オープンイノベーションのプラットフォーム「eiicon」の月一ピッチイベント「CHANGE THE RULES eiicon meet up!! vol.15」は5月31日、東京ミッドタウン日比谷のビジネス連携拠点「BASE Q」で開催されました。

今回のテーマは、「100年後の食卓はどうなる?先駆者が考える未来と挑戦を続けるスタートアップ」。クックパッド株式会社で事業開発を務める住朋享氏が登壇し、イノベーションを行う際の心構えや具体的な進め方を伝えたほか、スタートアップの2社、株式会社シェアダインと株式会社テーブルクロスがピッチを行いました。

会場には新規事業の担当者たち100人以上が訪れ、登壇者が紹介する事例やアドバイスに熱心に耳を傾けました。講演とピッチの内容は以下の通りです。


自社をよく知れば課題が明らかになり、イノベーションの必要性も生まれる。

▲【登壇者】クックパッド株式会社 事業開発部 Cookpad Venturesグループリーダー/Cookpad Accelerator責任者 住朋享氏

人々の様々な食の課題を新しいテクノロジや新規事業によって解決し「誰もが料理を楽しんで幸せになる未来」を創出するため、社内新規事業推進やオープンイノベーション推進、スマートキッチン事業の立ち上げを行っている。前職のニフティではスマートフォンアプリのプロデュース、2014年にIoT/ヘルスケアをテーマにシリコンバレー駐在などを経て、2015年クックパッドに入社。

住氏は2015年に同社に入社後、オープンイノベーションの事業を立ち上げ、アクセラレータープログラムの責任者を務めるなどしています。しかしながら、初めからイノベーションの活動が認められていたのではありませんでした。経営陣が大きく変わるなどの社内事情もあり、むしろ「強い自前主義のもと、オープンイノベーションは敬遠されていた」と言います。

そこで、住氏は啓蒙活動としてイノベーションの必要性を伝え続けました。住氏は「全社的にクックパッドとは何か、料理とは何か、が見えていない」と感じ、「この2つの問いに答えられないから課題も明らかにならず、課題を解決するイノベーションも必要とされない」と理解します。こうした状況を打破するために、経営陣も巻き込み、改めてクックパッドや料理を問い直すワークショップを2日間にわたり実施しました。

その結果、「クックパッドとは単にレシピを提供する会社ではなく、食と料理にまつわる課題を解決するためにある」と定義づけされるに至り、新事業の創造へと乗り出すことになったのでした。住氏は料理のあり方は変わると予想されるが、「人々が料理に求める価値を失わずに、楽しめる」社会を創り出したいと熱意を見せました。


これからオープンイノベーションを進める方へ。

住氏はこれからスタートアップとの協業やオープンイノベーションを進める上で、重要なこととして以下を強調します。

◆ベンチャー企業をよく知ること。

◆ベンチャー企業にとって役に立てる人材になること。

◆誰よりも会社の存在意義を考えること。

◆情報を発信すること。

◆一人でも諦めないこと。

イノベーションの活動は初めから理解されるのは難しいものの、諦めずに続けることで賛同者が現れると、担当者にエールを送りました。また、会場から寄せられた「アクセラレータープログラムで採択するポイントは?」との質問に対しては、「CEOの人柄を見て、何があってやり遂げるほどの熱意を見せてくれる方だと協業を進めやすい」と述べました。このほか、情報発信の際は主語を会社とするのではなく自分自身として、「”私はこう考える”としたほうが、余計な軋轢は生まれにくく、話がスムーズに進むことが多い」とアドバイスしました。

※関連記事:

◆【トークセッション<前編>】 料理を通して様々な課題解決に本気で取り組む「Cookpad Accelerator」が目指す世界とは? https://eiicon.net/articles/448

◆【トークセッション<後編>】 料理を通して様々な課題解決に本気で取り組む「Cookpad Accelerator」が目指す世界とは? https://eiicon.net/articles/449


【スタートアップピッチ①】株式会社シェアダイン

▲【登壇者】株式会社シェアダイン 代表取締役 飯田陽狩氏

証券会社を経てコンサルティング会社に入社。金融セクターのアナリストとして国内外金融機関のデジタル戦略・立案・市場分析等に携わる。 2017年5月にシェアダイン創業。

同社は、栄養士・調理師などプロによる出張つくりおきサービスを提供し、家庭ごとに異なる食の課題の解決や、ニーズへの対応を図っています。具体的には、利用者は同社のサービスを通じ、「離乳食」「子どもの野菜嫌い」「アレルギー」などをキーワードに課題やニーズを解決できるプロを探すことが可能となっています。

こうした事業を始める背景として、共働き世帯や核家族が増え、中食の隆盛があり、食卓に総菜や冷凍食品が並ぶことが多くなっていることがあります。飯田氏自身も食卓に立てず、また、両親から料理を学ぶ機会にも恵まれなかったため、「世代間コミュニケーションの断絶」が起こっているとも感じていました。飯田氏は「コミュニティを作り、豊かな食を継承したい」と強調します。今後、メインターゲットの子育て世代を調査したいと考えており、協業を呼び掛けました。


【スタートアップピッチ②】株式会社テーブルクロス

▲【登壇者】株式会社テーブルクロス マーケティング部 エンジェル倶楽部室 室長 黒田史子氏

ITベンチャー企業にて取締役を経験後、株式会社テーブルクロスに滋賀県エリアマネージャーとしてジョイン。2018年からはファンクラブの開拓等を統括する現職務に従事。

同社は飲食店を予約すると途上国のこどもたちに給食が届く社会貢献アプリ「テーブルクロス」を開発し、運用しています。同アプリでは、一人予約が入るごとに180円の広告費を飲食店が支払い、そのうち30円が途上国の給食費になります。給食を届けるのには、現地で教育事業を行っているNPOの協力を仰いでいます。黒田氏は「普段は学校に来ない子どもたちも、給食があるからという理由で足を運ぶようになり、学びの機会も創出できる」と解説。現在、大手飲食チェーンや個人店など約6000店が利用し、33万ダウンロードされています。

さらに黒田氏は、「寄付に馴染みのない日本では、日常行動の中にチャリティーを忍ばせることが重要。チャリティー予約という文化を作り上げたい」と強調しました。今後、さらにアプリを普及させ、社会貢献の見える化する仕組みも整えたい」と話しました。


次回のeiicon meet up!!は、「インバウンド」に注目!

6月26日(木)19:30~の開催を予定している次回のeiicon meet up!!は、「インバウンドの未来に向けて ー訪日外国人数1937万人(2015)→6000万人?!(2030)ー」がテーマ。スタートアップとの連携を手掛ける株式会社JTBのイノベーション秘話を聞き、その後、「インバウンド時代」到来に向けてに挑戦をしているスタートアップに登壇いただきます。イベントの詳細や参加申し込みは以下URLからお願い致します。

https://techplay.jp/event/676801


取材後記

食に求めることと言えば「おいしさ」や「栄養」だろう。おそらくこのことは大きく変わることはないと思われる。また、食事を摂ることは当たり前で、少なくとも日本にいる限りは、大きな不便や不都合は感じにくい。そのため、なかなかイノベーションと結び付けては考えられない分野かもしれない。しかし、家族や社会のあり方の変化に伴い、食や食卓は大きく変化している。また、農家継承の問題で、食料供給のリスクもある。実は多くの課題を抱えているのだ。100年後の食卓はどんなか。改めて見直すきっかけにすると共に、大企業やスタートアップのイノベーションに期待したい。

(構成:眞田幸剛、取材・文:中谷藤士、撮影:佐々木智雅)