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【アンドハンドが出展!超福祉展レポート】「超福祉社会にインフラ化されうるサービスとは?」

【アンドハンドが出展!超福祉展レポート】「超福祉社会にインフラ化されうるサービスとは?」

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未来の福祉を提案するイベント「2020年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう展」(超福祉展)が、11月7日(火)~11月13日(月)の7日間、渋谷ヒカリエ8階「8/(ハチ)」にて開催された。同イベントは2014年にスタートし、今年で4回目の開催。従来の福祉の枠に収まらないアイデアやデザイン、テクノロジーを備えたプロダクトを見て触れられる展示や、開発者や識者などによるトークセッションなど多彩なイベントを展開した。

eiicon labで継続してレポートしている「アンドハンド」も、同イベントに出展。展示ブースの様子や、11月10日(金)に行われたプロジェクトメンバーによるシンポジウム・体験会の模様を取材した。

 

超福祉展 展示ブースでは、プロトタイプを展示

アンドハンドは、「やさしさから やさしさが生まれる社会」の実現を目指すサービス。LINEなどを活用し、身体・精神的な不安や困難を抱えた人と、手助けをしたい人をマッチングし、具体的な行動を後押しする。当初、有志でスタートしたプロジェクトチームだが、現在は大日本印刷や東京メトロ、LINEといった企業と連携して構想を進めている。今年12月には、いよいよ実証実験が行われる予定だ。

会場の展示コーナーに入ると、まず目に飛び込んできたのが中央に設置された「企画展示『超福祉・実現MTG』」ブース。これは今回のイベントを代表するプレゼンター5名が、それぞれの活動紹介を行う展示だ。その5名のうちの1人が、アンドハンドのリーダーであるタキザワケイタ氏。タキザワ氏は「超福祉社会にインフラ化されうるサービスとは?」というテーマで、アンドハンドが構想するサービスとデバイスのプロトタイプの展示を行った。

その一つ、妊婦さん向けの「スマート・マタニティマーク」は、電車やバスなどの交通機関で立っているのがつらい妊婦さんと、席をゆずりたいと考える人をマッチングするサービスだ。マタニティマーク型のデバイス(↑写真右下)にはビーコンが内蔵されており、スイッチを入れると信号を発信。アプリをインストールした周囲のサポーターのスマートフォンに通知が届く。席を譲る際は「席をゆずります」ボタンをタップすると、デバイスが光って知らせるという仕組みだ。

もう一つ、聴覚障がい者向けのプロトタイプも開発が進んでいる。例えば電車が急停止した時、その原因については車内アナウンスで流れることが多い。そのため聴覚障害者は何が起こったのか分からないまま、不安な時間を過ごすことになる。そこでデバイスをオンにすると、周囲のサポーターのLINEにメッセージが届き、ChatBotを通じて運行状況などを教わることができる。

▲「アンドハンド」プロジェクトチーム ワークショップデザイナー タキザワケイタ氏

「困っている人を助けたいという気持ちはあっても、いざ困っている人を前にすると、なかなか声を掛けられないこともあります。また、電車の中ではスマホに夢中で、周囲の困っている人に気が付かないことも多い。スマホで発生した問題をスマホで解決しようというのが、アンドハンドの基本的な考えです。アンドハンドが人々の背中を押し、成功体験を提供し、行動変容を起こすことで、この仕組みがなくても手助けし合える社会にしていけたらと思います」と、タキザワ氏は語る。

12月11日〜15日、東京メトロ銀座線にて実証実験を実施!

大日本印刷もアンドハンドブースを出展。ここでは12月に東京メトロ銀座線で行われる「LINEで席ゆずり」の実証実験について告知が行われた。大日本印刷 情報イノベーション事業部 コンサルティング営業本部の金井氏によると、今回の超福祉展への出展については、経営層が自ら全社に共有。これまで関わりのなかった社員も展示に訪れるなど、反響が大きいという。

また、最近ではテレビ番組や新聞などのマスメディアでも紹介され、認知がぐっと広がった。「メディアに取り上げられたことで、様々な企業から『一緒に取り組みたい』と声を掛けていただくことや、福祉団体などから『こんなことをして欲しい』というご要望をいただくことが増えました。世間からの注目度と期待の高まりを感じています」(金井氏)。

▲大日本印刷 金井氏

実証実験については、以下の通りだ。

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<アンドハンド 妊婦向けサービス 実証実験>

#LINEで席ゆずり実験 〜TOKYOのやさしさが試される5日間〜

【路線】東京メトロ 銀座線(最後尾車両)

【日程】12月11日(月)~12月15日(金)

                上野駅発 10:08 11:08 13:47 14:47

                渋谷駅発 10:55 11:55 14:31 15:31

※LINEで「アンドハンド」を検索、友だち登録することでサポーターとして実験に参加できる。

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【シンポジウム】結成1年半、走り続けたアンドハンド

この日、シンポジウム会場では「やさしさからやさしさが生まれる社会へ~アンドハンド体験会~」と銘打ち、トークセッションが行われた。登壇したのは、大日本印刷の松尾佳菜子氏、東京メトロの中山砂由氏。そして「アンドハンド」プロジェクトチームUI/UXデザイナーの池之上智子氏だ。

▲「アンドハンド」プロジェクトチーム UI/UXデザイナー 池之上智子氏

まずは池之上氏から、「アンドハンド」プロジェクトの歩みについて語られた。始まりは、2016年、タキザワ氏主宰の「ハイレベルメンバーを共創させたら何が起こるか実験」というワークショップだった。そこで結成されたチームは2ヶ月後の、Google主催のプロジェクト「Android Experiments OBJECT」で「スマート・マタニティマーク」と「Chronoscape」の2作品がグランプリを受賞。さらには妊婦だけではなく視覚・聴覚障がい者や車椅子利用者、ヘルプマーク利用者、外国人旅行者など外出時に不安や困難を抱える人と、手助けをする意思のある人をLINEでマッチングするサービスに展開し、2017年3月「LINE BOT AWARDS」において、グランプリを受賞した。

しかし、有志によるプロジェクトメンバーだけでアンドハンドが目指すインフラを創ることは不可能に近い。そこで、早い段階から大企業とのオープンイノベーションを意識し、大日本印刷、東京メトロ、LINEを巻き込んでいった。その結果、2016年6月のチーム結成からわずか1年半で、メトロ銀座線での実証実験を行うに至る。

東京メトロ、大日本印刷ーー大企業を巻き込み、実用化へ

次に、東京メトロの中山氏、大日本印刷の松尾氏からアンドハンドへの意気込みが語られた。

「日本人は、自分の気持ちを表に出すのが苦手です。しかしこれだけスマホが普及している世の中。声に出せなくても温かい気持ちを持つ人と、交通弱者をつなぐサービスを作りたい。そう考えて社内提案制度に応募しました」という中山氏。

▲東京メトロ 中山氏(写真右)

それがきっかけで新規事業開発部門の社員からタキザワ氏を紹介されたことが、アンドハンドとの出会いだった。「交通弱者がもっと外出しやすいように。地下鉄が安心安全であるように。そしてゆくゆくは、アンドハンドのシステムがなくても助け合いが行われる、やさしさがあふれた社会を実現していきたい」と結んだ。

松尾氏は、アンドハンド結成当初からのメンバーだ。異業種のメンバーが集った「アンドハンド」プロジェクト。素晴らしいビジョンを掲げてはいるが、実現していくには限界がある。そこで会社としての取り組みに拡大したいと考え、ビジョンに共感した有志と社内横断プロジェクトとして動き始める。大日本印刷のブランドステートメントでもある「未来のあたりまえをつくる。」とリンクさせたビジョンと意気込みは経営層をも動かし、社として実証実験を行っていく承認を得た。「『助けて欲しい側の意思表示』と『助ける側の心理的ハードルを低減する』サービスでフラットな助け合いを後押しし、やさしさからやさしさを生む社会を実現していきたい」と、松尾氏は強く語った。

▲大日本印刷 松尾氏(写真左)

プロトタイプを用いたアンドハンド体験会

最後に12月の実証実験について告知を行った後は、プロトタイプによる体験会を実施。上記でタキザワ氏からも紹介された「スマート・マタニティマーク(妊婦さん向けサービスコンセプトモデル)」と、「聴覚障がい者向けサービスプロトタイプ」を用いて、参加者を手助けをゆずる側/ゆずられる側に分かれて体験を行った。参加者からは、「声を掛けるよりも心理的なハードルが低い」「もし実用化されたら、ぜひ使いたい」という感想が寄せられた。

トークセッションを通じて立ち見が出るほどの大盛況。また、様々なメディアの取材も行われるなど、アンドハンドへの関心の高さがうかがえた。

多様なプロフェッショナルが集結した「超福祉・実現MTG」

アンドハンド体験会の後は、超福祉に関する想いやアイデアを表現し議論する場「超福祉・実現MTG」が開催された。タキザワ氏をはじめ「超福祉」をコンセプトに新たな仕掛けを行う5人のチャレンジャーの問題提起・提案に対し、エンジニアやNPO、行政担当者など様々なジャンルのプロフェッショナルを交えて議論を行い、プロジェクトや連携を前進させる創発型ミーティングだ。プレゼンテーションが行われた後は、各テーマに分かれたテーブルにて、“超福祉な社会を日常にする”ための議論が行われた。

取材後記

アンドハンドは様々なメディアで紹介され、一般の人たちからの反響もポジティブ/ネガティブ両面で多数聞こえてくるそうだ。中には、「そんなのなくてもいいよ」という厳しい声もあるという。アンドハンドの課題感や活動内容がまだ正しく伝わり切っていないという課題もあるだろう。タキザワ氏はこう話す。「まずは話題になることが第一歩。色々な意見が聞こえてくるということは、人々がこれまで目を向けていなかった社会課題を認識し、考えているということですから」

12月の実証実験では、どのくらいのサポーターが現れるのか。そして席をゆずった人/ゆずられた人に、どんな気持ちや行動の変化が訪れるのか。「TOKYOのやさしさが試される5日間」が、もうすぐ始まる。

(構成:眞田幸剛、取材・文:佐藤瑞恵、撮影:加藤武俊)

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