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【イベントレポート/マスターマインドイノベーションセミナー】 大企業のオープンイノベーターたちが語る、共創を進めるノウハウとは?

【イベントレポート/マスターマインドイノベーションセミナー】 大企業のオープンイノベーターたちが語る、共創を進めるノウハウとは?

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ビジネスコミュニティ”マスターマインド”が主催する「マスターマインドイノベーションセミナー 大企業オープンイノベーター(ベンチャー応援団)の話を聞こう」(eiicon共催)は5月18日、東京都千代田区のStartup Hub Tokyoで開かれ、大企業とベンチャー企業の共創におけるコツやノウハウ、注意点、さらに事業創造への思いが伝えられた。

本会に先立ち、マスターマインド主宰の土橋幸司氏(下写真)が挨拶。「人生を変える出会いの場となってほしい」と会場に語りかけた。続いて、各社のオープンイノベーターおよびオープンイノベーション支援事業を展開する企業の代表者が講演した。登壇者と講演の内容は以下の通り。

1年間で6000社と話し1000の出会いを創出してきた eiiconが語る共創ノウハウ

登壇者/パーソルキャリア株式会社 eiicon company代表/founder 中村亜由子

冒頭に登壇したeiicon founder・中村は、eiiconを通じて1000件以上の提携を実現した経験をもとに、オープンイノベーションの明暗を分けるポイントを解説した。中村は、「目的がしっかりしている企業がうまく傾向がある」と強調。逆に目的やターゲットが明確でないままスタートアップを募集してもうまくいかないケースが多く、それどころか、スタートアップの信頼を損ねてしまう結果になりかねないことを伝えた。

アクセラレータープログラムについても同様で、順調なプログラムの多くは「募集テーマが明確である」と明かす。また、事業をスムーズに進めるために独自の決裁ルートを持つことも有効だと話した。

戸田建設が考える「未来の歩き方」の策定について

登壇者/戸田建設株式会社 常務執行役員 浅野均氏

浅野氏は、オープンイノベーションに取り組み始めたばかりの戸田建設の現状に触れた。その上で、まずは自社の目指す「未来像」を明確にしたことを強調。取り組みを社内に公開し、若手社員から意見を積極的に募り、未来像を少しずつブラッシュアップして具体化していったことを伝えた。その結果、同社では『「生産性No.1」企業』という目標が見つかったと話す。

また、目的が明確化されたことで、ニーズにフィットした企業が探すことができるようになり、ビジネスマッチングが図りやすくなったなどの効果があったことも伝えられた。浅野氏は「未来の形を明確にするのが大事」と繰り返し強調し、スピーチを締めくくった。

セクターを越えた共創による社会価値創造

登壇者/日本電気株式会社 コーポレートコミュニケーション部 エンゲージメント推進室 石川紀子氏

石川氏は、今は広く使われている「共創」が、実はNECが2006年に登録商標した造語であることを伝え、同社が古くからパートナー企業との協業に取り組んでいることを明かした。かつてはモノづくり企業だった同社は今、ICT技術を活用した社会ソリューション事業を中心に行っていることを提示。その上で、これまでに直面したことのない社会課題と向き合っていかねればならない背景を述べ、「一社だけではやれることに限界がある」と、共創に力点を置く理由を解説した。

また石川氏は、共創を生み出すには「企業文化の醸成が鍵」と話し、現在は、認証技術、光海底ケーブル、宇宙ソリューションをはじめ、地方創生や社会起業家の育成に力を入れていることを述べた。

「デジタル変革」の壁を打ち破る、IBM Garage 〜オープンイノベーションの事例を交えて〜

登壇者/日本アイ・ビー・エム株式会社 IBM BlueHub Lead 木村幸太氏

IBMでは独自のプログラム「BlueHub」を通じオープンイノベーションを支援している。同プログラムでは、同社の技術を提供しながら「新事業の創造」と「テクノロジーを活用したスタートアップの事業育成」を行っている。特徴として、木村氏は「アイデア出しで終わらない」と強調し、あくまで事業化を目的としていることを伝えた。

具体的な共創の進め方として、大手企業側が自社の抱える課題を提示し、それを解決する技術を持つベンチャー企業を募集。ベンチャー企業はIBMと協業し、課題解決の実現を目指す。木村氏は、イノベーションのための人、手法、場を提供する「ガレージモデル」が有効と話した。

SOMPOホールディングスのデジタル戦略とオープンイノベーション

登壇者/SOMPOホールディングス株式会社 デジタル戦略部 課長 安田誠氏 

安田氏は、同社がオープンイノベーションに取り組む理由を「事故・病気のない、保険を必要としない世界を実現したいから」と述べた。現在、東京、シリコンバレー、イスラエルにラボを開設。積極的にオープンイノベーションを進めていることを示した。

これまでに、実証実験まで進んだ事例が42件あり、そのうち10件が事業化につながった反面、中止となった案件もあると話した。その要因は、「事業部との意思疎通が不十分で、意向が変更したこともあった」と明かした。これを受け、安田氏は「やりたいことを明確にしないと頓挫してしまう」と強調した。

ドコモのオープンイノベーションの取組みについて

登壇者/株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ シニアディレクター 西本暁洋氏

西本氏は、同社が「コミュニティ、アライアンス、ソーシャルアントレプレナー」の三つの側面から協業を進めていることを紹介した。いずれも、始めた当初は反応も今一つだったが、徐々に大きな反響を得られるようになったと話し、「大切なのは継続すること」と強調した。また、現在は中止しているもののインキュベーションプログラムを行ったことで、参加社員の意識改革の一助になったことを明かした。西本氏は「オープンイノベーションは一つの手段に過ぎないが、視野を広げるいいきっかけになる」と締めくくった。

オープンイノベーションをドライブするリンカーズの事業展開

登壇者/リンカーズ株式会社 代表取締役 前田佳宏氏

同社は大手企業と地元の中堅、中小企業、大学などをつなぎ、オープンイノベーションをサポートしている。現在は地銀のネットワークを活かし、幅広い分野で年間500件のオープンイノベーションを成功に導いている。地銀では個々人が個別で動いていることが多く、互いのリソースを活用できていないのが現状とし、まずは社員同士の知見を結びつけ、その上で、最終的には全国の地銀を結びつけたいと述べた。前田氏は「地元企業を海外に売り込めるまでになりたい」と将来の展望を示した。

オープンイノベーターたちによるパネルディスカッション

各社のプレゼンテーションに続き、登壇者によるパネルディスカッションが行われた。ディスカッションのテーマは、「① オープンイノベーションを実践する理由」、「②一番阻害する要因は何か?」、「③オープンイノベーションを活性化させる上で大切なポイント」、「④2018年以降オープンイノベーションは日本企業にとって根付くか否か」という4つ。それに加え、会場からの質問にも答えた。それぞれの回答、ポイントとなる点は以下の通り。モデレーターはeiicon founderである中村が務めた。

■「マッチングにはプロの力を頼るのもいい」(戸田建設・浅野氏)

浅野氏は、技術革新が進んだ現状に触れ、自前主義には限界があり、そのために、オープンイノベーションは必然だと強調した。一方、同社は基本的に既存の取引先と協業を進めるスタイルで、「信頼関係が構築されていない企業との提携は難しい」とし、新たな協業先を探すオープンイノベーションには、一定の困難が伴うことを指摘した。現在のところ、提携を決定する価値軸がなく、解決策が見い出せていないという。そのため、共創先を探すにはマッチングのプロに頼っており、その活用は有用ではないかと述べた。

■「オープンイノベーションをできない企業は生き残れないのではないか」(日本電気・石川氏)

石川氏はオープンイノベーションを進める理由に「スピード感」を挙げた。阻害する要因としては「余裕のなさ」だと指摘し、経営が上手くいっている時ではないと、なかなか新しいことをスタートさせるのは困難だと強調した。さらに成功のポイントとしては、「人とのつながりや関係性が重要」と述べた。石川氏は今後、「オープンイノベーションをできない企業は残れないだろう」と予測。一方で、今は2020年に向け新しいことを始める機運もあり、チャンスが訪れていると示した。

■「覚悟と経営陣のコミットが欠かせない」(IBM・木村氏)

木村氏は、今は「大きなことをやりたい企業が増えている」と指摘し、そのため、一社では限界があるからオープンイノベーションが隆盛になるのではないかと述べた。一方、イノベーションには「覚悟」が必要であり、経営陣のコミットが欠かせないとした。また、グローバルに目を向けるとオープンイノベーションは落ち着いた感があり、日本は立ち遅れている現状を明かした。

■「”危機感”からオープンイノベーションに踏み切る」(SOMPOホールディングス・安田氏)

オープンイノベーションに着手したのは、「危機感」が大きいと話す安田氏。自社には技術的な蓄積がなく、外部との協業は必要不可欠だと述べた。オープンイノベーションを進める上で重要なのは「事業部の意向をくみ取ること」と強調し、現場が何を求めているかコミュニケーションを取ることが欠かせないと語った。

■「イノベーションを行うには、完璧主義を脱するべき」(NTTドコモ・ベンチャーズ・西本氏)

オープンイノベーションを推進するのは、自社だけでは価値創造に限界があり、多様なニーズに応えきれないからと、西本氏は話す。さらに、イノベーションは「不確実性に飛び込むこと」だから、完璧主義を脱しないと上手くいかないケースが多いと語った。一方で、同社はインフラ企業のため、「ミスが許されないという強迫観念」があり、その考えが阻害となることも多かったと明かした。オープンイノベーションの秘訣を西本氏は「担当者が楽しむこと」と述べ、本人が楽しむことで周囲を巻き込んでいけると伝えた。

■「レイティングの考えを取り入れる必要がある」(リンカーズ・前田氏)

前田氏は、オープンイノベーションには「レイティング」の考えが必要だと語った。アクセラレータープログラムなどを行い、提携に至らなかった企業も、優れた技術を持つ場合は多くある。そうした企業を評価し、レイティングを実施しないとエコシステムが成り立たないと指摘した。必要に応じて「シーズをニーズのある企業に売り込むなどするべきではないか」と強調。一方で、現在はレイティングの仕組みがなく、「どのようにレイティングをするかが課題」と述べだ。

取材後記

オープンイノベーションが日本に紹介され、一定の期間が過ぎた。現在、多くの企業が取り組んでおり、方法論も確立されつつあるのではないかと思う。今回の講演内容から、成功に導くヒントがいくつもあった。ぜひ参考にして、実践に取り入れてほしい。一方、オープンイノベーションのエコシステムについて、未整備な点は否めない。今後、レイティングの考えなどを導入し、優れた企業や技術がより日の目を見ることを期待していきたい。

(構成:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:加藤武俊)

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