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【イベントレポート】ストックマーク主催!NLP(自然言語処理) meet up ! ~NLPのトップランナー達が語る、スタートアップの視点から見る大企業のオープンイノベーションとは?~

ストックマーク株式会社は東京大学大学院情報理工学系研究科におけるテキストマイニング・ディープラーニングの研究をベースに、2015年4月にスタートした東大発ベンチャーである。2018年5月18日、以前在籍していたリクルートホールディングスが運営するコミュニティスペースTECH LAB PAAKにてNLP(自然言語処理)meet upを開催。NLP✕機械学習によってホワイトカラーの生産性向上を目指すトップランナーが一同に介し、AIテクノロジーを活用した現在、そして未来のNLP革新について徹底的にディスカッションを行った。

また、今回はスタートアップの視点から見た大企業とのオープンイノベーションとして「ウチ(スタートアップ)との付き合い方を逆アドバイス」をテーマとして掲げ、スタートアップから大企業へより良い関係性の作り方や本音を打ち明ける、ディスカションを実施。会場は200名オーバーの超満員で活気に溢れ、大いに盛り上がった。

▲スタートアップのためのコミュニティスペース「TECH LAB PAAK」は超満員


NLPの第一線をかけ走る各社の取り組み

■ストックマーク株式会社代表取締役CEO 林 達氏

ストックマーク株式会社は、東京大学大学院情報理工学系研究科におけるテキストマイニング・ディープラーニング研究をベースに、2015年の4月にスタートした東大発ベンチャーである。AIの学術的なバックグラウンドと大企業でのビジネス経験を併せ持つ人材が中心となり、最先端のAIテクノロジーを活かした企業向けWEBニュースクリッピングサービス「Anews」を開発。現在700社以上の情報収集・ナレッジシェアの効率化を支援している。


■株式会社レトリバ 代表取締役 河原 一哉氏 

株式会社レトリバは、株式会社Preferred Infrastructureからスピンアウトした、AI技術の自然言語処理に特化したベンチャー企業で、「お客様の課題を最先端の技術で解決する」をミッションに掲げている。音声・テキストデータを解析・分析するようなサービスを展開し、一つに顧客の声の分析に特化したツール「VoC Analyzer」を提供している。

非常に離職率の高い仕事の一つであるコールセンターでは人材不足に悩まされている。同社はこの課題を解決すべく、VoC Analyzerにより大量の顧客からの問い合わせ情報の中から顧客志向の製品・サービス提供を行うために重要なデータを探索することを可能にした。


■株式会社シナモン CEO平野未来氏 

株式会社シナモンは、ホワイトカラーの業務効率を抜本的に改善するため、自然言語処理のAI技術を活用して、書類やEメールからAIが情報を正確に抜き出し再構築することで、圧倒的に面倒な仕事やルーティンワークなどの日常的に存在する無駄な仕事を人工知能に置き換えるプロダクトを開発・コンサルティングを行っている。ディープラーニングはもともと画像や音声に注目をされていた技術であったが、近年、自然言語の領域にも活用の幅が広がりつつある。

同社はこれを時代の変遷と捉え、「Flax Scanner」を開発した。このプロダクトは人間のように書類を読み取り情報を抽出する。対象はPDF・Wordはもちろん、手書き・印字・FAXとテキスト化されていないものでも情報として高精度に抽出可能。また不特定な帳票も読み込める。


■株式会社コージェントラボ 事業開発担当ディレクター 鶴岡 貴子氏

「人工知能を活用して人々の生活の質を高めて未来を創る」というビジョンのもと集められたメンバーは、種々様々。世界からリサーチャーやエンジニアを採用し、最先端の人工知能を活用したプロダクトの開発に成功。同社が事業化を進めているサービスの一つが、印字・手書き文字のテキスト化するサービス「Tegaki」である。

ディープラーニングの技術をベースに、複数のニューラルネットワークを組み合わせ、業界最高水準の文字認識率を実現している。これにより手書き入力作業にかかる業務の効率化とコスト削減に貢献している。多言語にも対応し、印字、手書きのテキスト化を一つのソリューションサービスによって解決している。


一触即発?!大企業との共存共栄に向けてのパネルディスカッションが開始。

▲質問1

とある大企業の担当者がスタートアップに対して、ミーティングの場で質問している内容がパネルディスカションのお題となる。(質問は全て仮想)

【質問①】 社内にはAIタスクフォースも組成され、全社的にはAI関連への取り組みを促進する機運があり、事業部からは多くの要望が上がってきます。ただ、ほとんどの要望は自社でスクラッチで作るほどではない。または、基幹業務に適用するには検討時間やコストが大きすぎる状況で、「ちょうどいい」案件がありません。どんな分野から手をつけるのがいいか教えてください。

 

ストックマーク林氏:皆さんにお聞きしたいのが、このような「ちょうどいい案件をやりたい」という非常にクセ者なニーズが出てきた場合、「ウチだったらこんなちょうどいい案件できますよ」というお話があれば教えてください。

レトリバ河原氏:「ちょうどいい」というのが難しい表現ですが、我々が大企業さんとご一緒する場合、AIの導入を考える際に最初に考えていただきたいのが、スモールな利用シーンから始めることです。成果が出て価値にならなければAI導入する意味がありません。また、実現できる範囲を相談してから決定することです。来期の予算を取るために無理難題なプロジェクトを掲げる方もいますが、前に述べたようにやはり成果が出ないと意味がないです。地味に見えるかもしれませんが、着実に成果ができる部分を共に探していくのが「ちょうどいい」に近づけるかと思います。

シナモン平野氏:河原さんがおっしゃっていることと似ていますが、AIを導入した時に明確にインパクトが出て、売り上げにつながっているのかなど、しっかりとROIを考えてからプロジェクトを起こす必要があると思います。ご相談いただく時には、「何をしたい」より「どこの業務を効率化するのか」を考えていただく方がいいのかなと思います。また、最初から受託の形でAI機能を導入する場合、時間も検討コストもかかるので、ファーストステップトしてまず、既存のパッケージを導入して、効果を瞬時に感じてもらうのも最初の導入に関してはいいのかと思います。

コージェントラボ鶴岡氏正直にお話すると「AI導入」が目的になっていないかなと・・気になるところですね。それならそれでまずは事例が出ているもの、学習済みものを導入された方が分かりやいかと思います。


▲質問2

【質問②】 NLP×機械学習の技術を社内システムやユーザー向けのプロダクトへ組み込むことを検討しています。たくさんのスタートアップが提案しに来てくれますが、どのスタートアップを選ぶべきか分かりません。特に価格面以外で、どのような観点でスタートアップを選定すべきかアドバイスをお願い致します。 


ストックマーク林氏:基本的に大企業さんが我々スタートアップを選ぶ時、技術リストのようなもので選定するケースが多くあります。イケていない選定方法だと思っておりますが(笑)…ウチはこんな視点で見てください、またウチの強みはこれだ!の部分をお聞かせください!

シナモン平野氏:選び方の観点で言うと、資金調達をきちんとなされているのかが、一つの基準ポイントかなと思います。資金調達を得ている企業は、技術力もそうですがこれまでどのようなプロジェクトをやってどのような結果でてきたのか、投資に至る正当な理由が見えてきます。もう一つが、ビジネス側の設計がしっかりとできるのかどうかを見るべきだと思います。

ストックマーク林氏:なるほど、メンバーのバックグランドやこれまでのプロジェクトを見るというのが良いということですね。弊社の場合はどうでしょうか?有馬さんお願いします。

ストックマーク有馬氏:2つあると思っていて、長期的に見た場合、そのスタートアップと心中する覚悟があれば、地頭の良い研究者がいるのかどうか、その一択だと思います。そうではない場合、目先の協業で考えると、シナモンさんがおっしゃっていた通り、ビシネスの設計ができるのスタートアップを選ぶということがポイントではないでしょうか。

▲ストックマーク株式会社 取締役CTO有馬 幸介氏

コージェントラボ鶴岡氏:スタートアップに限定して選ぶ必要はないと思います。本当にいいソリューションをお持ちの企業がたくさんある中で、要件を整理して、人を見て判断していただければと思います。(笑)

コージェントラボ飯沼氏:そもそもスタートアップを見定めるという行為が間違っていると思います。何が必要かというと、スタートアップをどうやって育成していくかが最も重要です。育てていく観点こそが、これからの日本のスタートアップを変えていくことになります。もちろん決め手の要素として技術力・資金力・運用力は一つの位として必要ですが、最後に重要になってくるのは、「どことやるかではなく、誰とやるのか」で決めるべきです。「スタートアップとどう組むのか」は「どうスタートアップを育てていくのか」と同義であると思います。

株式会社コージェントラボ 代表取締役 飯沼 純

レトリバ河原氏:少し皆さんとは違う回答を用意しています。大企業さんが我々のようなスタートアップと提携する場合、なんでもできると言っているスタートアップより、できないと勇気を持って発している方が、僕は信頼ができると思います。AIは決して魔法の技術ではないのでできないことももちろんあります。何でもできると言って仕事を取ることは簡単ですが、それはレトリバの理念でもあるお客様の課題を解決することにはなりません。そこを誠実に出来るスタートアップは頑張ってくれるのではないかなと思います。ただ、「できない」で完結するのではなく、逆にもう一段階深堀って「なぜできないのか。」を大企業さんには聞いて欲しいですね。


▲質問3

【質問③】 WatsonやGCP、Azure等様々なジャイアント達がNLP関連のAPIを提供しており、社内ではまずは上記企業に話を聞いています。彼らに対する技術面での優位性はなんですか?また、彼らにできない最近の注目の技術やアルゴリズムがあれば教えてください。


シナモン平野氏 :巨人の皆様が多くのAPIを提供中で、同じ戦いすると私たちスタートアップは勝てません。スタートアップとしての勝ち方として考えると、特定領域にフォーカスしていくべきだと思います。我々でいうと、ディープラーニングを自然言語に適応させて単純なNLPだとできなかった事が可能となる部分が強みなのかなと思います。

コージェントラボ鶴岡氏:そうですね。平野さんおっしゃる通り、グローバル大手と我々との違いは、レイヤーが違うところだと思います。グローバル大手では基本的にどれだけグローバルにスケールできるかという観点から技術選択・プロダクト選択をされると思いますので、逆にニッチ・ローカルな部分な部分は入りづらいかと。そこがまさに私たちスタートアップが入るべき領域であり、お役に立てられる部分ではないかと思います。 

レトリバ河原氏:大手さんの違いというか、私たちレトリバは日本語に注力を当てています。自然言語処理は言語に依存します。数多な言語がある中で提供がやや遅れている日本語に対して、レトリバではジャパンマーケットを確実なものにしていこうと考えています。また違いの一つとしてあげられるのが「エンジニアとの距離が近い」という点だと思います。お客様の課題を解決するためにどんな技術をどう利用できるか、リアルタイムで変化し続けられる、「工夫する知恵」は大手さんにも負けていないかと思います。


▲質問4

【質問④】 弊社としては、スタートアップと組むにせよ、社内にAIを理解できる人材もいないですし、提供したデータが他の企業に流れてしまうことも怖いので、ある意味「囲い込み」として資本業務提携を検討しています。現状は大企業も選ばれる立場なので、スタートアップ側から見てどんな企業と組みたいのか教えてください。


コージェントラボ鶴岡氏:まず前提として、お客様のデータが他社へ流れることはございません。(笑) 契約で規定することも可能ですし、システム的にもできます。弊社の場合、両社がお互いに組みたいと思う企業と組んでいきたいなと思います。大手企業様の事業とマーケット、もしくは先のお客様に対して弊社の技術・リソースメンバーが役に立つと理解しあえた時に提携の形が具体的に見えてくると考えています。

シナモン平野氏:資本業務提携の部分でスタートアップ側からすると資本を受け入れると、色がついてしまいます。結果的に資本だけ入れて何も起こらなかったことになるとスタートアップ側からすると機会損失になってしまいます。資本を入れる前に何をやっていくのか握る事が必要だと思います。

レトリバ河原氏:資本提携をするとは別にして、初めに考えるべきところは我々を下手にみてただ使われることは苦しいですね。お互いwin-winな状態で成長できたらと思いますし、そう思ってくれる企業と一緒にやっていきたいと思っています。


取材後記

今回、スタートアップの視点から大企業との共創についてディスカッションを実施することにより、改めて双方の「目線合わせ」が共創の成功に必要不可欠であることが伝わった。良いスタートアップと会うためには「育む」という新たな観点を持つことが重要であり、未来の社会を創っていくことに繋がる。会場にいた大企業にも新たな気づきを得るきっかけとなったに違いない。

既に多くの事業会社と提携し、各社のテクノロジーを導入している4社だからこそ見えてきた気づきなのではないだろうか。画像認識に比べるとまだまだ難しいと言われているNLP(自然言語処理)ではあるが、オープンイノベーションによりさらに事業がスケールしていくだろう。今後も各社の動向に目が離せない。

(構成:眞田幸剛、取材・文・撮影:保美和子)