eiicon

【イベントレポート】 日立ハイテクノロジーズが初の“アイデアソン”を開催!ヘルスケアの側面から社会課題を解決する共創型ビジネスモデルを発表。

「科学・医用システム」「電子デバイスシステム」「産業システム」「先端産業部材」という4つのセグメントで、グローバルに事業を展開している日立ハイテクノロジーズ。同社は、「イノベーション推進本部」というセクションを創設し、オープンイノベーションによる事業開発に取り組んでいる(https://eiicon.net/about/eiicon-hitachhightech/)。

日立ハイテクノロジーズの「科学・医用システム」セグメントでは、ライフサイエンス、 バイオテクノロジー、医用領域で多くの製品・ソリューションを提供している。それらを活用して、ヘルスケアの側面から社会課題を解決していくためのアイデアをカタチにすることを目的に、同社初となる”アイデアソン”を6月2日(土)に開催した。

今回の募集テーマは「人々の健康情報の計測・活用」、「感染症ビッグデータ活用」の2つ。電子顕微鏡などの装置・システムや、感染症情報などのビッグデータ、日立グループの研究開発基盤といった各種リソースを活用できるということもあり、ヘルスケアに関連するメディカル領域の大企業やメーカー勤務のビジネスパーソン、スタートアップ経営者など、約50名を数える多彩な人材が集結した。

▲アイデアソンの会場となったのは、コワーキングスペース「DIAGONAL RUN TOKYO」(東京・八重洲)


参加者は10チームに分かれ、各チーム内でのブレストからアイデアの可視化・レビュー、プレゼンテーションに至るまでが1日で行われた。チームには、日立ハイテクノロジーズの社員が一人ずつ付き、メンバーに対して具体的なアドバイスを実施。また、オープンイノベーションの第一線で活躍する6名のメンター陣(下記参照)もそれぞれチームをまわりながらフィードバックを行い、アイデアのブラッシュアップを行った。今回のイベントレポートでは、各チームで練られたアイデアを発表する最終プレゼンテーションの模様と、最優秀賞チームの発表をお伝えしていく。


【メンター陣(6名)】

▲JIN(Japan Innovation Network) 専務理事 西口尚宏氏

▲株式会社アルファドライブ 代表取締役社長 兼 CEO / ファウンダー、株式会社ゲノムクリニック 代表取締役 共同経営責任者(経営・ファイナンス管掌) 麻生要一氏

▲Plug and Play Japan Venture Partner/取締役 矢澤麻里子氏

▲株式会社日立ハイテクノロジーズ 科学・医用システム事業統括本部 医用システム製品本部 医用システム第二設計部 部長 坂詰卓氏

▲株式会社日立ハイテクノロジーズ イノベーション推進本部 プロジェクト推進センタ センタ長 河崎幸生氏

▲株式会社日立ハイテクノロジーズ イノベーション推進本部 ビジネスデザインユニット・ジェネラルマネージャー 堀越伸也氏


各チームが1日をかけて練ったサービスを発表

朝10時からスタートしたアイデアソンを締めくくる最終プレゼンテーションは、夕方6時からスタートした。日中のブレストやレビューによってアイデアの方向性が定まらないチームもあったが、幾度のピボットを乗り越え、10チームがプレゼンテーションの場を迎えた。


①「Vital connect 運転信用履歴保険」(Mega Mouseチーム)

ECサービスの進化により生活が便利になった一方で、運転労働者は高齢化し、長時間労働が常態化。その結果、居眠り運転などに起因する交通事故が発生し、経済的な損失が起きている。――そういった社会課題に注目したMega Mouseチーム。同チームでは、この課題に向けた解決策として運転労働者にウエラブル端末着用してもらい、健康状態を管理。さらに、運転労働者の覚醒度に比例した「運転信用履歴保険」を提供するというサービスアイデアが語られた。


②「”元気度”を指標とした高齢者の活躍の場を提供するソリューション」(Dr.Gチーム)

Dr.Gチームは、高齢者の勤労意欲が健在していることに注目。“元気度”の指標を「筋肉量」と設定し、高齢者に対して活躍の場を提供するというソリューションを提案した。

健康データを解析し、独自の”元気度”を客観的な評価指標とすることで、人材派遣会社や派遣先企業側、労働者意欲のある高齢者本人にとってよりマッチングの齟齬がなくなることに貢献できる。さらに、健康を保つための運動、食事を支援する事業者と提携することで高齢者のフレイル予防・回復と高齢者の労働復帰支援を両立させることも可能となる。

このソリューションに対して、メンター・麻生氏は「大きな市場になり得る」とコメント。さらに、「筋肉量だけではなく、動体視力なども”元気度”の指標になりうる。指標を測定するために莫大なコストが掛かるので、安価な測定キットの開発も必要ではないか」と助言した。


③「帰りやすい空気を作る 職場の2次感染予防サービス」(感染容疑者チーム)

日立のIoT技術を駆使した2次感染予防サービスを提案した感染容疑者チーム。出社時に、日立の持つ顔認証技術とサーモセンサー、IDカードで自動的に発熱の容疑者を特定、職場の二次感染を防ぐために職場全体で「帰りやすい職場」を作るというサービスモデルだ。

同チームでは、“休むよりも仕事を優先しなければならない”と考えている責任感が強いビジネスパーソンが、2次感染を広めていると推測。2次感染リスクを可視化して帰りやすい空気を作り、働きやすい世界をつくることを目的としている。

このサービスに対して、メンター・西口氏は「職場(会社)単位よりも、ビル単位に訴求できるサービス。オフィスビルのデベロッパーに提案するほうが良いのではないか」と語った。


④「Smart Dentist」(ハデルチーム)

日本の歯科医療費は、約2.8兆円(※)と莫大な金額になっている。しかし、多忙のために歯医者に行くことができず、将来的に歯周病が原因で重篤な病の発症につながるケースも少なくない。そうした課題を解決するために、手軽に歯のチェックを受けられるリモートサービス「Smart Dentist」をプレゼンテーションしたハデルチーム。歯の画像と歯科医師のアドバイスを蓄積して、画像解析の精度を向上させながら、ユーザーと歯科医師、ECを有機的に連動させるというビジネスモデルを提案した。

(※2015年データ/厚労省「国民医療費」より)


⑤「体内水分量をモニタリングするサービス」(飲まない薬チーム)

体内の水分量をモニタリングすることで、データドリブンな健康管理のあり方を提案したのが、飲まない薬チーム。水分量のモニタリングによって体調変化の予兆を察知し、事前に水分の補給をお知らせしてくれるデバイスを提供する。高齢者や炎天下での肉体労働者など、適切な水分摂取が必要となる方に対して、デバイスがアラートを発信。薬に頼ることなく、データに基づいた水分摂取によって健康管理を実現させるサービスとなっている。


⑥「夢の認知症支援エンジン最適化プラットフォーム”DEO”」(Yume Proチーム)

認知症患者が増加している一方で、認知症に関するインターネット上の情報やコミュニティの情報も精度が低く、適切な情報が得られないという課題に注目したのは、沖電気工業の社員で構成されたYume Proチーム。

専門家の研究結果や知見を広く共有しつつ、認知症の現場の真の悩みを解決するために、日立ハイテクノロジーズが蓄積してきたビッグデータと、認知症の現場の情報や専門家の研究結果や知見データを組み合わせ、分析。ユーザーがAIエンジンとの対話によって、認知症対策の適切な情報を得るというサービスモデルとなっている。メンター・堀越氏からは、「保険組合などから収益を得られる事業になるのでは」といったアドバイスが寄せられた。


⑦「一生虫歯にならない歯を作る新しいサービス」(Fit Chairチーム)

「歯は全身の健康の原点」、「国民健康保険の約20%が虫歯によるもの」といった社会背景に注目したFit Chairチーム。そこで、2歳までに虫歯菌を口に入れなければ一生虫歯にならない研究データに基づき、「虫歯菌プロテクト」というサービスを着想した。子どもの将来の健康が不安な両親と祖父母をターゲットにし、スマートフォンと連携できる虫歯検査デバイスと虫歯菌殺菌のお菓子を販売するビジネスモデルとなっている。


⑧「毎日の体調管理を最適な食料で解決するサービス」(Perfect Foodチーム)

「毎日の体調管理を最適な食料で解決する」というサービスコンセプトを打ち出したのは、Perfect Foodチーム。健康意識が高い女性や病気予備軍の男性をターゲットに置き、体質・体調を日々管理。グミなどの形をしたサプリメントを体調・体質に合わせて提供し、食べるだけで必要な栄養素が摂取できるというサービスモデルだ。まずは個人のデータを蓄積し、それにあわせてレシピを作成、自動料理ロボットによってリアルタイムに食事を提供していきたいという未来像も語られた。


⑨「健幸都市」(Work hard be happy!チーム)

「みんチャレ」を提供するスタートアップ・A10ラボのメンバーで構成されたWork hard be happy!チーム。同チームが提案したのは、自治体の医療費負担増大という社会課題から生まれた「健幸都市」というソリューションだ。これは、5人1組のマイクロSNSで市民が健康習慣を報告。健康習慣を行うとSNS内でコインが得られ、「10,000コイン集まると遊歩道建設!」などの寄付プロジェクトにコインを使用できる。市民参加型の都市開発とも言えるソリューションだ。


⑩「コミュニケーション・ロボットを活用した医療関連サービス」(ロボットJチーム)

現在の医療の現場では、待ち時間が長い割には医師とのコミュニケーションの時間が短いという大きな課題がある。その点に注目してサービスアイデアを練ったのはロボットJチームだ。同チームが提案したのは、病院の待ち時間にロボットが患者への問診と医師への質問事項のとりまとめを行うことで、診察時間の最適化を実現するサービス。ロボットはユーザーが購入し、病院側からはサービス利用料を得るというビジネスモデルとなっている。

メンター・麻生氏からは、「独居老人に向けたサービス展開などもあり得る」といったアドバイスが語られた。


最優秀賞に輝いたチームは?

10チームによる最終プレゼンテーション終了した後、メンター陣による講評と最優勝賞の発表が行われた。講評では、「もっと深堀りしていけば、事業化に向けてアイデアが面白くなる。この機会・経験を、ぜひ違う場でも活かしてほしい」(矢澤氏)、「アイデアの幅が広く、鮮やかなピボットを見せたチームもあった。また、メンター陣による採点もバラバラだった(笑)。それを含めて楽しいアイデアソンになった」(麻生氏)といったメンターからの声が寄せられた。

メンター陣の採点と協議によって最優秀賞に輝いたのは、「帰りやすい空気を作る 職場の2次感染予防サービス」を提案した【感染容疑者チーム】となった。チームメンバーは、名前が呼ばれると感極まってハイタッチし、最優秀賞の目録(金券30万円分)を受け取った。

感染容疑者チームの代表者は、「地味なアイデアだったかもしれないが、リアルな課題設定と実現性の高さで勝負した。それが評価されてとても嬉しい!」と語った。今後、感染容疑者チームと日立ハイテクノロジーズは、職場の2次感染予防サービスの事業化を検討していく。

審査を行った日立ハイテクノロジーズ・堀越氏は、「実は10チーム中の4チームが僅差でとても迷った」としながらも、「ヘルスケアの側面から日本の社会課題を解決していくという熱意が感じられた点が、【感染容疑者チーム】への最優秀賞授与の要因となった。今回、当社はアイデアソンに初めて取り組んだが、たくさんのアイデアに触れることができ、とても良い経験をすることができた。今後も日本を明るくしていくために、共創パートナーと共にイノベーションを生み出していきたい」と語った。


取材後記

「自前主義や技術オリエントな発想から脱却し、外部からアイデアを取り込むことに挑戦しよう、すなわちオープンイノベーションに取り組もうという流れを作る努力を続けています」――以前のインタビューで、このように語っていた日立ハイテクノロジーズ。オープンイノベーションの推進施策の一つとして開催された今回の「Nextヘルスケア アイデアソン」は、講評でも語られていたように、想像を超えるような多様なアイデアが集結。参加者たちも大きな気づきを得る場となった。

今後、本格的な労働人口減少や高齢化に伴う介護問題など、多くの社会課題を抱える日本。それらの問題を解決するために日立ハイテクノロジーズとリソースと、共創パートナーのアイデアが混ざり合い、イノベーションをおこしていくための第一歩となるアイデアソンになったはずだ。今後、最優秀賞チームと事業化を検討していくとのことだが、その進捗にも注目していきたい。


※日立ハイテクノロジーズのオープンイノベーションへの取り組み詳細は、以下URLをご覧ください。

https://eiicon.net/about/eiicon-hitachhightech/

(構成・取材・文:眞田幸剛、撮影:加藤武俊)