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【知財のプロ・深澤氏の視点(6)】展示会・マッチングサイトとオープンイノベーション

弁理士・技術士、そしてイノベーションパートナーとして、10年以上にわたり300社以上を「知的財産」の観点から支援してきた明立特許事務所 所長弁理士 深澤潔氏。コラムの第6回目は、"展示会・マッチングサイトとオープンイノベーション"について寄稿してもらった。

*関連記事:【弁理士・深澤氏に聞く】「知的財産」を活かしながら「共創」を生み出すためのノウハウとは?


1.展示会やマッチングサイトでのマッチング

東京ビッグサイトのような展示会場では、ほぼ毎週のように何らかの展示会が開催されています。このような展示会には、一つのテーマのもと出展者や参加者の業種や業界を絞ったものがある一方、ギフトショーや産業交流展のように多種多様な業種・業界の方が集まるものもあります。

シーズとニーズとが適切に合致する相手を一つ一つ探すのは大変ですが、展示会のような仕事を発注したい側と受注したい側とが一堂に会する機会があることによって、出会いの機会が一気に増えます。しかし、実際に出展しようとすると準備も大変ですし出展費用もかかります。また、展示会場から遠ければ、毎回展示会に通うわけにもいきません。

一方、最近はリアルな展示会だけでなくネットを介して展示会のようなマッチング機会を提供するサイトが増えてきました。国も中小企業の活性化の観点からこのようなマッチングサイトを運営するようになりました。(ジェグテック:https://jgoodtech.jp/pub/

このようなサイトでは展示会のように技術を提供する企業がその技術内容を登録する一方、技術を探している企業は欲しい技術を検索できるようになっています。リアルな展示会とともに、マッチングサイトは企業同士のマッチング機会を提供する重要な場となっています。

ところで、展示会やマッチングサイトに積極的に出展したり、訪問したりして自社に最適な提携相手を見つけようとしても、数ある中から自社にふさわしい相手を見つけることはなかなか大変な作業でもあります。そこで、人同士の縁を取り持つ仲人さんのように企業のマッチングにもマッチングコーディネータという役割を演じる人がいます。

このコーディネータは、技術を提供する側の会社の状況を把握したうえで、技術が欲しい企業のニーズをくみ取りそれに適する技術を提供できる会社を紹介します。

私自身も展示会やマッチングサイトでのコーディネータ経験があります(先日は、INCHEM TOKYO 2017 https://www.jma.or.jp/INCHEM/にマッチングコーディネータとして参加しました)。ここで、展示会等にて技術を探す側、提供する側のそれぞれから最適な相手を見つけるための注意点について整理してみたいと思います。


2.技術を探す側のアプローチ

まず、技術を探す側(オープンイノベーションを進めたい側)です。

技術を探す場合、自社ニーズをどこまで明らかにするか悩ましいのではないでしょうか。情報検索だけであれば、こちらのニーズを開示する必要はありません。しかし、ブースやサイトで紹介されている技術情報を見聞きしただけでは自社ニーズをどこまで満たせるのかまではわかりません。展示会であれば、ブースを訪ねて場立ちの方とやりとりできるので、その場でいろいろと質問できます。ただ、展示会では名刺交換(社名開示)しないと説明してもらえません。「○○についてどこまで実現可能ですか」みたいな質問でも、「どういう目的で必要ですか?」と逆質問されたときに、「実は~」と話しを続けることになります。この時点で御社がどのようなニーズがあるのか、なんとなくわかってしまいます。そのため、最初からニーズを開示したくない場合には、展示会などで事前にどこまで聞きたいことを相手方へ開示できるか決めておく必要があります。

一方、マッチングサイトの場合、最初は匿名でニーズを公開することが可能なので、最初からある程度具体的なニーズを開示することができます。ただし、情報を提供する側にしてみれば匿名の相手にノウハウを提示するには抵抗があると思いますので、ニーズが具体的だからいいというわけにもいきません。こちらも自社名も含めてどこまで具体的に開示するか決めておく必要があります。


3.技術を提供する側のアプローチ

一方、技術を提供する側はどうでしょうか。こちらは、自社の技術内容をPRするために展示しているので、ある程度開示することはむしろ必須なことになります。でも、相手からの質問に安易に回答してしまうと秘匿すべき情報まで開示してしまうおそれがありますので注意が必要です。「○○についてどこまで実現可能ですか」みたいな質問で結果を伝えるだけならいいのですが、具体的な問いかけに対してはつい具体的に答えてしまいます。積極的な開示の一方で秘匿すべきノウハウについて明確な線引きをしておきたいところです。

また、展示会であればその場で名刺交換しますので、本格的な商談を進める際に秘密保持契約を締結しやすいと思います。ただ、マッチングサイトにて匿名でニーズ開示されている場合、相手の名前がわからないので、最初から秘密保持契約を締結することができません。

秘密できるところは秘密にしつつも、相手方のニーズを満たせることを知らしめる技術が必要になります。


4.知的財産管理のタイミング

ニーズを開示する場合も、情報提供する場合も、核心部分を開示する場合には、前述したように秘密保持契約を締結したうえで具体的な話を進めるべきです。でも、相手方との力関係から、なかなか締結できない場合もあります。

そのようなとき、特に情報を開示する側は、事前に開示可能な範囲を決めておくだけでなく、その情報が自社の知的財産であることを明確にしておく必要があります。例えば、秘密にすべき情報については営業秘密として秘密管理しておくとか、開示しても構わないものは、特許出願しておくとかの処置です。一方、ニーズを探索している側は、提携する前に関連技術で特許権などを取得されて不利な条件で提携せざるを得ない状況にならないよう事前の対策も必要になります。つまり知的財産管理がどちらの立場でも必要になってきます。

情報は一度開示されてしまえば元には戻りません。しっかりとした情報管理のもと、展示会やマッチングサイトでの出会いのチャンスを生かしていただきたいと思います。



【コラム執筆】 明立特許事務所 所長弁理士 深澤潔氏 http://www.meiritsu-patent.com/

<深澤氏プロフィール>

京都大学工学部卒業後、石川島播磨重工業(現:IHI)入社し、小型ロケットや宇宙ステーションなど、宇宙環境を利用する機器の研究・技術開発・設計に携わり、技術士を取得。その後、国内最大手国際特許事務所へと転職し、弁理士資格を取得。独立し、明立特許事務所を立ち上げる。