人々の生活を支える物流。現在では大きなモノから小さなモノを日本全国、世界各地に届けることができます。物流はその性質上、1社だけですべての業務が完結することは稀で、様々な組織が複雑に協力しあいながらインフラを構築しています。そのため、オープンイノベーションが起きやすい分野とも言えるでしょう。

その中でも、オープンイノベーションによって物流の未来を切り拓こうとしているプロジェクトを7つ紹介します。


【ANA Cargo×CBcloud】軽貨物マッチング「PickGo」の空陸一貫輸送サービス

軽貨物と荷主を即時につなぐマッチングプラットフォーム「PickGo」を運営するCBcloudは2019年9月より、ANA Cargoと共同で空陸一貫の輸送サービスの提供を開始しています。法人を対象にサービスインしています。

これまで、空路と陸路を組み合わせた物流サービスを利用する場合、(1)発送元から空港(2)航空便(3)輸送先の最寄り空港から輸送先、の各区間における輸送手配をユーザー自身で区間ごとに行う必要がありました。今回の提携によって、この課題をクリアする空陸一貫輸送サービスを目指します。

関連記事:ANA Cargo×CBcloud|国内主要7空港と全国の陸路をつなぐ新しい国内輸送サービスの提供を開始|eiiconlab 事業を活性化するメディア


【SBSロジコム×Pyrenee】AIアシスタントによる配達時の事故防止

ドライバー用AIアシスタントを開発するPyreneeは2019年12月に、物流大手のSBSロジコムと業務提携し、AIアシスタントサービス「Pyrenee Drive」の共同開発などを推進しています。

SBSロジコムは、所有する約1000台の運送車両を対象に「Pyrenee Drive」の試作機を搭載するなど、リアルな実験データを提供します。

この取り組みによって「Pyrenee Drive」の精度を上げ、開発スピートの加速にもつなげたい狙いがあります。

関連記事:物流大手SBSロジコム×Pyrenee|ドライバー用AIアシスタントの商品化に向け業務提携|eiiconlab 事業を活性化するメディア


【日本郵政×Rapyuta】クラウドによる物流ロボット制御「rapyuta.io」

人工知能技術を活用した次世代クラウドロボティクス・プラットフォーム「rapyuta.io」の開発を行っているRapyuta Roboticsは日本郵政のオープンイノベーションプログラム「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM」に採択され、倉庫向けのピッキングロボットソリューションを開発しました。

「rapyuta.io」は複数のロボットをクラウドで横串に管理して制御するプラットフォームで、定型・不定形問わずに荷物をピックアップできるのが特徴です。日本郵政ではこの技術を取り入れて人員不足や業務効率化を進める狙いがあります。

Rapyuta Robotics日本郵便と同様に、日本通運とも協働でピッキングロボットの導入に向けた実証実験も行っています。

関連記事:日本郵便が仕掛ける、物流が抱える課題解決への挑戦。

関連記事:Rapyuta Robotics×日本通運|倉庫向け協働型ピッキングソリューションの実証実験を完了


【日本郵便×Yper】再配達削減を目的にした「OKIPPA」

物流ITのスタートアップのYperは2019年7月、日本郵政と再配達の削減を目的に提携しました。

提携の内容は、Yperが開発・販売する置き配バッグ「OKIPPA」を日本郵政の置き配普及キャンペーンとして10万個無料配布するというもの。留守がちな家の荷物の受け取り選択肢として普及しつつある置き配は、荷物を指定場所においておくことで配送を完了させる仕組みで、これにより再配達の削減が期待されます。

設置工事などは必要なく、バッグを受け取ったその日から利用可能で、荷物が預入されるとアプリに通知が入る仕組みです。

OKIPPAはそのビジネスモデルから、CO2排出削減にも寄与する配送モデルとして、環境省の「新たなラストマイツ配送モデル調査」に採択され実証実験を行っている。

関連記事:日本郵便×Yper | 置き配バッグ「OKIPPA」を10万個無料配布へ 

関連記事:再配達をなくすOKIPPA|環境省の「新たなラストマイル配送モデル調査」に採択、実証実験へ


【Hacobu×大手各社】ビッグデータ活用で人員不足対策する「MOVO」

IoTとクラウドを統合した物流情報プラットフォーム「MOVO(ムーボ)」を提供するHacobuは2019年9月、大和ハウス工業・アスクル・Sony Innovation Fund・日本郵政キャピタル・日野自動車などの他業種にわたる大手企業とビッグデータ活用で物流の課題解決をする構想「Sharing Logistics Platform®(シェアリング・ロジスティクス・プラットフォーム)」を発表しています。

また、Hacobuは三井不動産とも資本業務提携をして、プラットフォーム構築を加速させるパートナーシップを結んでいます。

この取り組みでは、(1)ドライバー不足等の物流課題の解決(2)提携企業同士での物流拠点を軸とした連携(3)プラットフォーム構築の加速、の三点を推進します。

物流業界における、ドライバー不足や低い積載率、長時間労働、温室効果ガスの排出といった「物流クライシス」と呼ばれる課題の解決を目指します。

関連記事:Hacobu、多業種企業との取り組みでビッグデータを活用、ドライバー不足等の物流課題解決へ


【ヤマト運輸×LIFULL SPACE】遊休スペース活用の収納シェア

LIFULLの子会社であるLIFULL SPACEとヤマト運輸は共同で東京都多摩市にあるヤマト運輸ネコサポステーション貝取店内のスペースを「収納スペース」として個人及び法人に貸し出し、「収納シェア」サービスに関する実証実験を2020年2月より開始しています。

この実証実験では、近隣住民の収納スペースに関する悩みを減らし、遊休スペースをシェアすることで新たな市場を生み出す可能性を検証します。

「収納シェア」のサービスの特徴は(1)収納スペースと配送機能を備えているため配送業者の手配が不要なことと(2)一般的なトランクルームよりも安価に利用できることです。

実証実験の結果次第では、展開地域を拡大する可能性もありそうです。

関連記事:LIFULL SPACE×ヤマト運輸 | 「収納シェア」サービスに関する実証実験を多摩市で開始


【郵船ロジスティクス×シナモン】船内作業を効率化するケースマーク照合システム

AIによるOCRソリューションを開発するシナモンは郵船ロジスティクスと物流業務改善に向けて協業することを2020年3月に発表しています。シナモンが開発するAI-OCR「Flax Scanner」の技術を活用することで航空輸出におけるケースマーク称号システムを開発することを目指します。

航空貨物の入出庫作業は作業員の不足が課題となっており、倉庫での照合業務も負担のかかっている作業でした。そこでシナモンAIによって照合業務に関する実証実験をしたところ、大幅な業務改善効果が見られたことから実用化へと向かう運びとなりました。

ケースマーク称号システムのイメージは、輸出貨物を倉庫から出庫する際の収集した貨物情報と貨物に貼り付けられたケースマークを目視で確認していた業務にAI-OCR技術「Flax Scanner」を導入することを検討しています。

関連記事:郵船ロジスティクス×シナモン | 物流業務改善で協業、 AIを活用したシステム開発に着手


【編集後記】「コロナショック」の人手不足によって新技術の台頭も

今回ピックアップした7つのプロジェクトすべてが「人手不足」を課題のひとつに設定しているものでした。物流は巨大なインフラが必要ですから、大きなリソースが必要ではあるものの、人口が減少傾向の日本では業務の担い手が不足するのは必然です。

さらに、昨今の新型コロナウィルスの流行によって、家に籠もる生活が長引けばおのずと物流のニーズも高まります。ただでさえ人手不足のこの分野で物流インフラが立ち行かなくなる事態だけは避けなければなりません。そのためにも、近い将来にイノベーションが起こり実用化できるレベルの新技術の台頭が待たれるところです。

(eiicon編集部)