民間事業者の「オープンイノベーション」の取組を推進し、国内産業のイノベーションの創出と競争力強化への寄与を目指し設立されたJOIC(オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会)。3月6日(火)、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)とJOICの共催で、イノベーション及び具体的な事業提携事例の創出を目指すイベント「第24回NEDOピッチ」が実施された。

今回の「NEDOピッチ」では、「Future of Work」分野における有望技術を有するベンチャー企業5社が、自社の研究開発の成果と事業提携ニーズについて、大企業やベンチャーキャピタル等の事業担当者に対し、創造性の高いプレゼンテーションを行った。


株式会社シナモン

http://cinnamon.is

▲登壇者/COO 家田佳明氏

株式会社シナモンは、自然言語処理のAI技術を活用して、書類やEメールからAIが情報を正確に抜き出し再構築することで、面倒な仕事やルーティンワークといった日常的に存在する無駄な仕事を人工知能に置き換えるプロダクトを開発・コンサルティングを行っている。ディープラーニングはもともと画像や音声に注目をされていた技術であったが、近年、自然言語の領域にも活用の幅が広がりつつある。同社はこれを時代の変遷と捉え、「Flax Scanner」を開発した。これは人間のように書類を読み取り情報を抽出する。対象はPDF・Wordはもちろん、手書き・印字・FAXとテキスト化されていないものでも情報として高精度に抽出可能。また不特定な帳票も読み込める。これによりホワイトカラーの業務効率を抜本的に改善する。

2017年度に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から「優れたAIベンチャー企業」として研究テーマが採択され、農林中央金庫の事務業務改革に取り組んでいる。提携ニーズとしては繰り返し発生する煩雑な書類業務が多い、銀行・証券・保険、またRPAを提供している企業と同社AI技術協業も取り組みたいとアピールした。


株式会社カウリス

https://caulis.jp

▲登壇者/代表取締役 島津敦好氏

株式会社カウリスは、だれにも安心なインターネットの発展を目指し、不正アクセス検知サービスを開発・提供するベンチャーである。テクノロジーの発展によってインターネットに接続されたあらゆるデバイスが広がると同時に、サイバー犯罪も拡大し、インターネットサービス運営事業社の3分の1以上がなりすましによる不正アクセスの被害に遭遇している。同社はこの課題に対して、“本人らしさ”をベースにした独自の判定ロジックで攻撃者のなりすましによる不正アクセスを未然に防ぐ法人向けクラウド型不正検知サービス「FraudAlert(フロードアラート)」を開発。アクセスに使われた端末、IPアドレスなど、約100ものパラメーターをもとにアクセス者がユーザー本人であるかどうかを判断し、「いつもと異なる」時のみ追加認証を求める。

同社の強みは、導入コスト。従来のセキュリティ導入費に比べ100分の1となる。直近では、Sony Innovation Fund、電通国際情報サービス、セブン銀行、リヴァンプを引受先とした、総額約1.6億円の第三者割当増資を実施。すでにメガバンクをはじめとする金融機関も導入している。今後、ライフライン事業・EC事業やクレジット会社などとも連携を進め、事業者と消費者を繋ぐあらゆる顧客接点を守っていきたいと話した。


Laboratik株式会社

https://laboratik.com/index.html

▲登壇者/CEO三浦 豊史氏

Laboratik株式会社は『「働く」を進化させる』をミッションとし、社内のビジネスチャット会話から組織内の関係性や感情などのエンゲージメントをリアルタイム解析するsmart bot「A; (エー)」を開発している。昨今、リモートワークなど多様な働き方が進んでいく中、どうマネジメントするかが課題として上がってきている。

そこで同社は「管理しないマネジメント」としてチャットのやり取りを解析し、チームのエンゲージメント(関与度や熱意)を自動で見える化する。つまり、botが計測して可視化することでチーム内でのコミュニケーションの偏りを検知し、誰が積極的に参加しているかがわかる。さらに自然言語解析の技術を用いて、チャットの発話のポジティブ・ネガティブ度を解析し、メンバーのチャット上での発話数や、メンタルのバイオリズムを瞬時に把握することが可能。

昨年9月より、RICOH、早稲田大学との産学連携プロジェクト実施中と、活用の幅がさらに広がると予想される。今後、「A;」と他システムとの連携、また販売パートナーを求めていきたいと三浦氏はアピールした。


株式会社レトリバ

https://retrieva.jp

▲登壇者/代表取締役 河原 一哉氏

株式会社レトリバは、株式会社Preferred InfrastructureがスピンアウトしてできたAI技術の自然言語処理に特化したベンチャー企業で、音声・テキストデータを解析・分析するサービスを展開。一つに顧客の声の分析に特化したツール「VoC Analyzer」を提供している。

非常に離職率の高い仕事の一つであるコールセンターは今、人材不足に悩まされている。同社はこの課題を解決すべく、VoC Analyzerにより大量の顧客からの問い合わせ情報の中から顧客志向の製品・サービス提供を行うために重要なデータを探索することを可能にした。これは機械学習による分析機能から、過去のお問い合わせ分析情報を元に重要なデータの分類方法を自動で学習する。さらに、過去の問い合わせから類似した問い合わせを検索するFAQ検索ソリューション「Answer Finder」も展開。これによりオペレーターの応対時間の短縮・回答支援、さらに応対の教育コストの削減も見込める。

現在、多くの大手企業との提携・協業も進行している。今後、コールセンターを導入している事業会社はもちろん精度向上の共同研究や坂路パートナーとなる事業会社との連携を求め、共に人を支援するAIを作っていきたいと話した。


アースアイズ株式会社

 http://earth-eyes.co.jp

▲登壇者/代表取締役 山内 三郎氏

アースアイズ株式会社は、自動防犯・自動見守り・自動監視を可能にするこれまでにないAIロボットシステムを開発・提供しているベンチャーである。小売店では、およそ350人に1人、万引き犯が潜むと言われている。同社開発のシステムは、五感に近い高度なセンシング機能と、予知・予測をスピーディーに判断するAIを搭載。これにより、日常に潜んでいる不審・異常な動きや音から危険を検知、リアルタイムに状況を通知するとともに自動で対処まで行う世界初のAIロボットシステムである。さらに同システムと距離を測るセンサーと合わせ、奥行き(空間)を把握し誤検知を圧倒的に減少させる仕組みとなっている。

現在まで既に、1300台ものAIカメラを生産。事業会社への導入も進んでいる。今後、防犯領域のみならず、介護・医療業界に対しても患者の異変を見逃さない、次世代の安心見守りサービスとして展開していきたいとアピールした。


取材後記

「Future of Work」――未来の働き方に関して大小関わらず多くの事業会社が「働き方改革」を推進している中、テクノロジーの進化により、働き方そのものの形態が変化してきている。「AI・ロボットの進化」と聞くと、人間の職を、さらには存在までも脅かすと語られる、「シンギュラリティ(技術的特異点)」の概念が頭をよぎる人も少なくない。

しかし今回ピッチした各社のテクノロジーは人を脅かす脅威ではなく、手を差し伸べる優しく、そして暖かなものだと感じた。レトリバ 代表の河原氏が言うようにまさに「人を支援するAI」をつくっている。既に多くの事業会社が各社のテクノロジーを導入しているが、オープンイノベーションによりさらに事業がスケールしていくに違いない。今後も各社の動向に目が離せない。

(構成:眞田幸剛、取材・文:保美和子)