eiicon

「街づくり」×「共創」で、“Work & Life Innovation”を目指す。――三菱地所のアクセラレータープログラム第2期スタート!

2017年7月、三菱地所は「Corporate Accelerator Program」を実施した。1890年代から先駆的な街づくりを実践し、東京・丸の内一帯を国内初にして世界屈指の「オフィス街」へと育て上げてきた同社が、共創によって「街からイノベーションを起こす」ことを目指した同プログラムは、業界内外で高い関心を集めた。2018年3月に行われたDemoDay終了後も、選抜企業6チームに特別賞受賞などの3チームを加えた計9チームとの協業が進行中だという。

第1期の成功を受け、この8月からは同プログラムの第2期が始動。8月28日には事前セミナー&交流会も予定されており、今回も多くのスタートアップから注目を集めそうだ。なお、応募締め切りは9月30日で、11月には採択企業が決定、2019年3月にDemoDay実施というスケジュールになっている。

今回のプログラムのテーマは「この街から変革する。Work & Life Innovation 2018」。「街づくり」というフィールドの中で、三菱地所はどのような共創パートナーを求め、イノベーションを目指すのだろうか。同プログラム事務局の中核を担う、三菱地所 新事業創造部の本地氏・山脇氏にお話を伺った。


【写真左】三菱地所株式会社 新事業創造部 統括 本地史明氏

2003年に新卒入社後、主に米国での不動産投資をはじめとする海外事業や、国内の住宅・分譲マンション開発などを担当。2017年より現職に着任し、新規事業創出全般やアクセラレータープログラムの事務局運営を手掛けている。


【写真右】三菱地所株式会社 新事業創造部 山脇一恵氏

2013年に新卒入社後、街づくりや都市計画事業、オフィスビル営業などに従事。その後、社内の新規事業提案制度に応募し、プロジェクト採択を機に2018年4月より現職。現在はプログラムの事務局運営と自身のプロジェクトの事業化に邁進。


より多角的に、スピーディに、事業創造の種を掴みたい。

――昨年、「Corporate Accelerator Program」を初開催されましたが、手ごたえはいかがでしたでしょうか?

本地氏 : おかげさまで、2017年の第1期は250件超の応募をいただき、採択企業様はもちろん、特別賞の企業様などとも多種多様な取り組みをスタートすることができました。

もともと本プログラムが誕生したのは、三菱地所グループの内側からだけでは生まれないような事業アイデアや、先端テクノロジーの活用といったものを外部のイノベーターの皆さんから募りたいと考えたのがきっかけです。第1期ではまさにそうした想いが実現したわけで、間もなく始動する第2期でもこの良い流れを継続したいと考えています。

――第2期では「この街から変革する。Work&Life Innovation 2018」というテーマを掲げていますが、どのような想いが込められていますか。

山脇氏 : 当社が都市開発を手掛けてきた地域には、街で働く方や住まう方々はもちろん、さまざまなシーンで利用する方々がいらっしゃいます。「街づくりを通じた社会への貢献」こそが私たちの基本使命でもありますし、色々な方々が豊かな生活を、それぞれの街で過ごせるようにしていきたいと考えました。幅広い街の利用シーンを捉え、「この街から変革する。Work&Life Innovation 2018」というテーマにしました。
――第1期の運営を通して見えた課題や改善ポイントなどはありましたか?
本地氏 : 第1期の応募数は我々の期待を超えるものでした。素晴らしいアイデアも数えきれないほどあった一方で、プログラム期間中に、採択企業様を含めた全応募企業様との協業検討を必ずしも十分やりきれなかったのではないかと。第2期ではそうした反省を踏まえて、より審査の早い段階から社内の各事業グループのメンバーが面談に参加し、事業創造の機会を多角的かつスピーディに掴んでいければと考えています。
――より一層社内を巻き込んだ形で進んでいくわけですね。その他にも強化ポイントがあれば、ぜひお聞かせください。
本地氏 : 前回、「出資検討」に対するニーズやお問い合わせを数多くいただいたこともあり、第2期では、「1社2000万円程度」を目途に出資を検討する旨を明示することとしました。またプログラム全体で外部露出やPRの機会を増やし、社内外の認知度や意欲をさらに向上させていきたいと考えています。


「手土産のデリバリー」など、共創による新規事業が誕生。

――今年3月に行われた第1期のDemoDayでは合計9社が成果発表を行ったと伺っていますが、事業化に向けた取り組みはその後いかがでしょうか?
本地氏 : 複数のプロジェクトが今まさに進行中です。たとえば優秀賞のトライリングスさんは、「肉体の機能性向上」というコンセプトのもと、トレーニングスタジオの運営や次世代型フィットネスマシンの開発を手掛けていますが、当社が20年以上にわたって都市開発を行っている宮城県仙台市の「泉パークタウン」にご出店いただくことが決定しました。

住民の方々の年齢層も高まる中で、ニーズに合致する新サービスを街の機能として取り入れていく。そうした良い事例になるのではないかと期待しています。

――地域に住まう方々の変化に合わせて、街の機能をアップデートするような事業ですね。

本地氏 : そうですね。また、採択企業ではもう1社、ビジネスユースを中心としたサービスアパートメントを運営されているMetroResidences Japanさんとの協業もスタートしています。我々も賃貸住宅の開発・運用していますので、その一部を借り上げていただき、サービスアパートとしてエンドユーザーのお客様に提供していただく、という取り組みです。それから、「新事業の創出」という面で特に進んでいるのが、スカイファームさんとのプロジェクトですね。

――スカイファームさんは、「Corporate Accelerator Program」で特別賞を受賞されたスタートアップですね。具体的に、どのようなビジネスを展開されるのでしょうか?
本地氏 : 丸の内エリアで、手土産のデリバリーサービスをスタートさせます。たとえば企業活動の中で、営業訪問時にお土産を持っていくケースがありますよね。そうした場合に、都度買い物に行くのは手間がかかりますし、急きょ訪問が発生した、という場合も珍しくありません。そうしたニーズに対して、この新サービスでは丸の内エリアの中の対象店舗から商品をアプリ上でオンラインオーダーができ、スカイファームさんがユーザーのもとまでデリバリーしていきます。
――「手土産のデリバリー」というのは目新しいアイデアですね。
本地氏 : おっしゃる通り、発想そのものが新しく、今までにない取り組みだと思います。私たちとしては、以前からオフィスや住宅をご利用いただくお客様や、お買い物されるお客様に対して、「空間・場所提供のその先の接点をもっと増やしたい」「我々ならではの付加価値やサービスを提供したい」という考えを持っていまして。そうしたニーズと、場所貸しに留まらないスカイファームさんの提案がうまく合致した形です。
山脇氏 : この新サービスは、スカイファームさんと私たち新事業創造部と三菱地所プロパティマネジメントというビルの運営管理を手掛けているグループ会社で進めています。手土産と聞くとニッチに聞こえますが、まずはこの内容でオペレーションの確立やマーケティングを進め、ゆくゆくは幅広いメニューへと展開していければベストですね。


社会の変化をチャンスに変える。そんな事業アイデアと出会いたい。

――「街づくり」というフィールドですと、提供できるリソースも大規模なスケールになりそうです。

山脇氏 : たとえば丸の内エリアであれば、事業所が約4300あり、オフィスワーカーの方々が約28万人と言われています。他にも、我々が管理するオフィスビルや商業施設、住まい、物流、ホテルなど活用できるステージは多種多彩です。

本地氏 : 池袋のサンシャインシティや横浜のランドマークタワー、それから御殿場プレミアムアウトレットなども実は三菱地所グループが手掛けている事業です。これらの知名度の高い施設も、オープンイノベーションの場として活用できます。

――その他にも、プログラムを通して提供できるリソース・アセットなどはありますか?

本地氏 : 当社が最近取り組みを強化しているのが、空港事業です。今春から空港事業部という新部署も発足し、最近も当社が参加しているグループが、「高松空港」と「富士山静岡空港」の運営権をそれぞれ獲得しました。こうした“空の玄関”にも、協業の場としての可能性があふれているのではと期待しています。

山脇氏 : 「街の暮らし」にはさまざまな切り口がありますので、「観光」や「ナイトライフ」など、街づくりにおけるソフト面についても、スタートアップならではの柔軟な企画や事業アイデアというのは、個人的には興味を持っています。

――たしかにソフト面にもさまざまな可能性が眠っていそうです。期待している共創領域は、他にどのようなものがありますか?

本地氏 : IoTやロボティクス技術などを活用したビルの運営管理の効率化は、特に注力したい領域です。 たとえば丸の内エリアでの清掃ロボットの実証実験や、警備ロボットの会社に出資させていただくといった取り組みも進んでいますね。今後、労働力不足は日本社会全体の課題にもなっていくでしょうし、代替できるような新しいテクノロジーは注目しています。

山脇氏 : 不動産ビジネスを通してさまざまなデータ収集を行っていますので、そうしたビッグデータを活用した事業アイデアについても画期的なご提案をいただけると非常に嬉しいです。

――それでは最後に、共創パートナーとしてどのようなスタートアップと出会いたいとお考えでしょうか?ぜひお聞かせください。

山脇氏 : 個人的には、やはり当社だけでは思いつかないような、斬新な街の活用方法をご提案いただける企業様に出会えることを一番期待しています。我々の持つ大規模な基盤やリソース、ベンチャー企業やスタートアップの皆さんの柔軟な発想を組み合わせることで、イノベーターの持つ志が実現し、同時に当社の新事業創出のきっかけにつながっていけば素敵だなと思っていますね。

本地氏 : 今まさに、社会と暮らしのあり方が変わってきていると感じています。働き方改革によって、必ずしも働く場所にこだわる必要が無くなったり、買い物もオンラインでできたり、住まい方もシェアハウスなど様々な形が出てきたりと、今後もこうした変化は進んでいくことでしょう。

私たちはこうした社会変革を、ピンチではなくチャンスに変えていきたい。不動産ビジネスで培った経験と、皆さんの新しいアイデアや技術をベースとした共創によって、「場所」「空間」「街」というものにより新しい価値を見つけたいと思っています。それを一緒に見つけていけるような企業様からのご応募を、心からお待ちしています。

◆プログラムの詳細は、こちらをご覧ください。

(構成:眞田幸剛、取材・文:太田将吾、撮影:古林洋平)