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ヘルスケアから医療・金融・天気まで、toC/toBのビッグデータをトリガーとして共創を実現していく――エムティーアイのオープンイノベーション戦略とは?

ヘルスケアから医療・金融・天気まで、toC/toBのビッグデータをトリガーとして共創を実現していく――エムティーアイのオープンイノベーション戦略とは?

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フィーチャーフォンの時代から、音楽・動画・書籍を配信する総合Webサイト『music.jp』や女性の健康情報サービス『ルナルナ』といった数々のtoC向けモバイルコンテンツを展開してきた株式会社エムティーアイ

近年は、「世の中を、一歩先へ」という新たなビジョンのもと、コンテンツ配信事業にとどまらず、地方自治体や教育機関、医療機関、金融機関など社会システムと連携したサービスを提供するなど、多方面に事業を拡大している。

特にヘルスケアサービス事業については、-1歳から100歳までの層に幅広くサービスを展開。上述の『ルナルナ』はもちろん、母子手帳アプリ『母子モ』、企業向け健康管理サービス『CARADA』、選手のコンディション管理アプリ『Atleta(アトレータ)』など、各領域で展開。さらには、フィンテック領域にも進出し、スマートフォン決済サービス『&Pay』もリリースしている。同時に、さまざまな企業との提携やM&Aも積極的に推進し、2018年3月にはクラウド電子カルテを提供するクリニカル・プラットフォームを連結子会社化した。ベンチャーやスタートアップとの共創、オープンイノベーションをさらに強化していく方針を表明している。

そこで今回、同社のオープンイノベーション戦略を牽引する経営企画部の松縄氏と田中氏の2名に取材を敢行。エムティーアイが社外パートナーとの共創を推進する背景、パートナーと共に実現しようとしているビジネス、さらにはパートナーに提供できる同社独自のユーザー接点や保有データなどについても話を伺った。

▲株式会社エムティーアイ 経営企画本部 経営企画部 部長 松縄貴重氏

2012年新卒でエムティーアイに入社。音楽・コミック・ゲームなどのエンタメ系総合サービス『entag!PARTY』などのプロダクト企画を手がけた後、2014年11月に経営企画部へ異動し、全社業績の予測、分析、予算策定などに携る。2018年4月よりベンチャーやスタートアップとの共創、協業を推進するタスクフォースの責任者に就任。

▲株式会社エムティーアイ 経営企画本部 経営企画部 スペシャリスト 田中大氏

2007年よりエムティーアイのサービス企画を担当。データ分析やプロモーションなどさまざまな業務に携った後、エンタメからヘルスケア領域まで幅広いサービスの企画を手がける。2017年に経営企画部へ異動し、松縄氏と共にタスクフォースに参画。

網羅的にサービスを提供しているものの、まだ不足している技術・ピースがある

−−貴社では今年の春からベンチャーやスタートアップとの共創、オープン・イノベーションに関する取り組みを本格化させていると伺っていますが、その背景についてお聞かせください。

松縄氏 : 当社はライフ・エンタメ系のサービスからスタートしていますが、現在ではヘルスケアやライフスタイル、フィンテックに関するサービスも提供する会社へと変貌しています。世の中のニーズもスピーディーに変わり続けていますし、会社全体として業種や領域を問わず多様なサービスを手がける動きを活発化させています。そうした状況で新しいサービスを立ち上げるには、自社が持っているケイパビリティやリソースだけでは足りない部分も出てくるため、経営企画部としてベンチャーやスタートアップとの共創を生み出す動きを作っていこうと考えました。

−−貴社としては社外との共創によって、どのようなことを実現したいと考えているのでしょうか?

松縄氏 : ヘルスケア領域を例に挙げると、当社は「-1歳から100歳まで」というスローガンを掲げています。ある程度はスローガンの通り、網羅的にサービスを提供できている自負もありますが、それぞれのプロダクトにはまだ弱みもありますし、足りていない技術、ピースがあることは間違いありません。そうした部分を優れたプロダクトや技術を持ったスタートアップの方々と組むことによって補完しつつ、ヘルスケアの事業を拡充していきたいですし、その動きをフィンテック事業やライフスタイル事業にもつなげていきたいと考えています。

田中氏 : ヘルスケア領域を優先的に考えていますが、フィンテックやライフスタイル領域に関する共創も視野に入れています。領域を狭めることなくスタートアップの皆さんのプロダクトや技術を拝見させていただきながら、「ここはつなげられるかな」という部分を一つ一つ確認しながら進めていくつもりです。

−−企業や地方自治体との提携を活発に進められていますが、いくつか例を挙げて教えていただけますか?

松縄氏 : クラウド電子カルテを提供しているクリニカル・プラットフォーム株式会社の子会社化などは、上手くマッチした事例と言えるかもしれません。もともとヘルスケア領域を立ち上げたときにあった構想は、「企業や病院、薬局といったヘルスケア業界内のプレイヤー同士のつながりを作ることによって価値を生み出そう」というものでした。つながりを作るにはどうしても電子化・データ化が必要になりますが、当社としてはそれを得るためのプロダクトが何よりも必要だったのです。

−−フィンテック領域はどうですか?

松縄氏 : 株式会社Authlete Japanという認可ソリューションを提供している会社に出資をしています。当社がエンタメ領域からヘルスケアやフィンテックといった堅い領域へと重心を移していくためには、個人情報などの取扱いなどセキュリティ向上が必須になることは間違いありません。今後はヘルスケアやフィンテック領域を中心にシナジーを生み出していきたいと考えています。

toCのユーザーに加え、企業、自治体、学校などtoBで開拓した多様な販路も活用できる

−−ベンチャーやスタートアップに提供できる貴社独自のアセットやリソースにはどんなものがあるのでしょうか?

松縄氏 : 長年IT業界でコンテンツを運営してきたことで得られた運営ノウハウやWeb・アプリに関するナレッジ、全国での拡販体制に加え、多くのtoCサービス、toBサービスを展開することで得られたさまざまなユーザーとの接点や販路、独自のデータを提供することができます。

−−toCサービス、toBサービスでのユーザー接点や販路、独自のデーターには具体的にどのようなものがありますか?

松縄氏 : 例えば当社の代表的なサービスの一つである女性の健康情報サービス『ルナルナ』ですが、コアユーザーとなる20代〜30代の女性を中心にアプリ版は1200万というDL実績(※2018年3月時点)があり、生理日をはじめ排卵日や基礎体温の記録などさまざまなユーザーデータが集まっています。また、toBサービスでは地方自治体と連携している母子手帳アプリ『母子モ』、企業向けに展開している健康管理アプリ『CARADA』などがあります。それぞれのアプリから得られるデータはもちろんですが、多岐にわたる販売先、提携先を活用いただくことも可能です。

−−データにしても販路にしても、貴社のサービスの広さや深さだからこそ得られる貴重なものばかりですね。

松縄氏 : そのほかにも高校の部活動向けに展開している『Atleta(アトレータ)』というサービスがあります。インターハイ優勝校などの強豪校をはじめ多くの部活動やチームに利用いただいており、選手に日々の体調や睡眠時間、食事、練習内容などコンディションの記録・管理を促し、指導者は選手が入力し可視化された様々なデータを活用し、最適な指導や練習メニューの実施を支援するサービスです。こうしたアプリから得られるデータは他社にないものではないでしょうか。

−−気象情報に関するサービスも提供されていると伺っています。

田中氏 : 当社は日本に6台しかない高精度な予測を実現する気象レーダのうち、3台の情報を用いてゲリラ豪雨検知アプリ『3D雨雲ウォッチ』というサービスを提供しており、最近では隅田川花火大会の公認アプリに採用されています。とくにゲリラ豪雨の予測に関しては、実証実験において適中率が80%以上となっています。この80%という確率は気象業界の中でもかなり高い水準であると言われています。

−−共創するスタートアップも、それらのアプリやサービスから得られるデータ・情報を必要に応じて活用できるのでしょうか。

松縄氏 : もちろんです。積極的に活用いただきたいと考えています。

ヘルスケアを中心に、フィンテック、ライフスタイル領域でも共創を実現したい

−−ベンチャーやスタートアップと共創する際、貴社の社内ではどのような体制が組まれるのでしょうか?

松縄氏 : 純投資ということであれば私たち2人と経理部門で進めていきますが、事業に対する投資、共創ということになれば、事業に近しい領域の事業部と連携し、プロジェクトチームを作って進めていく予定です。また、場合によっては独自の営業チームを立ち上げ、拡販体制を整えることも可能です。

−−事業化や体制立ち上げまでのスピード感という点ではいかがでしょうか?

田中氏 : 電子カルテのクリニカル・プラットフォームについても、お会いしてから純投資まで5カ月という期間でした。さらに今年の3月23日に子会社化したのですが、翌週には社内に電子カルテ営業部が立ち上がっていました。

松縄氏 : もともとクリニカル・プラットフォームは別の場所にオフィスを構えていたのですが、現在はエムティーアイと同じフロアにオフィスを移転しています。これから共創するスタートアップの皆さんに対しても、オフィスや福利厚生施設の提供も含めた形でサポートできると考えています。

−−ヘルスケア領域の優先順位が高いというお話もありましたが、具体的にはどのようなプロダクト、技術、リソースを持ったスタートアップと共創したいと考えていますか?

松縄氏 : ヘルスケア領域では企業の健康経営や、電子母子手帳、婦人科向け妊活支援の分野で事業を展開したいと考えているので、それらに付随するサービスやプロダクトには興味があります。電子カルテに関してもレセプトデータなど、電子カルテに付随する周辺技術やサービスがあれば共創しやすいと思います。また、学校向けのサービスに関しては現在のところ『Atleta』しかないので、『Atleta』と一緒に学校に対して高校の部活動向けに提案できるサービスへと発展するようなプロダクトや技術を持っているスタートアップとも共創できると思います。具体例を挙げるとその辺りになりますが、ヘルスケアだけでなく、フィンテックやライフスタイルの領域も含めて幅広く共創の可能性を探っていくつもりです。

田中氏 : フィンテック領域では茨城県を中心に展開している常陽銀行と連携し、更新系APIを利用したスマートフォン決済サービス『&Pay(アンドペイ)』の展開をスタートしています。当社が持っている決済システムを強化してくれるような技術を持っているスタートアップや、地域密着型で地方銀行とのコネクションを持っているようなベンチャーの方々と組むことができれば、同様のサービスをさらに広げていけると考えています。

−−最後になりますがベンチャー、スタートアップの方々へのメッセージをお願いします。

松縄氏 : Web化やアプリケーション化、拡販体制、福利厚生施設やオフィスの提供も含めてサポートできますし、当社だけが持つさまざまなユーザーデータ、一般企業、地方自治体、学校、薬局、健康保険組合といった多様な販路を存分に活用いただきたいと思います。

田中氏 : 出資や事業化、拡販体制の構築スピードは当社の強みです。やると決まったら本当に早い会社なので、ぜひ期待いただければと思います。

取材後記

toCサービスである『ルナルナ』や『music.jp』の膨大なユーザー数に加え、toBサービスでも地方自治体や教育機関、医療機関、金融機関といったさまざまな異なるセグメントのユーザーと接点を持っていることは、幅広いサービスを提供してきたエムティーアイ独自の強みと言えるだろう。また、同社がアプリやサービスのユーザーから得ているデータは個人の健康情報などに関係するものが多く、一般的なECサービスやエンタメ・情報系アプリからは得ることができないセンシティブな情報であることにも注目したい。こうした貴重なデータの活用によって新たなイノベーションを起こしたいベンチャーやスタートアップにとって、同社との共創は非常に魅力的なものになりそうだ。

◆エムティーアイのオープンイノベーションへの取り組み詳細やコンタクト先についてはこちらをご覧ください。

(構成:眞田幸剛、取材・文:佐藤直己、撮影:古林洋平)

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  • 田上 知美

    田上 知美

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