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【インタビュー/NTTドコモ・ベンチャーズ】 ベンチャー企業と共に、“通信”で時間・空間を超え、コミュニケーションの概念を変えていきたい。

NTTグループ総体の「スタートアップ・ベンチャーコミュニティとの総合窓口」として、サービス・技術・プロセスのイノベーションを加速させているNTTドコモ・ベンチャーズ。前身企業であるNTTインベストメント・パートナーズの創業から数え、ちょうど10年という節目を迎えた同社では、さまざまな技術・ノウハウを持つ国内外のベンチャー企業等への「投資」と「協創」を手がけている。

「投資」に関しては、コーポレートベンチャーファンドを運営しており、2017年には運用総額150億円のファンドを組成。また、「協創」に関しては、協業促進・起業支援プログラム「ドコモ・イノベーションビレッジ」を運営し、Villageアライアンス、Villageソーシャル・アントレプレナー、Villageコミュニティの3つの取り組みを行っている。

 上記のような、ベンチャー企業との取り組みを手がける背景にはどのような理由があるのか。そして、具体的な「協創」事例とはどのようなものなのか。――そこで今回は、取締役副社長・稲川氏とドコモ・イノベーションビレッジのシニアディレクター・西本氏の2名にインタビューを実施。稲川氏には、NTTドコモ・ベンチャーズがベンチャーとの「協創」に取り組む背景や、求めているベンチャーのマインドについて話を伺い、西本氏には、実際にNTTドコモとの協創に至った具体例などについて聞いた。


NTTドコモグループの"エッジ"で、ベンチャーとの「協創」を生み出す

▲株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ 取締役副社長 稲川尚之氏

NTTドコモ入社後、インフラ設計といった技術畑からキャリアをスタートさせ、資材調達や国際ビジネス、人事なども担当。MBA取得のための海外留学を経験し、2013年にドコモイノベーションズの社長に就任。シリコンバレーで北米におけるベンチャー企業との連携・出資を経験する。2016年7月から現職。

――まずは、NTTドコモ・ベンチャーズの特徴をお聞かせください。

稲川氏 : 私たちは、NTTグループの中で唯一、ベンチャーファンドを直接運営しています。NTTドコモにはベンチャー企業とのつながりを持つセクションもありますが、ベンチャー企業の動向の詳細や経営陣の人柄はなかなか掴むことが難しい。そこで、私たちがベンチャー企業との窓口となり、情報を収集しています。NTTドコモグループ内でも”エッジ”のところにいるので、とても身軽に動いていますね。また、当社のメンバーは、NTTドコモ内でさまざまな経験をし、豊富な社内ネットワークを持ったプロフェッショナル人材ばかりだという点も特徴と言えるでしょう。

――そうして情報を得たベンチャー企業の持つアイデアや技術と、NTTドコモをつなぎ、新しい事業を生み出していくことがNTTドコモ・ベンチャーズのミッションということでしょうか。

稲川氏 : そうですね。NTTドコモは2017年度からの新たな中期戦略2020「beyond宣言」を策定しました。2年後に迫った2020年には5Gの特徴とVRやAI、IoTなどの技術を活用して、ドコモユーザーに対してスタイルを革新する、楽しさ、驚きのあるサービスを提供していきます。そのためにも、ベンチャー企業のアイデアや技術を組み合わせ、事業開発を行っていきたいと考えています。

――2017年10月には、運用総額が150億円にのぼる「ドコモ・イノベーションファンド2号投資事業有限責任組合」を組成されましたね。

稲川氏 : はい。今は、イノベーションを起こすための「攻め」の時期に入っています。電話がコードから切り離され、携帯電話やPHSが出てきた頃が「モバイル第一期」。データ通信ができ、“iモード”が登場した頃が「モバイル第二期」とすると、スマートフォンが登場してAIでさまざまなことが自動化できるようになった今が「モバイル第三期」と言えるでしょう。しかしながら、スマートフォン自体も、その中に入っているアプリも、その多くがシリコンバレーで生まれたものです。私たちは、ベンチャー企業のアイデアや技術とNTTドコモの持つプラットフォームの力で、シリコンバレーに劣らない、新しい枠組みの新サービスを生み出していきたいと考えています。

――今お話しいただいたように、NTTドコモという巨大なプラットフォームと共に事業を創出できることがベンチャー企業にとって大きな魅力になると思います。

稲川氏 : NTTドコモが抱える、6000万人以上のユーザーにアプローチできる点は魅力になるでしょう。加えて、長きにわたって通信事業を展開してきたNTTドコモというブランドや、全国のある営業拠点を活用できる点もメリットに感じられると思います。また、先ほどもお話ししましたが、NTTドコモ内でプロダクト開発や法人営業を経験していた者など、事業開発ノウハウや豊富な人脈を有したスタッフがいる点も当社の強みです。

――どのようなベンチャー企業と一緒に「協創」を生み出していきたいとお考えでしょうか。

稲川氏 : 独自のアイデアと技術力を持っていることが半分。残りの半分は、経営陣の「人」としての魅力ですね。話しているうちにワクワクしてきて、何か新しいことを生み出すことができる。――そんなことを感じられる方たちと一緒に事業を創造していきたいと考えています。

――なるほど。

稲川氏 : またこれは個人的な意見ですが、ベンチャー企業と共に、通信で時間・空間を超え、コミュニケーションの概念を変えていきたいと思っています。すでに、時間を気にせずにコミュニケーションできる「メール」という通信技術で、時間の概念を超えることはできたと思っています。今度は、AR・VRといった技術などで、よりリアルに空間を超える通信を生み出し、コミュニケーションの新しい概念を生み出していく。そんな気概を持ったベンチャー企業と手を組んでいきたいですね。


ベンチャー企業との多様なつながりをフックに、協創を実現

▲株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ ドコモ・イノベーションビレッジ シニアディレクター 西本暁洋氏

NTTドコモ入社後、法人系サービス部門を経て、R&D部門にて「はなして翻訳」のサービス立ち上げから商用化をリード。その後、コンシューマ系サービス部門にて、「dポイント」をはじめドコモサービス横断でのマーケティング関連業務に従事し、2017年7月から現職。

――御社とベンチャー企業の「協創」事例についてお伺いしたいと思います。1月にニュースリリースでも発表されましたが、宅配収納サービスを手がける株式会社トランクに出資されていますね。これは、どういった経緯で実現に至ったのでしょうか。

西本氏 : ドコモ・イノベーションビレッジでは、以前ベンチャー企業の成長を支援するアクセラレーションプログラムを実施しておりました。そこでは、NTTドコモの社員も一緒になってベンチャー企業の事業運営に参加することで、社員のベンチャーマインドやオープンイノベーションマインドを刺激することも目的としていました。そのプログラムに参加していた社員(ビレッジファミリーと呼んでいます)が、いまは各事業部門でリーダー的な立場となって、ベンチャー企業との協創に取り組んでいます。トランクさんとの協創も、そういったビレッジファミリーのひとりが仕掛けて実現した取組みになります。トランクの事業の成長性の他、弊社の「dリビング」とトランクの宅配収納サービスのさらなる協創の可能性を踏まえ、出資に至りました。

――その他にも事例はありますか?

西本氏 : VR技術に強みを持つ、クロスデバイスさんとの連携事例があります。法人営業部において、自治体向けのVRソリューションを開発するためVRについての技術力を持つ企業をパートナーにしたいというニーズがありました。そこで、我々イノベーションビレッジで、パートナー企業を広く募るとともにベンチャー企業と事業会社のマッチングイベントを実施し、参加していたクロスデバイスさんと引き合わせ、福岡の、「博多祇園山笠」のVR配信が実現しました。

――御社のスタッフが、NTTドコモのニーズを積極的に引き出しているんですね。

西本氏 : そうですね。ニーズは足を使って引き出していますよ(笑)。NTTドコモ側にも、私たちの活動は少しずつではありますが着実に浸透し、広がってきていますね。

――最後に、ベンチャー企業へのメッセージはありますか?

西本氏 : NTTドコモは組織も非常に大きく、どこにアクセスすれば分からないという声も聞きます。私たちであれば適切なガイドができますので、私たちからも、積極的に色々なベンチャー企業の方とお会いしていきますが、「NTTドコモとつながりを持ちたい」というベンチャー企業は、まずは当社にアクセスしてほしいですね。

▲「ドコモ・イノベーションビレッジ」では、頻繁に勉強会やミートアップを開催しており、コミュニティ作りを促進している。

▲多くのベンチャー企業が、「ドコモ・イノベーションビレッジ」のコワークスペースを活用している。

(構成・取材・文:眞田幸剛、撮影:加藤武俊)


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