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【イベントレポート】「共創には、“PDCA”ではなく“OODA”を取り入れよ」eiicon×プロトスター・栗島氏

オープンイノベーションプラットフォーム「eiicon」と起業家支援インフラを創るプロトスターによるイベントが、東京・大手町のコワーキングスペース「SPACES」で開催された。「新規事業創出における日本の潮流~社外連携を成功させるには~」と名付けられた本イベントには、イノベーションや新規事業などに関わる企業の担当者たちが参加し、イノベーションを取り巻く最新の情報やオープンイノベーションの起こしなどを学んだ。

会に先立ち、eiicon founder中村亜由子が挨拶。サービススタートから半年が経ち、最近ではアイデアソンなどイベント開催の依頼が多く寄せられていると話す。「eiiconではテーマ設定からアウトプットの設計までを請け負い、イベントの目的を明確にしながら、成果が生み出されるよう企画運営している」と強調した。

▲eiicon founder 中村亜由子


「HardTech」はブルーオーシャンの可能性が大

本イベントの講師を務めたのは、プロトスターの代表取締役CCO 栗島祐介氏。同社は主にシード期のスタートアップの支援をし、投資家と結びつけている。支援対象が、農業や教育、医療、建築土木などイノベーションを起こすのが困難とされる領域「HardTech」に限定していることが、同社の大きな特徴だ。

これらの領域は産業・技術・社会構造的にブレイクスルーを必要とする一方で、投資の対象とされにくい。つまり、あまり手を付けられていない領域ということもでき、栗島氏は「ブルーオーシャンではないか」と指摘。その上で、「大きくて古い産業こそ、既存のITインフラなどの応用で産業の創出があるはず」と語った。

▲プロトスター株式会社 代表取締役CCO 栗島祐介氏

早稲田大学商学部卒業後、大手資産運用会社にて株式トレーダーやファンドマネジャーを経て、アジア・ヨーロッパにおいて教育領域特化型のシード投資・インキュベーションを行う株式会社VilingベンチャーパートーナーズCEOを経験。その後、起業家支援インフラを創るプロトスター株式会社(旧スパノバ株式会社)を設立。 新産業創出を行うスタートアップを生み出すための起業家支援コミュニティ「StarBurst(旧Supernova)」の企画・運営総括も行う。


PDCAはスタートアップに不向き

栗島氏はスタートアップの特性について、「当たり前のことだが」と前置きした上で「やらずにはいられないという情熱を持って事業に取り組でいることがほとんど」と話す。その上で、オープンイノベーションを視野に入れスタートアップとの連携を目指す場合、PDCAサイクルを用いないように注意を促した。

PDCAは業務を遂行する際に企業の中でよく使われるが、あくまで管理された状況の中で有効という。不測の事態が起こりがちな新規事業などには不向きで、栗島氏は「OODA(ウーダ)」と呼ばれる思考法を用いることを推奨した。OODAは監視(Observe)、 情勢判断(Orient)、 意思決定(Decide)、 行動(Act)を意味し、想定外を認め、その場に応じた判断を即座にすることを重視していると伝えた。


ムダな努力は避ける

また、栗島氏は、スタートアップの時間を奪うことにつながる「ムダを排除すること」の重要性を説く。事業を一度に進めることを避け、顧客の反応などを見ながら、その都度ビジネスモデルを検証することが必要だと話した。「連携を成功させるコツは、不必要な挑戦を行うというムダを省きながら、顧客の求めるものを作ることです」と強調。

一方、検証過程は「カオス」になりがちで、ビジネスモデルを根底から作り変えることも少なくないという。どんな手法を用いてもスムーズに物事が進むことは極めて稀で、良いところ取り入れながら少しずつ物事を進めていくことが大事とアドバイスを送った。


顧客はスタートアップに喜ばれるリソース

この日はスマホで質問を送れるSli.doを活用したことなどから、会場から多くの質問が寄せられた。質問には、栗島氏と中村氏が答えた。「良いスタートアップとはどのようにすれば出会えるか」との問いには、「誰も手を付けていない『金の卵』を探し当てるのは難しいでしょう。スタートアップのいわば上位層が集まるコミュニティがあるので、その中に入り込むことが重要になります」と回答。

また、「スタートアップから見て有用性の高いリソースは」には「例えば、顧客データがあります。すべてを開示できなくても、一部でも喜ばれます。また、実証実験が始まった、というニュースが流れるだけで、世間での認知度が大きく高まり、スタートアップの成長を促すことがあります」と伝えた。


取材後記

新規事業、オープンイノベーションには、これまでの常識は通用しないと改めて感じた。想定外は日常茶飯事だろうし、ビジネスモデルの大きな変更を余儀なくされるのも、一度や二度ではないだろう。栗島氏が指摘するように、「これさえあれば大丈夫」という手法はないはずだ。それでも、スタートアップは社会にイノベーションを起こし、未来を変えることを望みながら、これまでにない事業に取り組んでいる。スタートアップとの連携を目指すなら、その情熱や熱意に敬意を払い、思いに応えることが大前提となるのではないか。栗島氏も熱量のないところに化学反応はないと話す。互いに熱意を持っていれば、たとえ時間はかかっても、何らかの成果が得られるはずだ。

(構成:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)