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【イベントレポート】「ニッポンイノベーター塾 Innovators Voice #7」実践者が語るイノベーションの真実〜リクルートの前新規事業開発統括者&カンボジア、ナイジェリアのプロサッカークラブオーナーが登壇!

【イベントレポート】「ニッポンイノベーター塾 Innovators Voice #7」実践者が語るイノベーションの真実〜リクルートの前新規事業開発統括者&カンボジア、ナイジェリアのプロサッカークラブオーナーが登壇!

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人材育成や組織改革のコンサルティング事業を通して、イノベーションの創出を支援する株式会社ワークハピネス。去る2017年11月2日、同社が開講した「ニッポンイノベーター塾」によるミートアップイベントの第7弾が開催されました。

今回の登壇者は、リクルートグループの新規事業開発を統括していた株式会社リクルートホールディングスの麻生要一氏、カンボジアとナイジェリアでプロサッカークラブのオーナーを務め、「メッシを超える選手を輩出する」「FCバルセロナを超えるクラブを持つ」という目標を掲げて活動を続ける株式会社フォワード代表の加藤明拓氏の2名。

まさにイノベーションの実践者と呼ぶに相応しい両氏の登壇とあって、新規事業開発に関心を持つ40名近い参加者が集まり、会場は熱気に包まれました。

Innovators Voice(1) 株式会社リクルートホールディングス・麻生要一氏

新卒でリクルートに入社し、2年目で社内の新規事業コンテストで準グランプリを獲得。ITサービス開発会社である株式会社ニジボックスの設立・経営を行うなど、リクルートの社員でありながら自らもスタートアップの立ち上げに携わったキャリアを持つ麻生氏。その後、2014年からリクルートホールディングスの新規事業開発部門を統括し、戦略企画室に異動するまでの2年半の間にグループ内の新規事業開発や社内起業家を生み出すための様々な活動を推進。同社が持つ貴重な新規事業創出ノウハウを知り尽くす存在です。

まず麻生氏が語ったのは1980年代から開催されているリクルートの社内ビジネスコンテストである「New RING」について。他社のビジネスコンテストの最大の違いは「優勝した企画は必ず事業化する」「提案者が必ずリーダーとして事業を進める」という2点。過去には入社前の内定者が優勝したこともあり、内定者がアルバイトとしてプロジェクトを推進した事例もあるとのこと。

現在、「New RING」は株式会社リクルートホールディングスが引き継ぎ、2014年から「New RING ‐Recruit Ventures‐」という名称で同社の新規事業開発部門が運営していますが、麻生氏は「新規事業提案の制度でありながら、半分は人事制度である」と言います。「新規事業の募集は通年で行われており、企画が審査を通れば提案者は必ず異動できる。」と説明。リクルートの新規事業開発に対する力の入れ具合がよく分かります。さらにこの新規事業提案制度は、企画を提案した社員に対して様々なメンタリングを行うことにより、経営陣にプレゼンできるレベルの企画を出せる人材へと成長させる人材育成プログラムとしての側面も持っていると言います。

 また、リクルート社内には、安定志向の社員も含め、いわゆる「普通の人」を社内起業家として覚醒させるための「イントレプレナーマーケティングメソッド」があるとのこと。全社員に対して頻繁にメールを配信し、様々なイベントを頻度高く開催。年齢・職種など多様な特性を持つ社員たちの「覚醒するポイント」をメソッド化する試みを続けていると言います。そして麻生氏は、新規事業開発部門で膨大な数のPDCAを回し続けてきた中で、普通の人がイノベーターになるための重要なトリガーが見えてきたと言います。麻生氏によるとそれは「原体験」であり、「今まで自分が味わったことの無いような深い課題がある現場で、課題を目の当たりにすると人間は変わる。例えば震災の被災地に行った人の多くは、目の前の大きな課題に対して行動を起こさずにはいられなくなる」と解説しました。

最後に麻生氏は、イノベーションを生み出すためには「原体験」に加え「量質転換」「アイデアを生み出す場の熱量とテンション」の3つが重要であると語りました。「量質転換」に関しては「999回失敗しても1000回バッターボックスに立てる仕組を作ることが大切」と言います。また、「アイデアを生み出す場の熱量とテンション」に関しては、リクルートが行っているオープンイノベーションプログラムなどでも意識されていることであり、イベントを行うスペースはもちろん、椅子の種類や配置にもこだわり、普通のオフィスとは全く異なる環境を用意することでゼロから何かを生み出す時に必要な空気感を醸成していると説明しました。

Innovators Voice(2) 株式会社フォワード 代表取締役・加藤明拓氏

ブランドコンサルティングとスポーツコンサルティングを手掛ける株式会社フォワードの代表として、国内の有名プロスポーツクラブのブランディングや監督、コーチ、選手のモチベーションマネジメントなどを手がけてきた加藤氏。今回の登壇ではカンボジアとナイジェリアのサッカークラブオーナーとして、発展途上国のクラブを運営する理由や現地での様々な体験、事業の将来像について語りました。

加藤氏が最初に紹介したのはカンボジアのプロサッカークラブ、カンボジアンタイガーFC。株式会社フォワードと加藤氏は、経営危機に陥っていた同クラブを2015年に買収。現在は「カンボジアの夢と希望と勇気の象徴として、国民の生活に欠かせない心の潤いとなる」というミッションを掲げ、チームを運営しています。加藤氏はカンボジアのサッカーチームを買収した理由について「ポルポト政権による虐殺などもあり、東南アジアの中でもタイやベトナムに比べて大きく発展が遅れている。実際に現地に行ってみると明るく楽天的な人が多いが、みんな諦めるのが早い。経済格差が激しく、頑張っても下克上はないというムードがある。そんな現地の人たちに一歩踏み出す勇気を持って欲しいし、サッカークラブの活躍を通して夢を与えたいと思った」と説明しました。

買収当時、大きな負債を抱えていたクラブに対して様々な施策を打った加藤氏。特に大きな改革はクラブ本拠地の移転だったと言います。当時のカンボジアには10チームのプロサッカーチームがあったものの、そのうち9チームは首都プノンペンにあり、カンボジア全土のサッカー人気にはつながらない状況。そこで加藤氏は世界遺産アンコールワットがあり、年間200万人の観光客が訪れるシェムリアップにクラブの本拠地を移すことを決断。改修費を提供することで使用権を得たスタジアムでタイガーFCの試合を行うほか、観光客向けのイベントなどを開催するスタジアム事業、グッズや飲食店も含めたライセンスビジネスも展開したいと事業の将来像を語りました。

ナイジェリアのイガンムFCに関しては、人口1.8億人、平均年齢18歳というナイジェリアの国としてのポテンシャルに魅力を感じたものの、治安の悪さなどから「世界で2番目にビジネスが難しい国」という調査報告もある場所でクラブが経営できるだろうか、という不安もあったと言います。クラブの存在を確かめるために現地に赴いた加藤氏が驚いたのは、カンボジアが天国に感じられるほど過酷な環境。そもそもクラブの本拠地がスラムにあり、街にはまともに電気が通っていない。常に拉致・誘拐の危険があるなど、大変な経験をしたと当時を振り返りました。しかし一方で「貧乏でもサッカーをやらせてくれる親を裏切って悪いことはできない」と真摯な姿勢でサッカーに打ち込む子供たちが多いことに感銘を受け、改めて「彼らをクラブでしっかり育てたい」という思いを強くしたと言います。また、ナイジェリア人の身体能力、サッカー選手としてのポテンシャルの高さにも着目する加藤氏は、アフリカ最高のクラブを作り、ここから数年のうちに世界最優秀選手を生み出したいという夢も語りました。

そんな加藤氏は「当社がコンサルティングしているような大企業にとっては戦略が非常に重要。ただ、僕たち自身はベンチャー企業なのである程度の方向性を決めたら全力でトライアンドエラーを重ねていきたい。ビジネスを始める上で大切なことは想いを描き、一歩踏み出してみること。もちろんCSRでやっているつもりもないので、最終的にはメチャクチャ儲けたい」とまとめ、ピッチを締めくくりました。

取材後記

登壇後の質疑応答やディスカッションも盛り上がり、多くの参加者たちがイノベーションの実践者である2人の話に触れ、貴重な気づきを得たようです。リクルートホールディングスという大きな組織で「普通の会社員」を対象に、新規事業を生み出してもらうための試行錯誤を繰り返してきた麻生氏。そして、カンボジア、ナイジェリアといった発展途上国の困難な環境下でプロサッカーチーム運営を軌道に乗せつつある加藤氏。それぞれのイノベーションに対するアプローチは大きく異なりますが、共通して感じられたのは圧倒的な熱量です。独自技術やリソースもイノベーションを生む重要な要素であることは間違いありませんが、今回のピッチで語られた「量質転換」「原体験」「一歩を踏み出す勇気」といったある意味、泥臭いイメージを持ったキーワードこそがイノベーションの源泉になっていることを忘れてはならないと感じました。

(構成:眞田幸剛、取材・文:佐藤直己、撮影:加藤武俊)

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