eiicon

【インタビュー】創業40年のデザインファームが、海外UXトレンドを学ぶイベントを開催する理由とは?

1979年に設立され、現在39期目を迎えている老舗のデザインファーム、テイ・デイ・エス。多種多様なクライアントに対して、戦略的なデザインソリューションを提供し、長年にわたって実績を積み重ねてきた同社。創業40期の節目となる年の2018年1月に「BUSINESS×SUCCESS×UX ~世界のUXから自らのビジネスを飛躍させる~」と題したイベントを開催する。このイベントを企画した中心人物が、執行役員・桃井美保氏だ。

アメリカのデザインスクールで学んだ桃井氏は帰国後にテイ・デイ・エスに入社後、IT・エンタメ企業などを経て、2016年4月に同社に復帰。以来、次世代のテイ・デイ・エスを形作るべく、新規事業創出をミッションに掲げており、その一環として「BUSINESS×SUCCESS×UX ~世界のUXから自らのビジネスを飛躍させる~」を開催する。このような桃井氏の活動を支えるのは、ビジネス支援を手がけるGOB Incubation Partnersの共同代表 櫻井氏だ。

アメリカやヨーロッパの最新のデザイン動向や「デザイン思考」に精通した両氏が手がけ、海外のデザイナーが参加するBUSINESS×SUCCESS×UX ~世界のUXから自らのビジネスを飛躍させる~」。日本のUXデザインのボトムアップに一役を買うべく、このイベントを開催するその背景や目的についてインタビューを実施した。

▲株式会社テイ・デイ・エス ビジネス・インテグレーション・チーム 執行役員 桃井美保氏

米・ニューヨークのデザインスクールを卒業後、現地でグラフィックデザインの仕事に従事。約6年の米国滞在後、ヨーロッパを経由して日本に帰国。テイ・デイ・エスに入社する。その後、IT企業やエンターテインメント企業など複数社に勤務後、2016年4月にテイ・デイ・エスに執行役員として復帰。新規事業創出に力を注いでいる。

▲GOB Incubation Partners株式会社 代表取締役 櫻井亮氏

日本ヒューレット・パッカード経て、2007年よりNTTデータ経営研究所に勤務。2013年に北欧系ストラテジックデザインファームDesignitの日本オフィス立ち上げを担い、代表に就任。その後、GOB Incubation Partners 株式会社を設立。新規ビジョン策定・情報戦略の企画コーディネート、ワークショップのファシリテーション、デザイン思考アプローチによるイノベーションワーク、学生起業家や社内起業家の育成などを手掛けている。


イベントには、日本との親和性が高いヨーロッパのデザイナーが登壇

——最初に今回のイベントの特徴からお聞きしたいと思います。登壇予定のUXデザイナーは、最新のデザイン発信源であるシリコンバレーではなく、ヨーロッパからの招聘になるとお聞きしました。それには理由があるでしょうか?

櫻井 : デザインのスピード、そしてエナジーといった点においても、シリコンバレーは圧倒的だと思います。しかし一方で、ヨーロッパのデザインファームは、冷静でとても奥深い。日本人の感性にとても近いと感じています。

小さくスタートして、失敗しながらも物事をドラスティックに進めるシリコンバレーのデザインと、100年単位の俯瞰した目線を持ちながら小さく積み上げていくヨーロッパのデザインは、相反することなく、共存ができると考えています。そのためにもまずは、日本と感性が近いヨーロッパのデザインを学んでほしい。それが、ヨーロッパのUXデザイナーを招聘している理由ですね。ぜひ、グローバルトップクラスのUXデザイナーによる話を聞き、体感することで、デザインに対する知見を高めてほしいですね。

——なるほど。ありがとうございます。では、今回のイベントがどのようにして開催されるに至ったのか、時系列的にお伺いできればと思います。まずは、桃井さん、櫻井さんお二人の出会いについてお聞かせください。

桃井 : 初めての出会いは、2011年に遡ります。出会いのキッカケは、東日本大震災でしたね。

櫻井 : そうですね。当時私は、NTTデータ経営研究所に勤務していて、野村総合研究所との共同プロジェクト「ITと新社会デザインフォーラム」に関わっていました。そんな時に、東日本大震災が発生。ITを使って世の中をより良くするために、そして東日本大震災を乗り越え復興支援をしていくために、情報発信をしたい。その一つの手段として当時日本ではほとんど実績がなかったFacebookでのアプリケーションを作りたいと考え、紹介されたのが桃井さんでした。

桃井 : 当時私は、IT企業に勤務していて、櫻井さんの志に共感したんです。アプリケーションの制作期間はわずか2週間というタイトスケジュールでしたが(笑)、なんとか制作してプロジェクトをバックアップしました。櫻井さんとはそれ以来のご縁ですね。

——その後、桃井さんがテイ・デイ・エスに復帰される際に、櫻井さんの協力を仰いだとお聞きしました。

桃井 : 私が2016年4月にテイ・デイ・エスに復帰することが決まり、新規事業創出を手がけることになりました。テイ・デイ・エスは、約40年の歴史を持つデザインファームです。経営的には問題の無い会社ではありますが、長年の歴史の中で、「変化」が起きてなかったのです。そこに問題意識を抱える経営陣からオファーを受けて復帰しました。私一人が頑張って新規事業を立ち上げたとしても、組織に残る知見やノウハウは少ない。組織として改革を起こすためには、パートナーとなる人物が必要だと思ったんです。そこで、櫻井さんに協力を求め、快諾していただきました。

櫻井 : 私は以前、Designitというデンマークのデザインファームの日本オフィス立ち上げを経験したことがありました。その時に、デンマークのトップデザイナーと話していて感じたのは、日本のデザインはグローバルと比較して5年、10年と遅れを取っていると感じました。その遅れを解消するためにも、ぜひ、桃井さんに協力したいと思ったのです。


「デザイン思考」を体系的に身につけたデザイナーを育成

——桃井さんがテイ・デイ・エスに復帰後、どのように社内が変わってきているのでしょうか?

桃井 : 新規事業創出のためには、その下地を作る必要があります。そこで、櫻井さんに協力してもらいながら、まずは「デザイン思考」を社内に浸透させるような取り組みに着手しました。毎年社内の20%をデザイン思考を持ったUXデザイナーに育成するため、13週間のプログラムを受講させています。

櫻井 : なぜ「デザイン思考」なのかといえば、デザイン制作のプロセス自体に、デザイン思考が溶け込んでいるからです。つまり、デザイナーにとって「デザイン思考」は非常に親和性が高い。これを身につければ、さらに上流のデザインに着手でき、クライアントに対してコンサルティングを行うことも可能になります。

——その他にも何か着手されているのでしょうか?

桃井 : 「デザイン思考」を高めるプログラムの他には、海外のデザインファームへの視察も行っています。

櫻井 : 弊社のリサーチチームがリストアップした海外デザインファーム1000社の中から、テイ・デイ・エスとシナジーがありそうな会社を100社程度ピックアップ。そのうち実際に20社ほどを訪問し、これまでに、アメリカ(シリコンバレー/ニューヨーク)、カナダ、ドイツ、イギリス、イタリア、スウェーデン、シンガポールなどを視察しています。

——実際に、プログラムや海外視察に参加されたテイ・デイ・エスのデザイナーは、どのような感想をお持ちなのでしょうか?

桃井 : 本日同席している、弊社のデザイナーに聞いてみましょうか。

 : こんにちは。テイ・デイ・エスのデザイナー・森です。私は、ニューヨークでプログラムを受講しました。海外でのトレーニングは初めてで、受講後、自分の中に大きな変化を感じました。ポジションに関わらずみんな本気で、まずは熱量とスピードに圧倒されました。日本での仕事で、アイデアを出すのに丸一日をかけるとしたら、海外ではMacを立ち上げる1分でそのアイデア出しが終わっている。……そのくらいスピード感が違うのです。

▲テイ・デイ・エス デザイナー・森杏奈氏

桃井 : 日本では、デザインをかなり詰めた段階でリリースをしますが、海外では何回もプロトタイピングを行って、フィールドワークを実施しながら市場のニーズを得ていきます。こうした海外の仕事の仕方などはWeb上で情報を仕入れて得られることもできるでしょう。しかし、それを見て、聞いて、体験することが、本当の力になると思います。2018年1月に開催するイベントは、こうした体験ができるイベントになります。

櫻井 : イベントのコンテンツは、海外UXデザイナーによるキーノートスピーチやパネルディスカッションになります。海外の最先端のUXデザイナーの思考や、携わった事例などが語られます。それを見聞きするだけでも、確実に目線が上がるでしょう。そして、ダイアログトークといったコンテンツも用意する予定です。これは、参加者を巻き込んで、登壇者と話すことができるコンテンツです。

桃井 : 今回のイベントでは、海外視察で得た、本物のUXデザインを共有していきます。同時通訳も入りますし、言葉の壁は私たち英語のできるメンバーがブリッジ役になりますので、ぜひ参加してほしいですね。



■「BUSINESS×SUCCESS×UX~世界のUXから自らのビジネスを飛躍させる~」 

2018.1.16(火) in TOKYOミッドタウン

開催概要は右記URLをご確認ください → https://eiicon.net/about/2018uxevent/