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【イベントレポート】「スタートアップの明暗を分ける、『科学的な起業』とは?」 F Venturesが「起業の科学(Startup Science)〜スタートアップ成功への道〜」を開催!

12/1(金)株式会社ヌーラボ 福岡本社にて「起業の科学(Startup Science)〜スタートアップ成功への道〜」と題したイベントが開催されました。目玉であるパネルディスカッションには、世界最小級の落し物防止タグ「MAMORIO」の代表取締役 増木 大己氏、世界で累計5万シェアされたスライド「Startup Science」の著者である株式会社ユニコーンファーム 代表取締役 田所 雅之氏が登壇し、起業を目指す参加者にとって大変貴重なスタートアップのノウハウが語られました。

▲会場にはスタートアップを目指す多くの参加者で賑わっていました

 

福岡市のスタートアップの活性化を目指し、ベンチャーキャピタルF Venturesがイベントを主催

まずは今回のイベントを主催しているF Venturesの代表パートナーである両角 将太氏による挨拶からスタート。「福岡市に質の高いスタートアップが増えることを願い今日のイベントを開催しました。今日ここで得た情報を持ち帰り、それぞれのプロダクトに反映いただくことで、福岡のスタートアップがより盛り上がるようにお力添えいただきたいと思います」と挨拶し、参加者に向けイベント開催に込めた想いを語りました。

▲F Ventures 代表パートナーである両角 将太氏

今回のイベントは、まずゲストを迎えたパネルディスカッションがおこなわれ、そのあと起業家によるプレゼンが実施される二部構成。前半のパネルディスカッションでは、「Startup Science」の著者である株式会社ユニコーンファーム 代表取締役 田所 雅之氏が登壇し、「スタートアップの失敗の90%を潰す10のポイント」をテーマに15分程のピッチがおこなわれました。

▲株式会社ユニコーンファーム 田所 雅之氏

開口一番、「スタートアップで一番重要なことは、学習にフォーカスすることです。学習にフォーカスをしないスタートアップは必ず失敗します」と語る田所氏。国内外で起業した5社でのスタートアップの経験と世界中のスタートアップ1500社以上の評価をおこなってきた田所氏の重みのある一言に、会場の空気が一瞬にして引き締まりました。以降もスタートアップで陥りがちな失敗例を挙げ、独自の鋭い視点での解説が続きます。

「学習にフォーカスしたスタートアップは”7倍資金調達ができる可能性が高く”、”3.5倍早く成長できる”という結果がでています。大切なことは、”仮説構築”→”ヒアリング(一時情報)”→”仮説検証”の三角形を念頭に置き学習をすること。中でもどれだけ一次情報を集められるかどうかがポイントになります。ファウンダー自らがカスタマーインタビューをおこない、ユーザーの声を検証分析し、”無知の知”を知れるかが、成功するか失敗するかの運命を決めます」と語り、スタートアップを目指す参加者に力強いエールを送りました。


「失くすを失くす」サービス「MAMORIO」にみる、スタートアップのあり方と未来とは?

その後、壇上にMAMORIO株式会社 代表取締役 増木 大己氏を迎え、田所氏とのディスカッションが行われました。

▲MAMORIO株式会社 代表取締役 増木 大己氏

ユニコーンファーム・田所 : スタートアップに至るまでのストーリーを教えてください。

MAMORIO・増木 : 「MAMORIO」(https://mamorio.jp) が誕生する前に、「落し物ドットコム」という会社をスタートしました。”落し物にはどのような課題があるのか”を知るために、まずポータルサイトを作って落し物をした人がどんなものを落としているのかを調べるところからはじめました。さらに落し物に詳しくなろうと思って、鉄道の忘れ物センターでバイトもしていました(笑)

ユニコーンファーム・田所 : なぜ落し物をサービスにしようと思ったんですか?

MAMORIO・増木 : もともと証券会社に勤めていたんですが、情報漏えいなどの問題もあり、「落し物」は命取りだったんです。ところが先輩が「落し物」をしてしまってとても困っていたときに、なぜ「落し物」に関する機関が警察しかないんだろうと疑問に思いました。そこから「落し物」に関する情報を調べていくうちに、やはり警察の他に手段はなく、もしかしたらチャンスかもしれないと思ったのがきっかけです。

ユニコーンファーム・田所 : 原体験って大切ですよね。私も投資家としての立場にたったとき、”そもそもなんでこのサービスをする必然性があるの?”という質問をしています。課題を解決しようとしたときに、現状のソリューションでは満足できない、自分で作っていたいという思いはありました?

MAMORIO・増木 : そうですね。物を失くしたときにまずは警察に行ったとしても、本当はすぐに探して欲しいのに書類を書いて届いているかの確認しかできない。そんなときに少しでも力になれるサービスがあるといいのになと思いました。スタート当時はWEBサイトを立ち上げただけで、まだデータやテストモデルがなかったので、「落し物」を見つけたあとの仕組みやマネタイズの部分が壁になっていたんですが、海外でBluetoothのサービスがスタートしたのを見て、突破口を見つけました。

▲「MAMORIO」は、縦35.5mm×横19mm×厚さ3.4mm / 3gと、手軽に持ち運びできるサイズ感。

ユニコーンファーム・田所 : とりあえずマネタイズモデルからスタートする人もいるなかで、技術モデルやマネタイズを考えずに、まず課題解決からはじめたというのは面白いなと思いました。今後はどのような展開をされるんですか?

MAMORIO・増木 : 実際に製品を発売してみて、売れるということはわかってきたんですが、その中でも様々なケースが見えてきました。法人や企業の中で物を失くすというのは、コストや目に見えない徒労があるので、その部分にもっとアプローチしていきたいなと考えています。他にもハードウェアを作るとコストも掛かるので、新しいファンを作っていきたいですね。

ユニコーンファーム・田所 : BtoCの場合、登場人物が自分と家族だったとしたら、BtoBの場合、エンドユーザーと意思決定者やインフルエンサーに変化していきますよね。先ほど紹介した成功例同様、仮説が重要視されると思います。BtoCであれば、落し物をしても自分が困ったり、家族に怒られたりで済みますが、会社の場合そうはいかないので、その市場に需要の可能性を感じますね。例えば、証券マンや学校の先生など、問題を抱えていそうな業種を絞ることでソリューションによって課題解決できるのではないかなと思いました。

MAMORIO・増木 : そうなんです。今「MAMORIO」を見ていると、社員証を失くす人がとても多いんです。IT系の会社の場合など、社員証がカードキーになっていることも多いので、責任問題になりがちなんですね。他にも工事現場でも道具を失くすと見つかるまで帰れないということもあるそうなので、そういった部分の問題解決の役に立ちたいと思っています。そのためには、誰でも簡単に使える便利で最小限なものを展開する必要性があります。

▲「MAMORIO」を実例にサービスが誕生するまでの具体的な一次情報の集め方や、ユーザーに向けた取り組みが語られていました。

ユニコーンファーム・田所 : 一般的な企業で働いている人が国内で約6000万人程いたと仮定すると、社員証は市場が広いでしょうね。「MAMORIO」の場合、Instagramのような面白がるサービスというよりは、負の解消をするサービスなので求められる用途が違いますが、何かユーザーを定着させるような仕掛けを考えているんですか?

MAMORIO・増木 : 今意識しているのが、「購入して10分間の体験をピークに持ってくる」ということです。物を失くしてはじめて役に立つということだけだと、物を失くすまで買ってよかったと思うまでに時間が掛かってしまうので、買って最初の10分間でワクワクできることを目指しています。

ユニコーンファーム・田所 : どの瞬間にピークを持っていくかというのは、今とても重要なことですよね。これからのモデルは、ピークとユーザーの感動するタイミングをどこに設定するかが必要だと思っています。「Uber」だとタクシーに乗った瞬間、「Airbnb」だと家を見つけた瞬間など、それぞれのプロダクトでどの瞬間にユーザーのリテンションがグッと上がるかがポイントになってくると思います。

以上のように繰り広げられた田所氏と増木氏によるディスカッション。増木氏によって語られた「MAMORIO」誕生までのストーリーやプロダクトの課題解決の様子と、田所氏の提唱する失敗しないためのスタートアップのポイントが、しっかりとシンクロしたトーク展開に、参加者たちは真剣に耳を傾けていました。


福岡市でスタートアップを目指す、起業家によるプレゼンも実施

ディスカッション終了後は、スタートアップを目指す起業家によるプレゼンがスタート。アーティストとファンの交流を焦点に、新たな音楽の楽しみ方を提案するサービス「Props」の杉山 裕磨氏、自分の好きなことを仕事にしている人々とそれを応援する人々を繋ぐサービス「Bluebook」代表増崎 慶太氏が登壇し、それぞれのサービスに込めた想いやサービスの概要を語りました。

▲Props 杉山 裕磨氏

▲BlueBook増崎 慶太氏


取材後記

イベント名である「起業の科学(Startup Science)〜スタートアップ成功への道〜」というその名の通り、起業することをよりロジカルに、そしてより具体的に語られた今回のディスカッション。落し物をして困っている人の役に立ちたいという想いから誕生した「落し物ドットコム」が、最先端の技術により「MAMORIO」というプロダクトに展開されていくそのストーリーの中に、田所氏の提唱する「科学的な起業」による成功例を感じました。スタートアップを目指す参加者はもちろん、ライターである筆者にとっても刺激的で学びの多い貴重な時間となりました。

(構成:眞田幸剛、取材・文:ワタナベ ユウミ、撮影:太田晃司)