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【イベントレポート】ソニーからの独立 「A10 Lab」流オープンイノベーション〜社内起業の選択と独立の決断〜

個人の知見と企業の課題をマッチングするスポットコンサルプラットフォーム「ビザスク」。社外知見の活用というオープンイノベーションにより企業のイノベーションを支援している同社が、オープンイノベーションを実践している企業から学ぶ機会を作るべく2015年より定期的に開催してきたオープンイノベーションセミナー。今回は同社とeiiconの共催により「ソニーからの独立 『A10 Lab』流オープンイノベーション〜社内起業の選択と独立の決断〜」が、5/9(火)に開催された。

ゲストスピーカーは、エーテンラボ株式会社(A10 Lab Inc.)代表取締役CEOの長坂剛氏。同氏は2015年にソニーの新規事業創出プログラム「Seed Acceleration Program(SAP)」から三日坊主防止アプリ「みんチャレ」をリリース。2017年2月にさらなるスピードアップと外部との連携強化を目指してソニーから独立し、A10 Lab Inc.を創業した。

▲エーテンラボ株式会社(A10 Lab Inc.)代表取締役CEO 長坂剛氏

会場となったのは、今年4月に大手町ビルに開設されたばかりのワークプレイス「SPACES」。大企業のイントラプレナーからスタートアップのアントレプレナーに進化した起業家である長坂氏の事例は注目度が高く、洗練されたイベントスペースには大手事業会社の新規事業やオープンイノベーション担当者などが参加した。


長坂氏によるプレゼンテーションについて

●ソニーの新規事業創出プログラム「Seed Acceleration Program(SAP)」出身のスタートアップ

「みんチャレ」は、新しい習慣を身につけたい人が匿名の5人でチームを組み、チャットで励まし合いながら楽しくチャレンジできる三日坊主防止アプリだ。新しい習慣は1人ではなかなか継続できず、その成功率はわずか8%という。それに対してみんチャレを利用した場合、習慣化成功率は69%にも跳ね上がる。

“新しく何かを始めたいけど続かない”という誰しもが持ったことのある根深い課題を解決するアプリとしてユーザーから非常に評価が高く、2016年にはGoogle Playのベストアプリにも選出。デイリーのアクティブユーザ数は1万人を突破した。2017年に独立後も、ソニーをはじめ複数社からの6600万円の資金調達も実施。3月には野村アクセラレータープログラム「VOYAGER(ボイジャー)」に参加が決定している。

●オープンイノベーションは、情報の授受により生じる

長坂氏は「オープンイノベーションは情報の授受により生じる」と語る。情報を一方的に仕入れるだけでは、イノベーションは生まれない。情報の受け渡しによって生じる“偏り”が、閃きにつながるという。「みんチャレ」も、そうした閃きから生まれた。もともと独立志向のあった長坂氏が「みんなを幸せにしたい」という想いのもとサービスを考案したところからスタートする。ソニーの新規事業創出プログラム(SAP)に一度は落選するものの、社内・社外と情報の授受を繰り返しながらアイデアを研ぎ澄まし、2度目のチャレンジで選出。困難にぶつかりながらもチームで支え合い、社内外からのサポートを受け事業化を果たす。

リリース後もユーザーレビューに全件返信。毎週バージョンアップを繰り返し、ユーザーと共にサービスを育ててきたという。さらには法人向けサービスとして、顧客の継続率を向上させるダイレクトマーケティングソリューションを提供。シード期から外部リソースを積極的に取り入れ、独立後の現在もユーザーや企業と共創し進化を続ける「みんチャレ」は、まさに“生まれも育ちもオープンイノベーション”のサービスなのだ。

●積極的に行動を起こす人は、幸せになる

大きな社会課題を解決しようとするスタートアップには様々な困難が立ちはだかるが、行動すればそれだけ多くの支援が得られると実感しているという長坂氏。最近のビッグデータ解析で、「自分から積極的に行動を起こす人は幸せになる」というデータが出ているという。

「みんチャレ」も、行動を起こす人の習慣化を支援することで、みんなを幸せにしていこうとしている。この考えは、オープンイノベーションにも通じるところがあると長坂氏は語る。行動を起こすと他者との情報の授受が起こり、アイデアや閃きが生まれる。こうしたオープンイノベーションを起こせる人を増やしたい、オープンイノベーションでみんなが幸せになる世界を創りたい、と力強く結んだ。


主催者紹介

▲株式会社インテリジェンス eiicon founder 中村亜由子

主催者として登壇し、eiiconのサービス説明を行った中村。自身も、インテリジェンスの社内新規事業としてeiiconを立ち上げたイントラプレナーだ。中村が特に強調したのは、ターゲットを明確にすることの重要性。オープンイノベーションに前向きな企業が急増する中で、「何を目的に社外と連携するのか」「どんな提携先と組めばいいのか」が明確にならない状態のままで走っている企業が多いという。漠然と「オープンイノベーションに取り組みたいのでパートナーを探す」ではなく、イノベーションの目的とターゲットの絞り込みも支援することで、「出会えない、探せない」という課題を解決したいと考えている。

▲株式会社ビザスク オープンイノベーション推進室 室長 宮川晶行氏

1時間からのスポットコンサルや事業創出支援プロジェクト/ワークショップ等を提供。日本最大のプロフェッショナルネットワークを有し、ビジネス知見をつなぎ、イノベーション創出に貢献することを目指している。現在登録するプロフェッショナルは、現役の役職員を中心に、企業OB、フリーコンサルタントなど約35,000名超。組織、地域、世代を超えて、個人の知見を活かしイノベーションを創出する、オープンイノベーションを推進。最近では海外調査ニーズの高まりを受けて海外案件専門チーム「VQ Global」を立ち上げているほか、新規事業創出の伴走支援サービスにおいては帝人の事業創出をサポートしている。


パネルディスカッション〜成功する新規事業とは〜

パネルディスカッションでは、ビザスク宮川氏がファシリテーターを務め、長坂氏とeiicon founderの中村が社内での新規事業創出やオープンイノベーションについて、自信の体験や知見を話した。

「99%失敗する新規事業の中で、成功する新規事業の秘訣は?」という宮川氏からの投げかけに対して、長坂氏は「みんチャレはまだ始まったばかり」としながらも、事業推進の上で「ここは絶対に譲らない、というコアの部分を明確にすることが大事」と強調した。A10 Labは新しい手法やアイデアは前向きに取り入れていくが、「人を幸せにする」という理念は絶対に譲らない。また、解決しようと挑む課題が大きければ大きいほど、賛同者も多くなると語った。

中村は、オープンイノベーションに取り組む企業を支援する立場として、今後新規事業はどんどん成功していくだろうという見通しを持っている。「スタートアップは、課題の発見者でありチャレンジャー。しっかり協業すれば、大手企業の新規事業もうまく行くだろう」と、社外の知見を取り入れることの重要性を訴えた。

その後の質疑応答では、海外で新規事業を興す予定の参加者などから、積極的な質問が寄せられた。


取材後記

セミナー全体を通して感じたのは、オープンイノベーションはそれ自体が目的ではなく、あくまでビジョンの実現や課題解決のための手段だということ。「とにかく新しいことをしたい」という目的で網を広げるだけでは、何も得られず誰も動かせない。「みんチャレ」が多くの企業やユーザーに支持され、イノベーションを創出しているのも、「みんなを幸せにしたい」というビジョンを掲げ、習慣化という大きな課題に取り組んでいるからだろう。そして目的が明確になったなら、行動を起こすこと。その先に長坂氏が話す「みんなが幸せになる世界」が広がっている。

(構成:眞田幸剛、取材・文:佐藤瑞恵、撮影:加藤武俊)