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「ガスや電気だけじゃない、エネルギーのその先へ」――インフラ企業の殻を破る新サービス創出に向け、北海道ガスが、KITAGAS SMART LIFE ACCELERATORを始動!

「ガスや電気だけじゃない、エネルギーのその先へ」――インフラ企業の殻を破る新サービス創出に向け、北海道ガスが、KITAGAS SMART LIFE ACCELERATORを始動!

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私たちの生活に当たり前のように寄り添うガスや電気。旧来のビジネスモデルを維持しているように見えるエネルギー会社も、実は時代に合わせて大きく変わっている。特に2011年の東日本大震災を契機に2016年から始まった電力自由化、次代エネルギーの台頭、そしてAIやIoTなどテクノロジーの発展、また世界的な低酸素化への潮流などにより、市場には新たな事業・サービス創出のチャンスが生まれている。

そうした中、「旧来のインフラ企業の壁を壊そう!」と初のアクセラレータプログラムとなる” KITAGAS SMART LIFE ACCELERATOR”に取り組もうとしているのが、北海道ガスだ。インフラ企業として強固な顧客基盤や北海道に根差したブランド力を持つ同社だが、その地位に甘んじることなく、新たなサービス創出に積極的に取り組んでいる。

2018年10月からは、独自のエネルギーマネジメントシステム“EMINEL”(エミネル)がスタート。「暖房自動」「省エネアドバイス」「エネルギーの見える化」など快適で省エネな暮らしの実現を推進する。今回のプログラムは、このEMINELを活用した新サービスや、次代エネルギー、そしてエネルギー領域にとらわれない新領域での事業創出の3つを募集テーマとしている。

プログラム実施にあたり、まずは数々の新規事業に携わった執行役員・前谷氏に背景や方向性を、そして若手を中心としたプロジェクトメンバーに共創にかける想いを聞いた。

▲北海道ガス株式会社 執行役員 エネルギーサービス事業本部長 前谷浩樹氏

北海道大学工学部精密工学科卒業。1991年入社。営業技術部、経営企画グループを経て、2005年財団法人日本エネルギー経済研究所出向。2007年北海道ガス帰社。原料企画室長として北海道初のLNG(液化天然ガス)輸入基地プロジェクトを手掛ける。2014年エネルギービジョンプロジェクト部長、2015年執行役員就任。ガスに限らずエネルギー分野での事業を画策し、2016年より始まる電力自由化参入に向けたプロジェクトを立ち上げる。2018年より現職。

【執行役員インタビュー】 エネルギー事業を超えたサービスの創出に取り組んでいきたい

――今回、KITAGAS SMART LIFE ACCELERATORを実施することになった背景を聞かせてください。

前谷氏 : 北海道ガスは天然ガスの普及拡大事業に長年取り組み、強固な顧客基盤を築いてきました。さらに2016年の電力自由化に参入、電力事業も順調に推移しています。そうした中、改めて「我々の使命とは何か」、「北海道に根差してエネルギー事業を展開する企業として世の中にどのような役割を果たせるのか」、問い直す議論が生まれています。ガスや電気のサービス提供に限らず、社会問題や環境問題、地域が抱える課題に対して何か新しいことができないだろうかと考えているのです。

――なるほど。

前谷氏 : 特に積雪寒冷地であり全国的に見てもエネルギー消費量が大きな北海道で、安定的なエネルギー供給と、省エネを両軸で進めることは大きな社会的意義があります。そうした中で生まれたのが、7月にリリースした家庭のエネルギーマネジメントシステム「EMINEL」です。このサービス基盤が整ったところで、次に何ができるかを、様々な企業との連携のもと考えていきたいと思い、“KITAGAS SMART LIFE ACCELERATOR”を企画しました。例えば、我々が持つインフラ基盤や、EMINELの情報通信プラットフォームを活用しながら、もっと広く生活全体にお役に立てることがあるのではないか。外部の様々な知恵やサービスとの融合により、エネルギー事業を超えたサービス創出にも挑戦したいと考えています。

――プログラムの主要テーマの一つになるEMINELのリリース後の反響はいかがでしょうか?

前谷氏 : 想定以上の反響をいただいています。例えばハウスメーカーさんからみると、ガス・電気・省エネという3本柱はこれまでにない取り組みで、省エネ・家計に優しいというメリットがあります。我々がEMINELを通じて伝えているのは、お客さまとともに省エネを進めるということ。北海道は全国と比べてもCO2排出が多いのですが、省エネに取り組むことにより1人1人のお客さまがCO2排出削減に貢献する実感を得られるサービスをご提供することで、環境問題への解決に寄与することができます。そうした面に対する評価と、もう一つはまったく別の分野で、双方向の通信プラットフォームを1軒1軒のお客さまと構築するため、それを利用して様々なビジネス展開ができるのではないかと、既にいくつかの企業からお声がけをいただいています。

――伝統的な日本企業は自前主義で、外部との共創となると様々な障壁があるのではないかと思います。その辺り、北海道ガスさんではどうでしょうか。

前谷氏 : 確かに往々にして生活インフラ系企業は保守的で腰が重いという傾向があります。これは歴史と伝統の裏返しではあるのですが。――その点、私たち北海道ガスは企業規模が大きすぎず小さすぎず、スピード感を持って外部と新しいことに挑戦しやすい環境がありますね。サービス開発においても、長い期間抱え込んで開発するのではなく、ある程度スモールスタートで、まずは世に出してお客さまの声を聞きながらブラッシュアップしていくスタイルを推進しています。

――トップコミットメントとしてはいかがでしょうか。

前谷氏 : 経営陣としても、常に変革・開拓を求めています。決して今の基盤にあぐらをかくのではなく、新しいことをどんどん取り入れて改善していこうという意識がありますね。外部とのアライアンスも積極的に取り組んでいます。

――外部連携でいうと、7月にリリースされた「セイコーマート北海道大学店」におけるAIを活用した省エネシステム導入の事例も印象的です。

前谷氏 : これは非常に良い事例ですね。北海道に根差すコンビニエンスストアチェーン・(株)セコマとの技術協力、そして北海道大学との共同研究により、今後積雪寒冷地の省エネシステム研究・開発につなげていければと考えています。こうした新しい取り組みをどんどん広げていきたいですね。

――アクセラレータプログラムを通じて提供できるリソースについて聞かせてください。

前谷氏 : まずは、北海道の中での顧客基盤、企業ブランドは確かなものがあると自負しています。また、官公庁との密接なつながりも強みですね。そして、EMINELによる新たな通信基盤とそこから手に入るデータも提供することが可能です。他にも、我々が気付いていない魅力的なリソースがあるかもしれません。今回のプログラムでそこを見出し、活用していきたいとも考えています。

――今回、スタートアップと共に取り組んでいきたい分野、方向性としては?

前谷氏 : 展開していきたい分野は3つあります。1つは、EMINELで収集したデータやプラットフォームを活用した新たなサービスの創出です。省エネアドバイスなどサービスの高度化をはかる先進的な取り組みを進めていこうと考えています。2つ目は、次世代エネルギー事業。例えば電気やガスの供給方法には、ブロックチェーンを利用するなど、まだまだ工夫の余地があります。ICTやAIなどテクノロジーを活用して取り組んでいきます。

最後の3つ目は、エネルギー事業の枠を超えた飛び地の事業。医療、食、住宅、趣味など、我々の既存事業の枠では展開できない事業を、当社のリソースやブランドをうまく活用して展開していきたいですね。

――特に募集エリアは限定していませんか?

前谷氏 : エリアにこだわりはありません。当社の事業領域は北海道ですが、生み出すサービスやシステムによっては北海道に限定せず広げていける可能性があるはずです。意思決定のスピードを早めるためにも、一定期間、東京にもプロジェクトメンバーを常駐させ、素早い情報交換と方向性の決定を行っていく予定です。「検討のための検討」というような工程は省き、具体的な話にすぐ入れるように体制を整えていきます。

――今回のプログラム参加希望者へのメッセージをお願いいたします。

前谷氏 : 私たちは1911年創業という歴史と伝統のある企業ですが、「エネルギーのその先へ」というキャッチフレーズを掲げ、今その殻を破っていこうとしています。新たな発想と築いてきた歴史をうまく融合させ、様々なサービスやアイデアによりお客さまの利益につなげていきたいですね。

【プロジェクトメンバーインタビュー】 「単なるガス会社」からの脱却。若手を中心に、新しい風を起こしたい。

――KITAGAS SMART LIFE ACCELERATORを運営するプロジェクトメンバーのみなさんにお集まりいただきました。まずはどのようなバックボーンをお持ちの方がこのプロジェクトを担っているのかを伺いたいと思います。お一人ずつ、簡単な自己紹介をお願いできますか?

稲垣氏 : 今回のプロジェクトリーダーを担当しています。ガスの供給管理部、ICT推進部を経て、2016年よりエネルギー企画部でプロモーションやキャンペーンなど、営業推進に関する企画を行っています。EMINELでは、「かけつけサービス」の企画設計と業務提携を担当しました

齊藤氏 : エネルギービジョンプロジェクトの立ち上げメンバーで、2015年からは電力自由化に携わり、現在は電力事業の計画と管理、日々の電力需給の運用を行っています。理系院卒で情報系専攻だったこともあり、テクノロジー関係には強い関心があります。

菊地氏 : プロモーションチームにて、全国親子クッキングコンテストなど、ショールームやクッキングスクールの運営関連業務を担当しています。以前、別の企業で国内外のスタートアップを招いたイベント企画運営の経験があります。

▲エネルギー企画部 エネルギー企画グループ 課長 稲垣利陽氏(写真右)、同グループ 主任 齊藤圭司氏(写真中)、同グループ 菊地唯莉氏(写真左)

松森氏 : 今回のプロジェクトのサブリーダーを任されています。今回スタートアップの方々の窓口となる予定です。新築戸建向けガス機器の営業を5年間行った後、現在の部門に異動し、EMINELの開発に携わりました。その知見をプロジェクトでも活かしていきたいと思っています。

安岡氏 : ガス・電気料金の確定から請求・入金の管理を担当しています。様々な新規お客さまサービスの検討や、余剰電力買取システムの構築・改善なども行っています。お客さまに近い部門として、お客さまの声をサービスにつなげていきたいと考えています。

柳谷氏 : 経営企画部にて中期経営計画の策定や見直しに携わっています。最近は上士幌町発のバイオガス発電による電力供給支援など、地域活性化のプロジェクトにも携わっています。スタートアップとの連携で少子高齢化や過疎化といった地域の課題解決に取り組んでいきたいです。

▲エネルギーサービス事業本部 スマートエネルギー推進室 主任 松森拓東氏(写真左)、エネルギー企画部 料金センター 安岡弥生氏(写真中)、経営企画部 経営企画グループ 主任 柳谷萌美氏(写真右)

川村氏 : 私はプロジェクトのマネジメントを担当しています。メインの業務は若手メンバーに任せていくのですが、動きやすい環境の整備や経営層との橋渡し役を担っていきたいと思っています。電気事業参入を経て、それに続くサービスを生み出せるようなプロジェクトとなるようフォローしていきます。

▲エネルギー企画部長 川村智郷氏

――ありがとうございます。多様な部門・バックグラウンドの人材が集まっていらっしゃるのですね。このプロジェクトチームの強みは、どのようなところでしょうか。

松森氏 : ご覧の通り、若手が中心となっており、発想は非常に豊かで柔軟です。既存組織のラインとは異なるプロジェクトのため、フラットな雰囲気の中で全員が意見を自由に出し合える雰囲気がありますね。

菊地氏 : 最初にメンバーが集まった時、松森が「このチームはフラットでいこう」と宣言して、ファーストネームで呼び合うようにしたのです(笑)。部署や年次が異なっても何も気にせず発言できます。

稲垣氏 : 他に強みとしては、齊藤の理系のバックグラウンドと、菊地・柳谷の語学力もあります。菊地は英語、柳谷は中国語。海外とのやり取りにおいても力を発揮できると考えています。

――新たな事業を生み出す上で、オープンイノベーションという手法を選択した理由はどこにありますか。

松森氏 : 新たなお客さまの獲得や顧客満足度の向上は大前提としてあるのですが、オープンイノベーションを選択したメインの理由はそこではありません。従来のガス会社がリーチできなかった課題をどう解決していくのか、新しい価値をどのように提供していくのか。ガス会社で働く私たちでは考え付かない斬新な発想や着眼点を、他社との共創によって生み出していきたいと考え、オープンイノベーションという手法を選びました。何か、既存のインフラ企業の壁を壊すような、新しいことをしていきたい、変えていきたいという想いが強いですね。

――今回KITAGAS SMART LIFE ACCELERATORで募集する具体的なテーマとして、(1)「EMINEL」を活用した新たなサービス(2)次代のエネルギー活用 (3)エネルギーの枠を超えたゼロベースからの事業創出 を掲げていらっしゃいますが、特に強化したい領域、歓迎する技術やアイデアは?

松森氏 : EMINELの住環境センサーは、室温を感知します。例えば医療分野で、室温と別のデータを組み合わせて、健康状態を管理するサービスができるかもしれません。住環境の場合は、極端に冷え込んだ部屋の温度を自動的に上げるといったサービスにはつなげられると思います。ただし、これはあくまでEMINELの範疇ですから、スタートアップの方々と共創することで、そこから一歩進んだサービスを生み出したいですね。

柳谷氏 : ガス会社はお客様の自宅に伺うなど、直接的な接点があります。そこで、見守りや北海道全体の過疎化など地域が抱える課題解決につなげられるサービスができるのではないかと思います。

齊藤氏 : ガスというのは生活に密接に関わるインフラですから、医食住に関わるサービスは親和性が高く、我々としても提供していきたいと考えています。

――他に、メンバーのみなさんで盛り上がったテーマやサービスはありますか?アイデアベースで構いません。

菊地氏 : 例えば、人の動きで発電した電気でスマホを充電できたらいいな、という話はしましたね。スマホの充電問題って結構日常的な課題ですから。

安岡氏 : 新しい決済の方法、料金確認の方法が出てきたらいいなと思います。EMINELでは必ずタブレットが付与されるため、これまで電子決済など一般的じゃなかったお客さまの層に対してアプローチできるのではないかと思います。

松森氏 : 先ほど挙げた事例ですが、室温に関わるサービスはエネルギー会社ならではだと思います。省エネという観点で行くと、北海道は真冬に室温を高く設定して半袖短パンで部屋の中でアイスを食べるというような文化があります。そんな中で室温を下げてもらうには、何か対価が必要かな、と思っています。でもそれを、どうサービスにつなげていくのか、考えていかないといけませんね。

――皆さんがプロジェクトに対してそれぞれ想いを持ち、新たな価値創出への情熱を傾けていらっしゃることが伝わってきました。最後に、事務局からスタートアップ企業へのメッセージをお願いします。

松森氏 : 北海道ガスは、800名規模の会社です。インフラ企業ですが機動力は高く、スピード感を持って協業ができると思います。

菊地氏 : 企業として歴史はありますが、私たちのプロジェクトはまだ始まったばかり。社内スタートアップのようなものです。事業を生み出しスケールさせていきたいという点で、スタートアップ企業と同じビジョンを描いていけるはず。一緒に成長していきたいですね。

安岡氏 : 私は電力自由化を経験したことにより、時代の変化によってお客さまの希望も移り変わることを体感してきました。今、ここには覚悟を持って集まったメンバーがここにいます。ぜひ、新しい時代をつくるサービスを生み出していきたいと思います。

稲垣氏 : 私たちは単なるガス会社から脱皮しつつありますが、このプロジェクトを通じて更にその先の未来に羽ばたくことを目指しています。そのためにはスタートアップの方々の力が不可欠。共に新しい風に乗り、新しい未来を創りだしましょう。

取材後記

執行役員の前谷氏、プロジェクトメンバー、それぞれの話から「新しいエネルギー会社の姿を作りたい」「壁を壊したい」という意気込みを感じた。確固たる事業基盤や信頼がありながらも、「大きすぎず、小さすぎない」企業規模ならではのフットワークの軽さとスピード感は、スタートアップにとって大きな魅力となるだろう。若手を中心としながら、ベテランがしっかりと支えるプロジェクトチームのバランスも面白い。人間が活動する上で欠かせないインフラを担い、かつ北海道という特徴ある地域に根差す北海道ガスとの共創には、可能性が大きく広がっている。

◆KITAGAS SMART LIFE ACCELERATORについての詳細はコチラから

(構成:眞田幸剛、取材・文:佐藤瑞恵、撮影:加藤武俊)

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