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わずか1年で2社との共創を実現!ケーキ販売のゲームチェンジャー「Cake.jp」に聞く、eiicon活用の極意

わずか1年で2社との共創を実現!ケーキ販売のゲームチェンジャー「Cake.jp」に聞く、eiicon活用の極意

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日本最大級のケーキ専門マーケットプレイス「Cake.jp」を運営する株式会社Cake.jp(旧・株式会社FRASHPARK)。「感動が集まる場所をもっとハッピーに!」をコンセプトとして、商品の特性上ハードルが高いと考えられていたケーキの通販ビジネスを、破竹の勢いで伸ばしている。

ケーキの製造では、全国約300店舗の洋菓子店と提携。個人会員30万人、法人会員4,000社に向けて、誕生日や記念日のお祝いからイベントやパーティ、ウェディングなど多様なニーズに応えるケーキを届けている。

そんな同社、実はeiicon登録から1年足らずで 、2社との共創を実現した実績を持つ。1社目は、幼稚園・保育園を主な対象に、インターネット写真サービス「はいチーズ!」を展開する千株式会社。もう1社は、ベビーカーをはじめとするベビー用品を企画・販売するコンビ株式会社だ。

本記事では、株式会社Cake.jp CEO 高橋優貴氏への取材をもとに、共創の過程や短期間で複数社との事業提携を成功させたコツ、同社のeiicon活用方法について紹介する。

▲株式会社Cake.jp CEO 高橋優貴氏

1986年生まれ。2008年東京都立大学在籍時にプログラミングを習得し、個人事業主としてflash広告の制作を請け負い始める。2009年4月に株式会社Cake.jp(旧・株式会社FLASHPARK)を設立し、CEOに就任。経営戦略、マーケティングの責任者として、経営を統括している。

「ネットでケーキが買える」という認知を広げたい

――御社は昨年の2019年5月、eiiconにご登録されました。なぜ、登録しようとお考えになったのですか。

高橋氏: 当時、私たち「Cake.jp」の一番の課題は「認知」でした。インターネットでケーキを購入する方がまだまだ少なく、百貨店や洋菓子店で購入される方が大半。ECでもおいしいケーキを購入できることは、ほとんど知られていませんでした。この課題を解決するために、他社と組むことで時間を短縮しながら、「ネットでもケーキが買える」という認知を獲得していこうと考えたのが、登録のきっかけです。

――2019年の7月には、写真サービスを展開する「千株式会社」から資金調達されました。これはどのような流れで?

高橋氏: 千株式会社には、eiicon経由でこちらからコンタクトをとりました。3回ほど会ってお話をし、協業前提で出資をいただくことになりました。千さんは、幼稚園・保育園向けに写真サービスを提供されている企業で、取引先8000社、数十万人の顧客をお持ちです。当社は、子供向けの誕生日ケーキがメインなので、「シナジーを生み出せるだろう」と考えての判断でした。

――わずか3回の面談で出資の合意まで!非常にスピーディに話が進んだようですが、どんなことを意識して提案されましたか。

高橋氏: 提案時に意識したのは「私たちと組むことで新しいチャレンジ」ができるという点です。自分たちが持つユーザーやシステムと、千さんのサービスやシステムを連携したら、こんなメリットが生まれるという具体案をいくつか提案しました。

共創を成功させるには、「お互いのビジョンがマッチしているか」が大事です。実際に提案をへて、「お互い目指していることが近いよね」と意気投合できました。経済合理性とビジョンの方向性があっていたことが、スムーズに話が進んだ要因だと思います。あとは、先方が投資を考えていたことと、外部とリレーションを組む体制が整っていたこと。そういうタイミングだったことも大きいです。

――出資以外で、千株式会社と進めている具体的な取り組みはありますか。

高橋氏: 現在、千さんがお持ちのプラットフォームを活用して、私たちのケーキのプロモーションを実施しています。千さんのプラットフォームは、幼稚園・保育園で行われる運動会や卒園式などのイベントをプロのカメラマンが撮影し、その写真をご両親がオンライン上で購入できるというものです。

つまり、幼稚園や保育園に通うお子さんをお持ちの親世代が見ています。そのプラットフォーム上で、「お子さんの成長の節目にケーキはいかがですか?」といった訴求をさせてもらっています。

――現状の効果はいかがですか。

高橋氏: 反応は上々です。ユーザーは多いので効果は期待できると考えています。メインのターゲットはお子さんのいる親世代ですが、小さいお子さんを持つお母さんにとってケーキの需要は大きく、「Cake.jp」でも1〜10歳向けの誕生日ケーキがよく売れています。

最近では、1歳の誕生日に特別なオリジナルケーキを買う「1st birthday」が人気です。こうした特徴があるので、将来的には親世代をターゲットとして、相互送客ができる状態にしていきたいと考えています。

日本にはない、新たなケーキの購買シーンを共創

――2020年の5月には、ベビー用品の「コンビ株式会社」と一緒に、『ベビーシャワーケーキ』を販売開始されました。これはどのような経緯だったのでしょうか。

高橋氏: こちらもeiicon経由で、私たちからコンビさんにメッセージを送ったことがきっかけです。最初にコンタクトをとったのは1年ほど前です。コンビさんも子供向けの商品を展開されているので、私たちのサービスと相性がいいと思いました。メッセージを送った後、すぐに返信をいただき、その後、何度かお会いして話を進めてきました。

コンビさんが課題感としてお持ちだったのは、日本の出生数が減る中で、現状維持ではビジネスが先細りしてしまうことでした。主力商品のベビーカーは、マイナス0.5歳~1・2歳が主なターゲットですが、そこだけではなく前後の年齢層に広げたいとの戦略をお持ちでした。

ですので、今回第一弾として、マタニティ向けのベビーシャワーケーキを共同で企画し、新しいお祝いシーンを創出することにチャレンジしています。

▲参考リンク : ニュースリリース 「Combi × Cake.jp『マタニティ向けケーキ』を共同開発」

――マタニティをターゲットに、『ベビーシャワーケーキ』でお祝いするという新しい購買シーンを生み出す取り組みですね。どのような役割分担で共創を?

高橋氏: コンセプトの設計やママインフルエンサーを活用したリサーチはコンビさんの方で担っていただきました。私たちは、ケーキのデザインや味を担当しています。

――マーケットの反応はどうですか。

高橋氏: 少しずつではありますが、反応が出始めています。コンビさんの社内でも、「ベビーシャワーケーキを購入したい」という声がたくさんあがっていると聞きました。なので、コンビさん向けにクーポンを用意しましたね。

マタニティ向けのベビーシャワーケーキは、これまで買えるところがほとんどありませんでした。こういった商品を企画することで、新しいお祝いのシーンを増やしていければと思います。

――次のステップとして、何か検討されていることはありますか。

高橋氏: プロモーション強化の観点では、コンビさんの顧客向けにメルマガを配信したり、HPにバナーを貼らせてもらったり、ベビーカー購入者向けに広告を入れてもらうなどを検討しています。それと、コンビさんから乳酸菌の特許をお持ちだと教えていただきました。その特許を活用して、子供向けのお腹に優しいケーキを共同開発するのも、おもしろいと思っています。

▲共同開発した「ジェンダーリビールケーキ」。ケーキをカットすると中のスポンジやクリーム、フルーツの色で、男の子か女の子かを発表するサプライズケーキ。

「Cake.jp」が実践する、eiicon活用術

――御社は、eiicon上で30社弱の企業にメッセージを送り、そのうち2社と事業提携につなげていらっしゃいます。成功確度がとても高いのですが、スムーズに進む企業を見分けるコツは?

高橋氏: コンタクトをとっても話が進まないのは、広く浅く募集している企業さんです。ですから、間口が広く 「とりあえず提案をください」というところは避けるようにしています。それと、やはり当社との相性です。相性が合うかどうかを確認するため、企業のHP(コーポレートページ)は必ず見るようにしています。

――事業提携につなげるために、重要だと思う点はありますか。

高橋氏: やはり相手あっての連携なので、「相手のニーズに刺さる提案ができるか」、あるいは「相手がニーズに気づいていなくても、それに気づけるようないい提案ができるか」が重要だと思います。相手のニーズと時流、この2点がポイントです。それと、最初にアタックする相手が、「前のめりに新規事業に取り組もうとしているか」も大事ですね。

――相手企業を探す際、企業PRページのどの部分に、とくに注目していますか。

高橋氏: 先方の担当者欄をよく見ています。部署や役職にも注目していますね。進めやすさを考えると、ある程度の決裁権を持った人のほうが好ましいです。コンビさんの場合は、立ち上がったばかりの新規事業部で、担当者の役職は執行役員でした。とても前のめりな方だったので、進めやすかったですね。

苦境に立つ洋菓子店を、ビジネス面からサポートしたい

――最後に、御社の今後のビジョンについてお聞かせください。

高橋氏: 私たちの顧客は法人、個人、洋菓子店と3つあります。法人向けは、ホテルや飲食店、ケータリング、幼稚園や老人ホームなどです。これらのセグメントに分けて、サービスを広げていきたいと考えています。また、個人のお客さまには、「Cake.jp」を通じてでしか買えない満足度の高いケーキを提供していきたいですね。

最後に、洋菓子店に向けてですが、店舗のPL改善をサポートできないかと考えています。近年、洋菓子業界は苦境に立たされています。原材料の高騰はもちろん、コンビニスイーツなどクオリティの高いケーキを提供するチャネルが増えています。アレルギー対応や糖質制限など消費者の嗜好も多様化している中で、変化に対応できていない店が多いと感じています。

職人さんのようにひたむきにケーキを作り続けているだけでは、外部環境の変化を掴みとれません。ですから、私たちが店舗の生産性向上やロジスティクスの強化、CRMやポスレジの導入など、店舗の収益性をあげるラーニングを仕組み化したいと考えています。自社だけでなく、他の会社と組んで提案し、洋菓子業界にとっていいビジネス環境を作りたいですね。

編集後記

「ネットでケーキが買える」という認知拡大を目指して、他社連携を加速してきた同社。異業種ではあるもののメインターゲットが重なる他社と組み、お互いのサービスへの相互送客を図っている。それだけではない。「ベビーシャワーケーキでお祝いする」という新しい文化をつくり、マーケット拡大を狙っている点も特徴的だ。コロナ禍によるECシフトの後押しもあり、急速にビジネスを拡大する「Cake.jp」。他社連携を巧みに使いこなす同社の今後の展開に、引き続き注目していきたい。

(編集・取材:眞田幸剛、取材・文:星久美子、林和歌子)



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