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「ニッポンの夜明け」 大企業イノベーターが語るこれからのニッポン #1 誰がやるのか。

2010年代半ばから、国内企業が本格的なオープンイノベーションに取り組み始めた。現在は、経済・企業関連のニュースにおいてバズワードともいえるようなオープンイノベーションだが、国内でも先んじてその取り組みに着手した先行モデルがある。三井不動産によるベンチャー共創事業である「31VENTURES」と、東急電鉄による「東急アクセラレートプログラム」だ。

「31VENTURES」の前身は2014年にさかのぼる。東京・日本橋に「Clipニホンバシ」というインキュベーション施設をオープンさせたことがその契機となった。現在、「Clipニホンバシ」はオープン当初よりもさらにスケールアップし、多くのスタートアップや大企業が活用している。そして、「Clipニホンバシ」の発展形として2018年3月には東京ミッドタウン日比谷に大企業のオープンイノベーションを支援する拠点「BASE Q」がオープンする。

一方、「東急アクセラレートプログラム」は2015年にスタート。国内のアクセラレータープログラムの先駆けの一つともいわれ、現在までに3回が実施された。第一期ファイナリスト「リノベる」と協業して宿泊施設・レストラン併設の商業施設をオープンさせるなど、スタートアップと多様なアセットを持つコングロマリット・東急グループとの共創が、すでに目に見える形で始まっている。

「Clipニホンバシ」の立ち上げから「BASE Q」オープンまで陣頭を取り、三井不動産においてオープンイノベーションの顔となっているのが、光村圭一郎氏。東急アクセラレートプログラムをゼロから立ち上げ、確立させた加藤由将氏。両氏のもとには、スタートアップの経営者や大企業の新規事業・オープンイノベーション担当者から、「相談したい」、「話を聞かせてほしい」という連絡が絶えないという。年間100~200社と面会する両氏は、日本のオープンイノベーションにおけるキーマンともいえる存在だ。

そこでeiiconでは、光村氏・加藤氏による対談企画を開始。まず第1回目は、両氏が大企業に所属していることもあり、「大企業とオープンイノベーション」を起点に話をスタートさせた。話題はさまざまに飛躍し、オープンイノベーションを切り口として世相を語る対談となった。

なお、光村氏の好意により、対談はオープン前の「BASE Q」にて行われた。

【写真左】 三井不動産株式会社 ベンチャー共創事業部 事業グループ 主事 光村圭一郎氏

出版社勤務を経て2007年三井不動産入社。オフィスビルの開発、プロパティマネジメントの経験を経て、新規事業開発に携わる。2014年に企業人・起業家・クリエイターのコラボ拠点「Clipニホンバシ」を立上げるともに、オープンイノベーションに関する活動に意欲的に手がけ、アクセラレータープログラムのメンター等を経験。

※過去eiiconインタビュー記事 https://eiicon.net/articles/257

【写真右】 東京急行電鉄株式会社 都市創造本部 開発事業部 事業計画部 都市政策担当 課長補佐 加藤由将氏

2004年入社。経理業務に携わった後、社内新規事業の立ち上げの際にチームにアサインされ、コンセプト作りから実施・運営まで一貫して携わり、イントレプレナーとしてスタートを切る。この間、MBAでイントレプレナーについて学び、理解を深めていく。その後、2015年に「東急アクセラレートプログラム」を始動させ、現在に至る。

※eiicon過去インタビュー記事 https://eiicon.net/articles/123


大企業は挑戦しない。そして、忙し過ぎる。

光村氏と加藤氏が出会ったキッカケは、2014年にさかのぼる。「Clipニホンバシ」のオープン当初に、加藤氏がその場を訪れたり、イベント会場などで顔を合わせるうちに、次第に酒席をともにする機会も増えてきたという。そんな両氏は、本対談の冒頭に「大きな社会変化のうねりに直面している今、大企業が変わることが、日本を変える大きなポイントになる」と意見を一致させた。

少子高齢化、労働人口の減少など、日本経済は懸念材料が山積している。一方、諸外国を見渡せば、AIやIoTを駆使した新サービスの開発や業務効率化が進み、シリコンバレーでは次々とイノベーションが起こっている。日本人が手にするスマホも、その中のアプリも、多くがシリコンバレーで生まれたものだ。さらに中国では98.3%がモバイル決済となっており、ドイツでは国をあげてインダストリー4.0に取り組んでいる。――日本の産業構造を変革し、日本がさらなる成長・発展を遂げるためには、その核にいる大企業自体が変わることが大きなファクターとなるだろう。

光村氏は、「オープンイノベーションじゃなければ日本の大企業は変われない。そう思うほど、オープンイノベーションという概念・方法論に対しては格別のリスペクトがある」と話す。しかし一方で、「大企業は大きな病巣を抱えている」という言葉も出てくるほど、その目線はシビアだ。


成功体験が、挑戦の邪魔をする。

その病巣というものは、具体的に何を指すのか。対談の中で指摘があったのは「挑戦をしたがらない」という大企業特有の体質だ。バブル崩壊やリーマンショックといったインパクトのある経済危機に直面したものの、高度経済成長に支えられた成功体験があるために、それが抜けきれない。新しいことに挑戦しようとしても、がんじがらめの社内ルールや、リスクを恐れるミドルマネジメント層からの反対意見によって、つぶされてしまうことも多い。さらに、社内の新規事業コンテストやビジネスコンテストも「提出することが目的」となっていて、新しいビジネス立ち上げに結びつくケースは多いとは言えない。

また、細かい話にはなるが、slackなどの新しいツールを導入することさえもリスク管理上できないというケースも多く耳にする。業務効率化が遅々として進まないため、社員たちは目の前の業務で忙殺され、新しいことに挑戦するだけのリソースを割くことができないという問題もある。

加藤氏は「昨年米国では、アマゾンが食品スーパー大手のホールフーズを買収した。これは、ソフトウェアカンパニーがリアルカンパニーを飲み込んでいるという構図」と指摘するように、産業構造は人々の予想を超えてスピーディーに変化している。挑戦し続けなければ、日本の大企業は外資系のソフトウェアカンパニーに飲み込まれてしまう可能性もあるだろう。それも、人々の予想よりも早く。


オープンイノベーションが、大企業を変革する「一手」となる

盛田昭夫、松下幸之助、本田宗一郎。――彼らのようなイノベーターでありカリスマ経営者のような人材は、硬直化した現代の日本の大企業からは出てくることは難しい。では、どうすれば大企業がイノベーションを生み、マーケットを変え、日本を変えていくのか。その一つの可能性が、オープンイノベーションだ。

0から1をスピーディーに生み出すことに強みを持つスタートアップと、1を10や100にしていくことが得意な日本の大企業。社会変化・経済環境の変化が激しいなかで、大企業がイノベーションを生みだしていくためには、スタートアップとのオープンイノベーションが必要不可欠だと言える。

「オープンイノベーションは日常業務の一環として取り組むべき」と話す加藤氏にように、今や大企業にとって外部のビジネスパートナーは欠かすことはできない。社内のリソースで何とかしようという“自前主義”の考え方も徐々に薄れつつある。大企業が変わるための糸口は、オープンイノベーションにあるはずだ。

次回以降も、光村氏・加藤氏という大企業イノベーターに登場いただき、”ポスト平成時代”へと向かうニッポンを語ってもらう。

(構成・取材・文:眞田幸剛、撮影:加藤武俊)

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