イノベーターやテクノロジーにフォーカスしたニュースメディア「TECHWAVE」とeiiconによるコラボレーション企画がスタート。国内外のオープンイノベーションにまつわるトピックを紹介していきます。


親日派が多く日本からも多くの企業が参入しており、8万人規模の日本人コミュニティがあるというタイ王国のバンコク。スマホメッセンジャーのLINEが2011年、日本から公開された時にも、いち早くタイ国内で受け入れられ拡大していった。2013年にはチャットスタンプ向けのキャラクター事業のクオン社が進出、その後、在バンコクの起業家として、スタートアップの目利き役でもあるTalentExの越陽二郎氏も創業している。

このバンコクでは、日本発の官民連携によるスタートアップに対するグローバル進出支援プログラム「J-Startup」が2018年にスタートする前から、在バンコク日本国大使館が官民連携で日本のスタートアップ支援を展開しており、一定の成果を出している。鍵を握るのは在タイ日本国大使館 特命全権大使 佐渡島志郎 氏である(なお、大使は、取材直後の2019年12月で退任されています)


「タイの大手企業と日本のスタートアップをつなぐ」在タイ日本国大使館 特命全権大使 佐渡島志郎 氏

佐渡島志郎 氏の大使就任は2015年4月。経産省出身の若手と共に、日本のスタートアップのグローバル進出を支援する取り組みを続けている。

およそ3年間で大使館主催のスタートアップピッチイベント「Embassy Pitch」を二度開催。その後、この取り組みを組織的に体系化したプログラム「Open Innovation Columbus(OIC)」などを展開してきた。

「幸い、日本大使館は、タイの大手企業、日本の大手企業双方と連携することが可能になっていました。まずはタイの大手企業を中心にどういうニーズがあるか調べ上げ、それに対して日本のスタートアップにどんなソリューションがあるのかを調べて、それぞれがプレゼンテーション・ピッチを行うといったことをやっています。

これをタイの大手企業が、特に大手の食品関係のグループなどが非常に注目してくださっています」(佐渡島大使)


「フットワークがすごく軽い」オープンイノベーションに最適なタイの大手企業

「日本の場合はどうしても意思決定に非常に多くプロセスが絡むんですけど、タイの大手企業の場合はフットワークがすごい軽いんです。根回しもいるんですけど、トップが決断したらパッとすぐ動くし、そこで人や仕事の内容が気に入られると、もうあっという間にものごとが進むという特徴があります」(佐渡島大使)。

こうしたタイ企業の特徴にチャンスを見出し、バンコクベースでプロジェクトを進める日本人スタートアップには「Omise」や、「Flare」がある。バンコクに支社はないながらも、タイ国内企業と連携をすすめる「UMITRON」がある。

▲決済インフラを展開する「omise」

▲タイ国内を走行する車にラッピング広告を展開する「Flare」

大使館のスタートアップ支援の流れとはちょっと毛色が異なるが、タイ国内に日系の企業が多く進出している流れを受けてオンラインマニュアルサービス「TeachMe」を展開するスタディスト社も2018年にバンコクオフィスを開設している。


加速する日本スタートアップコミュニティ

こうしたスタートアップ領域の可能性にフォーカスしている投資家や事業会社も増えつつある。

まず、国内のテクノロジー系の有力カンファレンスイベント「Infinity Venture Summit」は2019年12月にバンコクで当イベントを始めて開催した。

運営会社Infinity Venture Partnersは、これまで中国や台湾での投資活動をしてきたが、タイでのネットワーク拡大を狙ったものだということを筆者に対し明らかにしている。

また、世界15か国・26都市に拠点を展開するグローバル人材を使った開発事業「モンスターラボ」は、2019年に同社初となるコワーキングスペース「モンスター・ハブ」をバンコクに開設。多くの日本人が入居し、さまざまな活動がここから始まっている。

▲写真:左)TalentEx 越陽二郞氏 右)在タイ日本国大使館 一等書記官 寺川聡 氏

この拠点に入居し、バンコクのスタートアップ事情および日本人コミュニティに通じているTalentEX 越陽二郞氏はこのように語ります。

「バンコクは規制が緩く、大手企業等がイノベーション推進に前向きで、オープンイノベーションに魅力的な土地だと思います。また、スマートフォンなどの利用者が急拡大しているとはいえ、日本のスタートアップの方が技術優位性が高いことが多い状況で、競合が少ないことから優位に立てる可能性があります。

最大の魅力は、日本からの物理的な距離の近さに加え、 親日であるということによるプレゼンスの優位性。世界第三位の日本人コミュニティという地盤もあり、日本発のスタートアップの海外展開の第一歩として最適な場所と言えます」。


僕はこう思ったッス by 増田(maskin)真樹 @TechWave

2019年12月にモンスターハブで開催された日本人向けのイベントで在タイ日本国大使館 一等書記官 寺川聡 氏は「タイは動画EC分野で中国に次いで2番目の規模でスマホに接触する時間が多い。一方で、投資家の資金のほとんどが海外企業に流れている状態」と冷静に分析する。これをチャンスと取るか、未成熟と取るか判断が分かれる部分もあるが、事業の種類によっては大きなシェアを獲得できる可能性があるように思ったッス。

■増田(maskin)真樹 / Editor In Chief at TechWave.jp

1990年代初頭から記者としてまた起業家として30年以上にわたりIT業界のハードウェアからソフトウェアの事業創出に関わる。シリコンバレーやEU等でのスタートアップを経験。日本ではネットエイジに所属、大手企業の新規事業創出に協力。ブログやSNS、LINEなどの誕生から普及成長までを最前線で見てきた生き字引として注目される。通信キャリアのニュースポータルの創業デスクとして数億PV事業に。世界最大IT系メディア(スペイン)の元日本編集長を経て現在に至る。