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【インタビュー】前島密による日本の郵便事業創設以来、受け継がれているイノベーションの精神。 日本郵便がアクセラレータープログラムに取り組む理由とは?

【インタビュー】前島密による日本の郵便事業創設以来、受け継がれているイノベーションの精神。 日本郵便がアクセラレータープログラムに取り組む理由とは?

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日本において郵便事業がスタートしたのは1871年(明治4年)のことだ。江戸時代が終焉し、わずか4年後に、当時の日本において革新的といえる「郵便」というシステムが立ち上がった。郵便事業立ち上げの中心人物が、「日本近代郵便の父」と言われる前島密だ。前島密の持つ革新的な事業立ち上げへの挑戦とそのマインドは、日本郵便社内にも脈々と受け継がれている。

そして2017年、郵便サービスに新たなイノベーションを起こすため、日本郵便は新たな施策を開始する。それが、未来の郵便・物流システムを生み出すことを目指したオープンイノベーションプログラム「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM」だ。

同プログラムを立ち上げ、推進しているのが、日本郵便株式会社 事業開発推進室の福井氏である。若干、29歳(当時)という若さながらも、昨年はオープンイノベーションによる地方創生プロジェクトに取り組み、社内外に広く発信を行った。そして、プログラムの共同運営を手がけているのがサムライインキュベートの富樫氏だ。サムライインキュベートは国内外でスタートアップへの出資・インキュベーションや大企業の新規事業支援を手がけており、初めてオープンイノベーションプログラムを実施する日本郵便の強力なパートナーとなっている。

福井氏・富樫氏に、「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM」開催の背景や目的、特色などについて話を伺った。

▲日本郵便株式会社 事業開発推進室 主任 福井崇博氏

▲株式会社サムライインキュベート エンタープライズプロジェクトマネージャー 富樫憲之氏

時代の変化に適応した、インフラを提供していきたい

——はじめに「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM」をスタートさせる背景についてお聞かせください。

福井:日本郵便はもともと、イノベーティブな会社です。約140年前に立ち上げた郵便のシステム自体も革新的でしたし、郵便番号制度の導入や、住所を読み取り、自動的に仕分けて集積する「郵便区分機」の導入も革新的だったといえるでしょう。

近年は特に「変化の時代」であり、外部環境の変化に合わせて、日本郵便も外部と連携しながら、次世代に向けたイノベーションを生み出していきたいと考えています。「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM」を通じて、未来の郵便・物流システムを作り、時代の変化に応じたインフラを提供していきたいのです。

——では、本プログラムを通じて福井さんが考える実現したい世界観とは?

福井:私は入社1年目の時に、郵便局の窓口業務を担当したことがあります。その際に、ATMなどは使わずに、安心できる窓口でのやり取りを求めているお客さまがたくさんいることを実感したのです。変化のスピードの速い時代であっても、どんなお客さまにも利便性の高いサービスを提供することで、機会の格差を失くし、人々の生活をより豊かにしていきたい。そんな世界観を実現したいと考えています。

——本プログラムは、郵便物流サービスというまさに生活インフラを手がける日本郵便の「次」を作る礎のキッカケになると思います。では、プログラムの特色は何でしょうか?

福井:まず今回のプログラムは、日本郵便の経営層もコミットしている点が大きな特色といえるでしょう。さらに、「郵便・物流のラストワンマイルをテクノロジーで変革する」という具体的なテーマを設定しており、担当部門である「郵便・物流事業企画部」もしっかりとプログラムをサポートします。ドローン実機やドローン実証実験地といった提供できるリソースの用意はもちろん、実験費用も確保しています。さらに、本プログラムは経験豊富なサムライインキュベートさんとの共同運営となっており、選考が進んだスタートアップに対しては最終的に日本郵便またはサムライインキュベートさんからの出資も検討します。

スタートアップのみなさんと共に、前に進んでいきたい

——日本郵便と一緒に事業創出することのメリットとは何でしょうか?

福井:日本郵便には、全国約2万4000局の郵便局、約18万本の郵便ポスト、約14万台の郵便事業用車両があり、1日約3000万か所に郵便物を届けています。この規模感で、人とのつながりを生み出している事業を展開している点は、日本郵便の大きな強みでしょう。このスケール感に関わる事業創出は、大きなメリットになると思います。

—— 一方で、サムライインキュベート・富樫さんから見た、本プログラムに参加するメリットとは何でしょうか?

富樫:福井さんがお話しされたように、全国に張り巡らされている独自のネットワークは大きなメリットになると思います。これらを活用できるのはスタートアップの事業を飛躍的に加速させる可能性があります。また、日本郵便さんは、全国民に浸透している「年賀状」といった日本特有の文化を創りあげてきました。それゆえに、子どもからお年寄りまで安心感のある会社です。そんな日本郵便さんとスタートアップが手を組めば、これまでにないより多くの人々の生活を豊かにする「新しいもの」を生み出すことができるのではないでしょうか。

——仰る通り、老若男女が安心できる事業を展開している企業とコラボレーションすることは、大きなメリットになりそうです。では、プログラムに参加してほしいスタートアップは?

福井:これまで郵便物流の仕組みの多くが「人の手」によって構築・実現してきました。今回のプログラムでは、物流・業務のオートメーション技術やドローンやロボティクスなどの技術を有しているスタートアップと手を組むことで、「人の手」だけではなく「テクノロジー」で新しいインフラの構築を成し遂げていきたいと思います。

——これから応募するスタートアップに向けて、メッセージをいただけますか。

福井:ここ数年、さまざまなスタートアップのみなさんと一緒に仕事をしてきました。多くの方が、私と同年代。しかし、スタートアップのみなさんのほうが経験値も仕事のレベルも断然上だと実感しています。今回のプログラムを通して一緒に仕事をしながら、日本郵便の隠れたポテンシャルを引き出してもらいたいですし、そうすることで、世の中に貢献できる新たな取り組みを一緒に生み出したいと思っています。

富樫:プログラムの実験段階では、例えば、ドローンの実証実験地を使って、ドローンの実機を飛ばすといったこともできます。豊富なリソースが提供できる今回のプログラムを通して、「テクノロジーによって世界を変える」といった強いマインドを持ったスタートアップを支援していきたいと思います。

ドローンの機体、実証実験地など充実したリソースを提供

日本郵便・福井氏、サムライインキュベート・富樫氏のインタビューに続いて登場するのは、日本郵便 郵便・物流事業企画部に所属する上田氏と加藤氏だ。両氏が所属する「郵便・物流事業企画部」が発足したのは2017年4月。この新規セクションでは、郵便・物流の5年先・10年先の業務のあり方を検討している。現段階では、ドローンを活用した郵便・物流を実現するため、実証実験などに着手しているとのことだ。——両氏から、「POST LOGITECH INNOVATION PROGRAM」を通して解決したい課題や、提供できる具体的なリソースなどについて話を伺った。

【写真左】 日本郵便株式会社 郵便・物流事業企画部 課長 上田貴之氏
【写真右】 日本郵便株式会社 郵便・物流事業企画部 係長 加藤光博氏

——郵便物流におけるドローン活用の実証実験を実施されているとお伺いしました。実用化に向けて、抱えている課題点は?

上田:昨年度のドローン実証実験で使用した機体は、搭載貨物の重量は2〜3kgが限度であり、航続距離は最長5kmでした。今後、搭載重量を増やし、航続距離を伸ばしていくことも必要ですが、大きな課題点としては、【1:飛行ルート】、【2:運行管理】、【3:衝突落下のリスク回避】、【4:輸送容器】、【5:通信環境】、【6:離発着場所】が挙げられます。

上記のような1〜6の課題点をスタートアップの技術を組み合わせることで、解決していきたいと考えています。

——上記の課題について、具体的な例を挙げるとどのようなものになりますか。

上田:先ほど申し上げたように、搭載貨物の重量は2~3kgで航続距離は最長5kmです。ドローンの航続距離を高めるため、例えば、無停電電源装置の開発なども必要だと考えています。また、山間部においては高圧電線が張り巡らされており、それを回避するため飛行ルートが限定的になります。高圧電線を回避することなく、ドローンの運行を可能にする技術も求めています。

さらに、天候の変化や災害時など、ドローンだけではサービスを補えない難しいケースもあります。そうした時にも輸配送が滞らないように、IoTや先端技術を活用した自動運転車を活用したいと考えており、それらの技術も求めていますね。

——今回のプログラムにおいて、具体的に提供できるリソースを教えてください。

上田:ドローンの機体はもちろん、操縦者や管理者、そしてドローン実証実験地を提供することができます。ドローンは、郵便・物流用として使用できるクワッドコプター(4枚羽)とヘキサコプター(6枚羽)を用意。これらは国内最先端のドローン機体です。

また、ドローン実証実験地は、神奈川(平塚)、埼玉(ふじみ野・秩父)、福島(南相馬)の4箇所が使用可能予定です。

——最後に、プログラムに対しての思いをお聞かせください。

加藤:国内の郵便・物流マーケットにおいて、ドローンを活用した実例は一例しかありません。私たちとスタートアップのみなさんで、まだ国内外で実現した例が少ないサービスを国内で実現させる。そうした醍醐味を一緒に味わいたいと思います。

上田:郵便・物流の分野は、今後ますます労働人口の不足が予想されます。こうした社会課題を解決するためにも、ドローンや自動運転といった先端テクノロジーを用いて、労働人口不足を補っていきたいですね。

(取材場所協力:SENQ霞ヶ関)

(構成・取材・文:眞田幸剛、撮影:佐々木智雅)

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