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【イベントレポート】共創ノウハウ VOL.4『大学研究室とオープンイノベーション』〜どうすれば大学研究室と連携ができるのか〜

【イベントレポート】共創ノウハウ VOL.4『大学研究室とオープンイノベーション』〜どうすれば大学研究室と連携ができるのか〜

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eiiconが初めて研究室の実態に迫る。

オープンイノベーションプラットフォームeiiconは、『強力なパートナーとの共創ノウハウ VOL.4 大学研究室とオープンイノベーション』と題したイベントを開催(株式会社POL共催)。トークセッションを通じて、大学研究室との連携の方法や普段はなかなか見ることのできない研究室の「実態」に迫った。

さまざまな共創ノウハウ伝えるeiiconだが、大学研究室をテーマにしたのは今回が初。会場には新規事業の担当者やアカデミアの関係者たちが集まり、熱心に耳を傾けた。 

冒頭、ロケーションスポンサーの日本リージャスの担当者が挨拶。オープンイノベーションをサポートする同社のコワーキングスペース「SPACES」について紹介した。続けて、eiiconの説明が行われ、プラットフォームであると共にミートアップやアイデアソンなど多彩なイベントが実施されていることが伝えられた。今回、トークセッションの内容をレポートする。

▲登壇者/株式会社POL 代表取締役CEO 加茂 倫明氏
現役の理系東大生。2016年9月に株式会社POLを創業。アカデミアや研究者の課題をテクノロジーで解決することを目指し、現在は理系人材のダイレクトリクルーティングが可能な研究データベース『LabBase』を運営している。

▲登壇者/東京大学大学院情報理工学系研究科 川原圭博准教授
コンピュータネットワーク、ユビキタスを専門としている。2011年から2013年まで、ジョージア工科大学客員研究員及びマサチューセッツ工科大学「Media Lab」の客員教員を兼任。 研究室の研究成果を活用するベンチャーとして2014年にAgIC株式会社(現Elephantech株式会社)が設立、2015年には株式会社SenSprout が設立された。

▲登壇者/株式会社カワノラボ 代表取締役 河野誠氏
大阪大学大学院理学専攻・渡會研究室で博士号取得(理学)。 2011年、科学技術振興機構A-STEP若手創業家タイプで、3年間の研究助成金を得る。 2014年大阪大学特任研究員を退職。 2015年株式会社カワノラボ創業。

▲登壇者/株式会社Xenoma 代表取締役CEO 網盛 一郎 氏
1994年富士フイルム株式会社入社。新規事業開発に従事し、2012年同社を退職。東京大学大学院情報学環・佐倉統研究室を経て、14年に同大院工学系研究科・染谷隆夫研究室に参画、2015年11月に東大発ベンチャーとしてXenomaを起業。

▲モデレーター/eiicon founder 中村 亜由子
2008年インテリジェンスに入社。2015年育休中にeiiconを単独起案。2016年4月に育休から復職後、予算取りに駆け回り7月から本格的に立ち上げを開始。日本企業のオープンイノベーション実践をアシストするプラットフォームeiiconを担う。

事業化に至るまでに大きな壁がある。

eiicon・中村 : 早速ですが、みなさんの自己紹介をお願いします。

POL・加茂 : 私は現在の理系東大生で、昨年アカデミアの課題解決を目指すPOLを設立しました。現在POLでは理系学生と企業をつなぐ『LabBase』というサービスを運営しています。

東大・川原 : 大学で教員をしていますが、その一方でこれまでに研究室の成果を活用したベンチャー企業2社の設立をお手伝いした経験があります。設立したAgIC(現Elephantech)ではフレキシブル基板、SenSproutでは主に農業に用いられるセンサを扱っています。

カワノラボ・河野 : 当社は大阪大学発のベンチャーです。研究していたのは分析化学で、この技術を応用し、生きている細胞と死んでいる細胞を染色せずに測る方法を生み出しました。まったく新しい手法で、例えば、がん細胞の早期発見などにもつなげることができると期待しています。


Xenoma・網盛 : Xenomaは東大発のベンチャーです。有機トランジスタや伸縮性エレクトロニクスを研究する染谷隆夫研究室からスピンアウトし、センサを搭載している服を開発しました。服は普通の布と同等に扱え、洗濯も可能です。なお、染谷先生は大学の同級生に当たります。

eiicon・中村 : では、研究室とのオープンイノベーションについて、お話を聞いてみたいと思います。川原先生は2社立ち上げた実績をお持ちです。オープンイノベーションを成功させたのではないでしょうか。

東大・川原 : そうですね、どちらかと言えば、失敗かもしれません。というのも、企業連携ではなく、結局自ら会社を作ったからです。

eiicon・中村 : なぜベンチャー企業を設立したのでしょうか。

東大・川原 : ある企業と共同研究が上手に進んで、ユーザーの評価を得られるものを作るまではうまくいきました。ただ、その企業はBtoBを専門にしており、コンシューマー向けに製品を作ることをあまり得意にしてなかったのですね。それで結局、その相手企業で実用化するのではなく、新たに自分たちでベンチャー企業を設立したことにしたのです。

Xenoma・網盛 : 大学は多くの企業と共同研究をしているのですが、なかなか実用化にまでいきません。大企業が事業を作ること自体は難しいことではないと感じていますが、いざやろうとすると既存の事業との兼ね合いや期待できる売上規模が小さすぎるなどの問題があり、なかなかスタートが切れないのではないでしょうか。その点、ベンチャー企業にはそういう問題はないというのが設立の動機です。

eiicon・中村 : 社会実装の前に企業が手を引くということですね。

Xenoma・網盛 : むしろ、手を引く前のやっていいのかという決定が難しいのだと感じています。いったん商品を出したら、売り続けることもしなければなりません。それも難しいのではないでしょうか。

eiicon・中村 : 途中まではとんとん拍子で話が進んだが、結局は覆ったという話もありそうに感じますが、そのへんはいかがでしょうか。

カワノラボ・河野 : それはよくありますよ。最初からダメだと言われることは多くありません。最後の最後で覆ることのほうが多いですね。なぜうまくいかないのかというと、企業側の目的がよくわからないからです。そのため、研究は進んでも事業化までいかないのだと思います。

研究室は「商店街」。個性も考えも異なるから、一括りで考えてはいけない。

eiicon・中村 : 無目的に始めてしまうのはオープンイノベーションの課題の一つですね。続けて、「日本の大手企業が大学の研究室と連携する上で注意すべきポイントと成功の秘訣とは」をテーマに、まずは多くの研究室を訪問している加茂さんにお話をお伺いしたいと思います。

POL・加茂 : 相互理解が大事ということがあると感じています。オープンイノベーションをすることで研究者側にどんなメリットがあるか、そこはちゃんと把握・定義しておくべきだと思います。その上で、両者で折り合いをつけにいく必要があるはずです。自分たちの要望を一方的にぶつけてしまうと、ベストなマッチングは生まれにくいと思います。


カワノラボ・河野 : 先ほどの話にもありましたが、何を目的にして何を成功とするかは欠かせません。例えば、1年共同研究をしたとして、企業側は一緒に研究をしていた学生を採用できる可能性が高まります。それを成功と見てもいいわけです。ただ、理想を言うと、大学の研究者は研究成果が世に出て、社会実装されるのが一番うれしいのです。

eiicon・中村 : 社会実装されるまで何年かかるものなのでしょうか。

カワノラボ・河野 : 一概には言えないと思います。例えば、私が今やっていることも、基礎研究の20年があって成り立っていることですので。

Xenoma・網盛 : 加えて言うなら、大学の研究成果をどう使うかということも考えなければいけないことだと思います。大学の研究は税金を使って行われることが多いので、共同研究をしたからと言って企業が無制限に使っていいことにはなりません。日本の企業は特許料を支払うことを渋る傾向にありますが、本来は支払うべきなのです。私は、自分の大学での研究成果を使う場合にも、特許料を支払っています。というのも、研究は国の税金を使って行われたからです。

東大・川原 : 産学連携という大きな流れがありますが、こうすればいいというのはないと思ったほうがいいでしょうね。というのも、研究室は先生によってまったく異なるからです。研究室は言ってみれば「商店街」です。あるところでうまくいった手法を別のところに持っていってうまくいくかと言えば、そうではないのです。

連携より、特許使用やスピンアウトを視野に入れる。

eiicon・中村 : 最後のテーマですが、大学の持つ知の資材をどう活用するかについてお話を聞いてみたいと思います。これまでオープンイノベーションを一つの軸にしていましが、あくまで一つの手法ですので、知の活用に考えていることを、さまざまな視点からお伝えいただければと思います。

Xenoma・網盛 : 研究と社会実装は別物です。正直なところ、大学と企業の連携は簡単ではないと感じています。特許料を払い研究成果を使用するというほうが、企業にとってより良いのではないでしょうか。あるいは社会実装のためにスピンアウトとして企業を設立することも有効だと言えます。社会実装するプレイヤーを別に置くという考え方です。

eiicon・中村 : なるほど。それは大きなヒントになりそうですね。


東大・川原 : 大学側としては、企業をはじめ、外の世界ともっと気楽に付き合える場がほしいと思ってします。互いにリラックスして話す中で、新しいアイデアがでることは少なくありません。ただ、今はどうしてもコンプライアンスなどの問題があり、距離を置いた付き合いしかできないのが実情です。

POL・加茂 : 修士や博士課程に所属する学生を含め、外に目を向けない研究者は本当に多くいます。横のつながりも、論文や学界の発表で生まれることが多いのですが、イノベーションの種はまだ成果になっていないところにあることがあります。いろんな人と交わり、つながることで、面白いことが起こるのではなないかと思っています。

【会場からの質問】
先ほど成果を出すまでの期間という話もありましたが、企業側からは、決められた期間内で成果を出してほしいというのが本音です。大学側はやはり期限というのはあまり重視しないのでしょうか。

東大・川原 : 研究は結果が出るまで時間がかかるものですが、大学側にとって(公的な競争的資金に比べて)企業の研究費は金額的にも継続性の点からあまりあてにならないということが共同研究に及び腰になる理由かなと。正直、共同研究費だけで1年活動し続けるのは難しいということもあるのです。一方、面白い課題を持ってきてもらえたら、研究費に関係なく積極的に取り組みます。研究者側のそうした資質みたいなものをうまくついて話を持っていくこともあると考えられます。

Xenoma・網盛 : 私は今、企業側の立場ですが、大学と連携する時は、期限通りに何をどこまで実施してくれるかはリスクだと捉えています。それと、特許をどう扱うかについても、十分に考えなければいけないポイントではあります。

取材後記

大学の研究室は縁のなかった人間にとっては、まったく未知の世界である。研究室に所属している研究者にとっても、隣が何をしているかはほとんど知らないという。そうした「実態」があることも、今回初めて知ることができた。産学連携、大学とのオープンイノベーションというのはこのごろよく耳にするが、大学に事業作りまで期待するのは、もしかしたらあまり有効ではないかもしれない。網盛氏の指摘にあったように、プレイヤーを分けるという考えが適切なのではないか。大学とはあくまで研究をする機関として接し、実装については企業側が行うか、あるいはベンチャーを設立するというのが最適解だと感じた。

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