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【エーテンラボ×東急電鉄】 「早起きで世界を救おう」~東急電鉄と『みんチャレ』によるオフピーク通勤の推進~

通勤電車の混雑は、日本が長年抱える社会課題だ。オフピーク通勤・通学の呼びかけ、線路の複々線化、座席指定列車、時差出勤やテレワーク――混雑緩和に向けて、自治体、鉄道各社、民間企業各社が様々な施策を実施している。

今回紹介するのは、東京急行電鉄株式会社が実施する「東急アクセラレートプログラム」から誕生した、オープンイノベーションによるオフピーク通勤・通学推進の取り組みだ。三日坊主防止アプリ「みんチャレ」を開発するエーテンラボ株式会社との共創により、オフピーク通勤の習慣化に関するプロジェクトを、4月1日より開始した。

「みんチャレ」は、新しい習慣を身に付けるためのアプリだ。早起きやダイエットなど、共通の目標を持つユーザーが匿名で5人1組となり、メンバー間で励まし合って習慣化を図りながら、アプリ内通貨も獲得できる。今回のプロジェクトでは、この「みんチャレ」を活用し、早起きによるオフピーク通勤・通学をサポートする。さらに、ユーザーは獲得したアプリ内通貨を、子供の教育支援に寄付することができる。まさに、早起きが社会貢献につながる仕組みだ。

この取り組みについて、「みんチャレ」を運営するエーテンラボの長坂氏、今回のオフピーク通勤でエーテンラボと共創した鉄道事業本部の竹田氏、東急アクセラレートプログラムを運営するイノベーション推進課の山口氏に話を聞いた。

▲エーテンラボ株式会社 代表取締役 CEO 長坂剛氏

▲東京急行電鉄株式会社 鉄道事業本部 事業戦略部 企画課 竹田宏美氏

▲東京急行電鉄株式会社 事業開発室 プロジェクト推進部 イノベーション推進課 山口ほたる氏

 

アクセラレートプログラムがきっかけで、協業がスタート

――今回のプロジェクトは、2017年度の「東急アクセラレートプログラム」が契機となったそうですね。エーテンラボさんが、アクセラレートプログラムに応募した背景を教えてください。

エーテンラボ長坂氏 : 「みんチャレ」では様々な目的に向けてユーザーが習慣化に取り組んでいますが、中でも特に関心の高いテーマが“早起き”です。実際にアプリ利用時間帯のピークは、朝5時~6時台。そしてユーザーは朝活への関心が高い20代~40代が多いという特徴があります。この傾向を活用して何かできないかと考えている時に、東急電鉄さんのオフピーク通勤推進施策「グッチョイモーニング」を知りました。そこで、「みんチャレ」をオフピーク通勤に活用できないかと思い、応募しました。

――鉄道事業本部との連携は、どのタイミングで始まったのでしょうか?

東急電鉄・山口氏 : 「東急アクセラレートプログラム」の二次審査(面談)を通過したスタートアップに対して、事務局が各事業部やグループ会社が抱える課題と照らし合わせて、マッチングを行います。

――つまり最終ピッチの前には、具体的な共創先が決まっているということですね。

東急電鉄・山口氏 : そうですね。顔合わせの後はスタートアップと事業部でタッグを組み、2カ月ほどかけて最終審査会に臨みます。

――鉄道事業本部とスタートアップの共創は初めてということですが、どんな気付きがありましたか?

東急電鉄・竹田氏 : 鉄道事業本部では、混雑緩和に向けて様々な取り組みを行っています。オフピーク通勤の推進も、重要な施策の一つ。お客様の反応を見ながら、色んな試みをしていきたいと考えています。しかし、社内だけでは発想に限界がありました。そこで、エーテンラボさんと組むことで、スタートアップならではの斬新な発想とスピードに大きな刺激を受けました。

エーテンラボ長坂氏 : プログラム全体を通して、臨機応変かつ柔軟に対応していただいています。みんチャレコインの寄付機能は、当時構想はあったものの、まだ実装はされていませんでした。通常、実績のない機能に関して大企業は慎重になると思いますが、東急電鉄さんは前向きにディスカッションしていただき感銘を受けました。

――最終審査会で、エーテンラボさんは渋谷賞を受賞したそうですね。どのような点が評価されたのでしょうか?

東急電鉄・山口氏 : 「みんチャレ」がサポートする“習慣化”は、オフピーク通勤だけではなく東急グループの様々なサービスと親和性があります。それだけではなく、エーテンラボさんが掲げる「みんなが自ら行動を起こし幸せになる世界を作る」というビジョンが、東急グループが掲げる存在理念とマッチしていたことも大きな理由です。


鉄道事業のみならず、東急グループの様々なサービスとの共創も検討

――4月1日から、「みんチャレ」を活用したテストマーケティングが始まりましたね。この時期となった理由は?

東急電鉄・竹田氏 : 新年度のスタートという理由が大きいですね。4月から新しい生活がスタートする方も多く、習慣化にも取り組みやすいタイミングだと思います。

東急電鉄・山口氏 : テストマーケティングを実施する上では、焦らず適切な時期を見極めることが大切です。また、データの取り方も重要。適正なデータを取り特徴量を抽出できるよう、事務局でサポートを行っていきます。

――テストマーケティングの反響はいかがですか?

エーテンラボ長坂氏 : 現状(取材当時)、100人ほどの方に参加していただいています。習慣化の目安となる21日間を終え、さらに長い期間に移行するチームも出てきました。また、ユーザーの行動を見ると、東急電鉄の「グッチョイクーポン」と併用していたり、ユーザー間のチャットでも利用アイデアが交換されたりしていて、こちらも色んな気付きがありました。

東急電鉄・竹田氏 : お客様のリアルな行動の変化を見ながら、そして声を聞きながら、どのようなサービスが必要とされているのか探っていくことに手応えを感じています。また、SNSなどで情報発信をした際も、20代~30代の女性など従来とは異なる層から反響をいただき、関心の高さを感じました。

――社内からの注目度の高さも実感されていますか?

東急電鉄・山口氏 : 鉄道事業は当社の主幹事業ですから、期待は大きいですね。アクセラレートプログラムの最終審査会でも、社内の幹部が強い興味を示していました。

東急電鉄・竹田氏 : 交通広告など様々なチャネルで情報を出しているため、社内からも「面白い取り組みだね」と声を掛けてもらえることが多いですね。

――テストマーケティング終了後は、どのような展開を考えていらっしゃいますか?

東急電鉄・竹田氏 : テストマーケティングは6月末までの予定です。その結果を見て、お客様がどこに価値を見出してくださっているのかを分析していきたいと考えています。寄付機能を備えていることがお客様の行動変容にどの程度影響するのかも検証しながら、具体的な取り組みを考えていきます。

東急電鉄・山口氏 : 「みんチャレ」が掲げる習慣化という切り口は、オフピーク通勤だけではなく東急グループの様々なサービスと併せた展開ができると考えています。例えばスポーツ施設やカルチャースクールなどは、親和性がとても高いですよね。こうしたお客様に対するサービスはもちろん、社員向けの取り組みへの活用など、多様なサービスを生み出せる可能性があります。

エーテンラボ長坂氏 : 東急電鉄さんは「みんチャレ」の良さを理解し、真摯に向き合ってくださっています。まだスタートしたばかりですが、検証を繰り返してサービスを育てていくことで、将来的に利益をしっかりと返していきたいと思っています。


当事者同士が早い段階で理解を深めることが、成功のカギ

――非常に良い共創を進めていらっしゃると思いますが、スタートアップサイド・大企業サイド両面から、オープンイノベーションを成功させるための気づきやノウハウをぜひ聞かせてください。

エーテンラボ長坂氏 : スタートアップと大企業の共創で大切なのは、早い段階で互いの描く未来を理解し合い、共創を進めていくことだと思います。その点で、東急アクセラレートプログラムは最終審査会の前に共創する部署が決まっているため、相互理解がとてもスムーズに進みました。

東急電鉄・竹田氏 : 私も、早い段階で仲間になれることが一番だと思います。課題感やゴールのすり合わせをしっかりと行い、同じ意識を持って一緒にサービス創出に向かうことで、受注・発注の関係ではなく、本当の意味の“共創”ができると信じています。

東急電鉄・山口氏 : オープンイノベーションとは、意志ある人たちが共創することで、社会を変えていくことです。大企業サイドも、自分たちがどんな世界を作りたいのか、世の中をどう変えていきたいのか、意志をしっかりと持って相手に向き合っていくことが大切だと思います。


取材後記

アクセラレートプログラム運営事務局がいくら意識を高く持ったとしても、実際にスタートアップと共創する「現場」の意識が醸成されなければ、オープンイノベーションはうまく進まない。今年度で4期目を迎える東急アクセラレートプログラム(※)の大きな特徴は、早い段階でその「現場」を巻きこみ、スタートアップと文字通り“一体”となって課題解決やサービス創出に取り組んでいることだろう。エーテンラボと東急グループの共創により、これから世の中にどんどん新しい習慣が根付いていくのかもしれない。

※第4期「東急アクセラレートプログラム」は、5月7日(月)から下記ホームページ上で募集を開始している。 http://www.tokyu-ap.com/

(構成:眞田幸剛、取材・文:佐藤瑞恵、撮影:古林洋平)