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【連載/4コマ漫画コラム(59)】 「景気後退期」における新規事業の生み出し方

【連載/4コマ漫画コラム(59)】 「景気後退期」における新規事業の生み出し方

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不景気だからと未来を捨ててはいけない

景気はいい時もあれば悪い時もあります。日本では今年の東京オリンピックの後に急速に景気後退が起こると以前からよく言われていましたが、昨年あたりから様々な要因でじわじわと景気が減速し、突然起こった新型コロナウイルスの影響で様々な業種で事業の冷え込みが大きく始まっています。

「こんな時に新規事業なんて呑気なことを言ってられるか」と思われる方も多いかもしれません。実はその通りで、もし明日とか来月とかに倒産しそうな状況であれば、なんとか乗り切るために全てのエネルギーを集中し、新規事業なんて凍結すべきです。

ただ、世の中の景気や雰囲気が悪いだけで、自社はすぐに倒産するような状況ではないとしたら、逆に景気が悪かろうと「常に新規事業創出活動を行う」のが正しい姿です。

景気はいい時もあれば悪い時もあります。

その波を乗り越えて、存続していこうとするのが企業です。

「新規事業を作り続けること」は企業が存続していくために必須です。今の事業のまま永遠と生き延びることはできません。そのため、景気が悪い状況でもいつも将来への種まきを続けるべきです。

景気に左右されてはならないこととしては「採用」もそうです。「景気がいいから人を沢山採用して、悪いので採用を控える」なんてバカなことを沢山の企業がこれまでやってきましたが、企業が長く生き延びるためには常に世代バランスがいい社員構成をキープするべきなので、景気の良し悪しに関わらず毎年一定の人数を採用する方がよほど理にかなっています。「人」も「新規事業」も会社を存続させるための未来への投資です。(そして「人」はある程度は離職したり、「新規事業」もある程度は失敗したり……この2つは似ていますね。)

現事業の業績に影が差しだす時のために

では、不景気になったときに手掛けるべき新規事業は何なのか。

世の中全体の景気のせいにしているけれど、実は景気の良し悪しに関わらず現事業の業績に影が差してきたとしたら、それまでに仕込んできた新規事業を本格稼働させるチャンスです。現事業の調子がいい場合はどうしても新規事業への本気度は上がりません。もちろん、そういう「いざ」となったときに「この新規事業に力を入れよう」という風にできるように、随分前から仕込み育てておくことが必要です。

新規事業を検討している方々は日々「世の中はこれからどうなっていくのだろう」という「大きな変化」「新動向」に目を向けているものです。まだ自社の現事業の業績には大きな影響を与えてなくても、他業界で起こりつつある「新動向」で将来自社の業界もその流れに巻き込まれていくと思われることを先取りして新規事業を検討しています。それができないと、有名な事例にあるようにデジタル化動向を見誤ったコダックやインターネットサービスについていけなかったビデオレンタルのBlockbusterのように世の中から退場してしまうことになります。

昨今の間違いない新動向としてはIoTやAIなどがあります。技術動向だけでなく、ESG投資の重要性アップや食料・環境などの大きな課題の動向もあります。経営陣も漠然としたことは認識しているので、「IoTだ」「AIだ」と言葉くらいは発していますが、自社の新規事業として何をやるかは、具体的にアイデアを練り、実際に事業立ち上げをトライしていかなければなりません。カリスマ経営者がいる会社ではその新動向に向けて一気に現事業の舵を大きく切ることも可能ですが、そうでない場合はその新動向に関連する新規事業を小さくてもいいのでできるだけ沢山トライしておくことが重要です。そうすることで事業転換が容易になるだけでなく、そのトライによって育った「人たち」が大きく活躍してくれます。現在、新規事業に携わっている方は色々大変でしょうが、こういう意味で会社にとってとても大事な仕事をしています。だから信念を持ってめげずに頑張ってください。

待つのも大事

一方、世の中全体が不景気になった場合、つまり顧客(企業や個人)に金銭的な余裕がなくなった場合は、新規事業でのサービスや製品を無理に上市(発売開始)しようとしても困難な場合があります。

その場合のコツは「本当に必要なお客様に絞って深くニーズを理解してサービスや製品をブラッシュアップする」ことで、本格的な市場展開は「景気が回復するのを待つ」ことです。

「待つ」ためにも最低限の売上を立てて、その間に力をため込むのです。「最低限の売上」を立てても、不景気によって苦しくなった現事業の方々からは「どうしてあんな小さな事業(下手をすると赤字)ばかりサポートするんだ」とやっかみをベースとした非難があちこちから飛んできますが、経営陣が本気でさえあれば続けられるはずなので「そうですね~、がんばります」と笑いながら流しておきましょう。

また、景気が悪いとどうしても経費削減の嵐が吹き荒れ、新規事業や技術開発も巻き込まれてしまいます。それはある意味仕方がないので、「しばらくは地下に潜る戦略」も必要な場合があります。決して止めないけれど、表立った活動はしばらく行わず、目立たないように「継続」するのです。あれやこれや理由を作る工夫も必要です。不況のせいで止めてしまうともう二度と復活できなかったり、再起動に多大なエネルギーが必要となります。

私自身のことを振り返ってみると、1996年にシリコンバレーでCVC(Corporate Venture Capital)の提案をした時も確か経営状況が悪かったし、2009年から担当した新規事業開発センターへの投資額提案をした時は前年度のリーマンショックで世の中全体が不景気の嵐の時でした。こうやってみると、なんかしら経営陣は長期的目線で不景気にも関わらず私が仕掛けた変なことを未来への投資としてサポートしてくれたのだなあ、と今になって思います。今頃理解してすいません……。

*今回のお題(タイトル)の「「景気後退期」における新規事業の生み出し方」は編集部から2月12日にいただきました。この1カ月の間に新型コロナウイルスの影響拡大は急速に進み、しばらくは経済も大きな打撃を受け景気が冷え込むことがほぼ確実となりました。そのため本原稿は正直とても書きにくかった面もありますが、敢えて普段から思っている「不況の時こそ新規事業のチャンス、不況だからと言って止めてはいけない」と新規事業担当の方々を励ますことにしました。もちろん、コラムの最初の方にも書いたように体力的に余裕がない会社はそんなことを言っている場合ではないので、是非頑張って乗り切ってください。


■漫画・コラム/瀬川 秀樹

32年半リコーで勤めた後、新規事業のコンサルティングや若手育成などを行うCreable(クリエイブル)を設立。新エネルギーや技術開発を推進する国立研究開発法人「NEDO」などでメンターやゲストスピーカーを務めるなど、オープンイノベーションの先駆的存在として知られる。

▼これまでの4コマ漫画コラムがアーカイブされている特設ページも公開中!過去のコラムはこちらをご覧ください。

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