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【共創学(1)】<ゆりやんレトリィバァ×eiicon founder中村亜由子> ピン芸人ならではの「まわりを巻き込むコツ」とは?

【シリーズ「共創学」 …… その道のプロでも、一人では成し得なかった仕事がある。彼らの成功メソッドとは】

もし、あなたが明日からNYへ行けと言われたら、どうするか? それに似た経験をしたのが、お笑い芸人である、ゆりやんレトリィバァ。言葉もわからず、コミュニケーションすらもままならない中で彼女は「アホのふりする」術で、乗り切ってきたという。そんなゆりやんレトリィバァに、今回、eiicon founderの中村亜由子がインタビュー。新規事業担当者やスタートアップの経営者が“共創”するために必要な「まわりを巻き込み方」について、相方がいないピン芸人であるゆりやんレトリィバァだからこそ視点で語ってもらいました。

▲お笑い芸人 ゆりやんレトリィバァ

1990年11月1日生まれ、奈良県出身。2013年、NSC大阪校35期生の首席卒業。一度、見たら忘れない独特の風貌となんとも憎めないキャラクターを武器に、テレビや舞台などで活躍。ネタにも定評があり、『第47回 NHK上方漫才コンテスト』で優勝したほか、ピン芸人No.1を決める『R-1ぐらんぷり2017』の決勝に三年連続で出場している。


自分を覚えてもらい、自分を知ってもらうことがまず第一歩。

中村:芸人さんは多くのスタッフさんとともに舞台や番組を作り上げていくのではと思うのですが、まわりの人に自分を理解してもらうために、何をしたかからまずお聞かせいただけますか?

ゆりやんレトリィバァ(以後、ゆりやん):NSC(よしもとの養成所)を卒業してから若手の劇場所属になるんですけど、オーディションでバトルを勝ち上がっていくと、どんどん先輩らとからむ機会も多くなっていくんです。私、じつはめっちゃめっちゃ人見知りで緊張するタイプなんですけど、まずは先輩に覚えてもらわなボケてもどんなやつかわからんから対処のしようもないだろうなと思ったので、ちゃんと自分を覚えてもらおうと。まだ1年目やったことを逆手にとって「逆に今しかミスれるときはない! 何もわかってないふりして話しかけていこう」と考えて、とにかく何度も「ゆりやんレトリィバァと申します」という挨拶を繰り返しました。「もうわかっとるわ!」とツッコまれるくらいまで意識的にしましたね。

中村:積極的にグイグイいくことで、先輩に煙たがられたり、失敗などはなかったですか?

ゆりやん:基本的には先輩に対してちゃんとできなかったタイプなので「なんやこいつ」と思われていたこともあったろうなと。ただ、めげずに行ったんです。私、大学生までずっと実家暮らしだったので、芸人になって一人暮らしをして夜遊びを覚えまして。先輩とお近づきになりたい気持ちもあり、夜中にひとりで自転車のって街に繰り出して先輩がいそうな居酒屋さんをのぞいて、先輩を探していたこともあります。今、思うとようやったなと思います(笑)。

でも、何度も繰り返すうちに先輩とも喋れるようになった。自分がシャットアウトせずに好きっていう気持ちを出し続けたら、心を開いてくれるんやなと思いました。ただ、……テレビなどで「好き」と公言しているアキナの山名さんだけはなかなか伝わらないんですけど(笑)。


相手に『この人とやりたい』と思わせるために、自分の軸や強みを明確にする。

中村:覚えてもらうことからまず始めて、その後はどのようにまわりの方と連携していくんでしょう?

ゆりやん:自分がちゃんとやっていないと、まわりの人を巻き込むことはできない。相手の人に「この人とやりたい!」と思ってもらえるように自分自身の軸や強みを自分の中で明確にしておかないとダメやなって実感します。私ってものをみなさんに認めてもらうためには何があるかなと思ったら、やっぱりネタをちゃんとやらないとと感じた。それでピン芸人の賞レースである『R-1ぐらんぷり』の決勝行くことを目標に据えて、ネタ作りに打ち込みました。結果、2015年に初めて決勝に行くことができ、そこから続けて二年連続で決勝に行けたので次の目標は優勝かなと思って頑張っています。

中村:ピン芸人と言えども、ネタ作りにもまわりの協力が必要なんですか?

ゆりやん:お笑いは作家さんという存在がいて。私の場合、今、3人の作家さんが協力してくださっています。1つの目標に向かうチームというような感じですね。私が「R-1で優勝したいんです」と目標を決めたら、作家さんがそこから逆算して「なら、このぐらいの時期に単独ライブをやって、ネタはどんなコンセプトでつくるか」とそういうのを一緒にやってくださる。優勝したら、芸人の私は仕事や知名度は上がる。でも、作家さんたちは裏方なのですぐに何かにつながるわけではない。それでも、私のためにいろいろと動いてくれる。本当に感謝しかないですね。

中村:先ほどからまわりのスタッフの方にゆりやんさんからの信頼と感謝が伝わってきます。だからこそ、まわりもそれに答えようという関係性なんでしょうね。

ゆりやん:芸人って、ピンやとひとりきりやなと思っていましたが、相方だけがパートナーなわけではない。作家さん以外にも、音響さん、照明さん、舞台監督さんなど本当にいろんな方が関わってくれている。そういう方たちにイメージを伝えることも大事だけど、コミュニケーションを取ることも大事やなと。今、やってくれている作家さんも、最初は夜遊び仲間で(笑)。そういう部分から生まれるネタもあるんですよ。


NYCという逆境での経験で「相手を理解する」大事さに気づく

中村:話はすこし変わりますが、ゆりやんさんは英語のネタも多く、英語もお得意で。番組の企画で3カ月間NYに滞在されていました。ただ、「何もわからないまま行って来い」的な感じだったので、かなりハードな状況だったと思うんですが。どうやってのり切ったんですか?

ゆりやん:もともとアメリカには憧れていたんですけど……、ココだけの話、私はハリウッドが良かったんです(笑)。「行先はNYです」と言われたとき、すごい街やっていうのは知ってたけど、事前情報まったくなくて。自由の女神があるぐらいしか知らなかった。で、実際行ってみると、NY、やなくて、「NYC(ニューヨークシティ)」の人ってめっちゃ話すスピードが速くて。英語は好きやったんですけど、ぜんぜん聞き取れずホンマに何を言っているかわからんくて最初はだいぶ凹みました。ロケ行くのイヤやなと思ってわかりやすく部屋にこもりがちになり、かと言ってルームシェアしてた部屋にいても、外国人のルームメイトはルールは守らないし、やりたい放題で腹立つことも多くて。「…もう何もしたくなく」と思って動画サイトで日本のお笑い番組みたりしてました。

もうね、「なんで私ばっかり」っていうのに腹立って「なんで私ばっかりあんたらの皿を洗わなあかんねーん」と結構大きめの声で文句言ったり。まぁ日本語で言ってたんですけど(笑)。帰りたいとか帰らしてくれやとか心の声をそのまんま大きい声で言うてました。飛行機のってやっと日本に帰るとこなのに、雨がふってきて途中で飛行機が引き返してしまう夢をみたり。帰るの日の事ばっかり考えてました。

中村:かなり大変だったんですね。その状況からどうやって切り替えたんですか?

ゆりやん:仕事だし、チャンスをもらっていたのも確かなので、やらなあかんかったというのもあるんですけど、耳も慣れてくるとニュアンスでなんとなく相手の言っていることがわかってきたりして。めっちゃキライやし、1ミリも共感できへんと思ったルームメイトやったんですけど、最終的には仲良くなって。それこそ自分とは分かり合えないかなと思い込んでましたけど、相手のことを理解しようとしたら、全く見えなかった共通項が見えてきたんです。そんなこんなでいざ日本に帰って来てみるとNY、あ、「NYC」のことがすごく好きになっていました。

中村:ちゃんと向き合ってみて、相手を見ようとしたら、お互いに何かを越えられたってことですね。

ゆりやん:そうやと思います。自分の価値観を押し付けたらダメやし、かといって、自分も相手の価値観に染まることもない。でも、「この人はこういう人や」と認めることで、ラクになれることもあるんやなと実感しました。

中村:最後に、これから新しいことをしようとする方にアドバイスはありますか? 

ゆりやん:これを言ったら終わりかもしれないんですけど、「アホの振りするのも大事」ということ。空気を読まなくてはならない場面もたくさんありますけど、空気を読みすぎると逆に自分が出せなくなるので。アホのふりして「何も知りません」という顔で、行ってみるのも案外アリかもしれません。