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【コロナ禍を生き抜く経営術】創業100年で迎えた経営危機を脱した老舗の発想転換

【コロナ禍を生き抜く経営術】創業100年で迎えた経営危機を脱した老舗の発想転換

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新型コロナウイルスの影響で様々な不幸がもたらされています。緊急事態宣言が発令され全国的に経済活動が滞る中で、多くの経営者は業績の悪化に悩まされていることでしょう。

日本では過去にもリーマンショックや東日本大震災といった不況に見舞われた経験があります。こうした苦境を乗り越えた経験は、コロナ禍の今こそ生かされるはずです。

岡山県を拠点に、中小企業のワークスタイル提案事業を展開する「WORK SMILE LABO(ワークスマイルラボ)」は、過去の不況の影響で経営危機に陥りましたが、大胆な新規事業の推進で経営を立て直した経験があります。

ワークスマイルラボ代表の石井聖博氏に、経営危機とどう向き合い、どう乗り越えたのかをオンラインでインタビューしました。

【プロフィール】株式会社WORK SMILE LABO(ワークスマイルラボ)代表取締役石井聖博

岡山県岡山市出身。キヤノンマーケティングジャパン株式会社を経て、2015年から現職。中小企業に向けたテレワーク導入やICTを活用した働き方支援サービスを展開。

明治44年創業。主力は筆墨販売から「働き方改革支援」へ変遷

──最初に、ワークスマイルラボの創業や沿革について教えて下さい。

もともと筆墨や文具の販売で「石井弘文堂」として明治44年に創業しました。その後、社名が「石井事務機センター」となって、時代の変化にともなってOA機器やオフィス家具の販売、ICT商材の販売と移り変わっていきました。そして2018年、「WORK SMILE LABO」に社名変更しています。

ワークスマイルラボの沿革を辿ったイラスト(出典:ワークスマイルラボ

──現在はどのような事業を展開されているのでしょうか?

ざっくり言うと、働き方のモデルを作ってノウハウを提供するという「働き方改革の支援サービス」を中小企業向けに展開しています。特に注力しているのはテレワークの導入です。

──コロナの影響でテレワークの導入は反響があるのでは。

はい。テレワーク導入のためのセミナーをリアルの空間でしていましたが、コロナの影響でオンラインに切り替えたところ、問い合わせの数がさらに増えました。週に3~4回開催しているセミナーは毎回盛況となっています。

オンラインセミナーでテレワーク導入のプレゼンをする石井代表

経営危機を乗り越えた「売るモノ」と「売り方」の発想転換

──主力事業を事務機器販売からワークスタイル提案に変えたというのはかなり大胆な方針転換ですね。どのような背景や経緯がありましたか。

私の父親の代ではコピー機や事務用品が主力商材で、主な取引先は官公庁でした。しかし、需要や減少し始め、2000年頃になると大手通販の台頭してきました。

熾烈な価格競争の波に飲まれて業績が下がっていく中で、2008年のリーマンショックが追い打ちとなって取引先が激減し業績回復の見通しが立たず経営危機に陥りました。

──経営危機をどのように乗り越えたのでしょうか。

「乗り越えた」というよりも、リーマンショック後の1~2年は業績が悪化してキャッシュが不足していたために「なにもできなかった」と言ったほうがいいかもしれません。

役員の給料削減とか社内の無駄を見直すとかは当然やりましたが、それだけでは追いつきませんでした。会社を存続させるために社有地を売りに出し、買い手がついたのが手形決済の5日前で、なんとか倒産は免れました。

社有地の売却で手元に残った資金300万円を元手に、金融機関へ融資の相談をしにいったところ「ビジネスモデルを変えないと支援できません」と言われたので、新しいビジネスモデルを日々試行錯誤していました。

オンラインで取材に応じる石井代表

そんなときにマイナンバー制度が始まって、セキュリティを強化しましょうという機運が強まりました。そこで「パソコンパトロール」というセキュリティ事業を始めたところ、まとまった売上を得ることができたんです。その売上金で新しいビジネスモデルを創出する準備にとりかかりました。

──「ビジネスモデルを変える」というのは簡単ではなさそうです。どうやって今のビジネスモデルを発想できたのでしょうか。

急にポッと思い浮かんだってことはなくて、とにかくいかに競合がないビジネスモデルを作るか、ということを一番大きい前提条件として考え続けました。もともと価格競争が非常に激しい業界で、そのために倒産寸前にまでなりましたからね。

その結果、従来のビジネスモデルから2つのことを変えてみようとなりました。ひとつは「売るモノ」です。これまで筆墨、文具、事務機と売ってきて、これからはワークスタイルを売り物にしようと。

ふたつめは「売り方」です。文具や事務機の販売は基本的に訪問型の営業でした。企業を訪問して買いませんかと提案するスタイルです。なので結局は価格競争に巻き込まれてしまう。ですから我々は「来社体験型」の提案手法に売り方をスイッチしました。

「来社体験型」の営業でオフィスをアテンドする石井代表

──そして現在のワークスマイルラボのビジネスモデルが生まれたんですね。

我々が提供している働き方のモデルは、自社で取り入れて効果の出たものを商材としています。事実、お子さんがいたり、体調不良で出社できない社員がいたことがきっかけで自社でテレワークの導入を進めました。

自宅でテレワークをするワークスマイルラボの社員

実際にその結果として生産性が上がりましたし、多様な働き方が中小企業の経営課題の解決にもつながっていることに気が付いたんです。

──ワークスマイルラボで人気があるメニューはなんでしょうか。

コロナの影響でテレワーク環境の構築・運用が急務になっている企業が多いですから、当然それらの需要は増えています。テレワークを取り入れたい、というよりも取り入れざるを得ない状況ですしね。

あとは、採用のノウハウ提供のメニューも人気です。新卒採用数の増加や内定辞退の防止を目的としたもので、効果が上がったという事例が多くなっています。

──ワークスマイルラボの今後の展望や目標などを教えて下さい。

多くの中小企業は、業務改善がしたいけれど何から始めたらいいかわからない場合がありますから、そういう会社に一社でも導入支援を広げていきたいです。

我々は岡山県が拠点の会社ですが全国に支援を展開していますが、オンラインで完結する支援内容になっていますから、まずはお問い合わせいただきたいですね。

【編集後記】変化を続ける老舗の企業文化

創業が明治44年という老舗のワークスマイルラボさん、困難な状況を乗り切ってV字回復を成し遂げたのは変化を続けてきた企業文化の賜物だと思いました。

ワークスマイルラボはファミリー企業で、現在代表を務める石井聖博さんは4代目です。初代の哲司さんが創業した「石井弘文堂」は1945年の戦災によって消失してしまう不幸に見舞われるものの、2代目の堅一郎さんが営業を再開し立て直しています。

その後、事務機が主要商材となって1969年「石井事務機センター」に社名変更します。1982年に3代目の英行さんが社長に就任し、業績の拡大、そして前述の経営危機を経験することに。そして経営危機を脱した後の2015年に4代目の聖博さんが代表となり2016年には現在の業態がメインとなった「ワークスマイルラボ」に社名変更した、という歴史があります。

創業100年を超える老舗ですが、厳しい時代をいくつもくぐり抜けて生き残ってきたのには理由があると感じさせられる取材となりました。

(eiicon編集部 久野太一)

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コロナ禍を生き抜く経営術

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