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テレビはオワコンなのか?――リアルな場でのコンテンツ創造や共創を推進する理由を、テレ東・ベテランキャスター大浜平太郎氏に聞く

テレビはオワコンなのか?――リアルな場でのコンテンツ創造や共創を推進する理由を、テレ東・ベテランキャスター大浜平太郎氏に聞く

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東京・豊島区の東池袋。常に多くの若者で賑わうサンシャイン通りに「Mixalive TOKYO(ミクサライブ東京)」がオープンする。「Mixalive TOKYO」は、4つのホールと物販エリア、ライブカフェで構成されているLIVEエンターテインメント施設だ。運営の主体は出版社の講談社だが、他に6社のパートナー企業が企画やコンテンツ面で協力している。――そのパートナー企業の1社となっているのが、テレビ東京だ。

テレビ東京では「Mixalive TOKYO」を出会いのプラットフォームとして、地元の有力企業や区とも連携しつつ、スタートアップ企業を発掘したり、さらにはより長期的な視野での人材育成を図ったりするなど、これまでのテレビ番組の枠組みには収まりきらない取り組みを企画している。

規制に守られ、どちらかといえば旧態依然とした産業であると捉えられがちなテレビ業界において、オープンイノベーション的な動きを積極的に進めているテレビ東京。その背景には、これまでもっとも変革に消極的だった「現場」の危機感があるという。

長らくビジネス報道の現場で活躍し、現在はテレビ東京報道局ニュースセンター解説委員で「Newsモーニングサテライト」のキャスターも務める大浜平太郎氏に、今後の「Mixalive TOKYO」の展開から、同社のオープンイノベーションへの取り組み、テレビ局の将来像まで、ざっくばらんにお話をうかがった。

■株式会社テレビ東京 報道局ニュースセンター解説委員 大浜平太郎氏

1993年、アナウンサーとしてテレビ東京入社。その後、「ワールドビジネスサテライト」など数々のニュース番組、経済番組を担当。2018年から報道局ニュースセンター解説委員。「Newsモーニングサテライト」「田村淳のBUSINESS BASIC」(2020年3月まで放送)、新番組「Mixalive presents 田村淳が豊島区池袋」(2020年4月スタート)担当している。

既存のテレビ番組の枠には収まらない創造を、リアルな場から目指す

――まずは「Mixalive TOKYO」の完成(※)おめでとうございます。それに合わせて、3/19にはテレビ東京・BSテレ東の経済番組が合同開催する生配信トークセッション&ピッチコンテストが開催されましたね。

※2020年3月グランドオープンを予定していたが、現在、新型コロナウイルスの影響により当面開業を見送っている。

大浜氏 : 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、残念ながら無観客となってしまいましたが、オンラインの参加型イベントということで、それはそれで盛り上がる取り組みができました。「Mixalive TOKYO」は、これから長期的にさまざまな面白い取り組みができる場として成長してほしいと思っています。

――「Mixalive TOKYO」では、今後どのような取り組みをおこなっていく予定なのでしょうか。

大浜氏 : 3/19に開催したトークセッションでは、「5年後の池袋をどう活性化していくか」といったテーマが採り上げられました。私たちは「田村淳のBUSINESS BASIC」や「特命!池上ベンチャーズ」といった番組との関連で、池袋のスタートアップと地元の有力企業、それから自治体行政とを結びつける場を継続的に設けて、池袋を元気にしていく活動を続けたいと考えています。

▲開業時に連携するパートナーは多岐にわたる。(「Mixalive TOKYO」Webサイトより抜粋)

――スタートアップが多い活気ある街というと渋谷や恵比寿、五反田などが思い浮かびますが、なぜ池袋なのでしょうか。

大浜氏 : 私自身「Mixalive TOKYO」の話があるまでは、正直、池袋のことはあまりよく知りませんでした。しかしいろいろ調べたり、自分の足で街を隅々まで歩いたりしているうちに、すごく魅力的で、可能性がある街だと感じるようになりました。

まず、池袋って課題先進地域なんですね。豊島区は2014年に日本創生会議から「消滅可能性都市」に指定されています。将来、定着人口が減って区そのものがなくなるかも知れない、と指摘されてしまったわけです。だから、区の行政や地元の有力企業の人たちは、すごく危機感を持っていて、積極的に新しい取り組みを求めています。一方、中国はじめ海外からの居住者が多いインバウンドの街でもあって、その点でもこれからの日本の先端を走っています。

さらに、ご存じのように有名なアニメショップがいくつもあって、「マニアの街」という側面もあります。これは、池袋は昔から芸術家が多く住んでいたアートの街で、西口には芸術劇場もあったりして、その流れを汲んでいると見ることもできます。

そんな感じで、定着人口は比較的少ないけれども、逆に若い人は多いし、外国人やアーティストも多く集まり、とにかく雑多なエネルギーにあふれる街です。

――起業やビジネスに興味を持つマインドの若者も多いのでしょうか?

大浜氏 : もちろんそういう方もいると思いますが、渋谷などと比べて多いかどうかはわかりません。ただ、リアルな場を持つことの意味は、思いもよらなかった人同士が実際に出会えることだと思うんです。テレビは興味のある人は観てくれますけど、そうじゃない人は見向きもしません。

番組を観る層と観ない層がはっきり分かれてしまうので、ビジネス番組を作っていると、ビジネスに興味のある人とはたくさん出会えますが、そうじゃない人との交流はどうしても限られます。せっかくリアルな場を作るのであれば、そういう垣根を超えて、いろんな人がそれこそ「Mix」できる場になるといいなと。

極端にいえば「評論家の予想なんて外れてばかりじゃない。こんなに株が下がって」なんて思っているような若い人にこそ「Mixalive TOKYO」にきてほしいですね。

そういうコミュニケーションの中から、テレビ番組ではできないような、それこそ5年、10年という長期的な目線で、新しい街、新しいビジネスや文化の種が生まれれば面白いんじゃないでしょうか。ある意味で池袋という街を舞台にした“学校”のようなものを作りたいのかもしれません。

テレビは「オワコン」なのか?ネット企業の人たちから得た意外な反応

――リアルな場を媒介として、既存の番組や既存のテレビ局のビジネスからはみ出すようなコンテンツが生まれそうです。

大浜氏 : テレビって、一部からは「オワコン」扱いされることもありますよね。ネット専用コンテンツの方が面白い、とか。私たちも、もちろんそういう変化には何年も前から気付いていて、危機感も感じていたし、少し自信を失っているような部分もありました。

でも、あるとき「田村淳のBUSINESS BASIC」関連で、ネット系企業の人たちと「テレビの今後」をテーマに話をさせていただく機会があったときに認識を改めさせられました。そのときになるほどと思ったのが、先進的なネット企業の方たちにとってさえ、テレビの持つプラットフォームとしてのパワーは、まだまだ高い価値があるものとして認識されている、ということだったんです。

ネット企業だけではできないことは多いし、テレビだけではできないことも多い。じゃあ、お互い手を組めば、もっと面白いことができるんじゃないか、と。むしろテレビ業界の私たちのほうが、“テレビ対ネットのライバル関係”みたいなステレオタイプな図式に囚われていたんだと、そのとき反省しました。

▲BSテレ東で放送していた「田村 淳のBUSINESS BASIC」

――テレビの持つ力、役割というのはどんなところにあるのでしょうか。

大浜氏 : 一番は、人と人とを結びつけるプラットフォーム、あるいは交差点のような役割だと思います。その出会いによって、新しいものを生む力をテレビはまだまだ持っているようです。そしてその新しい出会いが、今度は逆にテレビを変えていく力にもなるでしょう。

番組の企画でも、私たちが練って考えたものより、外部の人と話している中で偶然出てきたアイデアでうまくいくことがよくあります。そういう場をどんどん提供しつつ、私たちもその場に参加していきたいのです。

CMがいっさい入らない番組を、民放でも放送できるだろうか?

――それは、番組コンテンツの面だけではなくて、民放のビジネスモデルといった部分も含めてのお話なのでしょうか?

大浜氏 : そのとおりです。たとえば、私がよく考えているのは「CMがまったく入らない番組を放送できるのか」です。これは、従来の民放のビジネスモデルでは不可能ですが、たとえば、サブスク方式ならできるかもしれないし、「投げ銭」のようなシステムを流用してできるかもしれません。あるいはもっと別の画期的な方法があるかもしれません。

そういうアイデアは、テレビ業界内部からはなかなか出てきません。業界外部のネット企業やその他の方々にご協力いただかなければなりません。そういう意味で、いわゆるオープンイノベーション的な動きは、テレビ業界でも必須になっていると思います。


――テレビ業界は法的な規制もあり、保守的で変わりにくい業界というイメージがあります。実際に変化はあるのでしょうか。

大浜氏 : テレビ局の中でも、経営企画や編成といった部署は、以前から経営を革新する必要があると感じていました。でも、現場はなかなか…。私もずっと報道の現場にいますが、現場の人間って日々の仕事にすごくプライドを持っていますし、上から命令されるとむしろヘソを曲げてしまって、「はいそうですか」と素直に従おうとはしないものなんです。良い意味でも悪い意味でも、頑固な職人気質というか。

ところが、ここ1〜2年でそういう現場の空気がだいぶ変わってきました。ひとつには働き方改革の影響がテレビ局にも及んでいて、昔のような徹夜してなんぼ、取材先に通い詰めてなんぼ、みたいな風潮がだいぶ減ったことがあります。

キャスターも1週間帯で担当するのではなくて交代したり、取材もカメラを持ち込むんじゃなくて、ネットでできるところはネットで取材したり、家のパソコンと会社のコンピュータをつないでの在宅業務も増えました。

そしてもう1つが、先ほどもお話したように、コンテンツ的にもビジネス的にもオープンイノベーション的なものを採り入れる必要性が現場にも浸透してきた点です。

――YouTubeはじめ、ネット専門でコンテンツを配信するプレイヤーの市場が伸びています。最後に、そのような環境下でテレビの将来はどうなっていくとお考えかお聞かせください。

大浜氏 : 業界全体がどう動いていくのかといった予想は難しいのですが、ただひとついえることは、テレビがネット専用コンテンツと同じことをしても仕方ないということです。

私たちは番組作りや報道の際に、いわゆる「ウラ取り」や不偏不党、中立性ということについて、徹底的に意識しています。「これちょっと怪しいと思うけど、流しちゃおう」ということは、絶対にしません。実際には、ミスを犯してしまうこともありますが、原則はそういうことです。だからこそ、テレビの報道は今でも一定の信頼を得ているのだと思っています。

そして、この点がネットでコンテンツを展開する際にも、強い武器になるはずです。番組作りやビジネスモデルにおいて、変わるべきところは変えなければなりませんが、内容の確実性、信頼性といった部分は曲げずに活かして、やっぱりテレビ局が作っているコンテンツは違うよね、と感じていただけるようなコンテンツ作りを目指してくべきだと思っています。

取材後記

いつもテレビの画面でお見かけするとおりの、ソフトで落ち着いた語り口ながら、内容がこれから実現したいことなどに及ぶと、熱を込めて話してくれた大浜氏。

「スタートアップの方たちは人脈をすごく大切にします。そういう方たちのご紹介から、さらなるご紹介というつながりを得ることで、私たちは番組作りができてきました。ビジネスを抜きにしても、その恩返しをしたいという気持ちも半分あるんです。」と語られていたのがとても印象的な取材となった。

「Mixalive TOKYO」という”リアルの場”と活用し、”オープンイノベーション的手法”を取り入れながら、業界で躍進を続けるテレビ東京の動向に今後も注目していきたい。

(編集:眞田幸剛、取材・文:椎原よしき、撮影:古林洋平)

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