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【イベントレポート】「eiicon event vol.3」オープンイノベーションの第一線で活躍する講師4人が経験・知見を公開!

オープンイノベーションのプラットフォーム「eiicon」は5月19日に、渋谷のイベントスペース「dots.」で、オープンイノベーションの実践ノウハウ・メソッドを提供するイベントを行いました。第一線で活躍する講師陣4人が、自らの経験や知見を紹介。企業でオープンイノベーションに取り組む担当者たちが熱心に耳を傾けました。

冒頭で、eiicon co-founderの長門貴仁が挨拶。ノウハウを吸収すると共に、同イベントをきっかけにネットワークを広げることを促しました。以下に登壇者のプロフィールと講義内容の概要を紹介します。


【第一講義】大手とスタートアップの連携で、まず考えるべきは、その目的。

▲500 Startups Japan 澤山陽平氏

東京大学大学院 工学系研究科 原子力国際専攻修了。修士(工学) 。JP モルガンの投資銀行部門でTMT セクターの資金調達やM&Aアドバイザリー業務に携わった後、野村證券の未上場企業調査部門である野村リサーチ・アンド・アドバイザリー(NR&A)にて IT セクターの未上場企業の調査/評価/支援業務に従事。2015年12月、500 Startups Japanのマネージングパートナーに就任。

500 Startups Japanは世界中のベンチャーに投資を行っています。中でもシードを対象にしていることが非常に珍しく、おそらく世界で唯一の存在です。これまでに世界60カ各国で1800以上の投資を実施。その中で時価総額100億円を超えるまでに成長するのは、約5%です。この数字は上手くいっているほうだとお考えください。それほど投資は簡単ではないのです。また投資と共に、スタートアップのエコシステムを構築しています。

現在、世界中であらゆる分野の企業がベンチャーとの連携を図っています。テクノロジー分野に限ったことではありません。スタートアップとの協業なくして、新しいことはできないという状況になっています。連携で大切なのは、まずは目的を考えることです。その目的はイノベーター、プロダクト、顧客、いずれかの取り組みとなるでしょう。目的につながる戦略としてはパートナーシップ、投資、M&Aが挙げられます。目的をはっきりさせたら、次はアクセラレータプログラム、シリコンバレーオフィスの開設、VC投資など案件を獲得する仕組みを作っていかねばなりません。これらは一連の流れとなっている必要があり、どれか一部分だけを取り出して行っても意味のないことなのです。

戦略としてもっとも優れているのは買収です。人材もプロダクトも顧客も取り込めるからです。ただし、買収は大きなコストがかかります。一方、パートナーシップや投資はコストが低く始めやすいという利点があり、将来の買収を見据えながら連携を進めていくのが良いのではないでしょうか。また、アクセラレータは現在、盛り上がりを見せていますが、必ずしもうまくいくとは限りません。先ほどもお伝えしましたが、シードが100億円を超える企業に育つのは5%です。かつ結果が出るのに5年かかります。95%は失敗することは覚えておかねばならないことでしょう。結局、アクセラレータを成功させるには数多くのベンチャーと連携することがどうしても必要になるのです。最後に買収のポイントをお伝えします。タイミングとしては、プロダクトと顧客がついている段階を推奨しています。大企業がベンチャーに対しもっとも最適にリソースを提供できるタイミングでもあるからです。


【第二講義】優れた技術を持つベンチャーや中小企業と出会いを創出するための3つのポイント。

▲株式会社インテリジェンス eiicon founder 中村亜由子  

正社員の転職支援領域における営業を経験する。最速で営業マネージャーに昇進、MVP他社内表彰受賞歴多数。2015年育休中にeiiconを単独起案。2016年4月に育休から復職後、本格的に立ち上げを開始。首都圏、地方を問わず日本企業のオープンイノベーションをアシストするオープンイノベーションのための企業検索プラットフォームeiiconを担う。

現在、よくご存知の通り、オープンイノベーションが脚光を浴びています。国内では、オープンイノベーションは新規事業の創出とほぼ同義に使われていると言えるでしょう。日本は新規事業の創出を苦手としており、また、ベンチャー企業も成長しにくい状況となっています。一方、社会の移り変わりは早くスピード感が増しています。経済の複雑化や価値観の多様化が進んでおり、このような背景を打ち破るのが、オープンイノベーションと言われているのです。

ただ、実際にオープンイノベーションを行おうとしても、壁にぶつかるケースが多くあります。そもそも出会いがないという声は少なくありません。国内には優れた技術をもつベンチャーや中小企業がないのではないか、と感じている方も少なくないようですが、実際には出会いを創出できていないだけなのが実情です。ではどうすれば出会えるかですが、これについては、ターゲットを明確にすること、オープンイノベーションの成功基準を明確にすること、対外的に情報発信し続けるスキームの構築――の3点が打開策となります。

ターゲットについて、意外と見過ごされがちなのが社内のリソースです。自社では何ができず、どういったところが足らないのか。加えて、どの分野で何を求めているのなども明確にする必要があるでしょう。これがないと外部に求めるものを不明瞭になってしまいます。また、オープンイノベーションの成功基準については、具体的に動き出す前に決める必要があるでしょう。そうしなければ、何をやっても成功、うまくいった、とはならないからです。最後に情報発信については、意外と思われるかもしれませんが、オープンイノベーションを行っていることを発信していない企業が80%以上にもなります。これでは出会いが生まれないのも当然と言わざるを得ません。

また、「オープンイノベーションルーキー」が陥りがちな罠として、大企業側の担当者としては、無目的に多くの人と会うこと、アクセラレータプログラムで予算を使い果たしてしまうこと、上から目線、受託感覚で業務発注、上司の顔色を伺って途中で止めてしまうこと、ベンチャーの時間感覚への無理解、ベンチャーを十把一絡げにとらえること、過剰な秘匿主義、反対意見に振り回されること、などが挙げれます。一方、ベンチャー側は、取り決めは常に書面にしておくことなどを意識していただければと思います。


【第三講義】PCメーカーや自動車メーカーと成し遂げた、実際のプロジェクトを紹介。

▲株式会社カブク Industrial Designer 横井康秀氏

オーストラリア育ち、多摩美大卒業。ニコンにて一眼レフ等のデザイン戦略から量産まで横断的に従事。iF、RedDot等受賞。

カブクは「ものづくりの民主化」を掲げ、30カ国100社以上で工場のネットワークを構築しています。ものづくりをしたいお客様と各地の工場の間に入り、橋渡しをするのが当社の役割です。マッチングはITを利用して行われていますが、今後はAIの技術なども取り入れながら、さらに精度を上げていく予定です。このほか、3Dデザインのクリエーターとのネットワーク、マーケットプレイスなども作り上げています。

設立から5年が経ち、これまでに数多くの大手企業と協業を行ってきました。その中から、具体的な事例をご紹介したいと思います。まず、PCメーカーとの協業によるゲームPCの企画とデザインを取り上げます。これは単にPCを作るというだけにとどまらず、一部の3Dデータを上記のマーケットプレイス上のユーザーに公開し、カスタマイズの協力を得るという、まったく新しい取り組みを行いました。寄せられたデザイン案は1カ月半で144点に上り、最終的にはコンテスト形式にして発表しました。プロトタイプの完成までは2カ月でスピードも高く評価されました。

また、大手自動車メーカーとも協業し、3輪超小型電気自動車にカスタマイズパーツを提供しています。これは同自動車ユーザー自らがボンネットやインテリアをカスタマイズできるというもので、3Dデザインの知識は不要です。当社のインタフェースを利用することで、簡単にカスタマイズできるようにました。ユーザーの手がけた3Dデザインは、当社の工場ネットワークを通じて発注され、わずか2週間後に製品が届けられます。自動車メーカーにとってはカスタマイゼーションについてのマーケティングにもなりました。最後は、別の大手自動車メーカーとの協業で、3Dプリント技術を活用して一人乗りの電気自動車を共同製作しました。当社が手がけたのはBtoB向けのマスカスタマイゼーションで、ある製菓メーカー対して行いました。自動車メーカーにとっては、特定の顧客向けに自動車をデザインするのはこれまでにないことで、新鮮味があり多くのノウハウがたまったとのことでした。


【第四講義】コラボレーション・イノベーションの始めの一歩は、弱さを認め語ること。

▲埼玉大学大学院人文社会科学研究科准教授 宇田川元一氏 

立教大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。明治大学大学院経営学研究科博士後期課程単位取得。 2006年早稲田大学アジア太平洋研究センター助手、2007年長崎大学経済学部講師、准教授、2010年西南学院大学商学部准教授を経て、2016年より現職。 専門は、経営戦略論、組織論。2007年度経営学史学会賞(論文部門奨励賞)受賞。

オープンイノベーションについて、少し視点を変え、組織の観点から話をしたいと思います。オープンイノベーションのキーワードの一つは、アイデアとアイデアを形にし市場に展開するというコラボレーションです。そのコラボレーションが組織の中で完結していれば、オープンイノベーションは不要になります。しかし、組織は往々にしてアイデア、ビジネスの萌芽をつぶしてしまいがちです。だったら、外にコラボレーション先を求めたほうがまだマシだ、として生まれたのがオープンイノベーションという、ネガティブな側面もあるのです。

では、なぜ組織はアイデアをつぶすのかと言えば、経営サイドと現場サイドの考えの隔たりが要因です。これを「情報の粘着性」と言い、一方の情報が一方に粘着しているため伝わらない事態を指します。イノベーションを起こすには情報の粘着性の解消は必須ですが、従来の階層型組織ではうまくいかないのではないかと考えられています。階層型はコントロールには向いていますが、イノベーションには向いていません。一方、対局にある概念が市場型で、これは、散発的にイノベーションは起こるが、安定はしないというモデルです。両者の良いとこ取りの組織はできないかと考えられ、生み出されたのが協働する共同体、コラボレーティヴ・コミュニティというものです。コラボレーティヴ・コミュニティでは、ビジョンを共有し、バラバラの方向を向きながらも、コラボレーションします。この組織でのリーダーは上意下達の命令を下しません。強力なリーダーシップを持つというよりは、むしろ弱さがキーとなります。

これからコラボレーションやイノベーションを実現するために、着目してほしいのが弱さです。従来はこちらが良いものを作ったから、そちら側は実行しなさい、というマネジメントスタイルでした。しかし、これからはこちらにはこんな弱さがある、これはできない、困難がある、と語ることが重要であり、そこから共創が始まっていると言えるのではないでしょうか。個人が組織を一気に変えることはできません。しかし、語り続けること、どんな小さなことでも始めてみることがコラボレーションやイノベーションは非常に大切なことだと考えます。


取材後記

本イベントではさまざまな角度からオープンイノベーションが語られた。これからオープンイノベーションを始めるに当たり、実践的なノウハウもあれば、具体的な事例や心構え、組織のあり方など、いずれも有益なものばかりだった。それも、大手企業とスタートアップ、双方の観点から役立つ話があったのが大きな特徴と言えるだろう。この1日で多く発見があったが、中でも、オープンイノベーションにはネガティブな側面があり、また、弱さを認めることも必要という、宇田川氏の話が印象に残る。優れたアイデアや技術だけがイノベーションを起こすきっかけではない。自分は何ができないのかを理解し、そして、動き出すことがイノベーションを起こすことになるのではないか。

(構成:眞田幸剛、文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)