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【Open Innovation Guide②】 『連携における失敗事例とその理由、解決策とは?』

eiiconは、10月12日に”オープンイノベーションの手引き”というコンテンツを公開しました。これは、経済産業省「事業会社と研究開発型ベンチャー企業の連携のための手引き(初版)」を元に、事業提携を成功させるための各種ノウハウをわかりやすくWEBコンテンツ化したものです。自身の課題感や、状態に合わせて検索、読み進めることが可能となっています。

もともとの手引きも100ページ以上ある大作ですが、eiiconのコンテンツもボリュームがあるため、eiicon founder 中村がわかりやすく解説していきます。


◆Open Innovation Guide②:連携における失敗事例とその理由、解決策とは?

おはようございます。中村です。前回は『連携にあたっての心構え』についてお話ししましたが、今回は、連携における失敗事例の裏側について、解説してまいります。

「最初よい雰囲気で、打ち合わせが進んでいたのに、結果白紙に戻った……」。このようなお話は、実はよく耳にするお話しです。手引きではそれを、『相手企業との“社内文化・仕事の進め方” の違いや“与信・情報不足” により、意思決定者同士の具体的討議に至らない』事例として、まとめています。

https://eiicon.net/about/guidance/problem.html

「相手企業との“社内文化・仕事の進め方” の違い」に関しては前回の解説の中で、特に大企業では自社の社内稟議・申請に関して事前に確認しておくべきとお話ししましたが、今回は「与信・情報不足」について、大企業の裏側を解説します。

事業会社サイドのオープンイノベーション担当が、自社の探している領域のスタートアップを発見し、出会えたとします。そうして、前向きに話がまずスタート。一度プレゼンを実施することになります。

プレゼンの内容は上々で、事業会社として探していたターゲットだったのです。オープンイノベーション担当者は是非前に進めたいと思いました。しかしその後、お話しが白紙に戻ってしまいました。

はい、こういう事例が頻発しています。

事業会社の中でどのような流れでどんな、意思決定がなされているのでしょうか。これは、いざお話を前に進めようとした際に、そのタイミングから登場する事業会社内ステークホルダーたちの壁に、オープンイノベーション担当者が破れるパターンが大多数です。

いわゆる「内部の敵」です。

内部の敵は、企業によって色々な部署に潜んでいます。そういった「内部の敵」が大抵強く縛られ、侵されているのが『社内ルール』。取引前に非常に強い力を持って登場します。たとえば、よくあるのはイラストにもなっているように「連携実績がないため、詳細な信用調査が必要」というものです。



◆オープンイノベーションの推進を阻害する「前例主義」

『過去の取引実績』、『資本金の額』、『設立年度が間もないこと』、『導入事例・実績』……。これらは、ウソのような本当の話ですが、大企業がスタートアップと連携しようとすると本当に出てくる4つのポイントです。


まず、過去の取引実績

これびっくりしませんか。創業間もないベンチャーと提携しようという文脈で聞いてくる質問とは思えません。が、「なくて当たり前」では問屋が卸さないのがこの「前例主義・社内ルール」に侵されている相手です。「今回初めての取引である」ことを根気よく伝えねばなりません。


資本金の額。

これも確認するとわかるのですが、聞いてくる担当者もなぜ聞かなければいけないかが分かっていないというのが現実なんです。にも関わらず、中には「1000万円以上の資本金でなければ取引不可」という社内ルールを制定している企業もあります。

2006年の新会社法により1円以上であれば資本金の金額は自由に設定できます。そして、1000万円以上の資本金を持つと法人住民税が高くなりますし、1000万円未満で設立すれば開設後2事業年度分の消費税が免除され、節税に効果的であることから敢えて1000万円未満で設立するスタートアップも増えています。しかし、そんなことも全く知らないのが「資本金を確認する側」の世界です。

ではなぜ、資本金確認が与信の項目によく入っているか。それは結局、社会的信頼性・倒産可能性の確率をなんとなく判断できる資本金を確認しているわけなんですが、今回果たして、潰れるかどうかのリスクをそこまで想定して、どうしようというのでしょう。


設立年度が間もない。

スタートアップなのだから、まだ若い会社であることはプラス要素ではありませんか?


導入事例・実績。

もはや、笑止。今から伸びる市場に目を向けたチャレンジャーであるスタートアップに目をつけてお声掛けしたのではないのですか?


とまぁ、全部冷静に考えれば、確かにリスクもありますが、スタートアップについて回るものばかりです。これらが、大企業が新しく取引をはじめようとするときに大抵引っかかる内容であるということが、今の日本の真実なのです。

戦後70年、日本はほぼ、トッププレイヤーが変わらない業界構造をしています。それはひとつ日本の特徴であり、そういった老舗企業の「守らなければいけないもの」を守るためのリスク回避は、徐々に分厚く強固となり、今日に至っては度を超えてきているものが多数あります。ただ、それが「度を超えている」「不毛」のように、思えている社内の担当が少ないこともまた事実。

オープンイノベーション担当が共創パートナーを発見し、ともに実践しようとした矢先に、会社の経営状況を証明するために「前年度の決算書」、「銀行の保証書」の提示を要求。提示後に、「会社規模が小さい」「株式上場してないから経営の透明性がない」などと取引NGを言い渡すことはざらであり、事業会社内担当者はこれを全く悪意を持たず、「イノベーションの芽を潰している」という感覚など一切なくやってのけます。


◆提携の壁に立ち向かうための方法

手引きでは、これらの解決策として二つ提示をしています。

もちろん担当者が事前に社内のプロセスを理解し、それに対しての布石を打っておくことができれば、提携にこぎつけることができます。ただその道のりが極端に長かったり、どうあがいても突破できない場合は下記二つはとても有効だと我々も考えています。


ベンチャー企業を発掘・育成する。

https://eiicon.net/about/guidance/task1.html

ここでは、ベンチャー企業発掘育成の方法として、「アクセラレーションプログラムの運営」を具体的に提示しています。これが有効である理由は、通常の社外連携のプロセスとは異なりプロジェクト専用のルール・社内申請ルートを創ることに適しているからです。

裏を返せばアクセラレーションプログラムを闇雲に実行しても何も解決しません。プロジェクトの企画段階で、提携までのプロセス整備を念頭に置き動いていくことが大切です。

我々eiiconは、アクセラレーションプログラム等、独立したプロジェクトを走らせるときのキーは「トップのコミット」であるとよくお話ししています。考えなしに、「会社ルール」を提示してくる社内のステークホルダーに対し、一番有効な手段は「トップダウン」。「社内ルール」を推してくるステークホルダーには、本当に残念なお話しではありますが、力でねじ伏せる方法が最もスピーディかつ有効であるためです。

あまり論理的なやり方ではありませんが、社外連携をスタートさせる前例を創ることができれば、今度は「前例主義」の日本だからこそ、過去の事例をもとに、様々な組み方ができるようになるのも事実。最初の方法としてはやはり有効でしょう。


もう一つ、手引きで提示されている解決策は

②スピーディーな仮説と意思決定です。

https://eiicon.net/about/guidance/task8.html

ここでは、CVCの設立が例として挙げられています。これも、闇雲に設立してはNG。意思決定のほとんどが既存の経営会議に委ねられるような仕組みは本当にやめるべきです。スピーディに意思決定するための方法として成立させるためには、意思決定権をほぼ委譲するくらいの形でCVCのルールを設定するのが有効です。

社外連携を進めようとする際、「敵が味方にいた」と言われてしまうのは本来不本意でしょう。「内部の敵」は基本的には会社をリスクから守るためにそのようなルールを行使しているので、これまた単に敵視しては勿体ないです。ただ、この体制や不毛な与信の仕組みを変えるためには一度力技を駆使することが一番の近道だと考えていますし、手引きでも様々な事例のもとにそれを推奨しています。


◆最後に

「オープンイノベーション」というワードを聞かない日はないくらい、注目を集めている昨今。そんな時だからこそ、企業の中で体系化していくことができるようにきちんとPDCAを回せる、地に足のついたオープンイノベーションへの取り組みが必要です。

オープンイノベーションの手引きは、先人たちが失敗し、苦労した経験をまとめた内容が詰まっている最高の教科書だと思っていますので、ぜひご一読ください。

●他詳細はこちらから オープンイノベーションの手引き https://eiicon.net/about/guidance/

解説/オープンイノベーションプラットフォーム「eiicon」Founder 中村 亜由子(nakamura ayuko)