあるが、結局担うのは人で有り、人が形作る企業が実践していく。ビジョンを持ち、それを共有し、共感した人が集まって協業が生まれるというその基本を、改めて意識させられる対談だった。

人と人の繋がりからビジネスチャンスを生み出すEightの需要がぐんぐん伸び、企業のアピールの場所として展開を始めたeiiconのようなサービスが生まれる背景にも、今日本が変わろうとしている状況が少し垣間見えた。

(構成:眞田幸剛、取材・文:佐藤瑞恵、撮影:加藤武俊)