eiicon

【イベントレポート】第23回NEDOピッチ~「宇宙」分野の有望ベンチャー5社が登壇!

民間事業者の「オープンイノベーション」の取組を推進し、国内産業のイノベーションの創出と競争力強化への寄与を目指し設立されたJOIC(オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会)。1月30日(火)、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)とJOICの共催で、イノベーション及び具体的な事業提携事例の創出を目指すイベント「第23回NEDOピッチ」が実施された。

今回の「NEDOピッチ」では、「宇宙」分野における有望技術を有するベンチャー企業5社が、自社の研究開発の成果と事業提携ニーズについて、大企業やベンチャーキャピタル等の事業担当者に対し、創造性の高いプレゼンテーションを行った。



株式会社ワープスペース

代表取締役 亀田敏弘氏 http://warpspace.jp

株式会社ワープスペースは、「宇宙と遊ぶ」をテーマに、超小型人工衛星による宇宙利用のプラットフォームを提供する筑波大発ベンチャー企業だ。通常、数億〜数百億円かかる衛星機器を自社技術によって低価格化を図り、低コストで超小型人工衛星の打ち上げ実現を目指している。それによって、個人レベルの予算で宇宙利用が可能となり、「宇宙と遊ぶ」という新しい宇宙利用分野を開拓していく。これまでに2機の小型人工衛星を開発し、現在2号機が周回中で運用を行なっており、ミッションの設計から衛星の完成・運用まで一気通貫した支援を提供できることが同社の強みだ。

代表の亀田氏は「既存事業の拡大ではなく、面白いこと、楽しいこと、便利なこと、ためになること――そういった未来の宇宙事業を切り開いていきたい」と語る。今後、メディア・エンタメ・商社・メーカーなどさまざまな領域の企業・組織と協業し、人工衛星を用いた新規分野での宇宙利用を実現していきたいとアピールした。


インターステラテクノロジズ株式会社

代表取締役 稲川 貴大氏 http://www.istellartech.com

インターステラテクノロジズ株式会社は北海道大樹町に拠点を置き、ロケット開発を行う技術者集団だ。ここ数年で半導体の進化したことにより、小さい人工衛星であっても十分な性能を発揮できるようになっている。地上で作った小型人工衛星を宇宙に運び、仕事をしてもらうわけであるが、輸送するロケットに関しては大型ロケットで打ち上げているのが現状である。

輸送に莫大なコストがかかるという課題に対して同社は、小型輸送ロケットを新しい市場として低コストで開発し、解決するという。世界で小型輸送ロケットの開発競争が激化している中、同社は「より小さく、より安い」を目指している。2011年からこれまでに11回もの観測ロケットの打ち上げ実験を実施。技術の蓄積、実証実験を重ねている。シンプルな構成・汎用的な部品を使用した観測ロケットを短期間での打ち上げを実現し、既存のロケットよりも一桁安い値段で打ち上げることができている。

稲川氏はこの実績を一つのステップとして、次なる目標に、2020を目処に小型人工衛星専用の小型輸送ロケットの打ち上げ成功を掲げている。今後、小型輸送ロケット打ち上げの実現のため、資金調達をさらに進めていきたいと話す。

 

PDエアロスペース株式会社

代表取締役 緒川 修治氏 http://www.pdas.co.jp

PDエアロスペース株式会社は、従来の垂直打ち上げ型ロケットと、一線を画す宇宙機を開発。低コストで利便性の高い宇宙輸送インフラの構築を目指す名古屋の宇宙ベンチャーだ。通常ロケットは垂直で飛行する。一方で同社が開発している宇宙機は打上げではなく、空港から航空機スタイルで離着陸を行う。

最大の特徴は、ロケット燃焼とジェット燃焼を切り替えることができる世界初の「燃焼モード切替エンジン」。昨年7月には技術実証にも成功し、特許を取得している。空気のある領域(高度0km〜15km)ではジェット燃焼モードとなり、空気のない領域(高度15km以上)になるとロケット燃焼モードに切り替わる。これにより単一の機体/エンジンでの飛行が可能となり、空港から離陸し、そのまま宇宙へ行き、帰ってくる、完全再使用型の宇宙飛行機が実現するという。既存空港が使用できる点、機体の構造がシンプルな点から製造/運用コストが大幅に削減される。さらに、飛行機のように離着陸のやり直しが効くため安全性も高い。

同社は、2016年10月には宇宙旅行・宇宙輸送実現にむけて株式会社エイチ・アイ・エス、ANAホールディングス株式会社と資本提携を行った。現在、新型エンジンの大型化、機体の大型化の開発段階であり、2019年には宇宙空間への到達を目指し、資本参加・技術協力に手を上げる事業会社、投資者を求めている。代表の緒川氏は「ロマンのある宇宙事業ではあるが、一方で資金規模も、リスクも大きく二の足を踏む企業が多い。一歩踏み出す“男気”が必要です。我々と共に戦ってください。」と話した。

 

 

スペースリンク株式会社

取締役 阿部 晃城氏 http://www.spacelinkltd.jp

スペースリンク株式会社は、「宇宙と地上を技術で繋ぐ」をミッションとし、これまで、宇宙技術開発で培った技術とノウハウを、地上での利活用にフォーカスしている。主な事業は、カーボンナノチューブを活用した次世代蓄電デバイス「カーボンナノチューブキャパシタ」の開発と、測位を安定的に低コストで行うことが可能なマルチGNSS受信機を活用した高精度測位システム「マルチ GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機」の開発と、2つの異なる技術開発を行っている。

「カーボンナノチューブキャパシタ」に関しては、性能劣化が低く“理想的な蓄電装置”と言われている「キャパシタ」と、高い物質性を持ち“夢の素材”と言われている「カーボンナノチューブ」を、同社独自のナノカーボン制御技術により組み合わせた蓄電デバイスである。例えばスマートフォンの充電では、従来1時間かかるフル充電が同社の蓄電デバイスでは「1分」で可能となる。カスタマイズ対応が可能なため、フレキシブルな蓄電ソリューションが提供でき、さまざまな領域に活用できると阿部氏は言う。

「マルチ GNSS受信機」に関しては既存の測位受信機に比べ、障害物の多い環境下や急加速時でも、より高精度な測位を安定的に効率よく行うことが可能な受信機である。これまでに、JAXAやNEDOの公的資金獲得の実績があり、近年ではリアルテックファンドからの資金調達にも成功。今後、産業用ドローンや自動運転などの分野への応用が期待されていると同時に、自動運転システムに関する企業、社会インフラメーカーなどとの事業提携ニーズを求めている。


株式会社QPS研究所

代表取締役社長 大西 俊輔氏 https://i-qps.net

株式会社QPS研究所は『リアルタイムに更新されるGoogle Mapのような世界』の実現を目指す世界トップレベルの九州大学発宇宙ベンチャーである。同社は、独自開発のアンテナを搭載した小型レーダー(SAR)衛星を36機打ち上げることで、世界中のほぼどこでも好きな場所を平均10分以内に観測できる世界を創る。現状利用されている衛星のほとんどがカメラを使用しているため、明暗や天候に左右され、晴れた日中しか地上を撮影できず、リアルタイムで見ることが不可能であった。

そんな中、同社は世界初、100kgの小型レーダー(SAR)衛星を開発。レーダー(SAR)を使うことで、夜でも、悪天候時でも地上の撮影が可能となる。また、小型のため従来の大型衛星と比べ大幅なコスト削減に成功し、低コストで大量の衛星を打ち上げることで、リアルタイムで観測するシステムを構築する。これまで難しかった人や車や船などの移動体の動きが観測できる上、蓄積した画像データを分析することで、ディープラーニングを使った将来予測も可能となる。2017年10月に産業革新機構、未来創生ファンド等から23.5億円を調達に成功し、2019年前半に初号機の打ち上げを目指している。

大西氏は「日本発で世界に先駆けて小型レーダー(SAR)衛星を作っていきたい」と意気込む。今後、データ解析や他のデータと組み合わせたビックデータ解析技術を持った企業と提携していきたいとアピールした。


取材後記

世界の潮流では、宇宙産業は国から民間へとシフトしつつある中で、未だ日本の宇宙産業の中心が官需である。日本が世界と戦っていくためには今回のような宇宙ベンチャーが立ち上がっていくことが不可欠である。参入障壁が大きいと思われる宇宙産業であるが、「一歩」を踏み出すことで、世の中を面白く・豊かにできる可能性に溢れていると思える領域だ。今回のピッチでは実績があり、且つ実現性の高い内容が多く、より宇宙を身近に感じた。引き続き、どのような宇宙ビジネスが生まれるのか注目していきたい。

(構成:眞田幸剛、取材・文:保美和子)