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【イベントレポート】 未経験からのデータサイエンティスト育成プログラム「Data Ship」によるハッチングフェス開催!~学生たちがデータサイエンスの理解を深める~

総合人材サービス、パーソルグループのパーソルキャリア株式会社が新しくスタートさせた未経験からのデータサイエンティスト育成プログラム「Data Ship」(https://data-ship.jp/)。同サービスによるイベント「データサイエンティスト ハッチングフェス」が、2017年12月に東京・八重洲のコワーキングスペースDIAGONAL RUN TOKYOで開かれた。データサイエンスに意欲的な8社1サービス(アビームコンサルティング株式会社、AGC旭硝子、MIIDAS、株式会社ブリヂストン、株式会社三井住友銀行、株式会社モンスター・ラボ、株式会社ロイヤリティマーケティング、株式会社ふくおかフィナンシャルグループ、パーソルキャリア株式会社)が協賛した。

「ハッチングフェス」は学生や若手社会人・ポスドクを対象に実施され、理工系をはじめ、経済や経営、文学、法律など、さまざまなバックグラウンドを持つ参加者が集結。企業におけるデータ活用紹介や学生によるデータ活用研究の発表、アイデアソンなどを通じて、データサイエンスへの理解を深める場となった。今回は、ブリヂストン・アビームコンサルティングの2社によるデータ活用事例と学生による研究発表にフォーカスし、レポートしていく。


企業によるデータ活用事例

【株式会社ブリヂストン・事例】 データ分析の活用で、タイヤ製造以外のビジネスを創造する

ブリヂストンで研究開発に取り組む花塚泰史氏が登壇した。同社は、タイヤメーカーとして世界的にも著名だが、製造のみを行っているのではなく、データ活用に目を向けたビジネスに注力している。タイヤからデータを集めることで、「タイヤの周辺にあるサービス」を手がけることを視野に入れている。地面と触れ合いながら高速に回転するタイヤをセンシングするには非常な困難を伴い、開発に時間がかかったが、現在はさまざまな角度からデータを活用。例えば、タイヤがどのように使われているかをデータ分析し、メンテナスやタイヤ交換などを一括して請け負うなどしている。

また、タイヤ製造に関してサプライチェーンがあり、ゴム農園や工場からもデータが取れる。ゴムは気温や湿度に影響されるため、「経験」と「勘」に頼りながら製造する面があったが、データを活かし、さらなるオートメーション化を実現している。

一方で、「データを見ているだけでは意味がない。ドメイン知識のある現場のスタッフとデータサイエンティストが力を合わせることが重要」と強調。「データで何が解決できるかを考え、現場のスタッフがその解決案をビジネスに結び付けていかねばならない」と話した。サプライチェーンを持つ同社では、さまざまなデータを扱え、さらには人材育成に力を入れており、将来的にはポスドクを受け入れられるような柔軟な環境整備を進めている。「データサイエンティストを志す人材に提供できるものは多くある。ぜひ積極的にコンタクトしてほしい」と呼びかけた。


【アビームコンサルティング株式会社・事例】 データサイエンティストはビジネスに提言をすることが求められる。

アビームコンサルティングは「顧客の企業改革を成し遂げる専門家集団」で、既に多くのデータサイエンティストが活躍している。同社がコンサルティングの対象としている企業は幅広く、あらゆる業種・業界に対応。経験豊富でさまざまな専門知識を持つ人材が協力して業務を行い、多様な価値を創出しているという。

データサイエンティストは「コンサルタント」として活躍しているのが特徴で、単に分析をするだけにとどまらず、提言まで実施している。登壇者の松井氏も心理学の研究者というバックグラウンドを持ちながら、データサイエンティストとして活動しているとのことだった。このほか、杉本氏、久保氏、村瀬氏の3名のデータサイエンティストを紹介した。いずれも異なるバックグラウンドを持ちながらも、データ分析やコンサルティングに興味を持ち同社に入社。文系出身者もおり、会場からは「文系で苦労しないか」との質問も出された。それに対し「苦労はあるが、文系ならではの価値や強みもある。逆に、理系でも学ばなければならないことは多くある。苦労があるという点では、文理の別はあまりない」と回答した。

また、3名は後に行われたアイデアソンのサポートも行った。同社は「分析だけできる人材は必要とされていない。サイエンティストをコンサルタントとして育成する」と強調。「提案までできる人材を育てるための研修を用意している」と伝え、締めくくった。


学生による研究内容の発表

◎個性を決める遺伝子の距離感を可視化する(立命館大学・谷口氏)

立命館大学理工学部数理学科・谷口氏は、人や生物、植物の個性は遺伝子配列、つまり塩基配列で決まるが、そのうち一塩基の配列だけが異なり、このことが多様性につながるというSNPに着目する。SNPを解析することで、「どの個体がどの個体に遺伝子的に近い(遠い)かがわかり、品種改良などに役立てることができる」と話した。

しかし、SNPは人だと1000万個もあり、データは必然的に高次元になる。これを受け、谷口さんはSNPの距離感をt-SNEという統計手法を用いて可視化することを試みた。例として、SNPが少ない麦を用い、遺伝子的な距離と育成環境による収穫量の関係を調べた。その結果、遺伝子的な距離は関係なく、育成環境で収穫量は決まるものがある一方で、収穫量にばらつきのある品種も見られた。谷口氏は「これらの分布を見ることで、どのような個性を持つ個体を育てていくか考えていけるのではないか」と強調した。


ほとんどの参加者が初挑戦、アイデアソンで活発に意見を出し合う。

この後、データを用いてビジネスを創造する、データサイエンスのアイデアソンに挑戦した。ほとんどの参加者がアイデアソンに初挑戦。「アイデアソンではアイデアを多く出すことがまずは大事」と説明され、ウォーミングアップとして「好きな漫画または小説」を短い時間の中で大量に書き出した。本番のアイデアソンでは、参加者は3チームに分かれ、保険、ガラス、人材(採用)をテーマに取り組んだ。

チームにはそれぞれ専任のアドバイザーがつき、データサイエンスの具体的な手法を紹介。アドバイザーは「データサイエンスを行う目的を明確にすることが重要」とし、「データと情報の違い」や「データから情報を取り出す手法」「課題の見つけ方」などを手ほどきした。参加者はアドバイザーの解説に熱心に聞き入り、コミュニケーションを大切にしながら、活発に意見を出し合った。最終的にアイデアはビジネスモデルとしてまとめられ、発表が行われた。


取材後記

ビッグデータという言葉が注目され、「データ」がこれからのビジネスを実施・創造する上でいかに重要であるか、多く指摘されている。さらに、新たなビジネスが創り出された例も出ている。しかし、その一方でデータサイエンティストの人材不足は、国内はもとより世界的な課題となっている。こうした背景を受け、パーソルキャリアの育成プログラムが創出された。このプログラムでは同社や協賛企業から多くの支援を受けられ、学生たちの積極的な参加を促している。希少価値の高いデータサイエンティストへなる道は開かれている。

(構成:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:佐々木智雅)