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【特集インタビュー/インキュベイトファンド代表パートナー 村田氏】 創業期の投資・育成に特化したベンチャーキャピタルから見たスタートアップとは?

【特集インタビュー/インキュベイトファンド代表パートナー 村田氏】 創業期の投資・育成に特化したベンチャーキャピタルから見たスタートアップとは?

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創業期の投資・育成に特化した独立系ベンチャーキャピタル「インキュベイトファンド」。2010年の1号ファンド組成以来、投資金額は170億円にのぼり、過去5年間だけでも120社以上のシード・アーリーステージの企業へ投資・育成を行った実績を持つ。今回はeiicon co-founderの田中が、インキュベイトファンド設立の経緯や今後注目したい業界、オープンイノベーションの課題について、代表パートナーの村田祐介氏に伺った。

▲インキュベイトファンド 代表パートナー 村田祐介氏

1980年生まれ。立教大学経済学部卒業。大学在学中の1999年にエンタープライズソフトベンダーを創業。2003年にエヌ・アイ・エフベンチャーズ(現:大和企業投資)に入社し、スタートアップへの投資育成業務、ファンド組成管理業務に従事。2010年にインキュベイトファンド代表パートナー就任。

リーマンショックの混乱の中で見つけたチャンス

田中:まずはインキュベイトファンド設立の経緯をお聞かせいただけますでしょうか。

村田:インキュベイトファンドの共同代表パートナーである赤浦、本間、和田、3名は、元々それぞれ独立したキャピタリストでした。赤浦がインキュベイトキャピタルパートナーズを設立したのが1999年。本間や和田は2007年にそれぞれベンチャーキャピタルファンドを立ち上げています。私は、当時勤めていた旧エヌ・アイ・エフベンチャーズのキャピタリストという立場でこの3人と出会いました。

当時、赤浦とは7、8社を一緒に手がけていたので毎日のように会っていましたね。そうしているうちに創業期のベンチャー企業の投資・育成を行う重要性について考えが一致していたため、2010年に会社を退職し、個人がコミットするベンチャーキャピタル「インキュベイトファンド」の設立に参画しました。

田中:敏腕キャピタリストが集結したというわけですね。あれ?でも2010年というと……!リ、リーマンショックの直後じゃないですか。

村田:そうなんですよね。あの頃は資金の出し手が少なく本当に大変でした。うちだけじゃなくて日本全体でベンチャーキャピタルファンドの組成難易度が高かったと思います。たとえば、昨年の国内ベンチャーキャピタルのファンド組成金額は全体で3000億円ほどと言われていますが、当時はせいぜい200億円程度だったと思います。でも幸か不幸かそのタイミングでチャンスを見出せたのでスタートすることになりました。

田中:その「チャンス」というのは?

村田:ソーシャルネットワークのオープン化とモバイルサービスです。でもその頃はリーマンショックの影響もあって、スタートアップの担い手である起業家の数が少なかったと思います。すると本間と和田が、自分たちでスタートアップを立ち上げたんです。それが「ポケラボ」です。事業コンセプトとMVP(実用最小限の製品)を作った後、mixiのコミュニティで「社長になりたい人募集」と呼びかけてジョインしたのが、後に同社の代表取締役を務めた佐々木俊介氏と、彼が連れてきた後藤貴史氏です。

田中:mixiのコミュニティで募集していたなんてびっくりです!はじめから順調だったんですか?

村田:それが、全然順調じゃなかったんです(笑)。元々はゲームではないサービスをモバイルで作ろうとしていました。でもこれが上手くいかなくて。一度は倒産を覚悟するところまでいきました。その時に本間と和田が、後藤氏と佐々木氏に最後の資金を使って好きなことをやってくれって言ったそうです。そうして立ち上げたブラウザゲームが大ヒットして、現在の規模にまで成長しました。その頃ちょうど、ソーシャルネットワークがオープン化する潮流でしたので、いいタイミングで波に乗れたことも成功の一因だと思います。

スタートアップの種はあちこちにある

田中:そんな歴史があったんですね。「ポケラボ」以外にも「gumi」「Aiming」「みんなのウエディング」など、数々の有力企業を輩出していらっしゃいますが、こうした優れた起業家をどのようにして探してくるんですか?

村田:これまでに投資してきた企業の関係者からの紹介や、私たちが主催しているシードアクセラレーションプログラム「Incubate Camp」を通してスタートアップの種を探しています。また、ほかのスタートアップ支援プログラムに参加している起業家を、「うちではシードを育てるのはムリだけどインキュベイトさんならいけるじゃない?」というように他社から紹介されることも少なくありません。

田中:なるほど。ちなみに、いま目をつけているのはどんな業界のスタートアップですか?

村田:今はネットで完結するサービスをめぐる市場が「凪っている」状態ですが、特定産業の不の構造を解決するスタートアップに資金が集まる傾向にあると言えます。ネットは流通、銀行、工場、教育、行政などの幅広い産業で可能性を残しており、ネットを通じて解決できることはまだたくさんありますのでこれからも目が離せませんね。同時に、ネットとは全く関係ないスペースベンチャーやドローンのような新しいイノベーションにも期待しています。

大企業が握るオープンイノベーション成功の鍵

田中:近年やっと日本でもオープンイノベーションが盛んになってきましたが、まだ大きな成功事例に乏しいのが現状です。村田さんから見てオープンイノベーションの課題は何だと思われますか?

村田:課題は、大企業がスタートアップの“技術自体”しか見ていないところじゃないでしょうか。スタートアップにはすでにものすごい技術があると思っている方が多いと感じています。だから研究開発段階でもアウトプットを見たがるんですよね。もちろん、中にはものすごい技術を持っているスタートアップもありますが、でも大事なのは技術そのものではなく、産業の変化がどこで生まれてどう仮説を立てて、どうプロダクトが市場に受け入れられるかが重要なのに、そこに気づかない大企業が多いですね。あと、大企業の決裁権を持つ人が、スタートアップに対していかに長期的にコミットできるかどうかもオープンイノベーションの成功の鍵になると思います。

田中:たしかに、おっしゃるとおりですね。大企業がオープンイノベーション推進室を新設しておきながらすぐに解散した、なんて話をよく耳にします。

村田:新設と解体の繰り返しですね。でも最近はコーポレートベンチャーキャピタルの中にVCバックグラウンドのパートナークラスが増えてきてずいぶん変わってきました。今後スタートアップのパートナーとして併走していく個人のキャピタリストも増えていけば、オープンイノベーションはさらに加速していくと思いますよ。

取材後記

近年わが国においてもアクセラレーターが増加傾向にあるが、シードアクセラレーターとなるとその数はまだ少ない。このことからもシード期の育成がいかに難しいかがうかがえる。そのなかでインキュベイトファンド社は、シード・アーリーステージの投資・育成に特化し、これまで数多くのスタートアップを事業化に導いてきた実力を持つ。オープンイノベーションを目指すスタートアップ企業にとって、こうしたベンチャーキャピタルの存在は見逃せない。

(構成:眞田幸剛、取材・文:佐々木智晴、撮影:加藤武俊)

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