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【富士通×Make School】 「世界を変える人材」が育つ日本を、創っていく

サンフランシスコ発のプロダクトプログラミングスクール、Make School。プログラミング教育をはじめ実践的なコンピューターサイエンス教育を提供し、世界を変えられるプロダクトを作り出す人材を育てていこうとしている。日本でも、2017年にジャパンカントリーマネージャーに野村美紀氏が就任。サマースクールを開講するなど本格的な展開をスタートした。

そのMake Schoolと積極的に連携を進めているのが、富士通だ。サマースクールのサポートからスタートし、今回はエンジニア向け社内イベントに野村氏を招くなど、交流を進めている。両社が見据える未来について、富士通研究所の佐川氏、富士通ベンチャープログラム担当の徳永氏、Make Schoolの野村氏の3名に話を伺った。

【写真左】 株式会社富士通研究所 常務取締役 佐川千世己

【写真中】 Make School ジャパンカントリーマネージャー 野村美紀

【写真右】 富士通株式会社 マーケティング戦略本部 戦略企画統括部 シニアディレクター(ベンチャープログラム担当) 徳永奈緒美


「日本のソフトウェア開発を変えたい」その危機感が引き合わせた両社

――今回、富士通研究所が主宰するエンジニア向けイベント「ソフトウエア技術者交流会」に、野村さんが登壇されたそうですね。そもそも、どのようなきっかけで出会ったのでしょうか?

徳永 : 今年の夏、Make Schoolさんを支援している森ビルの新規事業担当者の方からの紹介がきっかけですね。Make School Japanが開催するサマースクールで、企業とのトークセッションを行うこととなり、富士通に協力依頼をいただきました。

野村 : Make Schoolの会場となった「TechShop Tokyo」は、富士通さんがアメリカのTechShopと組んで設立されたものです。私はアメリカ留学時代からTechShopが大好きで、働きたいくらいだったんですよ。そのご縁もあって、紹介をいただきました。

徳永 : それで、開催前にまず顔合わせをしたんですよね。野村さんはカントリーマネージャーながら、まるで創業者のように熱く想いを語ってくださって、その熱意に飲み込まれてものの3分で好きになってしまいました。「もうあなたのこと好きになっちゃったから、何でも支援します」って(笑)。

そこで、日本のソフトウエア開発の現状を変えようと活動をしている佐川に、真っ先に紹介したんです。そしたら二つ返事で「面白いですね、やってみましょう」となりました。

――佐川さんが、野村さんと会った時の印象は?

佐川 : 僕は2分で好きになっちゃいましたね。

徳永 : えー!負けた!

一同 : 

佐川 : 私はずっとソフトウエア開発エンジニアをしており、「日本のソフトウエア開発の在り方をどうしたら変えていけるか」と、ずっと危機感を抱いていました。その課題感から社内外で様々な取り組みを行っています。その中でも、これからの日本を創るソフトウエア開発エンジニアを育成するには若い人を含めて考えていかなければ、と思案していた時に野村さんと会ったんです。

Make Schoolさんは、ソフトウエアを単にコーディングする人材ではなく、新しいものを生み出せる人材を育てていこうとしている。まさに私の想いと同じです。それを、野村さんのような若い女性が熱意を持って取り組んでいることが嬉しくて。そりゃあ、2分で好きになりますよ。もう一緒にやるしかないと思いました。

徳永 : もちろん、佐川さんなら同じ気持ちを共有できると思って紹介したのですが、まさか私より早く好きになっていたとは(笑)。


富士通が惚れ込んだ、Make School 野村氏の熱意

――徳永さんと佐川さんを魅了した野村さんの情熱は、どこから湧いてきているのでしょうか?

野村 : 私は名古屋生まれ名古屋育ちで、閉鎖的な環境の中で育ちました。でも、そんな中でもテクノロジーが大好きで、6歳の頃からコードを書き始めたんです。カラーコードを暗記するくらいのめり込んでいたのですが、それをどう発揮していくかまでは分かりませんでした。

そうこうしているうちに受験の波に流され東大に進学したのですが、正直なところ、私に合う環境ではありませんでした。そこでもっと外の世界を見ようとUCバークレーに留学。アメリカで出会った仲間との交流から「海外の人は、熱意が違う」と感じたんです。彼らは早いうちからやりたいことを持っていて、何らかの方法で実現しています。それを、エンジニア、アーティストなど様々な立場の人たちが一緒になって議論し、新しいモノを生み出している。その世界に身を置いた時に、2つの想いが湧いてきたんです。

ひとつは、「自分自身が手を動かしてモノをつくることができる人になりたい」。そしてもうひとつ、「自分だけではなく、様々な人がそうなれる場所を日本で創りたい」。この2つを、日本に帰国して行うミッションとしました。

――Make Schoolにジョインしたきっかけは?

野村 : 1つ目のミッションは、ソフトウエア制作会社でソフトウェア開発、プロジェクトマネジメントを行う中で修行をしていきました。でも2つ目はそれだけではできずアイディアを考えたり、アンテナを張り始めた頃に、Make Schoolの創業者に日本でたまたま出会いました。彼に会って、日本でMake Schoolを展開できる人を探していると聞いたとき、「これだ!」と。自分の力がレバレッジできる場所だと確信したので、Make Schoolにジョインすることを決めました。創業者も「ミキに会った時、僕の日本人版だと思った」と言われました(笑)。

――富士通とはサマースクールでの連携、そしてイベント登壇と関係性を深めていらっしゃいますね。

佐川 : 実は富士通とMake Schoolさんは少なからず縁があるんですよ。私と野村さんが出会う前、アメリカのMake Schoolに佐川の部下が参加したんです。彼は休みを取って自費で参加しようとしていたのですが、それを佐川が聞きつけて「そんなに意欲があるなら」と、社費で行かせていました。

野村 : 私がMake Schoolにジョインする前に行っていらっしゃった方で、ジャパンカントリーマネージャーになることが決まった時も、真っ先にお話を聞きに伺いました。その方も、今回私が登壇したイベントに参加していらっしゃいましたね。


企業の枠を超えて、日本の未来を創る

――なるほど。ところで「ソフトウエア技術者交流会」というのは、どのような内容だったのですか?

佐川 : 基本的には富士通のソフトウエアのエンジニア有志を集めて、「どうやって自分たちが元気になるのか」、「どうやって社会を元気にするのか」というテーマで行っているものです。まだ今回で5回目なのですが、外部の方にも参加していただいて、企業の冠を外してざっくばらんに課題を共有し、未来を考える場にしています。そこで今回、野村さんにも登壇していただきました。

野村 : 私、本当に感動してしまって。こんな若い年齢の私が、富士通さんのような大企業の会合で登壇するなんて、日本ではありえないことです。これは私がすごいからというより、佐川さんが本気で若い人材を交えて日本を変えていきたいと考えていらっしゃるからこそなんですよね。終わった後、こちらに真っ先に駆け寄り「一緒に頑張りましょう」と言葉をかけてくださったエンジニアの方もいらっしゃいました。嬉しかったですね。

――今後、どのような連携を考えていらっしゃいますか?

野村 : まだ手探りの状況ですが、大小関係なく、面白くできそうなことから手がけていきたいですね。サマースクールでは、富士通さんには講師側――「育てる側」としてサポートしていただきました。しかし今回のイベントに参加して、もしかしたらMake Schoolが富士通の社員の方々やその周辺の方々を変えていくお手伝いをして、一緒に育っていくことができるのかもしれない、と感じました。

佐川 : Make Schoolさんのビジョンを日本で実現していけるように、富士通のリソースを活用していただければいいと思います。たとえば、若い世代の人たちがMake Schoolで富士通のエンジニアたちとハッカソンを開催したり、新たな研究テーマやAPIを使ってもらったり。そうしてエンジニア同士交流することで、相互に刺激し合う場を創っていけたらいいですね。

徳永 : いいですね!

野村 : Make Schoolも然り、小さな会社が大きなインパクトを出そうとした時に、大企業との連携は本当に大事です。特に日本では。それができないと潰れるか、細々と活動するだけで終わってしまいます。目指す未来を実現するためにも、富士通さんのような企業と組んで、スケーリングしていきたいですね。

佐川 : ソフトウエアはあくまで一つの題材で、ここを起点として日本のHOWTO教育を変えていきたいですね。そして、若い人を元気にする仕組みを早く創りたいんですよ。だから私が持っているネットワークを野村さんともつなげて、どんどん輪を広げていこうと思っています。


取材後記

歴史も、規模も、文化も、事業領域も異なる会社同士が出会い、手を携えて新しいことを行う。違うことだらけの両社には乗り越えるべき壁がたくさんあるだろう。そうした困難を乗り越えるための原動力となるのは、「ビジョンの共有」だろう。ビジョンに共感し合った両社の結びつきは強固であり、互いを尊重する空気が生まれていく。富士通とMake Schoolの協業により、世界を変える人材が日本から続々と誕生するかもしれない。

(構成:眞田幸剛、取材・文:佐藤瑞恵、撮影:加藤武俊)