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【協和×SENSY対談】 AIを活用し、他社商品までもレコメンドする共創プロジェクトを推進!――「1つのチーム」としてスタートアップと融合する、協和のオープンイノベーション

ミドルエイジの女性に向けた「fracora(フラコラ)」という自社ブランドの化粧品や美容健康食品を製造・販売し、業界を牽引する株式会社協和。創業時より掲げている「知恵の協業」をより積極的に推進すべく、2018年7月からオープンイノベーションプログラム【fracora OPEN INNOVATION PROGRAM】をスタートさせた。

「他社のやらないこと、他社のできないことをやります。」という価値観を持つ同社は、新たなテクノロジーの導入にも積極的に取り組んでいる。実際に、スタートアップとの事業提携による新サービス創出プロジェクトも進んでいる。

そこで今回は、お客様の嗜好・お悩みを分析し、それに合わせた商品・サービスを提供しようという共創プロジェクトを牽引する協和の針金氏と、AIスタートアップSENSY株式会社の谷澤氏による対談を実施。ファシリテーターにアルファドライブ麻生氏を迎え、会社の垣根を超えた共創がうまくいく背景を探った。

<左→右>

【写真左】 SENSY株式会社 事業開発 マネージャー 谷澤嘉和氏

【写真中】 株式会社協和 情報戦略グループ IT化推進2チーム チーム長 / 針金一平氏

【写真右】 株式会社アルファドライブ 代表取締役社長 兼 CEO / ファウンダー 麻生要一氏


AIを活用して、お客様の悩みに合わせた商品・サービスを提供

アルファドライブ・麻生氏 : 昨今、オープンイノベーションが盛んです。しかし、異なる組織が1つのプロジェクトを編成して進めようとすると、うまくいかないことも多々あります。そこで今日は協和・針金さんとSENSY・谷澤さんに、お話を伺っていきたいと思います。――まず、SENSYさんの事業概要について紹介していただけますか?                           

SENSY・谷澤氏 : 当社は、パーソナル人工知能「SENSY」と開発するAIベンチャーで、自然言語処理や画像解析技術などを組み合わせ、一人ひとりの感性を解析するディープラーニング技術を得意としています。これにより、アパレル業界や食品業界向けにパーソナルレコメンドやパーソナライズDM、チャットボットサービス、需要予測などのサービスを提供しています。

アルファドライブ・麻生氏 : レコメンドは以前からあるサービスだと思うのですが、他社とはどう違うのですか?

SENSY・谷澤氏 : 従来のレコメンドは、閲覧や購買履歴をもとにしたものです。しかし当社はアイテムの特徴量を分析し、一人ひとりがなぜその商品を購入したのか理由付けをしています。例えば同じ洋服でも、色、デザイン、サイズ、素材、価格など、人によって購買に至った理由は異なりますよね。そういった価値観を分析し、それに基づいたレコメンドを行っています。

アルファドライブ・麻生氏 : ありがとうございます。では次に、協和さんとSENSYさんが現在進めているプロジェクトについてお話しいただけますか?

協和・針金氏 : 近年、消費者の購買行動は大きく変わってきています。美容・健康業界も同じで、これまでの会社の売りたい商品を作って売る、という手法はそろそろ頭打ちです。これからの時代は、お客様のニーズに合わせた商品・サービスを提供していくことが不可欠。また、AIなどテクノロジーの発展により、多様な種類・かつ大量なデータを取得・分析しやすくなってきました。そこで昨年からSENSYさんと提携し、お客様の嗜好・お悩みを分析し、それに合わせた商品・サービスを提供しようというプロジェクトを進めています。

アルファドライブ・麻生氏 : 具体的には、どのようなサービスを?

協和・針金氏 : SENSYさんのパーソナルチャットボット「SENSY BOT」を活用し、お客様と自然な会話をしながら、お肌のお悩みを伺って情報を登録し、最適な商品・サービスを提案する仕組みです。

 SENSY・谷澤氏 : これは今年の3月にリリースし、今はお客様に利用していただきながら改善を繰り返している段階です。最初は全てディープラーニングにしていたのですが、そうすると会話の振れ幅が大きくなってしまうリスクがあります。そこで「ルールベースのプログラミング」で対応し、その他の雑談やアドバイスなどの会話はファジィさに対応する必要があるので、ログから地道に会話データを作成し、幅広いバリエーションを学習させて賢くさせていくなどを繰り返しています。


ビジョンさえ変えなければ、方法論は変えていい。

アルファドライブ・麻生氏 : チャットボットは今年リリースして今まさに、育てている最中です。今後の方向性としては?

協和・針金氏 : 今後は、提案の幅を広げていこうともしています。現段階で「SENSY BOT」でレコメンドしているのは、当社の商品群だけです。しかし、「お客様の嗜好・悩みに合わせた商品やサービスを提供していく」という世界を実現するには、それだけでは不十分なのではないかと。そこで、お客様のお悩みに合う商品が自社になければ、他社の商品をお勧めしてもいいのではないかという話になっています。

アルファドライブ・麻生氏 : えっ!他社の商品をレコメンドするということですか?聞いたことない。画期的ですね!

SENSY・谷澤氏 : 商品や会社の枠を超えて「お客様に寄り添う」究極の姿ですよね。その人の悩みを解決できるものが自社になくて他社にあるなら、それをお勧めします。

協和・針金氏 : 結局、私たちが追求するのはお客様の満足。自社の売り上げはその結果でしかありません。お客様に喜んでいただけるのなら、当社の商品だけにこだわらなくてもいいのではないかという考えです。

アルファドライブ・麻生氏 : でも、なかなかそこまで突き抜けられないですよ。最初からそのような方向性だったのですか?

協和・針金氏 : いえ。最初は自社商品だけの予定でした。でも、それだけではサービスがうまくいかないと思い、方向性を変えました。色々なデータを分析しても行き着く先が当社の商品のレコメンドだけだったら、AIを活用する意味があまりないじゃないですか。AIの利点は、人間が認識・判断できないところにあるのに。それに自社の範囲だけで考えるのって、サービスとしても面白くないし、お客様のためになるとも言い難い。だから、自社の枠を外していけば、サービスとして広がりがあると考えたんです。

アルファドライブ・麻生氏 : 状況に応じて変えていく決断、なかなかできないことです。「最初と言っていたことと違う」となりますよね。

協和・針金氏 : お客様のため、というビジョン実現のためなら、方法論は変わっていいし、変えて当然だと思いますよ。

SENSY・谷澤氏 : 新しいことをするのに、最初に考えていたことがすんなりできるなんて、ありえないじゃないですか。そんな簡単なら、他の誰かがとっくにやっている。だから、ガラッと変わって当然。むしろ、変える決断ができる方が大切です。

アルファドライブ・麻生氏 : 確かにそうですね。

協和・針金氏 : とはいえ、実は他社商品をレコメンドするというのは振り切りすぎていて、決断しかねていました。それをチームメンバーで悩んでいた時に、当社のトップがふらっとやってきて。状況を説明したら「お客様のためになるなら、やればいいじゃないか」と即断でした。

アルファドライブ・麻生氏 : トップの方針がブレずに貫かれているからこそ、できる決断ですね。


相互理解を進め、1つのチームとなる

アルファドライブ・麻生氏 : そもそも、お二人の出会いは?最初からプロジェクトに入っていたのですか?

SENSY・谷澤氏 : いえ、一昨年くらいから会社同士の提携はあったのですが、針金さんと私がプロジェクトに入ったのはもっと後ですね。

協和・針金氏 : 私たちが入る前は、ちょっと炎上気味だったんですよね。

アルファドライブ・麻生氏 : 炎上というと?

協和・針金氏 : AIを使って進めていくことは決まっていたのですが、ビジョンとゴールが明確に設定出来ていませんでした。

SENSY・谷澤氏 : そこから仕切り直して、ビジョンとゴールを再設定した。2週間で3~4セッションしましたよね。

協和・針金氏 : 今ではお互いの業務領域に入り込んで一緒にやっているイメージです。私は協和の人間ですが、SENSYさんがスケールするにはどうすればいいのか、考えながら動いています。また谷澤さんも、協和の売上をどう上げていくのか考えてくださっています。良い関係ですね。

SENSY・谷澤氏 : 最初は線引きしていたと思います。協和さんから指示されたものを、当社が下請け的に作って報告するような。うまくいくはずがないですよね。そうではなくて、同じプロジェクトのメンバーとして、会社の立場は置いて1つのビジョン・ゴールを持って動いて行かないと。

アルファドライブ・麻生氏 : すごいですね。普通はできないですよ。会社同士だからどうしても線引きしろと言われるじゃないですか。でも、お2人の話を聞いていると、本当にワンチーム。なぜそうなれるのですか?

協和・針金氏 : 根底にあるのは「このプロジェクトがうまくいかなかったらつまらない」という想いですね。あと、当社はたった100人の組織。他社と協業しないと何もできません。トップが会社の方針として「知恵の協業」を掲げていますし、線引きしない姿勢も浸透しています。

SENSY・谷澤氏 : 私は前職コンサルだったのですが、ワンチームでプロジェクトを推進することが重要だと叩き込まれていました。何より、協和さんとは本当に同じ目線、同じチームとして話せています。一方の会社に寄った視点ではなく、プロジェクトとしての視点で考えて行動できています。そのため、私の方から協和さんに仕事を振ることも。ちょっと振りすぎているかもしれません(笑)

協和・針金氏 : 最近ちょっと振られすぎかな(笑)


スタートアップサイドから見た協和~「持たざる経営」ならではの柔軟性とスピード

アルファドライブ・麻生氏 : SENSYさんは色んな企業とお付き合いがあると思いますが、スタートアップサイドから見た協和さんの良いところとは?

SENSY・谷澤氏 : まずは、商品データと購買データの両方を持っているところです。AI導入する上で、これらのデータが1社にまとまっている方がスムーズです。例えば食品メーカーさんなどの場合、商品データはメーカーが持っているけど、購買データは小売業者が持っているじゃないですか。その点、協和さんの場合は分析とアプローチを1社の中で整理できるという利点があります。

アルファドライブ・麻生氏 : なるほど。

SENSY・谷澤氏 : 次に、データの数。AIはデータが多い方が本領発揮できます。データ数が少なかったら、人間が判断した方がいいですよね。その点、化粧品やサプリメントは購買頻度が高いですから、協和さんには多くの購買データがあります。

そして、会社の方針。協和さんはスピード対応できる少数精鋭組織に徹していらっしゃいます。それゆえ、オープンで話がとにかく早いです。他社だと判断に10日くらいかかるところを、協和さんは5分で終わります。余計な資料や文書も「無駄だからいいよ」と言ってもらえて、本当にやりやすいですね。

アルファドライブ・麻生氏 : 協和さんからみたSENSYさんの良さは?

協和・針金氏 : まず、本物のAIをやっていらっしゃるところ。最近は展示会に行くと、どこもかしこもAIアピールしています。しかし実際は裏側でプログラムを組んでいるところも多く感じます。その点、SENSYさんは違います。ギークな人が多いですよ。オフィスも大学の研究室みたいです。

そして、正しいAIの使い方をしっかり教えてくれるところ。何でもAIでしようとせず、切り分けをちゃんとして提案してくださるので、助かっています。

SENSY・谷澤氏 : 協和さんの良いところ、もう1つ思い出したのでいいですか?自由度が高いところです。協和さんは「持たざる経営」を掲げていらっしゃいますが、戦略を考える“頭”の部分以外は本当に持っていない(笑)。だから、アセットに縛られず柔軟に決断ができてしまいます。そして、余計なしがらみもないから、外部協業も自由自在です。

アルファドライブ・麻生氏 : 他社とは全然違いますか?

SENSY・谷澤氏 : 違いますね。大きな企業の場合、たくさんのモノを持っているから、しがらみも多い。小さな会社であっても、できる限り自社のアセットを使おうとします。そうすると、会社の能力やキャパシティの範疇に小さく収まってしまいます。協和さんにはそれがないから、可能性も広がります。

アルファドライブ・麻生氏 : 最後に、オープンイノベーションに取り組もうという読者に、アドバイスをお願いします。会社の垣根を超えてプロジェクトを進める際、重要なポイントとは?

協和・針金氏 : オープンイノベーションに限った話ではないですが、まずは自分が楽しいこと、やりたいことを追求することではないでしょうか。オープンイノベーションって、やりたいことを実現するための手段の1つ。それを目的化すると本末転倒なので、まずは何を実現したいのか、何をしたら楽しいのか、しっかり考えるところからだと思います。

SENSY・谷澤氏 : 針金さんと似ているのですが、それをすることで世界や社会は良くなるのか、面白くなるのかを、常に問うことですね。新しいサービスでも、それによって世の中が良くならない、使われるイメージが湧かないのなら、潔くやめたらいいと思います。

アルファドライブ・麻生氏 : 小手先のメソッドじゃなく、ビジョンが出てくるのがやはりすごいと思いました。今日は面白いお話をありがとうございました!


取材後記

以前、協和の堀内社長の話を伺った際、「持たざる経営」により柔軟かつスピーディーな意思決定を行っていること、他社と組織の垣根を超えてプロジェクトを組み共創を進めていることが強く印象に残った。そして今回の対談により、その思想がプロジェクトの隅々にまで浸透していることが分かった。

また今回、谷澤氏の話からスタートアップサイドから見た協和の姿も浮き彫りになった。オープンイノベーション成功のためには「対等な関係を築くこと」が重要だと言われる。協和の場合はそこから一歩進んで「融合してワンチームになること」を重視している。まずは同じビジョンを共に見据え、互いの強みや事業領域への理解を進め、相手の繁栄につながることを考える。それにより自然と会社対会社の垣根が取り払われ、イノベーションが創出されるのだろう。


◆協和が取り組むオープンイノベーションプログラム【fracora OPEN INNOVATION PROGRAM】についての詳細は下記URLをご覧ください。

https://fracora-oi.com/

(構成:眞田幸剛、取材・文:佐藤瑞恵、撮影:古林洋平)