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三菱地所「Corporate Accelerator Program」を牽引する同社執行役専務・有森氏に、eiicon・タモツが直撃インタビュー!〜「共創」を通じて実現する2020年以降の暮らし〜

2017年に第1期「Corporate Accelerator Program」を開催した三菱地所。すでに9社との協業が検討されており、丸の内を始めとするさまざまな街で、早くも「共創」による新サービスがスタートする(※)など、順調な船出を実現した。

この8月からは、「この街から変革する。Work & Life Innovation 2018」というテーマを掲げた第2期プログラムも始動しており、第1期を上回る注目を集めている。――そこで今回は、同社の執行役専務であり、今春よりアクセラレータープログラムを運営する新事業創造部を管掌する有森氏に、eiiconの保(タモツ)が突撃インタビューを敢行。海外勤務や新会社設立など多様な経験を積んだ有森氏のオープンイノベーションに対する考え方や、共創を通じて実現する2020年以降の暮らしのあり方について、お話しを伺った。

※第1期「Corporate Accelerator Program」の共創事例に関しては過去インタビューをご覧ください。https://eiicon.net/articles/522


【写真右】 三菱地所株式会社 取締役 兼 代表執行役 執行役専務 有森鉄治氏

三菱地所入社後、国内にて地域開発や宅地事業、米国現地法人への出向・駐在などを経験。帰国後には新会社設立や不動産投資マネジメント事業などを担当した後、2018年から新事業創造部の副担当としてアクセラレータープログラムの運営をリードしている。

【写真左】 eiicon company sales 保美和子

神戸大学大学院理学研究科にて、ハエをモデルに摂食に関わる分子機構と神経基盤を研究。2017年にパーソルキャリア株式会社に新卒入社後、eiicon companyに配属。企画・営業を担当している。


「協業」と「新事業創造」、2つの経験を育んできた有森氏。

eiicon・タモツ : お聞きしたところによると、有森さんは国内・海外でさまざまなキャリアを積まれてきたそうですね。まずはそのご経歴を伺えますか?

三菱地所・有森氏 : 私が三菱地所に入社したのは、1980年のことです。当時は、大都市郊外での大規模な宅地開発が市場トレンドでした。そこで私も東京・仙台・札幌と、フィールドを変えながら約10年ほどこの事業に携わりました。その後は海外事業部を経て7年ほどアメリカの現地法人に出向・駐在していました。

eiicon・タモツ : アメリカではどのようなビジネスに携わられたのでしょう?

三菱地所・有森氏 : 主に手掛けていたのは、ロサンゼルス郊外でゴルフ場付きの住宅を開発・販売する事業です。他にもロサンゼルス中心部で50階建てクラスの高層オフィスビルの開発などにも関わりましたね。

eiicon・タモツ : かなり大規模なプロジェクトですね……!それは三菱地所さん単独で取り組まれたのですか?

三菱地所・有森氏 : いえいえ、当社がアメリカの不動産企業とジョイントベンチャーをつくりまして、私はそこに出向していました。現地企業はローカルに特化した専門性を、私どもは資金をそれぞれ提供し合い、一緒になって開発を推し進めていく。そうした「協業」の形態で事業に取り組んでいました。

eiicon・タモツ : 現在の「共創」や「新事業」に通じるようなご経験を、アメリカ駐在時代にされていたのですね。

三菱地所・有森氏 : そう言えるかもしれませんね。その後、日本に戻ってきたのですが、当時は銀行や証券会社が相次いで倒産する金融危機の時代だったのです。不動産会社も厳しい経営環境を克服するために、新たな収益を作るビジネスを立ち上げる必要がありました。

eiicon・タモツ : なるほど。

三菱地所・有森氏 : そこで私は三菱地所投資顧問株式会社という新会社の設立を企画し、私自身もその会社に11年ほど出向しておりました。企業の立ち上げはもちろん、今や日本最大級のオープンエンド型私募REITへと成長した商品をはじめとした多彩な不動産ファンドの企画・開発など、あらゆる業務を手掛けましたね。


自前主義」の限界を、「共創」で突破したい。

eiicon・タモツ : 「協業」に「新事業の創出」と、現在担当されている「新事業創造部」に直結するようなキャリアを築かれてきた印象です。

三菱地所・有森氏 : そうですね。しかし、直近まで不動産ファンドの運用や投資マネジメント事業に携わっていましたので正直言いますと、まさか自分が新事業創造部の担当になるとは想像もしていませんでした。

eiicon・タモツ : ご自身としてはサプライズだったのですね(笑)。

三菱地所・有森氏 : ただ私自身の体験から、オープンイノベーションに関しては「我々が絶対に注力すべきビジネス手法だ」と以前から思っていました。

と言いますのも、たとえば海外事業を行うには各国特有の慣習、法律、マーケット知識が必要になります。これを我々が単独で入っていって、「なんでもかんでも自前で行う」と判断をしていれば、膨大な時間とコストがかかったでしょうし、不可能に近いと感じました。

eiicon・タモツ : 自前主義では、どうしても限界があると。

三菱地所・有森氏 : そうです。その一方で外部の企業をパートナーに迎え、お互いのリソースを持ち寄ればビッグプロジェクトも成し遂げられる、ということも目の当たりにしていました。ですから、昨年からスタートした「Corporate Accelerator Program」に関しては、担当になる以前から何かお手伝いができればいいなと考えていました。

eiicon・タモツ : 三菱地所さんは、すでに東京駅前の常盤橋エリアの大規模複合再開発ですとか、丸の内・大手町エリアの再開発など未来を見据えたプロジェクトにも着手されていますよね。それでも、やはりオープンイノベーションは重要だとお考えなのですね。

三菱地所・有森氏 : 昨今は時代が非常に大きく動いていますので、従来の不動産会社のビジネスを続けるだけでは、5年・10年・15年経つと成り立たなくなる可能性が高いのです。

「2020年代の日本はこのように変わるから、我々はこんな街づくりをすればいい」というきれいな答えが無い以上、仮説を立ててベンチャービジネスの皆さんと共創を図りながら、トライアンドエラーを重ねるのは不可欠だと思っています。


大切なのは、「想い」がマッチングすること。

eiicon・タモツ : 有森さんは「2020年以降の日本」に関して、どのような仮説やイメージをお持ちなのでしょうか?

三菱地所・有森氏 : まず日本全体の人口が急速に減っていきますし、生産年齢人口もさらに急速に減っていく。一方で高齢者の人口は急速に増えていく。これはほぼ確定的でしょう。そうした大きな社会的変化の中で、日本人、あるいは日本にお住いの海外の方のワークスタイルやライフスタイルの多様化も一層進んでいくはずです。

たとえば、すでにオフィスを異なる企業・業種の皆さんで共有する「シェアリングオフィス」が急激に広まっていますよね。我々が手掛けているのは、暮らしや仕事の「場」を提供するビジネスですから、そうした社会ニーズの進化や変化が2020年以降も続くと想定して、ご利用いただく方々にとって快適で、生産性があがるような仕掛けを作ることが重要になるのではないでしょうか。

eiicon・タモツ : たしかに、「どんな付加価値がある場所なのか」というのは気になるポイントです。

三菱地所・有森氏 : また、人手不足の問題ももっと激しくなっていくでしょうし、巨大なビルをつくればエネルギーの効率化や環境対策も不可欠です。そうした課題解決のために、AI、IoT、ロボティクスなどのハイテクを活用したり、あるいはローテクだとしても画期的な活用を行うことで、より良いビル運営の仕組みを作り上げる必要もある。こうした面でも、ベンチャー企業の皆さんと一緒に研究を進めていければと思っています。

eiicon・タモツ : 2018年8月から「Corporate Accelerator Program」の第2期がスタートしますが、具体的にどのようなスタートアップと組みたいとお考えですか?

三菱地所・有森氏 : プログラムの注力領域や活動領域は絞っていますが、特定の分野・技術に限定しているわけではありません。ベンチャー企業の方々とお話しをしていると、みなさん持ち前の創造性と可能性を踏まえた上でビジネスの明確な目標や、「これを実現したい」という想いをお持ちですよね。

その想いに対して私どもがどうこう口を挟むものではないと思っています。

その想いが我々の考えるものとマッチングできれば、互いが持つものを提供しながら共創を進めていく。想いや考えがマッチすればどんな企業もウェルカムですし、難しければお互いに頑張ればいいのだと考えています。

eiicon・タモツ : なるほど。想いや目指す方向性への一致が重要ということですね!

三菱地所・有森氏 : そうですね。私共であれば、120年以上をかけて培ってきた経験値やノウハウはもちろん、ビジネスの成長に必要な「販路」「マーケティング」「資金」をご提供することも出来ます。それに安定的な財務基盤もありますから、「明日明後日にすぐ結果を出してくれ」とも言いません(笑)。ある程度期間の猶予を設けながら、一緒に不動産ビジネスに新しい価値を生み出していただければ嬉しいですね。


取材後記

これまでの幅広い経験から、オープンイノベーションという手法の重要性を認識していたという有森氏。――同氏が指摘したように、2020年以降も社会のニーズは変化し続け、多様性が求められる世の中になっていくだろう。そうした中で、快適な暮らしと生産性の高いビジネスを生み出すための実験フィールドと、さまざまなリソース・アセットを三菱地所は有している。同社の共創パートナーとして、それらを活用できるチャンスが「Corporate Accelerator Program」にはある。三菱地所の想いに共感し、先進的なまちづくりを実現して数々の社会課題を解決したいという企業には、ぜひ本プログラムに挑戦してほしい。

(構成:眞田幸剛、取材・文:太田将吾、撮影:古林洋平)